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クリティカル分析に対応した絵本のメディア分析モデル
ク リテ ィカル 分析 に対応 した絵本 のメデ ィア分析 モ デル 川 島 佳 東京学芸大学紀要 奈 。禾日 田 正 人 総合教育科学系 Ⅱ 第 66集 平成 27年 2月 東京学芸大 学紀 要 総 合教 育科 学 系 Ⅱ 66:453-478,2015 ク リテ イカル分析 に対応 した絵 本 のメ デ ィア分析 モ デ ル 川 人** 島 佳 奈 *。 禾日 田 正 教育実践研究支援 セ ンター (2014年 9月 30日 受理 1.は ) に置 い てお り,小 中学校 で 活 用す るには学 習者 に求 め じめ に られ る前 提 知識 が 多 い 。 また対 象 とす る メデ ィアには 近年情 報機 器 の 家庭 レベ ルでの 普 及 に伴 い ,教 科情 テ レ ビや 新 聞 が 多 く,教 材 の 多様 性 の 欠 如 も問題 と 報 や情 報 モ ラル教 育 ,教 育 の情 報 化 等 が 進 め られて い な って い る。 つ ま り,対 象年齢 や対 象 とす る メデ ィア 、 る。 情 報 機 器 の 活 用 で は教 育 行 政 を中′ に ICT機 器 の し が 多様 な教材 の 開発 が必 要 であ る。 導 入 が進 み ,学 習 効 果 の 向上 や教 員 の 負担軽 減等 の 成 以 上 の 現 状 に鑑 み ,本 研 究 で は メデ ィア ・ リテ ラ 果が挙 げ 場れ て い る。一 方 で セ キ ュ リテ イ問題 や 自治 シー教 育 の教授 法 で あ る メデ ィア分析 及 び ク リテ イカ 体 間 の 教 育格 差 が生 じて い る。特 に ICT機 器 の 活 用 は ル分析 に注 目 し,カ ナ ダ・ オ ンタ リオ州 の メデ イア分 経 済的負担 が大 き く,自 析 モ デ ル を基 に,ク リテ イカル分析 に対応 した絵 本 の 治体 の 財 力 や 人材確 保 ・育 成 力が大 き く影響 す る。故 に ICT機 器 の 活 用 にのみ注 力 メデ ィア分析 モ デ ル を構 築す る。 本研 究 の 目的 は,第 した教 育 には限 界が あ り,教 育環境 に影響 され な い 柔 一 に メデ イア分析 及 び ク リテ イカル分析 を行 う こ とが 軟 な情 報 教 育 が 必 要 と され て い る。 また sNSの 普 及 で きるモ デ ルの構 築 と し,第 二 に メデ ィア分析 及 び ク や政 治 的 な情報 機 器 の 利 用 の増 加 に よ り,安 全教 育 や リテ イカル分析 の 実態解 明及 び低 年齢 の学 習者 に対応 モ ラル教 育 ,メ デ ィア ・ リテ ラシ ー等情 報 を主体 的且 した教材 開発 へ の示 唆 とす る。 つ 適切 に活 用 す る能 力 の 育 成が急 務 とな って い る。 安 研 究 の 方 法 と して は,メ デ ィア分析 及 び ク リテ ィカ 全教 育 や モ ラル教 育 にお い て は,小 中学校 にお い て も ル分析 につ い て定義 を行 い ,特 に ク リテ イカル分析 に 対 策 が講 じるれ て い るが ,こ れ は携帯 電話 の急 速 な普 つ い て先 行研 究 よ り3つ の ア プ ロー チ を定義 した。 そ 及 か ら,学 校教 育 に よる対 策 の 必要性 が社 会的 に認識 して ク リテ イカル分析 に対応 す る絵 本 の メデ イア分析 された こ とが大 きい 。 そ して メデ ィア ・ リテ ラシ ー教 モ デ ル を構 築 した。 モ デ ルの 評価 と して は,モ デ ル に 育 に関 して は ,1990年 代 よ り鈴 木 み ど り ら市 民 団体 対応 した ワ ー クシー トに よる実践 を行 い ,メ デ ィア分 FCTの 活 動 が 進 め られ ,学 術 的研 究 も数 多 くな され 析 及 び ク リテ イカル分析 の 定義等 か ら設定 した評価 基 て い るが ,教 育現場 へ の 普 及 は進 んで い な い 。 しか し 準 に基 づ く説 明的 内容分析 を行 う こ とで ,設 定 した項 2012年 よ り文 部 科 学 省 が 「情 報 活 用 能 力 Jの 育 成 を 目の 妥 当性 を検討 及 び評価 した。 掲 げた こ とか ら,行 政 にお い て も情 報 を活用 す る能力 2.メ デ ィア・ リテ ラ シ ー の 育成 が推 進 され て い る こ とが 分 か る。 また情 報 機 器 の 使用 が 低 年齢 に拡 大 して い る こ とか ら,小 中学校 にお け る メデ イア ・ リテ ラシ ーの教 育 の 必 要性 が増 して い る。 しか し既 存 の メデ イア ・ リテ ラ シ ー教 材 の 多 くは商業 的 ・政 治 的 ・歴 史的側 面 を主眼 * ** 東京学芸大学大学院教育学研究科 東京学芸大学 (1848501 小金井市貫井北町 411) - 453 - 2 1 メデ ィア・ リテ ラ シー及 び メデ ィア・ リテ ラ シー教 育 メデ ィア ・ リテ ラシ ー は イギ リス や カナ ダを始 め と 東 京 学 芸 大 学 紀 要 総 合教 育科 学系 Ⅱ 第 66集 (2015) して mcdia cducalonや medね studicsと して 多様 に行 わ めて採 用 したの は カナ ダであ る。 鈴 木 (1997)に よれ れ て い るの 国際 的 に もMcdia inお malon Litcracyと し ば,カ ナ ダは AMLの 主 導 に よ リオ ン タ リオ州 政府教 てユ ネ ス コが教 育 を推 進 して い る。 メデ ィア ・ リテ ラ 育 省が 1987年 に正 規 に ガ イ ドラ イ ン を公布 し,mcdね シーの 定 義 で は ,高 校 教 師 Batt Duncanが 創 設 した カ studicsと ナ ダ の 市 民 団 体 で あ る メ デ ィア ・ リテ ラ シ ー 協 会 高 の 国語教 育 に メデ イア ・ リテ ラシ ー教 育が組 み込 ま (Assodalonお r Mcdia L■ cracy=AML)の 定義 や メデ ィ れ ,高 校 の 国語科 の 選択 科 目にmcda studicsが 科 目と ア ・ リテ ラ シー運 動 全米 指 導者 会議 にお け る定義 が有 して新 設 され た。 そ して 1989年 に オ ン タ リオ州 の公 力 で あ る。 日本 で は ,映 像視 聴 覚 能 力研 究 の 系譜 に属 的教 育指導 ガイ ド "Ontario Ministw of Education,Mcdia す る坂 元 (1986)11の 定義 や ,鈴 木 (1997)2.(2001)31 IJteracy Rcsourcc Guldc"が 刊 行 され ,教 育 省や市民 団 の以 下 の 定 義 が有 名 で あ る。 体 に よる普 及活動 に よ リカナ ダ全土 で メデ ィア ・ リテ して導入 した。 この ガイ ドライ ンに よ り,中 「 メデ ィア ・ リテ ラ シー とは,市 民 が メデ ィア を ラシ ー教育 が発展 した。 また メデ ィア ・ リテ ラシー教 社 会 的文脈 で ク リテ ィカル に分 析 し,評 価 し,メ 育 の主 要 な教 育観 点 に,オ ン タ リオ州 は以下 の 8つ の デ イア にア クセ ス し,多 様 な形態 で コ ミュ ニ ケ ー 基本概 念 を学習活動 の前提 に据 えて い る。 シ ョン を創 りだす 力 を さす 。 また ,そ の よ うな力 (1)メ デ ィアはす べ て構 成 され た もの であ る。 の獲 得 をめ ざす取 り組 み も メデ ィア ・ リテ ラシー (2)メ デ ィアは現 実 を構 成す る。 とい う。J (3)オ ー デ ィア ンスが メデ ィアか ら意味 を読 み取 る。 鈴 木 は諸外 国 の メデ ィア ・ リテ ラ シー教 育 を踏 まえた (4)メ デ ィアは商業 的 な意味 を持 つ 。 上 で ,日 本 の メデ ィア ・ リテ ラ シ ー教 育が市 民 団体 レ (5)メ デ イアは ものの 考 え方 ベ ル で あ る 現 状 に鑑 み て 日本 の 教 育 に即 した定 義 を (イ デ オ ロ ギ ー)と 価値 観 を伝 えて い る。 行 ってい る こ とか ら,本 研 究 で は鈴 木 (1997)の 定 義 (6)メ デ ィアは社 会 的 ・政 治 的意味 を もつ 。 を用 い る。 (7)メ デ ィアの様 式 と内容 は密接 に関連 して い る。 メデ ィア ・ リテ ラ シ ー の 起 源 は,後 藤 (2004)41に (8)メ デ ィアはそれぞれ独 自の芸 術様式 を もってい る。 よれ ば 1930年 代 の イギ リ ス にお け る,文 芸 評 論 家 の 一 方 イギ リスで は,1988年 に mcdia studた sと い う形 Lcavisや Thompsonに よる 新 聞 の 比 較 や ,広 告 や大 衆 で メデ イア ・ リテ ラシー教育 の 導入 が 図 られ た。 イギ 小 説 の テ キ ス トを批 判 的 に読 む授 業 で あ る。 Lca宙 sら リスの メデ ィア ・ リテ ラシ ー教 育 に大 きな影響 を与 え の授 業 は産 業化 に伴 う大 衆 文化 の 普 及が正統 文化 へ 与 た もの と して Mastcrlllanの メデ ィア ・ リテ ラシー の 18 える影響 の 危惧 に起 因 してお り,大 衆 文化 と正 統 文化 の 原則 が挙 げ られ る。Mastcrlllanは 他 に も「構 成 され の 分 別 が 目的 で あ っ た。 鈴 木 (1997)(2001)に よれ コー ド化 され た 概 念 (rcprcscntdion)」 ば ,そ の 後 1960年 代 後 半 か る70年 代 に お い て に基 づ くメデ ィア ・ リテ ラ シー の基 本概 念 を記 した こ Matthcw Amoldに よる文 学作 品へ の 文化 的規 範 意識 に と で 有 名 で あ る。 特 に 著 書 "Teachlng Thc Mcda" 端 を発 す る cu■ urd stlldlcsの 台 頭 に よつ て 授 業 にお け (1985)5'は 教 育 者 の 映 画 文 化 へ の エ リー ト意 識 が教 る メデ ィアの活 用 が進 み ,1982年 には ドイツの メデ ィ 材 の主 流 を映画 に して い た イギ リスの メデ ィア教 育 に ア教 育 に 関す る グル ンバ ル ト宣 言 に よって世 界 的 に情 対 し,テ レビや 写真等 他 の メデ ィアに よる教授 法 を示 報 や メデ ィアヘ の批 判 的 な認 識 力 の必 要性 が示 され す こ とで ,イ ギ リスの メデ ィア教 育 の抜 本 的 な見直 し , ヨー ロ ッパ や ラテ ンア メ リカにお い て もメデ イア ・ リ , とい う記 号 論 の必 要性 を示 唆 し,新 しい教 育観 を齋 した。 テ ラ シ ー が 展 開 した。 そ して 1989年 の 子 ど もの 権 利 イギ リス にお け る高 尚文化 へ の 意識 や大 衆文化 へ の 条約 に よ り世 界 的 に子 ど もが保 護 の 対 象 か ら権利 主体 批判 ,カ ナ ダにお け るア メ リカ文化 へ の 意識等 ,各 国 とみ な された こ とで ,表 現 の 自由や ア クセ ス権 に基 づ の メデ ィア ・ リテ ラシ ーの根 底 に流 れ る意識 や 目的 は くメデ イア ・ リテ ラシ ー の必 要性 が認識 され ,メ デ ィ 異 なるが ,こ れ らの メデ イア ・ リテ ラシ ー教 育 にお い ア ・ リテ ラシ ー教 育 が世 界 的 に発展 した とい う。 また 国際 的 な メデ イア ・ リ ッチ ーメデ ィア ・ プア 問題 や構 て 共 通 す るの は ,「 メデ イア に よって伝 え られ る情報 成主 義 的教 育 へ の 移行等 か ら,当 初 は メデ ィアに対 す 「 メデ イア を ク リテ ィカル に読 み 解 く」 とい う観 点 で 、 る ク リテ ィカル思 考 のみが 中′ で あ った メデ イア ・ リ し あ る。 言 い換 えれ ば,メ デ ィアに よつて構 成 され る意 テ ラ シー教 育 は ,近 年 は メデ ィア を活 用 した コ ミュニ 味 や メデ イア に よる影響 を ク リテ イカル に読 み解 き ケ ー シ ョン能力 を含 有 す る よ うに な った 。 よ り主 体 的 か つ 適 切 に 読 み解 く とい う概 念 が メデ ィ の 意味」 及 び「 メデ ィア に よる社 会や個 人へ の 影響」 , ところで ,メ デ ィア ・ リテ ラシ ー教 育 を公教 育 に初 -454- , ア ・ リテ ラシ ーの軸 で あ る と言 える。 川 島 ・和 田 :ク リテ ィカル分析 に対応 した絵 本 の メデ ィア分析 モ デ ル 後藤 (2004)│こ よれ ば ,日 本 にお け る メデ ィア ・ リ を用 い たジャーナ リズムの側面が強 い教材が多 く,メ テ ラシー教 育 は,大 まか には視 聴 覚教 育 ,諸 外 国 を踏 デ イアを活用 した成果物 の作成に焦点 を当てる授 業実 まえた メデ ィア ・ リテ ラ シー教 育 ,情 報機 器 を活 用す 践が多 い。 ジ ャー ナ リズムの側面が強 い教材 の 多用 る職 業 訓 練 教 育 が あ る。 視 聴 覚 教 育 の 学 習 対 象 は メ は,社 会的な ジャーナ リズムヘ の要請や教育者側の意 デ イアで は な く,あ くまで メデ ィア を教 育 の 道具 と し 図に起因すると考 えられる。 メディアを活用 した成果 て用 い てお り,日 本 にお け る導 入 時 の メデ ィア ・ リテ 物 の作成 に焦点 を当てた授 業 については,メ ディアの ラシー教 育 は視 聴 覚 教 育 の側 面 が 強 か った 。 日本 にお 活用が容易 になった点や メディア ・ リテラシー教育 の い て メデ ィア ・ リテ ラ シ ー の必 要性 が 社 会的 に認 知 さ 観点 を包括 しやす い点 .メ デ ィア・ リテラシーヘ の理 れ た の は 1990年 代 で あ り,メ デ ィア ・ リテ ラ シー 教 解が浅 くと も授業が進めやす い点,ま た成果物 の評価 育 に対 す る諸 外 国 の取 り組 みが 紹 介 され ,鈴 木 み ど り を学習 の評価 としやす い点が理由であると考 える。 し を始 め とす る 市 民 団 体 等 に よっ て メデ ィア ・ リテ ラ か し教授 内容が類似 しやす い点や,AV機 器 の活用 に シー教 育 の 普 及が進 め られ た。 行政 にお い て も旧郵政 偏 りやす い点等 に留意 し,メ ディア・ リテラシー を培 省 に よっ て メデ ィア ・ リテ ラ シー の 必 要 性 が 示 唆 さ う とい う教育観点の根幹 を損 なわない授業 を行 うこと れ ,1998年 よ り開 催 され た 青 少 年 と放 送 に 関 す る 調 が重要 である。 査研 究 会 にお い て「 放 送 分野 にお け る青少 年 とメデ ィ ア リテ ラ シー に関す る調 査研 究報告書 」 を発 表 し,教 材 開発 の 委託研 究等 メデ ィア ・ リテ ラシ ー教 育 の推 進 2 2 初等中等教育での メデ ィア・ リテラシー教育 の妥 当性 を図 った 。 しか し郵 政 省 の推 進 した メデ ィア ・ リテ ラ メデ ィア・ リテラシーの基本概念である「ク リティ シー教 育 の 目的 は メデ ィア産 業 へ の理 解 で あ り,本 来 カル思考」が低 年齢 の学習者 に馴染みが少ないこと等 の メデ ィア ・ リテ ラ シ ー教 育 にお い て重 要 な「情 報 を か ら,メ ディア ・ リテラシー教育 の初等中等教育にお 読 み 解 く技 能」 を育 成す る もので は なか った 。 一 方教 ける実施 は妥 当でない とい う意見が多 くなされる。つ 育行 政 で は,学 習 指導 要 領 や教 育 の情 報化 に関す る手 引 き 6.に お い て 情 報 モ ラル の 育 成 が 示 され ,更 に教 ま り初等中等教育 にお いてメデ ィア・ リテラシー教育 の普及が進 まない背景 には,メ デ ィア ・ リテラシー教 科横 断 的 な情 報 活 用 能 力 の 育 成 が 唱 え られ て い るが 育 の基 本概念である「クリティカル思考」 の育成 に対 , メデ ィ ア ・ リテ ラ シ ー に 関 す る記 述 は な い 。 こ こで する学習者の発達段階や言語活動 へ の懸念 ,学 習時間 各 々の 定 義 に注 目す る と,情 報 モ ラル とは教 育 工 学事 の確保 の 問題や教科教育 との接続 の 困難 さ等 による 典に よれば「情報 を送 受信す る際に守 るべ き道徳」で 初等中等教育課程 にお ける メディア・ リテラシー教育 あ り,文 部科学省 の定 める情報 モ ラル とは「情報社会 の実施 へ の社 会的 な消極 性 があ る と考 える。そのた で適正 な活動 を行 うため の基 になる考 え方 と態度」で め,発 達段階及び言語活動 ,諸 外 国のメデ ィア・ リテ ある。 また情報活用 能力 とは「情報及び情報手段 を主 ラシー教育 における対 象年齢及 び 日本のメディア ・ リ 体的 に選択 し活用 して い くための個人 の基礎的資質」 テラシー教育 の実践事例 とい う観点か ら,初 等中等教 であ り,3観 点「情報活用 の実践力」「情報 の科学的 育における メデ ィア・ リテラシー教育 の妥当性 につい な理 解 」「情報社会 に参画す る態度」 をバ ランスよ く て考察する。 