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平成14年 8月 16日 PISAPミニレポート 2002

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平成14年 8月 16日 PISAPミニレポート 2002
PEC 海外石油情報(ミニレポート)
平成14年 8 月 16 日
PISAP ミニレポート 2002-23
米国各州の石油汚染土壌浄化対策の実態と考え方に関する海外調査
<その他環境>
米国が取り組んでいる石油汚染土壌対策の実情について、浄化基準、分析方法、浄化事例
などを中心に、本年 7 月現地調査を行なった。各州の浄化基準や分析方法はAEHS(土壌環
境健康協会)
のホームページ(資料1)で提供されているが、州によって浄化基準、石油留分の
分画方法、分析方法が異なるため、代表的な州を訪問した。訪問先は、テキサス州がSwRI
(Southwest Research Institute)・RRC(
Railroad Commission:
鉄道委員会)、ルイジアナ州
がDEQ(
環境品質局、以下「LDEQ」という)・研究所・
汚染サイト、フロリダ州がDEP(環境保護
局)・
研究所・
汚染サイト、マサチューセッツ州がDEP(
以下「
MADEP」という)・研究所・
汚染サ
イトである。調査により得られた情報について「ミニレポート」として提供する。
1.浄化対策
(1)浄化基準の概要
<これまでの経緯>
1994 年以前は、米国においても浄化を実施する地域における所轄行政の個々の判断による
固定浄化目標値(
数値基準)
による実施が主流であった。
汚染地域は住宅地、商業地、工業地等の区分による単純な浄化基準の設定がなされていた。
また、石油全体を有害物質と見なし、徹底的な浄化が実施されたため、浄化コストの著しい増大
を招いた。そのため、潜在的な汚染用地の流動化(
有効活用)
が停滞する状況にあった。
その後、この事態を解消するため、米国環境保護庁(
EPA)は米国材料試験協会(
ASTM)と
米国石油学会(
API)と共同で、リスクベース浄化策(
RBCA)と呼ばれる標準手法を開発した。
しかし、この手法では、石油の各成分毎のリスク評価がまだなされていなかった。
そこで、その後のリスクベース浄化策の展開について実態調査を行った。
<調査結果>
①数値基準とリスクベース基準の選択制
より厳しい数値基準とこの厳しい基準を回避する為に地域特有の石油留分、土質、地下水等
の周辺環境、土地利用等を考慮し実情にあったリスクベース基準の両方の選択肢を提供するこ
とが重要であるとの認識であった。
実際マサチューセッツ州の場合、1993 年 10 月に発効のマサチューセッツ緊急時対応計画
(MCP)
では、より厳しい数値基準とリスクベース基準の選択制を採用している。
PEC 海外石油情報(ミニレポート)
②リスクベース浄化策(
RBCA)
の改良
EPA が開発したリスクベース浄化策(
RBCA)
をベースに、石油留分ごとのリスクを考慮した新
しい評価法を各州ごとに制定している。
石油留分のリスク評価方法としては、石油留分の考え方を最初に取り入れたマサチューセッツ
州の「MADEP 法」と政府、研究機関、産業界が協力して発足した TPH 判断基準作業グルー
プ(
TPHCWG)
が提案した「
TPHCWG 法」
がある。米国各州では基本的にはこのいずれかの
手法をもとに炭化水素留分の分画を採用してリスク評価を行なっているが、各州の事情や考え
方により多少の修正が加えられている。TPHCWG 法が浸出性と蒸発性をもとに脂肪族6フラク
ション、芳香族7フラクションの計 13 フラクションに分けているのに対し、MADEP 法では人の
健康リスクに基づいて脂肪族 4 フラクション、芳香族2 フラクションの計 6 フラクションに分けて
いる。
今回訪問したマサチューセッツ州は MADEP 法の分画を、テキサス州とルイジアナ州は
TPHCWG 法の分画をベースとしている。フロリダ州ではフロリダ大学と共同で研究を行なって
おり、MADEP 法の分画をベースとして一部 TPHCWG 法の考え方を取り入れた形で検討し
ている。
(2)米国 4 州の浄化対策の実状(
詳細)
① マサチューセッツ州
1992 年 7 月に MADEP は汚染に責任がある私企業に対し、土壌の有効活用を推進するた
めに、汚染サイト浄化プログラムを改訂した。漏洩した油や有害物質の報告、査定、浄化の為の
