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平成14年6月21 日 PISAP ミニレポート 2002

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平成14年6月21 日 PISAP ミニレポート 2002
PEC 海外石油情報(ミニレポート)
平成14年6月21 日
PISAP ミニレポート 2002-13
EU の温室効果ガス削減政策・
措置の動向
<気候変動>
EU は京都議定書を批准し、温室効果ガス削減に向けて精力的に動き出している。本レポー
トは、EU における温室効果ガス削減政策・
措置に関する最新動向について、欧州委員会、欧
州連合理事会および欧州理事会の取り組みを中心にまとめたものである。
1.EU の京都議定書批准
EU は 2002 年 4 月 25 日付の理事会決定で正式に京都議定書を批准し(資料 1)、続いて5 月
31 日までにEU加盟 15カ国も国別の批准手続きを終了した。しかし、これと相前後して、2002
年 4月 29日、欧州委員会(
以下委員会)
の環境担当委員Margot WallstOEmは、EUが2000
年には温室効果ガス排出量の安定化目標(
1990年の水準)
を達成できたものの、このままでは、
同議定書の第 1 期約束期間(
2008∼2012)に排出量を基準年 1990 年の-8%の水準にまで抑
制または削減するというEU の約束は達成できないと警告した。このままでは1990年の水準で
安定化されてしまうため(
年当たり約 340MtCO2 当量のギャップ)
、EU および加盟各国はこれ
まで以上の努力を払い、かつ新たな政策・
措置を追加する必要があると指摘した(
資料 2)
。
EU は、これまでも政策・
措置を精力的に追加してきているが、これからはさらに努力を傾注し
ようとしている。ここでは、
EU の気候変動に取り組む政策・
措置に関する動向(
2001 年以降)
を、政策設定で主要な役割を演じている3 機関を中心に追ってみた;3 機関とは、行政執行機
関であり、政策・
措置(
含法案)
の提出権を有する委員会、政策の決定権を有する欧州連合理
事会(
以下理事会)、および大局的な方針を示す欧州理事会(
加盟 15 カ国の首脳が構成)
で
ある(
※)
。
(※)・
欧州連合理事会:
加盟各国を代表する閣僚により構成されるので、別名閣僚理事
会とも呼ばれそれぞれの専門分野の問題にかかわりを持っている。例えば環境問
題は環境相理事会が担当。委員会の提案に基づき共通政策に関する主要な決定を
採択する(これに欧州議会も立法その他で関与)
。
・
欧州理事会:
加盟国の元首・
首脳と欧州委員会委員長で構成する首脳会議(
年 2回
開催)
。EU の方向性の決定と活動の催促等行う。
2.第6次環境行動計画
2001 年 1 月 24 日、委員会は長期戦略である“
第 6 次環境行動計画”
(
全 81ページ)およびそ
の骨子(
取り組む課題の優先順位などを包含)
に法的拘束力付与する目的の法案「
共同体環境
PEC 海外石油情報(ミニレポート)
行動計画 2001∼2010 策定欧州議会・
理事会決定」
を併せて理事会を始めとする関係機関に
提出した(
資料 3、4)。同計画は気候変動を4大挑戦課題の一つとしてとらえ、なおかつ第5次
計画の反省から、既存環境法の実施改善(
法を遵守しない各国に欧州裁判所による厳しい措
置を予定)、環境問題を経済・
社会政策に深度統合などの厳しくかつ革新的な環境目標履行戦
略手段を折り込んだものである。気候変動に取り組む政策を、エネルギー効率、省エネルギー、
再生可能なエネルギーと原材料の使用増進、および CO2 および他の温室効果ガスの削減を
軸に展開しているが、ここでは、それらを集約した上記法案からこれから優先的に取り組もうとし
ている措置列の動向を知る一助として挙げておきたい:
・欧州気候変動計画(ECCP)と共に、温室効果ガスを費用効果のある方法で削減できる各
部門の目標の確立
・CO2 に関して、共同体域内の排出量取引計画の確立
・気候変動関連で、加盟各国が実施しているエネルギー助成の調査
・発電用燃料の低炭素燃料移行の奨励
・再生可能エネルギー源の奨励、2010 年までにエネルギーシェア-12%達成
・一段とクリーンなエネルギーと輸送への切り換え、および技術革新の促進のために財政
措置の活用推進、含エネルギー課税枠組の採択
・産業各部門とのエネルギー効率に関する環境合意の促進
・航空機の温室効果ガス排出量削減措置の特定
・気候変動を研究・
技術開発、および加盟国との共同研究計画に対する共同体政策の主
要テーマにする
・中小企業に革新的かつ改善的作業に順応させるための支援手段の開発
・熱・
発電複合利用(CHP)の奨励策導入
・産業界における生態効率の実践と技術の推進
・ビルデングの冷暖房の省エネルギー推進
欧州理事会は、2001 年 6 月 15∼16 日、イェーテボリ(スウェーデン)
会議において、この第 6
次環境行動計画の目標を支持する旨を表明し(
資料 5)、また2002 年 3月 15∼16日のバルセ
ロナの会議において、同計画が持続可能な開発の重要な手段であることを認め、かつ欧州議
会と理事会が同法案の採択に向けて順調に作業を進めていることを歓迎した(
資料 6)。現在、
同法案は、共同手続きの最終段階第 3 読会にあり、2002 年 3 月 19 日調停委員会作成原文を
調停委員会が、また5 月 30 日には議会が第 3 読会でそれぞれ承認した。間もなく、理事会に
おいても承認され正式に決定されると思われる。
委員会は次のステップとして、2001 年 10 月 23 日、京都議定書批准案に、議定書目標履行