育成する ことを重視 してい る。 メディア ・ リテラシー の定義 よ り,情 報 モ ラルや 情報活用能力 を構成す る まず発達段階では,読 書教育の観点 よ り阪本 (19al)8, による知 的発達 ・人格適応 。社会化 の発達に対する読 「情報活用の実践力 J及 び「情報社会に参画す る態度」 はメデ ィア・ リテラシー と共通す る能力 である。 つ ま 書興味 の 発達 を挙 げる。阪本 は 17個 の ジャンルの 図 書 へ の興味 を年齢 によって分類 し,大 きく絵話期 (4 り表現 は異 なる ものの教 育行政 において もメディア ・ リテラシー教育 の重要性 が認識 されて い る と言 える。 ∼ 6歳 ),昔 話期 (6∼ 8歳 ),童 話期 (8∼ 10歳 ), 物語期 (9∼ 15歳 ),文 学期 (13歳 ∼),思 想期 (17 尚現在 も総務省 はメデ ィア・ リテラシー教育 を推進 し 歳 ∼)の 6つ に分類 した。特 に童 話期では内容の因果 てお り,教 材開発や実践例の紹介を行 ってい る。 関係 の認識や文章へ の共感 ・批判 を行 うことがで き 7 , , 教育現場 で は,教 育行 政 に よる メデ ィア・ リテ ラ 現実社会ヘ ロが向 き,物 語期では物象の世界の構造や シー教育の公的な指 針が存在せず ,教 育者 のグ リラ的 その作用 を知的に追 求する ことが可能になると説明 し な取 り組み として実践が行われてお り,小 中学校では ている。故 に,小 学校 中学年 ・高学年に相当する童話 社会科や総合的な学習 ,国 語科 の時間に行われる。 ま た 日本の メデ ィア・ リテラシー教育はテ レビや新聞等 期では メデ ィア・ リテラシー におけるクリテ ィカル思 - 455 - 考に関す る取 り組みを行 うことが可能であると考えら 東京 学 芸 大 学 紀 要 総合教育科学系 Ⅱ 第 66集 (2015) れ る。 結果 メデ ィアに よって幼 児 に強化 が働 き,暴 力行 為 を 次 に言 語 活動 で は,土 山 ら (2012)9'は 幼稚 園 か ら 見 なか った幼 児 は暴 力行為 を行 わ ず ,暴 力行 為 を観 た 中学校 まで の 言語 活動 にお け る生 産 的方 法 の 学校 教 育 幼 児 には暴 力行為 が 見 られ た。 また暴力 行為 に対 して での 有効性 を示 す 中で ,Roscbrock(2008)の 示 す社 会 賞 を得 る場 面 を見 た幼 児の方 が よ り暴力 的行為 を行 っ 的実践 力 と しての 読 み の 多層 モ デ ル と学 習指導 要領 に た。 この Banduraの 研 究 に よ り代 理 的学 習 効 果 が示 さ 基 づ く小 中学校 の 教科 書 内 の 言 語 活動 の 指導 内容 を ま れたが ,こ こで は映 画 に よって幼 児 に暴 力行為 か ら齋 とめ て い る。土 山 らの発 達段 階 に伴 う言語 活動 にお い され る賞 ・罰 が保 存 され ,幼 児 自身の行動 に影響 を及 て ,小 学 校 低 学 年 の 「 挿 絵 の 効 果 J,中 学 年 の「 伏 線 ぼ した点 に注 目す る。 この 実験 よ り幼 児期 にお い て物 か ら山場 へ 」「 カ メ ラ ワ ー ク (視 点 )」 「 類 比 ・対 比 」 語 の 内容 の 保存 が可 能 で あ り,物 語 や登場 人物 の 行動 高 学 年 の 「 物 語 の 構 造 (冒 頭 と結 末 の 比 較 )J「 象 徴 性 」「視 点 の 効 果」,中 学校 の「作 者 。文種 よる設定 や 等 が幼 児 の 行 動 に 影 響 を与 え る こ とが わ か る。 つ ま , り,幼 児教 育 や初 等教 育等 で扱 われ て い る絵 本が ,強 構 成 ,表 現 技 法 J「 視 点 の 効 果 Jは ,メ デ ィア ・ リテ ラシ ー教 育 の 重 要 な教 育 的観 点 で あ る。故 に初 等教 育 化 や保 存 に よって幼 児 の 思考 や行動 基準 に影響 を与 え にお け る言語 の 成熟 度 は ,メ デ ィア ・ リテ ラ シー教 育 アの情 報 の 受信 は受動 的 であ る こ とか 島,絵 本 に よ り にお け る ク リテ ィカル思 考 に十 分 に対応 で きる こ とが 齋 され る情 報 につ い て意識化 す る機 会 を持 つ こ とは少 分 か る。 な い。故 に,メ デ ィア ・ リテ ラシ ー教 育 にお い て絵 本 最 後 に,諸 外 国 の メデ ィア ・ リテ ラシ ー教 育 の 学 習 .に る可能性 があ る と言 える。しか し幼 児期 にお ける メデ ィ は意義があ る教材 とな り得 る と考 える。 者 の 年 齢 に注 目す る と,三 森 (2012)Ю よれ ば ,デ ンマ ー クの 幼 児教 育 及 び低 学 年 の 学 習 ,1年 生 か ら始 点 で あ る。 メデ ィア ・ リテ ラ シー教 育 の 導入 が 見 られ まる ア メ リカの ク リテ ィカル ・ リー デ ィ ン グな ど,諸 る国語 や道徳教 育 で は教材 と して絵 本が活 用 され る こ 外 国 の ク リテ ィカル思 考 を養 う教 育 は低 年齢 か ら行 わ とが 多 い。 この こ とか ら,絵 本 を メデ ィア ・ リテ ラ れ て い る。 シー教育 の 教材 とす る こ とで ,教 科教 育 の 発展 と して 以上 よ り,初 等 中等教 育 での メデ ィア ・ リテ ラシ ー 教 育 の 実施 は可 能 で あ る と言 える。 3つ 目は ,教 科教 育 にお い て絵 本が活 用 されて い る メデ ィア・ リテ ラ シー教 育 を取 り入 れ る こ とが 容易 に な る と考 える。 ところで ,絵 本 は そ の アナ ロ グ性 よ り情報教 育 の教 3.分 析 対 象 と して 絵本 を選定 した理 由 材 と して不 適切 ,ま た 時代 錯 誤 であ る と考 え られや す い。 まず絵 本 が情 報教 育 の教材 と して不適切 で あ る と 本研 究が絵 本 を分析 対 象 と した理 由 は 3つ あ る。 1 つ 目は絵 本 の 有す る情 報量 が低 年齢 の 学 習者 や初 学者 の 学 習 に適 して い るた めで あ る。 学 習 の 対 象 とす る メ 影響 力が 強 い テ レビや イ ン ター ネ ッ ト,携 帯 電話 で あ デ イアの 情 報 量 に注 目す る と,対 象 を映 像 とす る場 され る と考 え る。 絵 本 が メデ ィア で あ るか 否 か は メ い う批判 は,一 般 的 に メデ ィア と して認 識 され るの は り,絵 本 は メデ ィア と して認識 が され に くい ため にな 合 ,情 報量 が 多 く分析 停 止 に陥 りやす い。 一 方絵 本 は デ イアの 定 義 に よ っ て 異 な るが ,メ デ ィア・ リテ ラ 静 的 な情 報 に よって構 成 され てお り,初 学 者 に も対応 シー教 育 が情 報 を伝 達 す る全ての 媒体 をメデ ィア と し しやす く,ま た 難易 度 が低 い ため ,学 習者 の 幅 を低 年 て い る点 か ら,絵 本 も メデ ィアで あ る と言 え る。 故 齢層 へ 広 げ る こ とが 可 能 で あ る。 2つ 目は,絵 本 は メデ ィアで あ る とい う意識 が され に,絵 本が情 報教 育 で教 材 と して扱 われ る こ とに問題 は な い と考 える。 そ して ,絵 本 が時代錯 誤 であ る と言 に くい こ とか ら,ク リテ ィカル思 考 を培 う上 で 学 習効 う批 判 は,印 刷 産業 が衰 退す る中紙 媒体 は時代 に即 し 果 が得 や す い と考 え た た め で あ る。 Mastcrlnanは ,メ デ イア ・ リテ ラ シ ー教 育 が ク リテ ィカル な教 育 の価 値 てお らず ,情 報教 育 に適 して い な い とい う考 えに依 拠 す る と考 える。確 か に安 全教 育 や モ ラル教 育 で は実生 を生 むため には 各学 習 者 の 人生経験 に根 付 い た もので 活 に即 した教 育 を行 うた め ,テ レ ビや イ ン ター ネ ッ あ るべ き と して い る。 こ こで Bandura Aの 代 理 的学 習 ト,携 帯 電話 を扱 う こ とが 多 い 。 しか し著作 権 問題 や に 関す る研 究 を考 え る。 Bandura Aは 子 ど もの模 倣 行 ハ ー ド́ウェアの 普 及 の 問題等 か 島,紙 媒 体 は教 育 にお 動 に よる強化 の 実証 の ため に,登 場 人物 が 人形 を攻 撃 い て依 然 重 要 な メデ ィアで あ る。 また野「](2012)H' す る シー ン を含 む映 画 にお い て ,登 場 人物 が 暴 力行為 に よる メデ ィア に対す る興 味 の ア ンケ ー トよ り,小 学 に対 して 賞 を得 る場 合 と罰 を与 え られ る場 合 ,攻 撃 的 生 で はテ レビに次 い で書籍 へ の興 味が高 く,書 籍 に対 な場 面 を含 まな い 場 合 を観 た幼 児 の 行 動 を比 較 した。 しての興 味 は未 だ衰 えて い な い こ とが 分 か る。 絵 本 に - 456 - 川島 ・和 田 :ク リテ ィカル分析 に対応 した絵 の メ 本 デ ィァ分析 モ デ ル つ い て も,野 口に よる ア ンケ ー トと阪本 の研 究 の比 較 よ り,小 学校低 学 年 は絵 本 に対 して 大 きな興 味 を示 し ている。 以 _Lよ り,絵 本 は依 然 影響 の 力 あ る メデ ィァ で あ り,メ デ ィァ ・ リテ ラ シー教 の 育 教材 と して有用 で あ る。 4.先 行研 究 に お け る問題 の所 在 4.1 日本 の メ デ ィァ・ リテ ラ シー教 育 に 関 す る 先 (2011)1'に よ リメデ ィァ・ リテ ラシー教 育へ の 有用 性が示 されてい るが,分 析 の指針 となる手法が 存在せ ず,メ デ ィァをク リティカル に分析するとい う概念の み をさす ことが多 い。 これ らの現状 よ り ,メ デ ィア分 析 及 び ク リテ ィカル分析 を教 材 と して扱 うには ,メ デ イア分析 及 び クリテ ィカル分析 の 実態 を明 らかに し,メ ディア分析 モ デルの汎用性 の向上及びク リティ カル分析 を行 うことがで きる分析 モ デルの 構築が必 要 である。 行研 究 メ デ ィァ ・ リテ ラシー教 育 にお け る 学術研 究 は,視 聴 覚教 育 を根底 とす る研 究 や諸 外 国の メデ ィア ・ リテ ラシー教 育 に 関連 した研 究 ,記 号論 的 な ア ロー プ チに よる研 究等 が な され て い る。具 体 的 な 研 究 と して は坂 元 (1986)や 吉 田 に よる映像 を主 と した 小 学校 の 実践 や カ リキ ュ ラム の 開 発 を始 め ,中 橋 ・ 水 越 (2003)12. に よる メデ ィァ ・ リテ ラ シーの構 成要 の 素 研 究 ,水 越 の メデ ィァ ・ リテ ラ シーの 階層性 や学 モ 習 デ ル,実 践 等 の 研 究 ,後 藤 (2009)お 'に よる教 材 パ ッヶ ― ジの 開 発等 が 挙 げ られ る。 また 棚 橋 ら (2007)"に よる初 等 教 育 の 教 科 教 育 との 対 応 や ,望 月 (2006)l〕 らが 示 す カ リキ ュ ラム な ど,初 等 中等教 へ の 育 導入 に 向 けた学 術 研 究 もな され て お り,教 育 実 践 に つ い て も河 野 ら (2011)l・ の 中学 校 へ の 情 報 科 設 置事 業 を始 め ,行 政 は 中学校 にお け る情報 教 育 を推 進 して ぃ る。 初 等教 育 にお い て も坂 元 (1986)や 吉 田 な どに よる 授 業 実践 当 初 よ り,小 学校 教 育 にお け る メ デ ィァ ・ リテ ラシ ー の 授 業 実践 は少 なか らず存在 し,近 年 で もメデ ィァ ・ リ テ ラシー教 育 の授 業 実践 が 行 われ てい る (三 宅 (2008) 1・ な ど)。 しか しヵ リキ ュ ラム や授 業 実践 は 未 だ研 究 段 階 にあ り,教 材 の 開発 も不 十分 で あ る。 教 育現 場 は ,メ デ ィァ ・ リテ ラ シー教 育 自体 が教 育 者 に依 拠 した活動 の段 階 に あ り,教 師 の 質や学校 ,地 域 社 会 な どの 様 々 な要 因 に よっ て授 業 の 質や 目標 ,習 熟 度 が 大 き く異 な る。 また メデ ィァ ・ リテ ラシー 教育 の 対 象 とす べ き学 習者 の 年齢 が 低 年齢 に広 が ってぃ る こ とか ら,幅 広 い学 習者 に対 応 す る こ とが で きる多様 な教 材 が 求 め %れ て い る。 ところ で メデ ィア ・ リテ ラ シー の 学 習 で は , メデ ィ アの 理 解 に 関 して メ デ ィァ分 析 に よ る授 業 実践 が 多 い。 51に て 詳 し く述 べ るが ,メ デ ィァ分析 は メ デ ィ ア ・ リテ ラ シーの 学 術 的研 究 にお る け 明確 な定義 は な され てお らず , ヵナ ダ ・ ォ ン タ リオ州 にて い 用 られ て い る メデ ィァ分析 モ デ ル (51図 表 1)も 授 業 にお け る活用 で は汎用 性 に欠 け る。 また メデ ィァ 分析 にお け る一 手 法 で あ る ク リテ ィカ ル 分 析 に つ い て も,和 田 -457- 4 2 絵本 を用 い たメデ ィァ・ リテラシー教育 絵本 によるメデ ィア ・ リテラシー教育の先行研究 と して,内 藤 (2006)● )は 大 学 で の メ デ ィァ・ リテ ラ シー教育の授業実践 を基に物質的側面及び 流通的側面 か ら絵 本 をメディア分析 し,絵 本 のメディア ・ リテラ シー教材 と しての 可能性 を示 した。 内藤 の研 究 をメ デ イア分析 モ デル (51の 図表 1)に 当てはめると , テクス ト及びオーディァンス の側面 を概 観 し ,生 産の 側面の流通について分析 している。内藤の 研究ではテ クス ト面 の分析や具体的な分析 モ デルの 提示等は行わ れてお らず ,絵 本 の教材 と しての可能性の 示唆に留 ま り,具 体的な学校教 育 を想 定 して い ない。故にメデ ィ ア ・ リテラシー教育 にお ける絵 本 の活用 を促 進するに は,具 体的な教授方法や教材 を示す必 要がある。 次に絵 本によるメデ ィァ・ リテラシー教育におい て 参考 となる実践事 例及 び先行研究 を紹介す る。 まず かながわメディア ・ リテラシー研究所 は 著書「畳 とメ デ イア・ リテラシー」20,に お いて『ぁお くん ときぃ ろ , ちゃん』 で創 る授 業」及び「『 もうひとっの うさぎと かめ』 を見るJと い う絵本 を用いたメデ ィァ ・ リテラ シー教育実 践 を紹 介 している。 「『あぉ くん と きい ろ ちゃん』 で創 る授業」 とは,千 切 り絵 を用いた 抽象的 な絵 本である『あお くん と きぃ ろ ちゃん の 』 挿絵 と文 を分 離 させ ,一 方か ら他方 を創造する演習 を行 う授業 実践である。 つ まリー方 のグルー プには文のみの 絵本 を,も う一 方 の グルー プには絵のみの絵本 を渡 し,文 の グルー プは文の内容 に合わせて 挿絵 を描 き,絵 のグ ルー プは絵 に合わせて物語 を考える。 成果物の完成後 互 い に成果物 を見せ 合 い,ま た原作 と比較 するとい う 授業で あ る。 また,千 切 り絵 に消極的 な学 習者 には , 絵本の続 きを小 説 と して創作 させ てぃ る。 次 に 『 「 も うひ とつ の うさぎとか め』 を見 るJは 平成 18年 度総 務省「青少 年 の ためのメデ ィア リテラシー教材 Jの ひ とつ で あ る「 うさぎとかめ 」 を題 材 と した授 業であ る。授業内容 は うさぎとかめ に関する学習者のメ ディ ア史や,登 場 キャラ クターのステ レオタィプ ,物 語 の F I I I I I 東 京 学 芸 大 学 紀 要 総合教育科学系 Ⅱ 第66集 (2015) I I I の公式 におけるメディア分析 は コ ミュニケー シ ョンに 語 内 の 条件 分 岐 を変 更 した場 合 や 自身が物 語 に介入 し た場 合 の 結 末 の 変化 の 予 想 な どを行 って い る。 おけるチ ャ ンネルの分析 をさすが,要 素 の位置関係や I 視 点 や主題 の 変化 ,作 品 の 違 い に よる 内容 の 変化 ,物 I I I 相関関係 にお いて現代 のメデ ィアに十分に対応で きな い とい う問題がある。他 にも批 判的言説分析 を確 立 し 介 す る。 三 森 は絵 本 を活 用 した情 報 分析 能力 育成 の一 た Norrnan Fairc10ughや 政治 コ ミュ ニ ケ ー シ ョン研 究 環 と して ,ク リテ ィカル な思 考 を用 い た授 業 実践 を紹 における言説分析 を行 う大石裕 など,各 研究の 目的に I 次 に三 森 (2012)の 「 テ クス トの批 判 」 の 観 点 を紹 I I I I I I 介 してお り,以 下 の観 点 は メデ ィア ・ リテ ラシ ー教 育 I I 即 してメディア分析 の研究がなされてお り,メ デ ィア 分析 は内容分析や メデ ィア言説分析 と考える こともで にお い て も大 変重 要 な観 点 で あ る こ とか ら,教 材 開発 I に活用 で きる と考 える。 