新しい規則を1993 年 7 月に公布した。これらの規則「
MCP」
は 1993 年 10 月に発効した。
マサチューセッツ州では、企業はサイト特有のリスク査定を実施するか公表されているより厳
しい数値基準を用いるかを選択することができる。
リスク査定は、MADEP 法を採用している。石油中に存在する脂肪族および芳香族炭化水素
留分を含む一般的な 107 物質についての基準を、9 種類のサイトについて計算できるようにな
っている。9 種類のサイトとは、地下水について 3 種類(
GW-1=飲料水の帯水層、GW-2=蒸
発が懸念される表層地下水があるサイト、GW-3=その他)と土壌について3種類(
S-1=表層
土壌、S-2=中層土壌、S-3=深層で隔離された土壌)とのマトリックスで得られる9種類のサイト
のことである。
また、石油の特定の成分(
例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、MTBE、
PAHsなど)
についての基準もある。
マサチューセッツ州では、用地の評価や浄化作業を企画監督する用地専門家(
LSP)
の認可
制度があり、600 万人の州人口に対し、400 名の LSP が登録され、実際には 200 名が活動を
行なっている。
② テキサス州
PEC 海外石油情報(ミニレポート)
テキサス州では表層水や浅い地下水に近接した地域、野生生物保護区、居住地区や商業地
区などを「
センシティブ地域」、それ以外を「ノンセンシティブ地域」とし、二つの地域に区分して
いる。
「ノンセンシティブ地域」
の原油汚染については、州規則 91 に基き、全石油炭化水素(
TPH)
レベルを漏洩後 1 年以内に10,000ppm以下にすることが義務づけられいる。また、TPHが、
50,000ppm 以上の場合は、他の汚染されていない土壌と混合し、直ちに 50,000ppm 未満
にしなければならない。
「センシティブ地域」
の原油汚染及び全域における石油製品による汚染については、リスクベ
ース浄化策(
RBCA)
を修正した、テキサス天然資源保護局(
TNRCC)
のリスク低減プログラム
(
TRRP)にしたがって処理するよう要請されている。
③ ルイジアナ州
ルイジアナ州の環境品質局(
LDEQ)
は、リスク評価/是正行動計画(
RECAP)を構築して浄
化対策を進めている(
資料2
)
。
これは、より厳しい数値基準(
SS)と三段階のマネージメント・オプション(
MO-1,MO-2,MO-3)
から成り立っている。どの基準で対応するかは、企業側の選択となる。これらの考え方は、
RBCA の Tier1、Tire2、Tier3を参考にしているが、政策決定の面でより詳しいものとなってい
る。段階的なマネジメント・オプションは、サイトの状態とリスクに応じたサイト評価及び是正措置
の取り組みを可能とする。MO のレベルが上がるに従って、アプローチはよりサイトに特有なも
のとなる。また、SS とMO-1 の浄化基準が予め数字で示されているのに対し、MO-2 は決まっ
たモデルを用いてリスクを計算し浄化基準を決める。MO-3 の場合は状況に合ったモデルを使
っても良いことになっている。
④ フロリダ州
フロリダ州では、29の化学物質または化学物質グループについて、土壌浄化レベルを確立し
ている。この中には23の有機化学物質、MTBE、4つの金属及び TRPH が含まれる。各化学
物質毎に浄化目標レベルを導くために毒性に基く項目と付近の環境(
公園、学校、地下水の使
用状況など)
を考慮した項目により計算するようになっている。
(3)特記事項
<重質成分の考え方>
C35以上の重質成分については、フロリダ州のように独自の分析法(
FL-PRO)
でC40 まで測
定している例もあるが、移動性が無いことや生体内へ取り込まれる可能性が低く、毒性も低いと
いうことで、各州とも優先度が低く実質的には問題視していない。レジン・アスファルテンについ
ては、例えばテキサス州は毒性が低く発癌性物質も含んでいないと考え、人の健康や環境に
対し微小な脅威しか与えないため、TPH 評価にこれらを考慮していない。今後毒性等を示す
PEC 海外石油情報(ミニレポート)
データが明らかになれば修正が必要になってくるとの考え方であった。また、他の州は石油留
分の考え方を採用しているため、レジン・
アスファルテンといった特定の種類の物質として区別
していない。
2.土壌中油分の分析方法