時のコスト抑制策および削減案を抱き合わせた一括措置案を理事会を始めとする関連部署
PEC 海外石油情報(ミニレポート)
に提出した:
(1) 京都議定書批准案(
2002 年 4 月 25 日理事会決定、前出)
(2) EU 域内排出許容量(ALLOANCE)取引指令案(
資料 7)
(3) 「
欧州気候変動計画第 1 フェーズの実施に関する」
伝達文書(
資料 8)
ここで(
2)
は、この計画に組み入れられる全ての設備・
装置に義務付けられる温室効果ガス“認
可”、およびその保有者に対応する量の温室効果ガス排出の権利を与える温室効果ガス“
許容
量”
を中心概念とした計画である。実施は議定書の第1期約束期間に先行する2005-2007年の
いわゆる第 1 フェーズを予定している。この法案は、議会の第 1 読会いわゆる共同手続きの初
期段階にあるが、2002 年 3 月 4 日の環境相理事会では、次の段階の“
共通見解(COMMON
POSITION)”にできるだけ早く到達できるように理事会内で準備作業を続けることを確認して
いる(
資料 9)
。
次ぎの(
3)
は、委員会が 2003 年までの作業計画に組み込むべきとして用意した温室効果ガス
の抑制ないし削減を目的とする諸措置の包括案 (年当たりの削減能力 122-178MtCO2 当量)
で、すでに、環境相理事会で承認されたものである(
資料10)。大部分は立法の手続きを必要と
する。この第1フェーズの包括的政策・
措置案は、既存および現在手続き進行中の環境法、そ
れに(
2)の排出許容量取引と共に、第1期約束期間に重要な役割を演じるものと予定される。以
下にその概略を示す:
クロスカッティング部門:
1) 統合汚染防止・規制指令の推進強化とエネルギー効率面の見直し(タイムテーブル
2003 年まで)
2) 域内排出量取引計画に、事業ベースのメカニズム(
共同実施およびクリーン開発メカニ
ズムを包含する)
を関連付ける指令案(
2003 年上半期)
3) CO2 他の温室効果ガス排出量モニタリング機構指令の見直し(2002 年下半期)
エネルギー部門:
4) 最終用途装置の効率下限値要件に対する枠組指令案(
2002 年中)
5) エネルギー需要管理(
小規模消費者に対するサービス改善)
に関する指令案
6) 熱・
電気複合利用(CHP)推進(
発電シェア-18%、2010)
指令案(
2002 年中)
7) 立法を必要としない追加提案
・公共部門の高エネルギー効率必需品調達に関するイニシアチブ(
マニュアル作成;
2002)
・エネルギー効率改善情報の普及キャンペーン(
2002)
PEC 海外石油情報(ミニレポート)
運輸部門:
8) 輸送様式間のバランスを変える包括的提案(
運輸部門最優先課題)
:
輸送部門の CO2 排出量の 84%を占める路上輸送を、鉄道、水路輸送にシフトさせ、
2010 年には 1998 年時の様式配分に戻す目標を掲げている;
・鉄道の再活性化(
市場開放、安全改善などの法案提出;
2001)
・内陸水路輸送の改善(
技術要件の標準化、許認可の統一、管理条件の統一などの提
案;
2002)
・短距離海運業の推進(
港湾業務質改善、インフラストラクチャーの開発)
・複合一貫輸送の推進(
新規支援計画 Marco Polo などによる;
2003)
9) インフラストラクチャー利用・
負担の改善提案:
・インフラストラクチャー負担の原則・
構造ならびに負担水準・
資金調達設定の共通方法論
に関する枠組指令案(
2002)
・路上商業輸送に対する統一燃料課税提案(
2003)
10) 輸送分野におけるバイオ燃料使用の推進:
・加盟各国に使用を義務付ける立法の如何、およびバイオ燃料およびバイオ燃料含有鉱
油に対する消費税の減免の検討、指令提案(
2001)
産業部門:
11) フッ素化気体に関する枠組指令案(
2002)
欧州理事会はクリーンな輸送様式へのシフトにかなりの関心を示しており、イェーテボリにおい
ては、シフトを考慮する際には輸送成長と経済成長とを大胆に切り離した措置が必要であると
の指針を示している(
資料 5)。また、バルセロナにおいてはエネルギー市場の自由化と併せて
エネルギー税指令の採択を2002年12月までに行うよう議会と理事会に要求している(
資料6)
。
詳細は資料を参考にされたい。
また、2002 年 3 月 4 日の環境相理事会では、上記第1フェーズの政策・
措置に加えて、さらに
委員会および加盟各国が次ぎの点についても一層の努力を払うよう督促している(
資料 9)。環
境理事会は、現在手を打ちつつある政策・
措置の追加だけでは不充分と見ている。この件はバ
ルセロナ欧州理事会にも報告されている。
・実現の可能性のある追加の共通・
共同の政策・
措置の検討の継続
・その他懸案となっている関連提案を進展させること
3.欧州委員会のイニシアチブ
最後に、上記伝達文書から、委員会が最近出したイニシアチブと今後予定している候補の主な
ものを挙げて参考に供したい。
・最近のイニシアチブ:
PEC 海外石油情報(ミニレポート)
・EU 域内(加盟国間)の電力・
天然ガス市場の自由化に関する指令(
段階的な競争を促し
ながら市場開放し、それによってエネルギー部門効率の向上を図る)
・域内電力市場における再生可能エネルギー源電力の奨励指令
・共同体におけるエネルギー効率改善行動計画
・エネルギー供給の安全保障に関する白書、および環境保護支援ガイドライン(
改訂)
・欧州横断ネットワークガイドラインの改訂
・エネルギー製品課税の共同体枠組再構築指令案
次期候補(
詳細な推敲が必要)
:
・再生可能エネルギーに基づく熱エネルギー生産推進のイニシアチブ
・自動車挑戦計画イニシアチブ
・軽商業車に関する自動車産業との環境合意
・120g/Km の排出目標を目指す共同体戦略に示された乗用車向けの財政措置の枠組