I きる。 これ %の メディア分析 に対する取 り組みを受け I I I なぜ この よ うな結果 になるの か。 て,岡 井 はメディア分析 の事例研究が メディアの内容 ② この よ うな結果 に至 らない ためにはど うすればよ かつたのか。 に閉 じた ものではな く,よ り広範囲 を研究 の対象 とし てい ることか ら,メ ディア分析 を「 コンテ ンッの制作 ③ テクス トの 中に論理的矛盾や問題 はなかったか。 者やオ ー ディエ ンス,ま た メデ ィアそれ 自体の特性 ④ 登場人物 の とった行動 は本当に正 しか ったの か。 あるい はメディアが置かれた様 々な社会的 ・文化的状 別 の行為 は考 えられなかったの か。 況 をとらえる可能性 を含 んだ もの」 と記述 して い る。 ⑤ 自分だった らどの よ うに行動するか。 この記述 を参 考に,本 研究 ではメデ ィア分析 を ⑤ 主人公の対応や言動 は最適 と言 えるのか。主人公 I ① . 「 メデ ィアの内容 を始め制作者やオーディエ ンス , の対応や言動で善 い点 はどん なところか。悪 い点 メディア 自体の特性 ,メ ディアの社会的 ・文化的 状況などを多角的に捉 え,分 析する取 り組み」 は どんな ところか。 ⑦ テ クス トに書 かれてい る考 えは本 当 に正 しいの か。 別 の考 えはあ り得 ないのか。 ③ もし,登 場人物が別の対応や行動 をとった ら,ど と定義する。 また岡井 は教育的観点か ら,考 察 の美醜 や正解へ の固執ではな く,以 下 をメディア分析の 目標 として述べ てお り,本 研究にお いて もメデ ィア分析 の の よ うな結末になるか。 ⑨ 目的 とす る。 テクス トの 内容 は,実 社 会にお い て どの よ うな意 「 個 々の コンテ ンツの分析が 自分 を取 り巻 く日常 味 を持 つ のか。 5.メ 5.1 的な事 象か ら,対 人関係や社会を問 い直す契機 と なることこそが重要で ある。J 一方 ,メ ディア ・ リテラシー教育におけるメディア分 デ ィア分 析及び クリテ ィカル思考 析 では,カ ナダ・オ ンタリオ州 の 8つ の基 本概念 (2 1)と メデ ィア分析 モ デル (図 表 1)が 用 い いれるこ メデ ィア分析 メディア ・ リテラシー教育では,社 会学 における言 とが 多 い。 メデ ィア分析 モ デルは,ス コ ッ トラン ドの 説分析や内容分析等厳密 な意味 でのメディア分析 に比 べ ,メ デ ィアを分析す る分析活動 自体 をさす。特 にカ ナダ・オ ンタリオ州 の指導書ではメデ ィア分析 モ デル (図 表 1)を 用 い ることが 多 く,ま た Marshall McLuhall メデ ィア教 育専 門家 Eddお Dtk(1989)に よって 開発 され,ス コ ッ トラン ド・ フィルム評議会に提出された 「 メデ ィアの三 角形」 を原型 と したモデルで ある。 メ の メデ ィア論 におけるメデ ィア分析 や Mastcrlllallの 授 業実践 にお ける メデ ィア分析 も存在 する。 しか し学術 デ イア研究の三角形モデルと も言 い,メ ディア研究 を 「テ クス ト」「ォーデ ィエ ンス」「生産 。制作 Jの 3つ の領域か らまとめ,メ ディア研究 の分野 を項 目として 研究 にお ける メデ ィア分析 の明確 な定義 はない。そこ い る。 このモ デルは授業にお いて直接用 い られること で,先 行研究 を参考 にメデ ィア分析 を定義 し,更 にメ もあ り,カ ナダのメディア・ リテラシー教育の指導書 デ イア分析 モ デルの現状 を述べ る。 の 一 つ で あ る メディア ・ リテラシーが メデ ィア研究の系譜に属す ることか ら,メ デ ィア研究におけるメディア分析の定 義 について 岡井 (2009)Jの 記述 を参考 にまとめる。 "Scan面 ng Tcに 宙 豆On“ の 日 本 版 で あ る 鈴 木 ら (2003)の 「 ス キ ャニ ン グ・ テ レビジ ョン 日本 版 :テ ィーチ ングガイ ド」22で は,メ デ ィア ・ リテラ シー教育の授 業内容や学習活動 ,評 価方法につい て説 古 典 的 な メ デ ィ ア 分 析 の 定 義 を記 述 した の は 明 して い る。 同書 ではメデ ィア分析 モ デルを用 いたメ Lasswcllで あ る。Lasswcll(1948)は , コ ミュ ニ ケ ー デ イア分析 の授業 も紹介 されてい るが ,同 書 における シ ョン研究 にお い て LasswcⅡ (1948)の 公式 を示 し,公 式内に メデ ィア分析が記述 されてい る。Lasswdl(1948) -458 - メディア分析 モデルの活用方法 とは,教 師が授業で指 導すべ き分析 の観点 としてメデ ィア分析 モ デルを示す 川 島 ・和 田 :ク リテ イカル分析 に対応 した絵 本 の メデ ィア分 析 モ デ ル 「 に留 ま り,具 体的な手法や分析項 目の説明 はなされて ンツ,メ ッセ ー ジな どを分析 ・解釈 ・評価 す るス キル いない。 また分析 の程度 に関 して も 3領 域や各項 目の や能力 の こ と」 であ り,ア ウ トプ ッ トにお け る行動 や 分析 の深 さは問題 とせ ず ,分 析 内容が 3領 域 を網 羅 し 態 度 で はな く,主 体 的 な行動 や態 度 に至 るための学 び てい ることに重 きを置 い てい る。 また,そ もそ もカナ の 中 身 や 過 程 に焦 点 を当 て る もの で あ る。 故 に,メ ダの教 師 は学士終 了後 に 2年 の研修 を経 なければ メ デ イア ・ リテ ラシ ー教 育 で は ク リテ ィカル思 考 にお け デイア教 育 を行 うことが出来ず ,カ ナダのメデ ィア教 る主 体性 や意欲 に比 べ ,学 び 自体 に よ り重 きを置 い て 育は教師 のメデ ィア教 育へ の十分 な知識や理解がある い る と言 える。 ことが前提 であ り,教 師に大 きく依拠 して い る。その 6.ク リテ ィカル分析 ため,既 存 の 日本の学校教育 にお いて導入 を可 能 とす るために必要 な簡易性や汎用性 に欠ける。 6.1 クリティカル分析の定義 クリテ イカル分析 とは,ク リテ ィカル思 考に基 づ く 分析 のアプローチの概念であ り,学 術的な定義はなさ ・ 教 育 ・ 読み解 く技能 ・′ とヽ 白 勺り 1´ な ン ・ .l去 の経 Fl ll‖ ス li,'子 ・利用 クリテイカルに考察 ・評価する ことで,メ デ ィア と定義す る。定義 よ り,ク リテイカル分析 とは言 い換 ・ メデ ィアの 所 為 。経営 ・ 関 i奎 法 えればクリテイカル思考 を用 いてメデイアを読 む分析 ll l 活動 であ り,ク リテ ィカルにメディアを読む とい う概 図表 1 オ ンタ リオ州 の メ デ ィア分析 モデル (鈴 木 (1997)) 5.2 「ク リテ イカル分析 とは, メデ ィアを主体的且 つ を多角的且 つ客観的に捉 える試 みである。J ・ 市1イ 1: ・ 生 ,■ 現場 の 仕組 み ・ lt市 」 ・ 流 唾・ 販 売 ・テ ク ノロジ`一 れてい ない。そ こで本研究では書籍や論文 を参考に 念は日本 における読書教育に も存在する。批判読 み と は 岡田 (1972)お )に よれば「読み手 の判断や評価が行 われるときに批 判読み といわれる。 自己の考えや規準 メデ ィア・ リテラシーにお けるク リテ ィカル 思考 と比 較 し,よ しあ しを判断 し評価す る読 み」 であ り , 読解 を超 えた内容 の価値や真実性 の評価 ,盛 られた情 クリテ イカル思 考 または批判的思考 は,メ デ ィア・ 報 の信頼性や妥当性 の検討 ,文 芸文にお いては形象化 リテ ラシー の基調 とす る姿勢 であ り,培 う能力であ の過程やプ ロッ ト,主 題 の評価 の検討がなされなけれ る。 しか し,ク リテ イカル思 考 は論理的思考 にいて も ばならない とされる。 また以下の 用 い られ,単 なる批判 的思考ではない とい う共通部分 (1)実 を基 に しない一般化が行われてい る点を見つ け は有するものの,数 多 くの定義が存在す る。その中で も多 くの研 究 に引用 され るのが Ennisの 定義であ る。 Ennお (1985)の 定義 とは「批判的思考力 は,何 を信 何 をなすべ きか の判断 じ ク リテ イカル思 考 には知識や スキル等 の認知的側面 と,態 度や偏向へ の '。 内省である Enlllsに よる情意的側面がある とされ,評 価 に関 して は認知 的側面 で は sATと い う学 カ テ ス ト が,情 意的側面では平 山 る (2004)2つ (2)情 報源が唯一つで他 を完全に無視 して い る点 を反 省す る事。 , に焦 点 を当てた合理 的で反省 的な思考」である (道 田 2003)お 出す事。 の批判判的思 考 (3)原 因を一つだ けに返す叙述状態 を見抜 く事。 (4)コ トバ が どの文脈 で使用 されて い るか を認識 し , 違 った文脈では違 った意味になる ことを理解する 事。 とい う 4点 に読 み手が注意 をするべ きであると述べ て い る。 また,宮 元 ら (1996)2つ は著 書 にお い て,ク 尺度や廣 岡の批判的思考志向性尺度がある。 また平山 リテ イカル思考における原因帰属 へ の意識 の重要性 を ら (2004)は ,批 判 的思考尺度が論理 的思考 へ の 自 、 亡 覚,探 究′ ,客 観性 ,証 拠 の重視 ,を 因子 として規定 指摘 してい る。 これ らの批 判読みにおける観点及び三 森 (2012)に よるテクス トの批半Jの 観点,ク リテイカ するとして い る。 ル思考 の定義 より,ク リテ ィカル分析 を行 う上での視 ところで,村 上 (2009)25,に よればメデ ィア・ リテ 座 を以下の よ うに定義する。 ラシー教育 におけるクリテ ィカル思 考 とは「対象 のあ 「 クリテ イカル分析 では,ク リテ イカル思 考 を基 ら捜 しや非難 といった ことでは な く,メ デ ィアを介 し 調 と し,一 般化 に伴 う事実 関係や情報源 の信頼 て様 々なかたちや様式 に構成 されて い る情報や コンテ 性 ,因 果関係 の客観的評価 ,異 なる文脈 における - 459 - 東 京 学 芸 大 学紀 要 総合教育科学系 Ⅱ 第 66集 (2015) 考 える。「『あお くん ときい ろ ちゃん』 で創 る授業」及 び「『 もうひ とつ の うさぎと かめ』 を見る」 の授業実践 では,学 習者 による物語 の の取 り組 み 変化 ,原 因帰属 に留意 して情報 の考察及 び評価 を 行 う。」 (42)を 6 2 改変や,条 件分岐 の変化 ,視 点や主題 の変化 をもた ら す倉1造 的な学習活動 が行われていた点 に注 目する。 ま の方法 を明確 にする必要があ る。そ こで クリテイカル 分析 の 観点 が取 り入 れ られて い る実践事例 か らクリ た,三 森 の テ クス トの批判 の 観 点 クリティカル分析 のアプローチ法 の設定 クリテ イカル分析 を実際に行 うためには アプ ローチ (42)│こ おけ る ② ,④ ,⑤ ,⑦ ,① の5つ の観点 は読者 の 自由裁量 に よる創造 的 な学習活動 であ る。 これ らの取 り組 み を ティカル分析 のアプ ローチの方法 を考察する。 まず , 21に 記 した Lcavisや Thompsonに よる授業 は,複 数 のテキス トを比較 して批判的に読 む とい う取 「当該 テクス トを基 に創造す る手法 Jと ま とめる。 以上 をまとめる と,ク リテ イカル分析 の手法 として り組 みであつた。後藤 (2009)に よる授業実践 にも見 られるように,複 数 の メデ イアによる同 じ内容 のテク 以下の 3つ の学習方法 を抽出す る ことがで きた。以上 の学習方法 に対応 してアプ ローチ法 を命名 し,定 義す ス トを比較 し,各 メデ イアにおけるテ クス トの重要性 る。 や表現等 の違 い をクリテ イカルに分析す る試みは,メ デ ィア・ リテラ シー教育 における主要 な実践 である。 ①他のテクス トやメデイア と内容を比較す る方法 ②当該 テクス トの表現 を言語化 し,詳 細に分け,意 識 そ こで,当 アプ ローチ を「他 のテ クス トやメデ イアと 化 して内容 を吟味する方法 ③当該 テクス トを基に創造す る手法 内容 を比較す る方法」 とす る。 ,制 作 者 に よる情報 の 意 図的な取捨 選択 を学習者が意識す る方法 として,情 報 次 に Masterrnan(1985)は 机 の/後 ろに/座 って/ま っす ぐ/カ メラ/を /見 てい る /白 人の /中 年 の /男 性 の /ニ ユー ス キ ヤ ス ターの /ミ 。 デ ィア ム ・ ク ローズ ァ ップ シ ョッ ト。 /彼 は/き ちん と の 統 合 (syntagmttic)関 係 及 び 系 列 (paradigmatic) 関係 の 区別 に注 目す る方法 を示 して い る。具体 的 に した/ダ ー ク/ス ー ツを/着 て/青 い/ネ クタイを/締 め て い る。 は,テ クス トにおける情報 を過不足 な く言語化す るこ とで,記 号間の結合 を表 し,言 語化 によつて作成 した 傾11 統 合 関係 (Masterman(1985)(宮 崎 訳 2010)) 文章 を文節や単語 に よつて区切 つた上で (例 1),登 場人物 や事物 ,表 現技法等 の主要 な単語 に類似 した記 号 を記述す る (例 超 クローズ ア ツプ クローズ ァ ップ ミデ イアム・ クロー ズアップ 。ショット 2)こ とで,多 様 な表現か ら情報が 選択 された ことを理解す る試みである。 Masterlllanに よる統合 ・系列 関係 に よる情報の取捨 ・ 選択 の意識化 に類似 した取 り組 みはカルチュラル ス タデ ィー ズの授業実践 に も見 られ る。井 口 (2003)28, ミデイアム ショット ロング シ ヨツ ト 超 ロング・ シ ヨツ ト は記 号論 的分 析 と して統 辞 構 造 例2 (syntac● c structurc) 黄色 人種 超高齢 褐色 人種 高齢 白人 中年 黒人 若年 子 ども レポ ー ター エ クスポ ー ト ニュースキャスター イ ンタ ビュア ー 芸能人 赤 ちゃん 市 民 系列 関係 (Masterman(1985)(宮 崎訳 2010)) に注 目して言語化 した文章 を受動態化 し,更 に名詞化 3)を 紹介 した上 で,日 本語 に合わせて 受動態化及 び名詞化 を使役的表現 に置 き換 え,動 作 主 や当事者 の視点 の客体化 や行為 の主体 の省略 ,中 立化 原形 す る試み (例 受動態化 が暴動 の 中で 11人 を撃 ち殺 した 扁早 E:Iコ 11人 のア フ リカ人が殺 され た 行為 の主 体 の省 による情報 の 内容や印象 の変化 を理解する学習 を挙げ 名詞化 てい る。 これ らの取 り組 みの 目的 は,学 習者 が無意識 に受信 して い た情報 を意識化する ことで,情 報 の取捨 リ フ リカ人の [≡ イ 中立化 例 選択や制作者 の意 図等 を認識す ることである。故 に こ れ らの取 り組 み を「当該 テ クス トの表現 を言語化 し 3 受 動 態 化 。名 詞 化 に よ る変 化 (井 口 (2003)) , 詳細 に分 け,意 識化 して内容 を吟味す る方法」 とまと める。 最後 に,か ながわ メデイア・リテラシー研究所 によ る授業実践「『あお くんときいろちやん』 で創 る授業」 及 び「『 もうひ とつ の うさぎとかめ』 を見るJに おけ る学習活動 ,三 森 (2012)に よる「テクス トの批判」 ①単純比較 アプローチ 単純比較 アプ ローチ とは,当 該 メデ イア・ テクス ト を他のテクス トや他の メデ イアにおけ るメデ イア・ テ クス トと比較す る ことで,当 該 テクス トを客観的 に考 察 ,評 価 しよう とす る試みである。具体的 には,共 時 分析 は同時期 に発信 された複数 のメデ イア ・テクス ト ー 460- 「 川 島 ・和 田 :ク リテ イカル 分析 に対 応 した絵 本 の メデ イア分析 モ デ ル を比較す る単純 比較 ア プ ロー チ ,通 時分析 は 時期 の 異 下 の よ うに設定する。 な る複 数 の メデ ィア ・ テ クス トに よる 単 純 比 較 ア プ ロー チ とい える。 ≪オーデ ィエンス面》 オ ー デ ィエ ンス とは,メ デ イア ・テ クス トを読 む 個 々の人間及び集団であ り,項 目類 [個 人的要素]及 ②意識化 アプローチ を言語化 して意識化す ることで,当 該テ クス トを客観 び [社 会的要素]か ら成る。個人的要素 とはメディア か ら情報 を受ける個人 ・集団 レベ ルの人 間に関す る項 的に考察 ,評 価 しようとす る試 みであ る。意識 化 と 目類であ り,社 会的要素は国民や社会など個人的要素 は,言 語化 による言語 表現 を文節で分け,文 節内の主 に属す る項 目に比べ て大 きな対象に関す る項 目のまと 要な単語 の対義語や類義語 を挙げる,又 は使役表現 の 受動 ―能動関係 を入れ替 えて表現することで,当 該テ ま りである。各項 目類 における詳細項 目は以下の よう 意識化 アプ ローチ とは,当 該 テクス トの 内容や表現 に設定す る。 