各州とも分析方法の詳細な規定を行っている。大きく分けて、留分全体を直接分析する直接
法と軽質分と中・
重質分を分けて分析する分割法の二つがある。分割法では、軽質分はパージ
&トラップ法で、中・
重質分は溶媒抽出法で分析する。州によってそれぞれ採用している分析
法が違うことが分かった。
(1)直接法
テキサス州は、独自の TPH(
全油分)
分析法として TNRCC1005 を採用している。本法は、
TPHCWG が規定している直接法と同じで、n-ペンタンで土壌中の油分を抽出し、GC-FID で
C6-C35 を評価する方法である。
(2)−1 軽質分分析(
パージ&トラップ)
法
ルイジアナ州、フロリダ州およびマサチューセッツ州では、ガソリン相当留分をパージ&トラッ
プ法で実施している。本法は、EPA が規定した SW846-5035/8260 を基本としておりC6-C12
が測定対象である。なお、マサチューセッツ州は、飽和炭化水素の C5 留分も毒性が高いとの
考え方から、C5-C12 を分析できる独自の方法(
VHP 分析法)
を規定している。
なお、パージ&トラップ法では、土壌採取時にメタノールに浸漬し、実験室で油分を含むメタ
ノール溶液に水を添加して分析する方法をいずれの州も採用している。
また、パージ&トラップに用いられる吸着剤は軽質留分の吸脱着性能が良いものを利用する
必要があり、VOCARB3000(Supelco社製)を用いている例が多かった。
(2)−2 中・
重質分分析(
溶媒抽出)
法
中・
重質分分析について、ルイジアナ州は EPA が規定した SW846-8015B(測定炭素数範
囲:
C8-C35)を、フロリダ州は州独自の分析法である FL-PRO(
同:
C8-C40)
を、マサチューセ
ッツ州は州独自の分析法であるEPH(同:
C9-C36)を用いている。
いずれの分析法も、ジクロルメタン(
フロリダ州はアセトンとジクロルメタンの 1:1 混合)
を溶媒
として、土壌中の油分を抽出する方法である。前 2 州がホーン型超音波抽出法を採用している
のに対し、マサチューセッツ州はソックスレー抽出法を採用している。
なお、土壌試料に含まれる水分は抽出効率を低下させるため、抽出を行う前に顆粒状の硫酸
ナトリウムを添加し、予め水分を除去している。
得られた抽出液は、クデルナ−ダニッシュ(K-D)濃縮器を用いて濃縮した後、窒素気流下で
更に濃縮を行い、シリカゲルを用いて夾雑物を除去して GC 測定を行う。
PEC 海外石油情報(ミニレポート)
本分析においては、各州の分析法に大差はなく、測定対象範囲の違いに基づくシリンジスパ
イク(
回収率等を評価する添加試料)
に差が認められている。
従って、本分析のポイントは「
回収率を向上させるための土壌中の水分除去(
硫酸ナトリウム使
用)」と「抽出溶媒留去時の油分蒸発抑制(
K-D濃縮器及び窒素気流下での濃縮)
」
にある。
3.土壌浄化現場調査
今回、次の 5 カ所の土壌浄化現場を調査した。
① SwRI
の自然浄化フィールド(
テキサス州)
敷地内のサイトに軽油を撒いて自然浄化の状況を十数年にわたりモニタリングした。
② ファイトレメディエーション現場(
ルイジアナ州)
汚染源:
化学物質や廃油の処理場
汚染物質:
ト
ルエン・ジアミン(TDA)、ジクロロエチレン(EDC)
使用植物:
ポプラ、ユーカリ
③ エアースパージング&ベーパーエクストラクション(フロリダ州)
汚染源:SSの地下タンク
汚染物質:
ガソリン
④ Bituminous Pavement Plant(
マサチューセッツ州)
マサチューセッツでは多くの汚染土壌を道路舗装材として再生している。
⑤ バイオレメディエーション・サイト(マサチューセッツ州)
汚染源:
民家の加熱用燃料タンクとSSの地下タンク
汚染物質:ヒーティングオイル、ガソリン
水平方向と垂直方向に配管を埋めて、微生物、酸素供給剤、栄養源等を月1回注入し、原位
置にて浄化を実施。
(TM)
(
参考資料)
1.http://www.aehs.com/surveys.htm
2. http://www.deq.state.la.us/technology/recap/
3. http://www.state.ma.us/dep/bwsc/vph_eph.htm
本資料は、石油情報プラザの情報探査で得られた情報を、整理、分析したものです。無断
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