・植林、補植および森林経営を通じて炭素隔離強化を図る林業政策関連問題のフォロー
・事業ベースメカニズムの枠組の確立
以上、気候変動に取り組むEUの動向を、主としてその政策・
措置の面からの一瞥を試みたが、
動向の底流に関心のある向きには是非とも前出の欧州理事会議長職の結論(
資料 4、5)、およ
び環境相理事会の議事録(
資料 8、9)
の一読を勧めたい。 (TH)
(
参考資料)
1. COUNCIL, "COUNCIL DECISION of 25 April2002 concerning the approval, on
behalf of the European Community, of the Kyoto Protocol to the United Nations
Framework Convention on Climate Change and the joint fulfilment of commitments
thereunder, " OJ L130, 15.5.2002, p. 1.
2. European Commission, "EU reaches stabilisation target for greenhouse gas
emissions in 2000," Press Release, IP/02/636, 29 April 2002;
http://europa.eu.int/rapid/start/cgi/guesten.ksh?p_action.gettxt=gt&doc=IP/02/636|0|RAPID
&lg=EN&display=
3. COMMISSION OF THE EUROPEAN COMMUNITIES, "(1) COMMUNICATION
FROM THE COMMISSION TO THE COUNCIL,THE EUROPEAN PARLIAMET,
THE ECONOMIC AND SOCIAL COMMITTEE AND THE COMMITTEE OF THE
REGIONS On the sixth environment action programme of the European
PEC 海外石油情報(ミニレポート)
Community ' Environment 2010 : Our future, Our choice' ? The Sixth Environment
Action Programme - ; (2) Proposal for a DECISION OF THE EUROPEAN
PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL Laying down the Community
Environment Action Programme 2001-2010," COM (2001)31 final, Brussels,
24.1.2001;
http://europa.eu.int/eur-lex/en/com/pdf/2001/en_501PC0031.pdf
4. PRSIDENCY CONCLUSIONS, GOETEBORG EUROPEAN COUNCIL , 15 AND
16 JUNE 2001;
http://ue.eu.int/pressData/en/ec/00200-r1.en1.pdf
5. PRSIDENCY CONCLUSIONS, BARCELONA EUROPEAN COUNCIL , 15 AND
16 MARCH 2002;
http://ue.eu.int/pressData/en/ec/69871.pdf
6. COMMISSION OF THE EUROPEAN COMMUNITIES, "Proposal for a
DIRECTIVE OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL
establishing a scheme for greenhouse gas emission allowance trading within the
Community and amending Council Directive 96/61/EC," COM (2001)581 final,
Brussels, 23.10.2001;
http://europa.eu.int/eur-lex/en/com/pdf/2001/en_501PC0581.pdf
7. COMMISSION OF THE EUROPEAN COMMUNITIES, "COMMUNICATION
FROM THE COMMISSION on the implementation of the first phase of the
European Climate Change Programme," COM (2001) 580 final, Brussels,23.10.2001;
http://europa.eu.int/eur-lex/en/com/pdf/2001/com2001_0580en01.pdf
8. 2413rd Council meeting -ENVIRONMENT- Brussels, 4 March 2002, 6592/02
(Press 47);
http://ue.eu.int/pressData/en/envir/69746.pdf
9. 2399th Council meeting -ENVIRONMENT- Brussels,12 March 2001, 15060/01
(Press 459);
http://ue.eu.int/pressData/en/envir/DOC.69108.pdf
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