クス トの表現以夕れこ採用 される可能性のある表現 を認 知 し,無 意識 的 に処理 して い た情 報 や認識 して い な 年齢 かった情 報 を意識す る試み を指す。 尚,こ こでの「意 識化 Jは パ ウ ロ 。フレイ レに よる意識化 とは異 な り 読 み解 く技 能 … オ ー デ ィエ ンス に求 め られ る識 字 , … メ デ イアが 対 象 とす る オ ー デ イエ ンスの年齢 マ イノリテ イの視座 に立 つ ことや抑圧 ―被抑圧 を意識 する ことを 目的 とする ものでは ない。 能力 ー ジ ェ ン ダ ー に よる オ ー デ イエ ンス ジ ェ ン ダー の 特徴 …オ ー デ ィエ ンス が 絵 本 を読 む際 に ③創造的 アプローチ 創造的 アプ ローチ とは,テ クス ト内に登場す るキャ 影響 を及 ぼす心理 的 な要素 ラクターの言動や出来事等 を創造 し,当 該テクス トと 比較する ことで,テ クス トを客観的に考察 ,評 価する ・対 象 メデ イア に関す る オ ー デ ィエ ンス の 文 ・文化 … 試みである。 化 や背景 とな る文化 ・教 育 /利 用 … 教 育 な ど絵 本 の利 用 がみ られ る物事 7.ク リテ ィカル分析 に対応 した絵本 のメデ ィア分析 ≪生産 。制作面 》 生 産 。制作 とは,メ デ イアや メデ イア に よる情 報 が モデル 7.1 制作 され ,オ ー デ ィエ ンスの 元 へ 届 くまでの 過程 にお モデルの構築方法 モデルの汎用性 を高めるには,教 育現場 での活用に 即す必要が あ る こ とか ら,先 行研 究 5,7,Ю 2■ 2)2]“ い て 関 わ る企 業 及 び産 業 と して の メデ イアの側 面 や , 社 会制 度 と しての メデ ィアの側面 であ り,項 目類 [生 , か ら教 育的観点 を抽 出 した。そ してメデ イア分析 モデ ル (51図 表 1)の オー ディエ ンス,生 産 。制作 ,テ 産 ・制作 ]及 び [商 業 ・社 会 的市1度 ]か ら成 る。項 目 は以下のように設定す る。 クス トの3領 域 の項 目と共 に分類 を行 い,項 目類 とし て類似す る項 目を まとめた。 また用語 の定義 で はメ 生 産現場 の 仕組 み デ イア分析 モデルの 項 目の 内容や Mastcnnan(1985), … 絵 本 が 制 作 され る 仕 組 み や 制作 に関 わ る産 業 な ど 鈴木 (1997)を 参考 とした。 … 絵 本 の制作 にお いて行 われ 規制 て い る規 制 や市1限 7 2 クリテ ィカル分析に対応 した絵本の メデ ィア テ クノ ロ ジー 分析 モデルの定義 … 絵 本 に利 用 され て い る科 学 的技 術 クリテ イカル分析 に対応 した絵本のメデイア分析 モ デル (図 表 2)と は,絵 本 の メデ ィア分析 を行 うこと を目的 と した メデ ィア分析 モデ ルで あ る。 また ク リ 商業 ・社 会 的制度 市場 の特徴 /占 有 … 市 場 の 特 徴 や 占 有 状 況 ,企 業 ティカル分析 に対応 した項 目を有するため,ク リテ イ カル分析 に も活用する ことがで きるモデルで ある。 モ デルは「 オー デ イエ ンス」「生産 。制作 J「 テ クス ト」 の 3つ の領域か ら成 る。構成す る項 目類及び項 目を以 -461 - 間 の 所 有等 流 通 /販 売 … 絵 本 の 流通 や販売 にみ られ る特徴 東 京 学 芸 大 学 紀 要 総 合教 育科学系 Ⅱ 《テ ク ス ト面 》 テ ク ス トとは メデ イア ・ テ クス トの こ とで あ り, メ デ ィア の 生 産 物 全 て を さ し,項 目類 [概 観 情 報 ]と [内 容 ・ 表現 ]か ら成 る。概 観情 報 とは,絵 本 を概 観 した際 に読 み 取 れ る情 報 に関す る項 目を ま とめ た項 目 類 で あ り,内 容 ・表現 は絵 本 の 具体 的 な内容 に関 わ る 項 目類 で あ る。 尚 ,ク リテ イカ ル分析 に対 応 した項 目 とは項 目類 [内 容 ・表現 ]を さす 。但 し,ク リテ イカ 作品 /オ マージユ作品) ・価値観 ・イデオ ロギ ー ー 分析対象 にお いて表現 され て いる,ま たは内在 し て い る価値観 や イデ オ ロギ ー (作 者 の 意図 /ス テ レオ タイプ/風 習 /宗 教 /思 想 /諺 /ジ ヤー ナ リズム/ り 武刺 など) ・表現技法 … 分析対象 にお いて使用 されて い る表現や技術 (意 味 /コ ー ド/レ トリ ック ル分析 にお け る項 目は選択 す る学 習 内容 に よつて設定 しやす い項 目が異 な る こ とか ら,あ くまで項 目の 観 点 描 画 テ クス ト … 絵 に よる情 報 の特徴 や効 果 (色 彩 / タ ッチ /大 きさな ど) ・構成 。作者情報 … 絵本 を構成す る要素やそ の役割 … 作者 に関す る情報 (年 齢 /′ l■ 別 /出 身 /職 業等 ) │… ・ ス トー リー /物 語 り … 主題 (作 品 を通 して の テ ーマ )・ 設定 (内 容 にお け る時代 や フ イクシ ヨンな どの設定 )。 キ ヤラ ク ター 格 /人 種 /階 級 な ど)/構 造 /ジ ヤ ンル (物 語 全体 の構 造 とジ ヤ ンル)・ プ ロ ツ ト (出 来事 との (性 別 /′ l■ 因呆 関係 )/視 点 (語 り手 の立 場 や主 人公 となる者 の視 点 )等 物語 の 内容 ・他 の テ キ ス トとの 関係 … 他 の テ クス トと当該 テ ク ス トとの 関係 や違 い な ど (作 品 内 の テ ク ス ト/原 作 /同 じ原 作 を題 材 と した (メ 8.実 践 によ るモデ ルの 評価 8 1 モデ ル を用 い た分析 の実践 ク リテ イカ ル分析 に対 応 した絵 本 の メデ イア分析 モ デ ルの項 目の 妥 当性 を評価 す るため ,モ デ ルの項 目に 対応 した以下 の 5種 類 の ワ ー クシー トを作 成 し,評 価 実験 を行 っ た。 ワ ー ク シ ー トは (3)-1の み 2枚 か ら 成 り,他 の ワ ー クシ ー トは全 て 1枚 で あ る。 ー デ イエ ンス面 及 び生産 ・ 制作 面 (1)オ (2)テ ク ス ト面 の概 観情 報 (3)テ クス ト面 の 内容 ・表現 (3)1 単純 比較 アプ ローチ に よる ク リテ イカル分析 (3)2 意識 化 ア プ ロー チ に よる ク リテ イカ ル分析 (3)3 倉1造 的 アプ ロー チ に よる ク リテ イカ ル分析 以下分析実験及 びワー クシー トの詳細 について説明す る。 (1)オ ーデ イエ ンス面 及 び生産 ・ 制作面 ォ ー デ ィエ ンス面 及 び生 産 ・制作 面 の項 目に即 して メデ イア分析 を行 うワー クシー トで あ る。分析 者 は大 学 生 2名 及 び大 学 院 生 6名 で あ る。絵 本 一 般 を分析 対 象 とす る メデ イア分析 を行 うため ,特 定 の作 品 を分析 ・ ス トー リー/物 語 り ・他 のテ キ ス トとの 関係 ・価値観・ イデ オ ロギー ・ 表現技法 ・生産現場 の仕組み ・ 規制 。テ クノ ロジー 図表 2 デ イア言語 による表現 や比喩表現 など) に よる質問項 目の 設定 が可 能 で あ る こ とを示 す に留 ま り,分 析 にお い て全 て の項 目を網 羅す る必要 は ない 。 言 語 テ ク ス ト ー 言 語 に よる情 報 の 特 徴 や効 果 (文 体 /フ ォ ン ト/色 彩 /配 置 な ど) 第 66集 (2015) 市場 の特徴/占 有 流通/販 売 ク リテ ィカル 分析 に対応 した絵 本 の メデ ィア分析 モデル -462- 川 島 ・和 田 :ク リテ イカル分析 に対応 した絵 本 の メデ ィア分析 モ デ ル 対 象 と して用 い な い 。 尚 .絵 本業 界 に関す る分析 者 の ワ ー クシー トの 質問項 目にお い て [他 の テキ ス トとの 既 有知識 を調 べ るた め に出版 社 を答 える質 問 を 1つ 付 関係 ]を 除 い た理 由 は ,2枚 目の ワ ー クシ ー トにお い カロして い る。 て他 の テ クス トとの比較 や 関係 につ い ての 質問項 目が 設 け られてお り,2枚 目の ワー クシー ト自体 が [他 の テ クス トとの関係 ]の 項 目の役割 を果 た す と考 えるた (2)テ クス ト面 の 概観 情 報 テ クス ト面 にお け る項 目類 [概 観情 報 ]に 即 した メ デ イア分析 を行 うワー クシ ー トで あ る。 回答者 は大 学 めであ る。 また ,ワ ー クシー トの最 後 には感想 を記 述 す る質問項 目が設 け られて い る。 生 1名 と大 学 院 生 1名 で あ る。 [言 語 テ ク ス ト]及 び 分析 対 象 は福 音館 書店 の「三 び きの こぶ た 」 と講談 [描 画 テ クス ト]の 項 目に つ い て は,テ クス トの 要 素 社 の「3び きの 子 ぶ た 」,ま た は福 音 館 書 店 の 「三 び を列挙 した上 で 各要 素 の 特徴 や役 割等 を記 述す る よ う きの こぶ た 」 とポ プ ラ社 出版 の「三 び きの こぶ た」 で 留意 した。 これ は要 素 の 抽 出 を通 して ,分 析 者 が絵 本 あ る。 講 談社 グル ー プ 及 びポ プ ラ社 グル ー プの回 答者 を構 成す る要素 につ い て 「言語 」 及 び「絵 Jと い う大 は各 2名 ず つ で あ る。 きな括 りで俯 厳す る こ とで ,後 の [構 成 ]に 関す る項 目の 回答 にお け る考 察 の 手 が か りと しての役 割 を兼 ね るこ とが で きる よ う意 図 した もので あ る。 尚 ,分 析 対 象 は小 学館 出版 の 「 さん び きの こぶ た Jで あ る。 (3)-2 意識化 ア プ ローチに よ る ク リテ ィカル 分析 テ クス ト面 にお け る項 目類 [内 容 ・ 表現 ]に 対応 し た,意 識化 アプ ロー チ に よる ク リテ イカル分析 を行 う ワー クシー トで あ る。 回答者 は大 学 生 3名 であ る。 具 体 的 な手法 と して は,テ クス トを,Mぶ manの 手法 に (3)テ クス ト面 の 内容 ・ 表現 テ クス ト面 の 項 目類 [内 容 ・表現 ]に 属 す る項 目は よ り最 大 3つ の 文 で 言語化 して文 節 ご とに 区切 り,系 ク リテ ィカ ル 分 析 に対 応 して い る。 故 に 62に お い 列 関係 が認 め られ る文節 に系列語 を記述 して意識化 し て設定 した ク リテ イカ ル分析 の 3つ の アプ ロー チ 法 に た上 で ,質 問項 目に回答 して ク リテ イカル分 析 を行 う。 よる 3種 類 の ワー ク シ ー トを作 成 した。 また ク リテ イ 分析 対 象 は福 音 館書 店 出版 の「三 び きの こぶ た」 で カ ル分析 の 教 材 を作 成 す る上 で 教 育 者 が 困難 を感 じ あ る。 また ,意 識化 を行 うテ クス トを絵 本 の裏 表紙 と る.分 析 の 質問項 目設定 にお い て は,宮 元 ら (1"6)30 し,裏 表紙 に描 か れ て い る絵 につ い て分析 す る。分析 が教 材 例 に挙 げ て い る,「 原 因帰 属 」 とい うク リテ イ 対 象が作 品内 の 描画 テ クス ト 1つ で あ る こ とか ら,分 カル思 考 の視 座 を用 い た。 原 因帰属 とは 出来事 の 原 因 析 にお け る「 他 の テ クス ト」 には作 品本体 の他 の テ ク や人間の行動 な どの理 由 を推 測 す る試 みで あ り,本 研 ス トを含 む と考 える。 究で は「何 故○ ○ なの か」 とい う物事 の 原 因や 因果 関 係 に言 及す る質 問 を作 成す る こ とで ,原 因帰 属 を意識 した問題 とな る よ う留 意 した。 (3)-3 創 造 的 ア プ ローチに よる ク リテ ィカル 分析 テ クス ト面 にお け る項 目類 [内 容 ・表現 ]に 対応 し た ,創 造 的 ア プ ロー チ に よる ク リテ イカル分析 を行 う (3)-1 単純比 較 ア プ ローチ に よ る ク リテ ィカル 分析 ワ ー ク シ ー トで あ る。 回 答 者 は大 学 生 2名 で あ る。 テ クス ト面 にお け る項 目類 [内 容 ・ 表現 ]に 対 応 し ワー クシ ー トは左 佃1に お い て内容 の整理 を主 旨 とす る た,単 純比較 ア プ ロー チ に よる ク リテ イカル分析 を行 メデ イア分析 を,右 側 にお い て ク リテ イカル分析 を行 うワ ー ク シ ー トで あ る。 分 析 者 は大 学 生 4名 で あ る。 う構 成 とな ってお り,ク リテ イカル分析 にお い て は 具体 的 な分析 方 法 と して は,1冊 目の メデ ィア分析 の かながわメデ ィア ・ リテラシー研究所 の教育実践「『 も ワ ー ク シ ー トを回答 した 後 も う 1冊 の 絵 本 を読 み ,2 うひとつ の うさぎとかめ』 を見る」における視点を主 冊 の絵 本 を比 較 して ク リテ イカル分析 を行 う。 1枚 目 人公 と対立するキャラクター に変 える「視点の変換」 の ワー クシ ー トで は ,項 目類 [内 容 ・表現 ]に 属す る 三森 のテクス トの批 判 の観点 [他 の テ キ ス トとの 関係 ]を 除 い た [ス トー リー /物 分 だった らどの よ うに行動す るかJ及 び「③ もし,登 語 り],[価 値 観 ・ イデ オ ロ ギ ー],[表 現技 法 ]の 各項 場人物が別の対応や行動 をとった ら,ど の よ うな結末 目に対 応 した 質 問項 目が合 計 6つ 設 け られ て い る。 2 になるか」の創造的活動 を採用 した。故にワー クシー 枚 目の ワ ー ク シ ー トは ,内 容 ・表 現 の 単 純 比 較 ア プ トの左側 はメデ イア分析 を行 うための,対 象 に関する テクス ト面 の項 目類 [内 容 ・表現 ]に 属する項 目に即 ロー チ 法 の 項 目に対 応 した 計 8つ の 質 問項 目か ら成 り,2冊 の絵 本 間 の 質問項 目に関す る相 違 点 を記 述 し そ の 原 因 。理 由 を考 察 す る形 とな って い る。 1枚 目の , -463- , , (42)に おける「⑤ 自 した 4つ の質問項 目か %成 り,右 倶1は 倉U造 的 アプ ロー チ によるクリテ イカル分析 を行 うため「視点 の変換」 東京 学 芸 大 学紀 要 総合教育科学系 Ⅱ 第 66集 (2015) 適切 に行 われ た と判 断す る。 そ して各項 目にお いて妥 当 な回答が な され て い るか ,ま た項 目が メデ イア を理 の 質 問項 目 2つ ,[キ ヤラ ク ター の 言 動 の 創 造 ]ま た は [キ ャラ ク ターヘ の ア ドバ イス ]か ら一 方 を選択 し て答 え る 2つ の 質問項 目,更 に選 択 に関 わ らな い 共通 解 す る上 で有効 で あ るか を考 察す る こ とで設定 した項 目につ いて検討 す る。 の 1つ の 質問項 目か ら成 る。 尚 ,72に お い て 構 築 した モ デ ル の 項 目以外 にお いて 有用 な回答が な され た場合 ,項 目の 内容 につ いて 具体 的 な手順 と して は , まず左 側 の 質問項 目に よつ て メデ イア分析 を行 う こ とで作 品 の 内容 を整 理 し,右 側 にお い て [視 点 の 変換 ],及 び [キ ヤ ラ ク タ ーの 言 再検 討 す る余地が あ る と判 断す る。 動 の倉1造 ]ま た は [キ ヤラ ク ターヘ の ア ドバ イ ス ]の どち らか一 方 を選択 し,回 答す る こ とで ク リテ イカ ル 8 2.2 ・ ク リテ イカ ル分 析 を行 う (3)テ ク ス ト面 の 内容 分析 を行 う。 表現 の 8.2 8 2.1 ク リテ ィカル分析 の結果 の評価 方 法 (3)1単 純 比 較 ア プ ロー チ に よる ク リテ イカ ル 分 析 の 2枚 目の ワ ー ク シ ー ト,(3)2意 識 化 ア プ 分析 結 果 の検 討 と評価 方 法 ロ ー チ に よ る ク リテ イ カ ル 分 析 ,(3)3創 造 的 ア プ メデ ィア分析 の結 果 の検 討 ロー チ に よる ク リテ イカ ル分析 の右 側 部分 の 分析結 果 メデ イア分 析 を行 う (1)オ ー デ イア ンス 面 及 び生 の評価 方法 につ い て述 べ る。 産 。制作 面 及 び (2)テ クス ト面 の概 観 情報 ,(3)1単 純 比 較 ア プ ロー チ に よる ク リテ イカ ル分析 の 1枚 目の ク リテ イカル分析 には分析 結 果 の 評価 に関す る先行 研 究 が な い こ とか ら,分 析 結 果 よ リク リテ イカ ル分析 ワ ー ク シ ー ト,(3)3創 造 的 ア プ ロ ー チ に よ る ク リ テ ィカル分析 の左 側 部分 の分析 結 果 の 評価 方法 を述 べ る。 が行 われ たか否 か を判 断す るには評価 の 指標 を設定す る必 要 が あ る。 そ こで 本 研 究 で は ,61に お い て定 メデ イア分析 で は ,5.1で 述 べ た とお り,カ ナ ダ・ オ ンタ リオ州 にお け る メデ イア分析 モ デ ル を用 い た授 め た ク リテ イカ ル分析 の 定義 及 び分析 の視 座 よ り ・分析 結 果 の 内容 が ,メ デ イア を主 体 的且 つ ク リ 業 にお いて , メデ イア分析 の結 果 に関 して 3領 域 間や 項 目間 の 分析 の 深 さは問題 とせ ず ,分 析 内容 が 3領 域 テ ィカ ル に考察 ・評価 し,メ デ イア を多 角 的且 つ , 客観 的 に捉 え よう と して い る。 を網羅 して い る こ とに重 きを置 い て い る。 つ ま り,本 来 メデ イア分 析 は [テ クス ト][生 産 ・制 作 ][テ クス ・分析 結 果 の 内容 が ,ク リテ イカ ル思 考 を基 調 と ト]す べ ての 内容 を同時 に扱 って い る。 しか し本研 究 果 関係 の 客 観 的評価 ,異 な る文 脈 にお け る変化 で は ク リテ イ カ ル 分 析 を行 う [テ クス ト]面 の [内 原 因帰 属 に留 意 して情 報 の考 察 及 び評価 を行 う。 容 ・表 現 Jの 部分 を切 り離 した分析 を行 った点 ,[テ クス ト]面 の [概 観 情 報 ]の 分析 には分析 対 象 が必 要 とい う 2つ の 評価 基準 を設定 す る。 そ して ,こ れ ら の 2つ の何 れか の規 準 を満 たす こ とで ク リテ イカル分 で あ り [オ ー デ イエ ンス ][生 産 ・制作 ]の 面 と同時 に 析 が適切 に行 われ た と評価 す る。 ヮー クシ ー トを作 成す るの は合 理 的 で は なか った点 か ら,[テ クス ト]面 が分 離 した メデ イア分析 とな って 8 3 し,一 般化 に伴 う事 実 関係 や情 報 源 の 信 頼性 ,因 分析 対象 とす る絵 本 の選 定理 由及 び説明 本研 究 の モ デ ル を用 い た分析 の 実践 で は,「 三 匹 の 子 豚 」 を分析 対 象 とす る。「三 匹 の子 豚 」 は ,イ ギ リ い る。 そ の ため 3領 域 を網 羅 して い るか とい う観 点 で メデ イア分 析 の 評 価 を行 う こ とは難 しい 。 そ こで メ ス で発 祥 した物 語 で あ り,物 語 自体 は 18世 紀 以前 よ ニ り存 在 して い た と され る。 ウ オ ル ト・ デ イズ ー に デ イア分析 を行 った項 目に関 して は, メデ イア分析 が 行 われ たか否 か につ い て ,51に お いて 定 め た メデ イ よって映 画化 もな され た世 界 的 に有 名 な物語 で あ り 日本 にお いて も複 数 の 出版社 に よつて 出版 されて い る ア分析 の 定 義 及 び分析 の 目的 よ り , , ・ メデ イア の 内容 を始 め市1作 者 や オ ー デ イエ ンス , , メデ イア 自体 の 特 性 ,メ デ イアの社 会的 ・ 文化 的 ロ ングセ ラー作 品 で あ る。 状 況 な どを多角 的 に捉 え よ う と して い る。 ク リテ イカ ル分析 の対 象 と して「 三 匹 の子豚 」 を選 定 した理 由 は 3つ 挙 げ られ る。 1つ 目は,「 三 匹 の 子 ・個 々の コ ンテ ンツの 分析 が 自分 を取 り巻 く日常 的 な事 象 か ら,対 人 関係 や社 会 を問 い 直 す 契 機 と な ってい る。 豚 」 は世 界 的 に有名 な作 品 で あ り,多 くの人が前提 知 識 と して絵 本 の 内容 を想 定 で きる こ とか ら意識 化 され とい う 2つ の 評価 基準 を設定 す る。 そ して ,分 析 結 果 に対 す る説 明的 内容 分析 を行 い ,分 析 結 果 が これ ら の 2つ の何 れか の 規準 を満 たす場 合 に メデ イア分析 が -464- 難 い ため ,ク リテ イカル分析 の 対 象 と して妥 当 であ る と考 えた。 2つ 目は出版社 に よつて主題 や 内容 が異 な り,比 較 にお いて 有用 で あ る と考 えた ためで あ る。 3 川島 ・和田 :ク リテ イカル分析 に対応 した絵本のメデ ィア分析 モデル つ 目は,「 3び きのかわいい オオカ ミ」 とい うオマー な家 を造 る とい う 目的意識 を持 って レンガの 家 を造 っ ジュ作品が存在す るためで ある。オマー ジュ作品があ てい る点 ,2匹 の 兄豚 が家 の 完 成速 度が遅 い弟豚 を侮 ることで,単 純比較 アプ ローチだけではな く,意 識化 る場 面 が あ る点 ,2匹 の 兄豚 が 狼 に追 い か け られた 後 アプ ローチによってキャラクターの描かれ方 を分析 し か ら各家 に 関す る場 面 へ と繋 が る点 ,小 学館 同様順 番 た上で比較す る,ま た創造的アプ ローチでは原作 とオ マー ジュ作 品のキャラクター を入れ替 える等 ,多 様 な に弟豚 の 家 に逃 げて行 く点 ,羊 の 変装 を して子豚 達 を 編そ う と試みる狼 を子豚が嘲 る場面がある点,鍋 の 中 発展が可能である。 これ らの理 由よ り,「 三 匹の子豚」 身が湯ではな く油である点 ,狼 が反 省せ ず単 に豚に懲 を本研究の実践 にお ける分析対象 とした。 りて逃げて い く点 ,3匹 の子豚が音楽 を嗜む描写があ 実際 に評価実験 に用 い た「三 匹の子豚 Jの 4冊 の絵 本につい て説明する。 まず ,福 音館書店「三びきの こ る点が挙げ られる。 ぶた」 は原作 をよ り忠実 に再現 した ことを売 りとして 出版 され,改 訂 を重 ねて2013年 に刊行 された絵 本 で 1967年 に出版 された絵 本 で あ り,瀬 田貞 二 が訳 し ある。文章 を平田昭吾が,絵 を成田マ キが担 当 してお 山田三郎が絵 を担当 して い る。 リアルなタッチで描か り,巻 末に作者 のプロフィールが掲載 されてい る。文 れた絵 が特徴 であ り,全 体 的 に 自 と橙色 を基調 とす 章 は平仮名 と小学校 1年 生の初期段階で習 う程度 の極 る。 文章 は漢数字以外す べ て平仮 名 で書 かれて い る。 僅かな漢字で記述 され,会 話文が多 い。絵柄 は若干陰 また裏 表紙 に「狼 を食べ る豚の絵画 と,服 を着て遊具 影 をつ けなが ら様 々な色 を用 いて描かれてお り,曲 線 を持 つ 6匹 の子豚が絵画 を見て い る様 Jが 描かれて い 的な柔 らか い印象がある。 また対 象年齢 に関する記述 , ポプラ社 の「三 び きの こぶた 」 は1985年 に初版が る。更にイギ リスの昔話 で あるとい う記述があ り,作 はないが ,解 説文 を巻末に掲 載 して い る。分析対象内 者 のプロフ ィールが巻末 に掲載 されてい る。対象 とす で教 育的観点 を示 して い るのはポプラ社 のみで あ り る年齢 を,読 み 聞かせでは3歳 か ら,自 分 で読 む場合 ポ プラ社 の 同 シ リーズ の特徴 で あ る。登 場 キ ャラク は小学校初級程度 としてお り,全 国学校 図書館協議会 ター はおか あ さんぶた,一 ばん としうえの こぶた,二 選定図書 に指定 されて い る。 ばんめの こぶ た,三 ばんめの こぶ た,お おかみであ , 次に,小 学館 の「 さんび きの こぶ た」 は対象年齢が る。内容 の特徴 としては,一 番 目の豚 は怠 け者 ,二 番 3∼ 5歳 であ る。 作 者 に 関す る記述 はな く,全 体 的 目の豚 は食 い しん坊 ,三 番 目の豚 は働 き者 とい うキャ に簡 潔 で文章 は全て平仮名で書かれてい る。登場 キャ ラクター設定がある点 ,成 長 を理由に母親か ら自立 を ラクター はお 母 さん豚 , とん こちゃん,ぶ ぅちゃん ころ ちゃん,お おかみであ る。 内容 の特徴 と しては 促 されて三匹の子豚が渋 々家 を出る点 ,子 豚間で家 を 母親が子豚達 を家か あ出す動機が 自立 の促進に留 まる 麓,二 番 目の子豚 は山の 中腹 ,三 番 目の豚は山頂 に決 点,子 豚の兄弟関係が不明である点 ,三 匹の子豚の家 める点,三 匹の子豚 の家が同時に立て られるのでは無 造 りが同時並行である点 ,狼 が子豚 を襲 う動機が単 に く1番 目か ら順 に建設 される点 ,一 番 目の子豚が軽 く 捕 まえるためである点 ,襲 われた子豚が他 の子豚 の元 へ 逃 げる表現があ り狼 に子豚が食べ られない点 ,3番 て簡単 だ とい う理由で藁 の家 を建てた点 ,二 番 目の豚 が一番 目の豚の家の評価 を行 った上で木 の家 を建てた 目の子豚が狼 に林檎狩 りとお祭 りに誘われる点,狼 は 点 ,三 番 目の子豚は他の二 匹の子豚 の家を評価 した上 最終的に子豚 に食べ られず改心す る点が 挙げ られる。 で最 も頑丈な家 を造 る と決めた点 ,1番 目の子豚か ら 順 に下の子豚の家へ 逃げる点 ,狼 が 2番 目の子豚 の家 , 建 てる場所 につい て相談が な され,一 番 目の子豚 は , 講談社 の「 3び きの 子 ぶ た Jは 2011年 に出版 され た,対 象年齢 を 4歳 か ら 6歳 とす る絵本 で ある。文章 を福川祐司が ,絵 を佐藤悦夫 ・片 山径子 。中村光毅が 家 を壊 そ うとす る手段 が体 当た りとハ ンマー であ る 担当 して い る。基本的に右側 に大 きな絵があ り,左 側 点 ,リ ンゴの 本での出来事 は三 匹 の 自主的 な外 出が に文 章があ る。 絵柄 はデ ィズニ ーの「 3匹 の子 ぶたJ きっかけであ り,三 匹の子豚対狼 とい う形 になってい であ り,会 話文が多 く,登 場 キャラクターはい ちばん 、して い ない点が挙げ られる。 る点,狼 が改′ と を壊す手段が体当た りである点,狼 が三番 目の子豚 の 上のおにい さん,二 ばんめの おにい さん,お と うとぶ ここで,各 ワー クシー トにおける分析 のね らい に注 た,お おかみである。 内容 の特徴 としては,3匹 の子 目すると,(1)オ ーディエ ンス面及び生産 ・市1作 面は 豚 の 自立が 自主的であ る点 ,物 語以前 は3匹 の子豚が 絵本全般 に関するオー デ ィエ ンス と生 産 ・制作 に関す 遊 んで暮 らしていた点 ,1番 目の兄豚は理由 もな く藁 る分析がね らいであ り,特 定 の分析対象 を設定すべ き を選んで い る点 ,2番 目の兄豚 は早 く遊 びたい とい う ではない。 理由で木の家 を手抜 きして造 っている点 ,弟 豚 は丈夫 - 465 - (2)テ クス ト面 の [概 観情報 ]で は,[作 者情報 ] 東 京 学 芸大 学紀 要 総合教育科学系 Ⅱ 第 66集 (2015) るキャラクター性 が客観的に明 らかな作品 に比べ ,主 要なキヤラクター について異 なる視点 を有する作品が の項 目にお いて,絵 本本体 に作者 に関す る記述がなさ れてい れば,そ の部分 を記述 に留 まる分析 が行われる 妥当である。そ こで各絵本 のキヤラクター像 に注 目す る と,小 学館 の「 さんび きの こぶた 」 にお ける ころ ことが予想 で きる。故 に作者 に関する詳細 な解説 を有 する ものは除 く必要 がある。 また作者が記述 されてい ちゃんや講談社 の「 3び きの子 ぶたJに おけるお とう とぶた,ポ プラ社 の「三び きの こぶた」 における三ば ない場合 の 回答 を吟味す る必要がある。 以上 より,テ クス ト面 の [概 観情報 ]の 分析 では小学館 の「さんび んめの こぶたは皆勤勉 であ り機転 が きくとい う善 の表 現 が なされ ている。 これに対 し福音館書店 の「三びき きの こぶた」 を分析対象 とした。 (3)1 単純比較 アプ ローチ によるクリテ イカ ル分 の こぶた」 は三番 目の子豚 の描写 にお いて狼 を出 し抜 いた うえ狼 をツヒ 発す る発言 を し,更 に狼 を食べ て しま 析 では,内 容 や表現 の違 いに着 目した分析 をね らい と するため,分 析対象間 の違 いが多 く,分 析者 の着眼点 となる要素が豊富 な もの を分析 対象 とす るべ きであ ぅ,と い う生 きる上 での知恵 としてずる賢 さが描かれ てい る。 また 1番 目と 2番 目の子豚 に関 して は,福 音 る。故 に単純比較 アプ ローチによるクリテ イカル分析 で は福音館書店 の「三 び きの こぶ た 」,講 談社 の「3 館書店 の「三び きの こぶた」及 び小学館 の「さんびき の こぶた」 では性格 などに関す る描写がなされてい な び きの子ぶたJ,ポ プラ社 の「三び きの こぶた」 のい ず れか の 2作 品 を対象 とした分析 を行 うこととした。 いが,講 談社 の「 3び きの 子 ぶ た」 及 びポプ ラ社 の 「三び きの こぶた」 では怠 け者や食 い しん坊 といった ここで ,福 音館書店 の「三び きの こぶた」 は原作 に近 く,他 の 3作 品 には見 られ な い「死 Jを 扱 う こ とか 設定 がある。更 に,福 音館書店 の「三び きの こぶた」 は狼 にお いて も「約束 を守 る」 とい う面 においては子 島,福 音館書店 の「三び きの こぶた」 を一 方 の比較対 象 とした。 また比較対象が異 なる ことで分析結果 に生 豚 に比べ て善 の面 を持 つ。対 して他 の 3冊 は狼に関す る善 の面 の描写 はなされてい ない。 これ らのキヤラク じる違 い を考察す る ことが重 要 であると考 えた。そ こ で,単 純比較 アプ ローチ による クリテ イカル分析 では ターの特徴 か ら,福 音館書店の「三びきの こぶた」で は物語 の本筋 のキヤラクター性 以外 に もキャラクター 分析対象が福音館書店 の「三び きの こぶた」 と講談社 の「 3び きの子 ぶたJ,福 音館書店 の「三 び きの こぶ た」 とポプラ社 の「三び きの こぶた」 の 2種 類 の分析 を異 なる視 点 で分析す る余地があ る と考 えた。故 に 創造的 アプ ローチによる クリテイカル分析では,福 音 を行 うこととした。 館書店 の「三び きの こぶたJを 分析対象 とした。 , (3)2意 識化 アプ ローチ による クリテ イカル分析 で は,ア プ ローチの対象 を本文 の 内容等 の言語テ クス ト とす る と,系 列関係 を考 える際 に他 の表現 を意識す る ことで,分 析 の過程 にお いて (3)3創 造的 アプ ロー 9.実 践結 果 の分 析 と考 察 9 1 分析結 果 の質 的分析 と評価 各 ワ ー クシー トに即 して実践 にお け る分析 結果 を説 チによるクリテ イカル分析 と重複す る部分が出 る可能 性 がある。他 のアプ ローチ と共通す る部分 を持 つ こと 明的内容分 析 し,ク リテ イカル分析 モ デ ル に対応 した 絵 本 の メデ イア分析 モ デ ルの 各項 目の検 討 及 び評価 を は,本 来意識化 アプ ローチによるクリテ イカル分析 を 行 う場合何 の問題 もないが ,本 研究 では他 の クリテイ 行 う。 カル分析 にお い て も同 じ物語 を分析対象 として分析 を 行 うことか ら考察が不十分 となる可能性があ る。故 に 。 (1)オ ーデ イエ ンス面 及 び生産 制作面 《 ォ ーデ ィエ ンス面 ≫ 本研究 では描画テ クス トを分析す ることとした。そ こ で制l作 者が最 も情報 を取捨選択 した描画 テクス トであ ォ ー デ ィエ ンス面 にお け る メデ イア分析 の全 体 的 な 印 象 は ,「 絵 本 の オ ー デ イエ ンス」 とい う概 念 の形 成 ることか ら分析対象 の候補 として各絵本 の表紙 と裏表 紙 を比較す る と,福 音館書店 の「三び きの こぶた」 の には,絵 本 に関す る個 人 の メデ イア経験 が大 き く影響 す る とい う こ とで あ る。 メデ イア経験 が メデ イア像 の 裏表紙 のみ本文 と関係 のない キヤラクターが描かれて お り,独 自性 を有 して いた。 この ことか ら,裏 表紙 の 形 成 に影響 を与 える こ とは想像 に難 くない が ,絵 本 に お け る読 みの形 態等 につ い て は特 に回答者 の環境等 に 描画 テクス トだけではな く本文 の内容 を包括 した意識 化 を行 うことがで きる と考 え,分 析対象 に選定 した。 よ り限定 され ,偏 った オ ーデ イエ ンス観 を齋す こ とが (3)3倉 1造 的 アプ ローチによるク リテイカル分析 で 分 か った。 は,視 点 の変換 の学習 を行 うため,登 場す るキャラク ター を多角的に捉 える必要 がある。故 に,本 文 におけ -466- 項 目類 [個 人 的 要 素 ]に お け る [年 齢 ]の 項 目で へ は,回 答 内容 が オ ー デ イエ ンスの 読 み の形態 の理 解 川島 ・和田 :ク リテ ィカル分析 に対応 した絵本の メデ ィア 分析 モ デル に大 きく影響 されてお り,多 様 な読み を理解す る回答 者は幅広 い年齢 をオ ー デ ィェ ンスの対象 としてぃた。 これは読みの形態 へ の理解が メデ ィァ経験 に 影響 され ることか ら,絵 本 の メデ ィァ経験 の 豊富 さや 興味が オーデ イエ ンス像 をよ り具体的且 つ 多様 に した と え 考 られる。オー ディェ ンスの分析 において読みの形 の 態 理解は [年 齢 ]以 外 の項 目において も分析 の着眼点 と なるため,実 践 では学習者間の メデ ィァ経験の差 を埋 めるため に学習者間の意見交換 を図る必要が ある。 [ジ ェ ンダー]の 項 目では,ジ ェ ン ダーによって嗜 好が異 なる とい う回答が最 も多 く見 られたが ,「 聞 き 手の成長環境 によって物語 りについての理解 とか物語 についての発想 も違 う」 とぃ ぅ発達速 度に伴 う物語の 理解 ・解釈 の程度及び着眼点の違 いゃ,「 読み手のイ メージは女性 ,聴 き手 は男女問わない児童 Jと い う回 答 も見 られた。分析 の実施前では,絵 本 の内容の嗜好 に限定 される可能性 を危惧 したが ,ォ ーディェ ンスの 発達にお ける差 異や総合 的なジェンダー意識等 多様 な 観点での回答が見 られた ことで,多 角的な分析観点が 認め %れ る分析項 目であることが分か った。 く技 能]の 項 目では,識 字能力 に加 え善悪 を判断する能力が挙 げ られた。 これは絵本 を単純 な文 [読 み解 字情報 と して認識す る とい う「読みJだ けではな く , 絵本 によって伝 えられる情緒や価値判断へ の示唆 を理 解する能力 を有す ることで,絵 本か ら得 られる情報量 や教 育的効果が よ り深 まるとい う観点 による記述であ ると考え られる。 また「文字が 読めれば。欲 (?)を 書 けば,よ くょ うをつ けた り,感 情 を込めて よんだ りJと い う回答 も見 られた。 これは,読 み手 の読みの 能力によって聞 き手が絵本か ら得 る情報の量や教育的 効果が異 なることか ら,読 み聞かせでは読み手の読み の能力が重 要であるとい う考 えか らな された 記述であ る。識字能 力や善悪の判断能力 は絵本の情報 を 受け取 るのみの オー デ ィェ ンス を想定 してい るのに対 し ,読 な手の読みの能力 は読み手 とい う絵本の情報 を 受け取 りつつ 聞 き手 に発 信 す るオー デ ィェ ンス の 能力 を 指 す。 この様 に,絵 本 を読み解 く上で必 要 と される技能 は,オ ー ディェ ンスの読みの形態 によって異 なる 点に 留意する必 要がある。 [′ ヽ し 理的要素 ]で は,「 書かれている内容が全て本当 のことだ と思 って しまい現実 にあることだ と思 っ てし まう。 」 とぃ う回答や ,「 例 えば,う さぎが善の象徴 に なって,ぉ ぉかみが悪 の象徴 になった りす る」 とい う ステ レオ タイプの形成 ,「 暗 い物語 を読んだ ら ,悲 し くなった り暗 くなる場合が あると思い ます。特 に子供 の場合は影響 は深 い と思 い ます」 とぃ ぅ読後の 心理状 -467- 態 の変化 ,「 警示 や啓示が得 られる と きがあ ります J とい う教訓の学習 ,「 きれ い な絵 を期 待 している と 」 い う回答が挙げ られた。そ もそ もカナダ ・ォ ンタリ オ 州 にお けるメディア分析 モ デルの し 、 理的要素]項 目 [′ は,オ ーディェ ンスの メデ ィァに対する期 待や興味 関 ′ ヽ 、 し な どの′ し 理的要素 によってメディアゃ情報 の選択 に 影響が及ぼされ るとい う現象に関する メディア研究の 分野 をさすの故に [心 理的要素]は メデ ィアによって 、 齋 される′ 亡 理的作用ではな く,メ ディア を利用する前 段階で メディアの利用 に影響 を及 ぼすオーディェ ンス の花、 理的作用である。 しか し分析の対 象を この概念の みに限定することはメディア分析 の幅 を狭め,分 析者 の新たなメデ ィア理解 を阻害する危 険 もある。故に利 用する前段階にお い てメデ ィァの利用に影響 を及 ぼす 、 オーデイエンス?′ し 理的作用だけではなく,絵 本を読 む中で読者 に齋 される′ 、 し 理的作用や読後 の心理状 態 の 変化 を含む,ォ ーデ ィェ ンスの′ 、 し 理 に関する包括的な 分析 の観点 として再定義する必要が ある。 項 目類 [社 会的要 素 ]に お ける [文 化 ]の 項 目で は,就 寝前 の 読み聞かせ や図 書館 の利用 な どの [文 化 ]に 関する解 答が見 られたが,中 には「子供の心 を 豊かにするために親が読み聞かせ をする (又 は言語能 力 を上 げるため)」 とぃった,次 項 との 区別が曖味 な 回答が 多 く見 られた。確かに [文 化]と [教 育 /利 用] とい う項 目は,絵 本が教育 的な側面で文化的に 活用 さ れることか ら [教 育 /利 用 ]と の線引 きが曖 味 とな り やすい。 しか し,南 (2010)¨ )の 日米間の子 ども観 の 研究に見 られるように,絵 本の利用 にお ける国や地域 の文化的背景が影響する場合 もある。 また,メ ディァ の利用にお けるオー デ ィェ ンスの文化 について意 識す ることで,ォ ーディェ ンスの 国際的な違いを学 ぶ機会 とな り得 る。故 に [文 化]の 項 目も必 要な分析 目で 項 あると考 える。 最後 に,[教 育 /利 用 ]で は,言 語教育 ,情 操教育 , 躾 にお ける利用が 多 く挙げ られた。 これは 日本 におい て絵本が教 育に多用 されるため,社 会的な認識 として 絵 本 と教育が 結 びつ きゃす い ためで ある と考 え られ る。 また,「 子供の教 育 (わ か りやす い)。 コマー シャ ルの宣伝。」 とい う回答 も見 られた。 この 回答 は,ス テ レオタイプと しての絵本の利 用 または商業的な 目的 による絵本の利 用 の 2つ の観点が考 えられる。 1つ 目 は,コ マー シャルは時間的制約か ら宣伝内容 をより 簡 潔且 つ 明確 に伝 える必 要がああることか し,幼 児や保 護者 ,幼 児教育等 のステ レオタイプと して絵 本が利用 される点である。 2つ 目は,映 画等 と相互の宣伝 を兼 ねた販 売戦略 に絵本が利用 される点である。 これ ら2 東 京 学 芸 大 学 紀 要 総 合教 育科学系 Ⅱ 第 66集 (2015) つ の観点 は他の メデ イア との共存 とい う意味 では同 じ 児 ・児童期 で は子 ど もに与 える情 報 につ いて規制 が設 文脈 上 にあ る。 よつて [教 育 /利 用 ]の 項 目では,対 象 メデ イアに閉 じた利用だけではな く,他 のメデ イア け られ る。特 に暴 力 行為 や不 良行為 ,性 等 ,絵 本 にお における対象 メデ イアの利用 とい う観点 にも留意すべ 的 ・ 政 治的 な規 制 が かか る こ とも考 え られ る。 しか し そ の 点 をあ えて挙 げ て絵 本が社会 や オ ー デ イエ ンスヘ いて扱 い が控 え られ る表現 は多数存 在す る。 また商業 きであることが分か つた。 齋す 文化 的 ・経 済的影響 を考 え,そ の結 果生 じる利 害 関係 につ い て考 察す る こ とで ,絵 本 の 社会 的 な影響 力 ≪生産 。制作面 ≫ 生産 。制作 の面 は全体的 に回答者の関心や意識が低 につ い て理解 を深 め る こ とが で きる と考 える。 ク ノ ロ ジ ー ]の 項 目で は,描 画 法 や 画像 加 エ ソ く,オ ーデ イエ ンス面 に比べ て想定 されるオー デ イエ ンスの年齢 や読み の形態が限定 されてい た。 これは絵 フ トが挙 げ られ ,デ ジ タル絵 本 に関す る回答 は 1名 の 本へ の接触が専 ら読者 としてなされるため,絵 本へ の み で あ つた。 つ ま り,回 答者 にお け る絵 本 の テ クノ ロ 興味 が本文内容 に終始 し,生 産や市1作 を意識す る機会 が少 な いためで あ る。 しか し絵本 の利用 目的や オ ー ジ ー に関す る観 点が描 画 テ クス トに関す る技術 に集 中 デ ィエ ンスの年齢 に関連す る規制等情報 の意図的な取 クス トに見 られ る技術 や描 画 テ クス トの技術 ,出 版 に 捨選択へ の理解 は認め られた。 項 目類 [生 産 ・制作 ]に お け る [生 産現場 の 仕組 お け る技術 な どが主要 で あ るが ,電 子書 籍 や飛 び出す 絵 本 ,触 る絵 本 とい った紙媒体 以外 の 要素 を含 む絵 本 み]の 項 目では,絵 本 は作者 のみで作成す るとい う回 にお いて活 用 されて い る技 術 も存 在す る。 しか し回答 答 が多 く,出 版社 に関す る記述 は「 まず制作者が草稿 す る。それか ら出版社 に送 る。」「シナ リオ→ 台本→ イ 者 の メデ イア経験 に よる メデ イア像 が分析 対 象 を限定 しやす い こ とか ら,絵 本 に関す るテ クノ ロ ジ ー につい ラス ト→ 製本」 のみであった。 これは書籍 の制作が世 て想 定す る絵 本 の メデ イア像 に偏 りが生 じる可 能性 が 間一般 に対 して閉 じた産業であ り,制 作 の 当事者 と関 わ らない限 り書籍 の制作 工程 を知 る機会が少 ないこと あ る。 そ こで授 業 実践 で は,学 習者 の分析 活動 の活 発 化 す るため に,導 入 な どにお いて絵 本 の種 類 や [生 産 が原因である。故 に,回 答 の多 くが抽象的 な表現 を用 現場 の仕組 み ]な ど他項 に軽 く触 れ てか ら分析 項 目を いている。 しか し,生 産現場 の仕組 み を知 ることで制 示 す な ど教授 者側 が分析 に関す る視座 を提 供す る必要 作者 の意図や工 夫 を学 び,絵 本 に関す る新たな発見を 得 ることも考 え られる。 また一 製品が消費者 の手元 に が あ る。 届 くまで数多 くの企業が関係 し,そ れぞれの役割 を果 た して社会が成 り立 つ様 を学 ぶ こと もで きる。 メデ イ や 占有 ]の 項 目で は,市 場 の 対 象 が子 ど もであ る,と [テ して い た とい え る。実 際絵 本 に関す る技 術 には言語 テ 項 目類 [商 業 ・社 会 的制 度 ]に お け る [市 場 の特徴 い った オ ー デ イエ ンスの 観 点 に則 った消 費者像 に関す (51)に 鑑み て も,本 項 目は メデ イア る回答が 多 か った。一 方経 済 的 な観 点 に関す る回答 と としての絵本の実態 を分析す る上で重要 な項 目である して は ,市 場 の 固定化 や大企業 に よる寡 占,販 売 の 長 期 的 な安 定 とい う回答 が 見 られた。 また当 ワー クシ ー ア分析 の 目的 とい える。 [規 制 ]の 項 目では,「 子供 たちに悪影響 な内容 は良 トで は回答者 の絵 本 に関す る既 有知識 の 指標 と して絵 くないので設 け られて い る と思 う。 (過 激 な性 や暴力 に関す る内容 ctc)」 や「子供 向 け の 内容 ばか りで い 本 の [出 版 元 ]の 質問項 目を設定 したが ,出 版社 に関 す る回 答者 の 知 識 は殆 どな く,「 分 か らな い 」 とい う 回答が 多数 で あ った。 よ り客観 的且 つ 多様 な分析 を行 いの か ?そ れ とも大人 も真剣 に考 えられる内容 を入れ るべ きか ?と い う問題 です 」な どオーデ イエ ンス によ る表現 内容 の 規 制 ,「 絵 本 の ペ ー ジ数 (内 容量 ).絵 う場 合 ,オ ー デ イエ ンスの 観 点 に則 った消 費者像 に偏 る分析 を予 防す るため ,分 析 の一助 とな る前提 知識 を 本 って読 みやす くて短 くて意味深 い とい う印象がある ので,長 す ぎると読者 の興味 がだんだんな くな っちゃ 増 加 させ る必 要 が あ る。 そ こで [市 場 の 特 徴 /占 有 ] うか も」 とい う字数 やペー ジ数 による制限,ま た社会 的 。政治的要因に よる規制 とい う回答がなされた。 ま 多 い 出版社 を調 べ る等 の活動 を取 り入 れ ,絵 本 の市場 ず絵本 の 質的な内容 に関す る規制 は,絵 本 によつて齋 される情報 によるオー デ イエ ンスヘ の影響へ の懸念か で あ る。 らなされる規制である。子 どもの発達 にお い て,情 報 屋 や ネ ッ ト,ア プ リス トア,宣 伝 に関 して はポス ター か ら何 を学び,ど の様 な影響 を受けるかは個人で異 な ゃ PoPと い う回 答 が 見 られ たが ,流 通 に 関す る記 述 る。故 に人格 形成や価値観 の 倉1出 が 多 くな され る幼 は見 られ なか った。流 通 に関す る分析 を促 す には,項 -468- の 質問項 目を提 示 す る前 に大 手 の 出版社 や ,流 通量 が に関す る前提 知識 を得 る機 会 を設 け る等 の 対 策が必要 [流 通 /販 売 ]の 項 目で は,販 売 場 所 に関 して は 本 川島 ・和 田 :ク リティカル分析 に対応 した絵本のメデ ィア分析 モデル 目類 [生 産 。市1作 ]に お け る項 目 [生 産 現 場 の 仕 組 かる。本実践では作者情報がない もの をあえて分析対 み ]に お い て生 産 か ら消 費 までの一 連 の工 程 を明 らか 象 としたが ,作 者や物語 自体 についての調べ学習等 を に して学 習者 の既 有知 識 を増 加 させ ,流 通 とい う観 点 当項 目にお い て盛 り込む ことで,原 作や他 の作品 との を意 識 す る機 会 を設 け る必 要 が あ る。 関係 ,作 者 の職業 などと作品の関係 ,作 者 の意図の推 以上 よ り,全 体 的 に概 ね ク リテ ィカル分析 に対応 し た絵 本 の メデ ィア分析 モ デ ルの 各項 目の定 義 に沿 った 測など,作 品を読むだけでは創出されに くい観点 を得 ることがで きる。 また当項 目は (3)テ クス ト面 の 内 妥 当 な回答が 得 られ た。 この こ とか らメデ ィア分析 に 容 ・表現 の分析 にお いて も活用で きる項 目であると考 お い てモ デ ルの 項 目は回答 が可 能 な項 目であ り,妥 当 える。 性 を有 す る と言 え る。 但 し,[生 産 。制作 ]に お け る 制作工 程 に 関す る項 目や流通 に 関す る項 目につ い て は (3)テ クス ト面の内容・ 表現 一 般 的認知 が 低 い ため ,調 べ 学 習 が必 須 であ る こ とが (3)-1 単純比較アプローチによるク リテ ィカル分析 分 か った 。 (i)講 談社及び福音館の絵本 を比較 したグルー プ 講談社 グル ー プでは講談社の「 3び きの子ぶた」 を (2)テ クス ト面 の 概観 1青 報 読んで 1枚 目の ワー クシー トに回答 し,福 音館書店 の 項 目類 [概 観 情 報 ]に お け る [言 語 テ クス ト]の 項 目で は,タ イ トル と本文 ,背 表紙 が 挙 げ られた。 各 言 「三 び きの こぶ た」 を読 み,2枚 目の ワー クシー トに 回答 した。 1枚 目のワー クシー トではメデ ィア分析 を 語 テ クス トの 特徴 と して は,タ イ トルは 宣伝 効 果 を有 行 い,2枚 目の 2問 日以外 の ワ ー クシー トで は ク リ し,本 文 の 子 ど もの一 人読 み の 為 に全 文 が平 仮 名 で あ テイカル分析 を行った。 る点 や 挿絵 と被 らない工 夫 が な され て い る点 ,背 表紙 メデ ィア分析 の 回答をみてみると,項 目類 [ス トー リー /物 語 ]の [主 題 ]の 項 目で は,「 目先 の ことに は言語 テ クス トだけで作 品が識 別 で きる よ う読 み やす い色 が用 い られ て い る点 等 の 回答が 見 られ た。 当実践 とらわれ ない」 と「 コッ コッ努力す ることの大切 さJ の 回答 で は各要 素 の 具体 的 な役 割 に 関す る記 述 がみ ら とい う継続 的 な努力の重 要 さが主題 と考 え られてい れたが ,言 語 テ クス トの視 覚 的特徴 の み に終始 して役 割 につ い て 考 察 され な い可 能性 が あ る。 そ こで 質問項 た。 目先の ことに囚われない とい う回答は,講 談社 の 「 3び きの 子 ぶた」が ,2匹 の兄豚 に怠 け者 とい う設 目の説 明 にお い て ,言 語 テ クス トの 諸要 素 の 果 た す役 定 を,末 の弟豚 には勤勉で努力家 とい うキャラクター 割 や効 果 に留 意 す る よ う,「 役 割 」 や「 効 果 」 とい っ 設定 を行 ってい たことか ら,兄 豚が楽天的であ り, 日 先 の娯楽 を優先 してい る点が強調 されてお り,物 語 に た言 葉 を用 い る等 の フ ォロー が必 要 で あ る。 [描 画 テ クス ト]の 項 目で は ,表 紙 ,本 文 内 の 挿絵 , おける「狼 に食べ られない」 とい う褒賞が弟豚の長期 裏 表紙 ,背 表紙 が 挙 げ られ た。 特徴 と して は,色 彩 豊 的な視点 を有するとい う性格的特徴 に起 因すると考 え か で 立 体 的 な絵 柄 や ,見 開 き 1ペ ー ジ を基 調 とす る たためである。 また継続的な努力の重要 さとい う回答 点 ,絵 柄 が大 きい 点等 が 指摘 され た。 前 項 同様 質問項 は,末 の弟豚が 2匹 の兄豚 に椰楡 されなが らも重 労働 目の説 明 にお い て描 画 テ クス トの 諸要 素 の 果 たす 役 割 で ある レンガの家 の建設 を地道に進めた ことで,物 語 や効 果 につ い て留 意す る よ う示 唆 を与 え るべ きで あ る における褒賞である「狼に食べ られないJと い う結果 を得 た,と 考 えて い る。次 に 同項 目内の観点 で あ る こ とが 分 か った。 [構 成 ]の 項 目で は ,「 表紙 は登場 人物 の 表現 ,本 文 [キ ヤラクター]で は性 別 と性格 に関す る記述が主で は絵 本 内容 ,裏 表紙 は物 語 の 結 末 を連 想 させ る とい う あ つた。 これは,本 文中にお いて各子豚 の性格付けが 役 割 が あ るJと い う回答が な され た。 この 回答 は [言 明確 であったことが要 因であると考 えられる。 [設 定] 語 テ クス ト]及 び [描 画 テ クス ト]項 目に対応 す る 質 では場所 につい ては森が ,時 代 は近代が挙げ られた。 問項 目に記 述 した要 素 が 活 用 され てお り,質 問項 目の これは描画テクス トにおける風景や建造物 ,服 装など 設定 が 有 用 で あ る こ とが 伺 える。 を総合 してなされた推測であると考 えられる。 [作 者 情 報 ]の 項 目で は ,分 析 対 象 に作 者 に関 す る 更 に [価 値観 ・ イデォ ロギ ー]の 項 目では,1名 は 記 載 が なか った こ とか ら, 1名 は無 記 入 で あ り, もう 未記入であったが,他 方 の 回答者 は「外界には悪 いこ 1名 は 分析 対 象が翻 訳 され た作 品で あ る と記 述 して い た。 作 者 の 情 報 が書 か れ て い な い場 合 の ア プ ロー チ と とをする人物が い るか ら気 をつ けねばならないJと 記 述 して い た。作品の舞台にお いて,外 界に危害 を加 え い う観 点 で 回答 を見 る と,1名 の 被験 者 は物 語 自体 が る者が い なければ用心や警戒 をする必要 はない。 しか 日本 の作 品 で な い こ とか ら推 測 を行 って い た こ とが 分 し,本 作 品 は子豚 を襲 う狼が存在す ることか ら,「 外 -469- 卜 __ 東 京 学 芸 大 学 紀 要 総合教育科学系 Ⅱ 第 66集 (2015) 界 には悪 い ことをす る者が い るとい う前提 があ り,そ の前提 を踏 まえる と悪 いことをする者 に対 して対策 を え られ る ようにす るためJま た 「死 ぬのは子 どもに とって よくない とい う今 日の風潮 だか %Jと い う回答 講 じる必要があ る とい う価値観 が内在 して いる」 とい う回答が なされた と考 えられる。 また同項 目内の観点 がなされ た。 これは一般的に「死」 の概念が幼児教育 にお いて忌避 される とい う一 般的認識 と照 らし合 わ 「何 かにチ ヤ レンジす るときは手 [作 者 の意図]で は「 を抜かないで ,コ ツ コツ努力すべ きだ」→手抜 きした せ ,分 析対象 を相対的に評価 した と考 えられ る。 [価 値観 ・ イデオ ロギ ー]で は,回 答者 2名 とも回 ら自分が痛 い 目にあ う」 とい う回答 が見 られた。努力 の重 要 さ とい う観 点 は [主 題 ]の 項 目に もみ られ る 答が無記入 であつた ことか ら,考 察が困難であ り,単 純比較 アプ ローチにお け るクリテイカル分析 では検討 が ,こ れは作者 の意図 と作 品の主題が重 なる ことがあ る ことか ら [主 題 ]の 項 目の 回答 と類似 した と考 えら の余地がある ことが 分 かつた。最後 に比較後 の感想 や 気付 いた点 に関す る記述では,「 生 きて い く上で コツ れる。そ して [表 現技法 ]の 項 目では擬音語 によるリ ズム感や 三段階 の展開 に伴 う表現 が挙げ 場れた。つ ま コツ努力す る ことは もちろん大切である。が世 の 中に は悪 いことを考 える人 も必ず存在す るので,自 らもず り言語表現 だけではな く,物 語全体 における作者 の意 る賢 さやあざ とさを身につ ける必要 もあるJ,「 分析対 象 (こ こでは福音館 を指す )の ほうが 「 自分 の考 え次 図 を考察 して い ると言 える。 クリテ イカル分析 を行 つた 2枚 目の ワー クシー トの 回答 では,項 目類 [ス 第で これか あ起 こることが変 えあれる」 とい うことが より具体的に分か る」 とい う感想がみ %れ た。 トー リー /物 語 ]の 項 目の [主 題 ]で は,絵 本 の主題 につい て「努力す る大切 さ+生 きてい く上で必要 な もの (あ ざとさやず うず うしさな (11)ポ プラ社及び福音館 の絵本 を比較 したグループ ど)」 や「頭 を働 かせ て悪 い もの をや っつ け られ る」 といった記述 がみ られた。 これは福音館書店 の「三び ポプラ社 グループではまずポ プラ社の 「三び きのこ ぶた」 の読後 に 1枚 目のワー クシー トに回答 し,次 に きの こぶた」 にお いて,3番 目の子豚 の行動 が必ず し も善 では無 い ことか らなされた考察 であると考 えいれ 福音館書店 の「三 び きの こぶた」 の 読後 に 2枚 目の ヮークシー トを回答 した。講談社 グループ同様 1枚 目 る。つ ま り,子 豚 の行動 を一般化 し,事 実関係 に原因 帰属 させた上 で善 と悪の価値判断 を再 び行 い,豚 に関 のワー クシー ト及 び 2枚 目のワークシー トの 2問 目は メデ イア分析 を行 い,2枚 目の 2問 日以外 で は ク リ す る負 の面 を意識 した回答 である と考 えられる。 [キ ャラク ター]及 び [設 定 ]で は 2つ の作 品にお テ ィカル分析 を行 った。 け る違 い及 びその違 いが生 じる原因についての質問を 設定 した。作 品間 の違 いで は,[キ ヤラクター]に つ の項 目の [主 題 ]で は,「 こつ こつ としっか り努力す ればそれ は報 われ幸 せ になる」 また「真面 目に生活す いて,一 方 の 回答者 は豚同士 の関係性 に注 目し,他 方 るのが良 い」 とい う回答がなされた。 これはポプラ社 の「三び きの こぶた」 では,3匹 の子豚 の性格 に性格 1枚 目のワー クシー トにおける の分析者 は「大 きな違 いは ないがお とう とぶたが よ り ず る賢 く,あ ざ と くな ってお り,オ オカ ミが よ り残酷 [ス トー リー /物 語] の設定 があ り,他 者 に椰楡 されて も地道な作業 を行 っ たことが強調 された点 に関 してなされ た言及である考 にな っているJと 回答 して いる。前者 の 回答 は,福 音 館書店 の「三び きの こぶた」 と講談社 の「 3び きの子 えられ る。同項 目内の観点 である [キ ヤラクター]で は,講 談社 のグループ同様各 キヤラクターの性別 と性 格 に関する記述 が主であ ったが ,1名 の分析者 は更に ぶた」 に兄弟 の設定 の違 いがある点に関す る記述 であ り,情 報源 による設定 の異 な りを考察 してい ると考 え %れ る。 また作 品間 の違 いの要 因につい ては,[キ ヤ ラクター]で は 「よ リリアルな世界に近 づ け ようとし て い ると考 え られるか %Jと い う記述 がみ られた。 こ れは人間が作 品内に登場す ることか 島,人 間社会 の存 在が示唆 されて い る点や狼が豚 を食べ ると言 う事実 か る,講 談社 における表現 はフイクシ ヨン性 が強 く,福 音館書店 にはリア リテ イにある と考 え.作 者 がそれ を 意図 して表現 してい ると考察 した回答 であると考 えら れる。 つ ま り現実性 を感 じる点 に原因帰属 を意識 し 母親豚 に関 して「親 と して の 威厳 がある」,1番 目の 子豚 に関 して 「プロセス よ り結果重視 J,2番 目の豚 に関 して「あ る程度 は物事 を考 えて いる」,二 番 目の 豚 に関 して 「物事 を しっか りと考 え,労 力 を惜 しまず 行動 で きるJと い う点 について言 及 していた。 このこ とか らキ ャラクター に関す る記述 は文章内 の表現 が , 設定 に関す る記述は描画表現 が主たる要因 となってい ることが分か った。 時間 をかけて考察 を行 うことがで , 作者 の意図 を考察 してい ると言 える。 また [設 定]に おける違 いの 原因帰属 では,「 読者 にイ ンパ ク トを与 -470- きる場合 ,キ ヤラクター に関す る考察 として描画表現 による情報 を意識する ことで更 に深 い考察が可能 とな る と考 える。 [設 定 ]で は,山 や リ ンゴの本がな る場 川 島 ・和 田 :ク リテ イカル分析 に対応 した絵 本 の メデ ィア分 析 モ デ ル 所,自 然界で子豚たちが 自立 して い くとい う点が挙げ られて い た。 [価 値観 ・ イデ オ ロギ ー]の 項 目で は が 自然 の 中で の 出来事であ った場合 と比較 したと考え られる。 また描画テクス トか ら,物 語 の舞台 を自身の , 「手 を抜 い た仕 事 は悪 い。時間 をかけて体力 を使 って 知識や経験 と照 らし合 わせて考察 した ことが分かる。 頑張 った物 は良 いJ「 弱 肉強食。人生 は簡単 じゃない。 」 作 品間 の 違 いの 要 因 につ いては,[キ ャラクター] とい う価値観が挙げ られた。概ね主人公の立場 に立っ では「 この作品 と分析対象 とで伝 えたいことが違 うか た観点であるが ,弱 肉強食 とい う価値観 は狼が豚 を襲 らJと い う記述が み られた。 これは情報源 によつて表 うとい う事実に関す る記述であると考 え %れ る。 また 現が異なる ことか ら,作 者 の意図に関 して原因帰属 を 同項 目内の観点 [作 者 の意図]で は「 3匹 を比較 して 意識 した と考 えられる。 また [設 定]で は「よ り現実 い るJと い う物語 の構 造 にお ける意 図 に関す る記述 に似せ るような設定 に して い るか ら」 とい う回答がな と,「 労力 を惜 しまなけれ ば良 い 成果が得 られ る と」 された。 これは講談社同様 リアリテイに関する作 者 の い う価値判断へ の示唆 に対す る指摘が見 られた。 これ は作品の根底 に流れる作者 の主張 と主人公の視点で共 意 図 を考 察 した と考 え られ る。 [価 値 観 ・ イデ オ ロ ギ ー]で は「弱 肉強食・知恵 こそ最大の武器 J「 豚 は 感され る価値観が共通 してい るためであると考 えられ 狼 よ り弱 い。」 とい う点が挙 げ 場れた。 これは弱者 と る。 [表 現技法 ]の 項 目で は,「 比較対 象。」 と「 家 に 強者 とい う関係 の打破 には知恵が必要であるとい うこ 住 む (ぶ たなのに)。 ぶたは狼 よ り弱 い,こ ろころ転 とを,物 語 を通 して回答者 自身が価値観 として解釈 し んご)」 とい う豚 の擬 人化 ,豚 と狼 の力関係 た と考え られる。 また弱肉強食 とは,現 実的に狼が強 などが挙げ られた。前者 の 回答 は,物 語内で狼 に襲わ 者 であ り子豚が弱者 で ある とい う前提 に関す る言及で れるとい う共通 の 出来事が 3匹 の子豚 に起 こ り,そ の ある。 がる (り 様子 を比較す るとい う表現 に関す る記述である。擬人 ところで,ワ ー クシー トの作成では,絵 柄や文章表 化 とは,動 物 は本来会話や衣服 を着用 しない に も拘 % 現 における表現技法 を比較す ることは比較対 象が曖味 ず,人 間に似 せて表現 して い る点 に関 してなされた回 であることか ら単純比較 には向かない と考 え,[表 現 答である。 技 法 ]の 質問項 目を設定 しなか った。 しか し [価 値 観 ・イデオ ロギー]項 目の 回答内に「ふ うふ う…てい 2枚 目のワークシー トにおける [ス トー リー /物 語 ] の項 目の [主 題 ]で は,「 どんな状況 にお い て もしっ うのが何 回 も出てる ?」 とい う繰 り返 しの表現技法 に か りとした準備 を して行動す る」,ま た「頭 を使 って 関す る指摘が み られた。 また感想や気付 い た点 では 行動す る大切 さ,命 に関わるJと いった記述がなされ 「 リア ルだった。食 べ られた り死 を簡単 に出す ので少 た。 これは子豚の視点 に立 った解釈である と考 え %れ し後味 の悪いイメー ジJ,「 絵 などもリアルで表現 も擬 る。作 品間 の 違 い で は,[キ ャラク ター]に つ い て 人化 してい るようで,親 近感がある。 どち らか といえ 「1匹 日,2匹 目と特 になまけた印象がないが ,簡 単 に ば大入なイメー ジJと あ り,後 者 の感想は表現技法に 食べ られて しまった。」「長男 ぶた,次 男 ぶた ともの そ 関 して記述 してい る。 このことか ら,質 問項 目を設定 こまで ダメなイメージがない。お とう とぶたの家に逃 せ ず とも回答 には [表 現技法 ]に 関す る記述があ り げ こ まないの で 食 べ られて しまったのか ?Jと い う回 [表 現技法 ]の 項 目も質問項 目として適 してい たこと 答があ り,両 回答 とも 1・ 2番 目のブタに関す る負の が分かった。 , , . イ メージが ない ことを指摘 して い る。 この ことか ら , 回答者 は 2つ の情報源 を比較 した上で,福 音館書店 の (111)ま とめ 作品には子豚 に負の イメー ジが ある と解釈 したことが (1)(li)よ り,メ デ ィア分 析 における各項 目にお い 伺える。更 に後者 の 回答者 は,ポ プラ社 における「弟 て,絵 本が表現す る情報 を多角的 に考察す る試みが行 豚 の家に逃げるJと い う行為 を条件分岐 として想定 し われていた。 この ことか らメデイア分析 において,ク てお り,創 造的 アプ ローチの考察 をも行 っていること が わか る。 また [設 定 ]で は,「 自然 の 中 で な く リテイカル分析 に対応 したメデ ィア分析 モ デルのテク ス ト面 の項 目類 [内 容 ・表現 ]の 項 目が有効 に機能 し 人 々のい る場所。絵 か らは ヨー ロ ッパ の 街 の 様 なイ たと言える。 またクリテ イカル分析 では,一 般化 に伴 メー ジ」,「 3番 目のぶた とオオカ ミとのや りと りが長 う事実関係 に関する原因帰属が意識 された考察や因呆 い。母親が登場 しない。人間が登場 して くる。絵が よ 関係 の客観的評価が行われた。故 に,ク リテ イカル分 リリアル」 とい う記述がなされた。 この 回答は福音館 析 の評価基準 書店 の作 品に人間が登場す る点か らなされた と考えら れた と判断する。 , れる。 この ことか ら物語 の 内容 を客観的に捉 え.物 語 -471 - (82)よ り,ク リテ イカル分析が行わ L「 総合教 育科 学系 Ⅱ 東 京 学 芸 大 学 紀 要 (3)-2 第 66集 (2015) ことが分か る。つ まり,一 般化 された「服 を着 る」 と 意識 化 ア プ ロー チに よ る ク リテ ィ カル 分析 全体 的 な回答 と して は ,表 現 の 言語化 及 び分節化 は い う行為 を,本 文 との事 実関係 か ら原因帰属 を意識 容易 に行 われ たが ,系 列 関係 の抽 出 に困難 を感 じる回 し,解 釈 した と考 える ことがで きる。 また [作 者 の意 図]に ついては,勇 敢 な行為へ の報酬 の示唆や読者ヘ 答者 が 多 か った 。故 に意識化 の過程 は再検討 の必 要性 の印象付 け,結 末 の示唆が指摘 された。勇敢 な行為ヘ の報酬 の示唆 に関す る回答は,一 般的な「 もの を食べ が示 唆 され た。 [ス トー リ ー /物 語 り]の 項 目にお け る [主 題 ]で る」行為や「絵 を見上げるJ行 為 が本文 との事実関係 か ら原因帰属 を意識 され,「 食べ るJと い う行為 は狼 は,絵 を通 して表現 され る テ ーマ を さす た め ,「 とあ る 1匹 の ぶ た に よ つて 平 和 な暮 ら しが で きる よ う に との攻防 にお ける子豚 の 勝利 の 象徴 と して再解釈 さ な った とい うこと」,「 物語 が ハ ッピーェ ン ドであるこ とJ,「 最終的に狼 は食べ られて しまう」 とい う回答が れ,「 絵 を見上げる」 とい う行為 は英雄や偉 人に対す なされた。 これは,意 識化 の過程 で描かれてい るキャ ラクター と本文中 に描かれているキャラクターの表現 る行為 であると再解釈 された と考 えられる。一 方 は読 者へ の印象付けや結末 の示唆 に関する回答は,本 文内 の違 いや関係性 について考察 し,分 析対象 の表現す る 容 との 因果関係 の客観的な評価 を行った ことで,分析 時間 が本文の後 に位置す る と推測 された ことが 伺 え 対象 と本文 の 時間軸 を客観的 に考察 した と考 え られ る。 これは分析対象 における表現 を本文内容 との 因果 る。 また [表 現技法]の 項 目では,富 の象徴や擬人化 による コー ド化 に関する指摘がなされた。 これ も一般 関係 に注 目して客観的に評価 した と考 えられる。 [キ 化 された行為 を本文 との事実関係か ら原因帰属 を意識 ャラクター]に つい ては,「 1匹 の豚 だけ,絵 の して再解釈 した と考 えられる。 中 の絵 であ る」 とい う状況 に関す る記述 だけではな く,キ ャラクターの服装や動作 ,キ ャラクター 自体 の 最後 に,分 析 の感想 の項 目にて「 1つ の絵 を見て こ んなに も深 く「何 故 この 豚 は この動作 を して い るの 特長 につい ての記述が見 られた。「絵 の 中の絵」 とい か」等 かんが えた ことはなか ったので,色 々 な考 え う表現 は,[主 題 ]の 項 目同様本文 の内容 よ り豚が食 事 をす る様が絵 に描かれた ものである,と 推測 してい 方 ,見 方が で きた」 とい う感想が見 られた。 このこと る。 またキ ヤラクター の 特長 に 関す る記述 にお い て か ら,意 識化 アプ ローチが分析 の観点や視座 として有 も,本 文 の 内容か ら分析対象に描かれ た大 きな豚が 三 効 に機能 した と言 える。 以上 より,ワ ー クシー トにお いて妥当な回答がなさ 番 目の豚である と推測 した ことが伺 える。 れた ことか ら,ク リテイカル分析 にお いてモデルの項 [他 のテキス トとの関係 ]で は絵本の内容 と分析対 目が有効に活用 された と言 える。 また,一 般化 に伴 う 象 の 関係 に関す る質問 を設定 したが ,全 て裏表紙は現 在 で本文 は過去 を表現 して い る旨の回答がな された。 この項 目における回答 も [主 題 ]項 目同様本文内容 と 事実関係 に関す る原因帰属 を意識 した考察や,因 果関 係 の客観的評価 が行われた ことか ら,ク リテイカル分 の 因果関係 の客観的 な評価が行 われた と考 え られる。 析 の評価基準 一方 で「れんがやわ ら,え だで家 を作 っているため現 れた と判断す る。 (82)よ り,ク リテイカル分析が行 わ 代 ではない時代 Jと 絵本 の本文 の 内容 における設定 に (3)-3 創造的 アプローチによるクリティカル分析 ついて も言及 されて い た。 [価 値観 ・ イデオ ロギ ー]で まず メデ イア分析 の部分 の回答 について述べ る。項 は,「 悪 いことをした狼 目類 着 る。裕福 な生活」,「 親がお金持 ちだ と子供はどんな スポー ツ もで きるJと い う回答が な された。 ここで では,「 発達 ,知 恵 J,「 弱者 で も頭 を使 って考 えれば 「服 を着 るJと い う行為 に関す る解 答 に注 目す る と , 意識化 によって本文 の 内 の豚 と分析対象 における豚 の キ ャラクター と して描 いているためであると考 える。 服装 を比較 し,本 文 における出来事 の後 に豚が社会的 に豊かになった と解釈 した上で ,発 達 した社会にお い 項 目内 の ヤラクター]で は,狼 の性格 に対 して う分析 を行 った と考 えられる。 この ことか ら,こ の 回 これは本文 にお い て狼が子豚 を編そ う とす る際に時間 を守 って行動す る様か ら「約束 を守るJキ ヤラクター 答 は「服 を着 る」 とい う行為 に関 して原因帰属 を意識 と して描 か れて い る こ とか らな された回答 であ る。 -472- _ [キ 「知恵が回 る。実直 な性格 」 とい う記述 がみ られた。 し,本 文 の内 容 と照 ら し合 わせ て,作 品内 におけ る 「服 を着 るとい う行為 Jの 意味 を新 たに考察 して い る 、 [ス 勝 てるJと い う回答がなされた。 これは福音館書店の 「三 び きの こぶ た 」が 三 番 目の 子豚 を二 面性 のあ る ては「服 を着 るJ習 慣があ り,豊 か さと結びつ くとい ヽ トー リー /物 語 り]の 項 目における [主 題 ] は こ ら しめ られ る/食 事 中 は行儀 正 しくす るJ「 服 を [価 値観 ・イデオ ロギ ー]で 食べ よ うとしてい る (さ は,「 おおかみ とこぶたは れてる)に もかか わ らず ,家 川島 ・和 田 :ク リテ イカル分析 に対応 した絵本 の メデ イア分析モデル の戸 ご しの会話は とて もおだやかで仲が よさそ う。→ 動 パ ター ンなのだか ら, どこかに誘 い,出 て くるまで 上辺の関係 /危 険な状況で も冷静 に物事 を考 える」「 3 家 の近 くで監 視す るア クシ ョンを取 るJと い う回答 匹の子豚 に共通す るの は,自 分 でたてた こ とで あ る と,「 1回 目のかぶの事件 の 時点 でぶたは早 く来 て取 が,方 法 に よ り明暗が はっ き りわかれて い る ことか るに きまっているので,2回 目では, もっと もっと早 ら,頭 を働かせて動 くことに価値 を見出 して い るJと く行 き,ま ちぶせ るか,家 の まえで まちぶせて とらえ い う回答がなされた。 これは物語が ,生 きる上 で相手 る。裏の裏 をか くこと も必要 だか ら。」 とい う回答が を出 し抜 く子豚 を主人公 に据 えた成功 niで あるため なされた。その後 の結末に関す る質問項 目では「過去 , 子豚の視点に立 った価値観が絵本 の根底 にあるとい う 記述 である。 [作 者 の 意図 ]と しては価値判断へ の示 の失敗 を元 に改善 した行動 をとったオオカ ミの勝ち と 唆 と読者 の臨場感 を高める意図が指摘 された。前者の 結局 はひ とに とらえ られる」,俯 厳的な視点に立 つ 回 なる」 とい う狼側 の 回答 と,「 人か ら悪 事 を見 られ , 回答は,内 容に関す る作者 の意図が主張や教育的観点 答がなされ た。 これは,自 身が狼 である場合子豚 を食 と重複する部分がある ことか %[主 題 ]に 近 しい 回答 べ ることが正当化 される ことに基 づ く回答 と,俯 厳的 となったと考え られる。一方 後者 の 回答 は,読 者が共 な勧善懲悪 の価値観 に基 づ く回答 であ る と考 え られ 感や感情移入す る際 によ り物語 を楽 しめるようなされ る。各回答における価値観 に注 目すると,前 者 の 回答 た工夫 に関す る記述である。 この様 に当該項 目では作 は視点の転換 に伴 い善悪が入れ替 わったが,後 者 では 者の主張 としての意 図 と表現 上の工 夫 とい う意味 での 入れ替わ っていない。 この ことか ら,回 答者 は視点の 意図 とい う 2通 りの記述がみ られた。 転換 によって分析対 象 を再認識 した上で,自 身の価値 次に,創 造的アプ ローチ法における質問項 目に関す 観 と照 らし合わせて物語の結末 を再構築 して い ると考 る解答につい て述 べ る。 [視 点 の 変換 ]で は主人公 を えられる。 これは文脈 の変化 に留意 して情報の考察及 狼 とす ることで,[ス トー リー /物 語 り]の 項 目にお ける [主 題 ]に ,「 過去 の 失敗 を元 に改善 した行動 を び評価 を行ってい ると考 えられる。 [狼 ヘ ア ドバ イス をす る]に ついては,「 自分 の行動 とる」,「 だまそ うと策 をたてて も相手 はお見通 しであ をあ まり口に出 さない方が いい。 ペ ラペ ラ話す ことに る。悪 いことをす る と絶対 に幸 せ になれない。Jと い よって,策 がばれて しまっているか らJと い うア ドバ う記述がなされた。 これは,視 点 を変換 して狼 の立場 イス を与 える ことで,オ オカ ミは「ぶたをたべ て レン をとった場合 ,よ り確実 に子豚 を捕 らえようと狼が試 ガの家 で幸 せ に くらすJ結 末を迎 えるとい う回答がな 行錯誤 した点に関す る記述 と,結 果的に悪 は成敗 され された。 この 回答を した分析者は前項 にお いて教育的 るとい う物語 の価値観 に即 した第二者的な俯厳 した回 観点 に沿 った 回答を して い ることか ら,こ れは異なる 答であると考えられる。 この ことか ら,主 人公 と対立 するキ ャラクターの視 点 へ の 変換 にお い て,物 語 に 文脈 にお いて価値観 を変化 させて考察 を行 った と考 え 沿 つた読解 では想定 されない価値観が創出 される場合 と,物 語 に即 した価値観が創 出 される場合がある こと 法」及 び「狼ヘ ア ドバ イス をする」における内容が選 択 されなか った理 由 としては,「 ぶたを食べ ることを が分かつた。 また,[キ ャラクター]に つい ては「子 ど うどう と良 しとしては,弱 者 は弱者 の ままになって ぶた (3匹 目の )― (策 略家,善 )」 とい う善 で あ っ しまう」 とい う回答 と,「 オオカ ミは乗 りこえるべ き た 3匹 目の豚が策略家 となる点や,「 3匹 目の こぶた。 壁 としての役割 があ り,失 敗 した 2匹 のぶたの話 を基 食事 をとろうとい う理 由 で行動 して い る自分 に対 し に 3匹 目が どの よ うに乗 りこえるか を作者 は示 した 罠にかけ られ殺 され る結 末 になって い る。Jと い う かった」 とい う回答が なされた。 これ らの 質問 は,2 狼 は悪ではない印象 を受ける旨の記述がみ いれた。前 種類 の創造的 アプローチ を行った上で,そ のアプロー 者 は物語 における三番 目の子豚 の善悪 の二 面性 に関す チが本文にお いて採用 されなかった ことで,ど の よう る記述であ り,後 者 は狼 の動物 としての行動 の客観的 な作者の意図がみ られるかを考察す ることを目的 とし な正当性か らなされた回答 である。 これ らの回答 の特 た質問項 目である。前者 の 回答 は,分 析対象が作品全 徴は,物 語 の 内容や表現 につい て物語 に流れる価値観 体 を通 して「強者 に対 して勝 つ こ とがで きない弱者 以外の価 値観 で作 品 を分析 して い る点 にあ る。 つ ま が,強 者 に対 して知恵 を用 い ることで勝 つ ことがで き り,作 品における因果関係 を客観的に評価 して い ると る」 とい う教育的観点 の提示に対す る言及であると考 言える。 え られる。後者の回答は,「 失敗か ら学ぶ ことの重要 , , られる。更 に「 自身が狼 の立 場 で あ った場 合 の対処 身が狼 の立 場 であ った場合 の対処法 ]に つい て 性 の示唆」 とい う教育的観点を示す意図 に対す る言及 は,「 3匹 目の こぶたは,誘 えば必ず 出て くるのが 行 であ る と考 え られ る。各 回答 をみ る と,創 造 的 アプ [自 -473- 総合教育科学系 Ⅱ 第66集 (2015) 東京 学 芸 大 学紀 要 理 由 を述 べ る こ とはで きて も,そ の 裏 にあ る と考 え ら とに留 意す る必要 が あ る と考 える。以上 よ り,メ デ ィ ヽ 理 的要素 ]に 一 ア分析 で は,オ ー デ イエ ンス面 の し れ る作 者 の 意 図 を具体 的 に推 測 で きて い な い 。 そ の た 考 の 余 地が あ る もの の ,ク リテ イカル分析 に対応 した め ,授 業 実践 を行 う際 には,そ の 選択肢 を選 ば な い こ 絵 本 の メデ イア分析 モ デ ルの 各項 目につ い て概 ね妥 当 とに よる効 果 につ い て 着 目 し,よ り作 者 の 意 図 と結 び な回答が な され てお り,モ デ ル と して有用 で あ る と言 つ け る考 察 を促 す 必要 が あ る。 える。 ロー チ に よつて創 出 され た選択 肢 が選択 され なか った [′ 最 後 に,分 析 の 感想 で は「作 者 は深 い 意 図が あ つて 次 に ク リテ イカ ル分析 につ い て は,の 項 目をワー ク 物 語 を書 い て い るの だ とい う こ とJと ,「 ぶ た ,お お シ ー トの作 成 に活 用 で きた こ とか ら,ク リテ イカ ル分 か み を人 間 にお きか え る と,不 可 能 だ と思 え るの は 析 に対 応 した部分 で あ るテ クス ト面 の [内 容 ・ 表現 ] , お お かみが息 で 家 をふ き とばす場 面 で あ る。実生活 に の項 目類 が ,質 問項 目の 設定 にお いて 活用が可 能 で あ お い て ,オ オ カ ミは 自然 災害 を含 む様 々 な困難 を象徴 る こ とが わか った。 また ,設 定 した 3つ の ア プ ロー チ して い る よ うに思 えた Jと い う感想 が み られ た。 この 法 につ い て も,学 習 方法 の一 定 の 方略 と して有効 に作 こ とか ら,分 析 者 が 物語 の根 底 に流 れ る作 者 の価 値 観 用 した と考 え られ る。 と異 な る価 値 観 に触 れ た こ とで ,分 析 対 象 を客観 的 に 単純 比較 アプ ロー チ は 2つ の グ ルー プにお いて異 な 捉 え直 し,作 者 の 意 図 を考 察す る機 会 を得 た こ とが 読 る分析 対 象 を用 い た分析 を行 ったが ,各 絵 本 の特徴 や み取 れ る。 また ,狼 の 象徴 につ い ての考 察 が な され て 共 通 点 を的確 に分析 し,そ の 原 因帰属 につ い て意識 し い る こ とか ら,絵 本 の 内容 を よ り客観 的 に捉 え,一 般 た ク リテ イカル分析 が行 われ た。絵 本 の組 み合 わせ の 化 され た物事 を再 解釈 した こ とが 伺 える。 違 い にお いて は ,対 象 の選 定 に よつて 回答者 の注 目 し 以上 よ り,当 該 ワー クシ ー トにお け る分析 にお い 質 やす い 部分 を少 なか らず誘導 で きる こ とか 島,教 師 の 問 に妥 当 な回答が な され て い た こ とか い,モ デ ルの項 意 図 に沿 つた教 材 の 選択 が可 能 で あ り,教 材 の難易 度 目が 有効 に活 用 され て い た こ とが 分 か る。 また因果 関 や授 業 設計 に柔軟 に対応 で きる こ とが 分 か った。特 に 係 の 客観 的評価 や異 な る文脈 にお け る変化 ,原 因帰属 残 酷 な表現 や キ ヤラク ター性 の 異 な りに関す る考察 で に留 意 した情 報 の 考 察 及 び 評 価 が 行 わ れ て い る。 故 は メデ イア ・ リテ ラシー に不慣 れ な回答者 で も積 極 的 に,ク リテ イカ ル分析 の 評価 基準 (82)よ り,ク リ に回答 して い た こ とか ら,初 学者 の分析 で は この 2点 を取 り上 げ る と活 発 な分 析 活 動 が期 待 で きる と考 え テ ィカル分析 が行 われ て い る と言 える。 る。 意識 化 ア プ ロー チ で は,「 意識 化 」 とい う工 程 に 9 2 お い て は 回答者 が若千 困難 を感 じて い た こ とか ら改 良 考 察 の ま とめ まず メデ イア分析 につ い て は ,概 ね の項 目にお い て の 余 地 が あ る こ とが 示 唆 され た。 しか し裏 表 紙 とい メデ イア分 析 が 行 わ れ て い た が ,[オ ー デ イエ ンス ] う,情 報 が 限 られ ,且 つ 絵 本 本体 との 関係 を有す る描 の項 目は回答者 の メデ イア経験 に大 き く影響 され るた 画 テ クス トを分析 対 象 に設定 した点 は妥 当で あ る と考 め ,分 析 を多様化 す るた め に回答者 間 の 意 見交換 を行 える。創 造 的 ア プ ロー チ で は [視 点 の 変換 ],[キ ャラ 、 亡 理 的要素 ]に ク ター の 言 動 の 創 造 ],[キ ャ ラ ク タ ー ヘ の ア ドバ イ うべ きで あ る こ とが 分 か った 。 また [′ 関 して は ,オ ー デ イエ ンス が メデ イ ア に期 待 す る も ス]と い う質問項 目の 設定 よ り,こ れ らの創造 的 な学 の ,ま た そ の 心 理 作 用 に よ つ て オ ー デ イエ ンス の メ 習活動 の 有用性 につ い て示 す こ とが で きた と考 え られ 、 し 理作 用 だ け で は な く,読 後 や デ イア選択 を左 右 す る′ る。 また ク リテ イカル分析 の 実践 にお い て一 番 印象深 ヽ と 理 を含 む項 目とす る 読 んで い る最 中 にお け る読者 の′ べ きで あ る こ とが 示 され た。 また [生 産 ・制作 ]面 で か ったの は,絵 本 につ いて 回答者 が楽 しみ を見出 しな が ら分析 に臨 む姿 で あ った。 絵 本 を久 しぶ りに読 む回 ヽ と して他 の項 目を関連 は [生 産現場 の 仕組 み ]を 中′ と 答者 が 多 く,読 後 に 自身 の知 る「三 匹 の子 豚 J以 外 の 付 けた分析 が可 能 で あ る こ とが わか った 。特 に情 報 発 信 者 と して絵 本 を創 る学 習活動 を行 う際 は,生 産現場 内容 に驚 く姿 が 多 く見受 け られた。 この こ とか ら,絵 本 の 選定理 由 にお い て述 べ た絵 本 の メデ イア ・ リテ ラ の 知 識 が必 要 で あ り,ま た生 産技 術 を学 ぶ こ とで市1作 シ ー教 育 にお け る有 用性 が示 唆 され た と考 え %れ る。 者 側 が意 図 しな い 規 制 や制約 等 ,情 報 の取捨 につ い て また キ ャラ ク ターの 描 かれ方 や主題 の 異 な り,作 者 の も学 ぶ こ とが で きる。更 に,絵 本 に対 して販 売 に関す 意 図へ の 回答 にお い て倫理 に関す る言 及が 多 くみ られ る意識 は強 くな され るが ,流 通 に関 して は意 識 され に た こ とか ら,道 徳教 育 にお け る活用 につ い て も可 能性 くい 。 この こ とか ら,生 産 ・制作 にお い て は絵 本 が制 が示 唆 され た。 作 され消 費者 の 手元 に届 くまで の一 連 の 流 れ を学 ぶ こ -474- 川 島 ・和 田 ク リテ イカル分析 に対応 した絵 本 の メデ イア分析 モ デ ル : 析 のアプローチ法 についての評価や,分 析 の手順 につ 10.ま とめ いて も明 らかにす る必要がある。 本研 究 で は,第 一 の 目的 を メデ イア 分析 及 び ク リ 引 用 。参 考 文 献 テ ィカル分析 に対 応 した分析 モ デ ルの構 築 ,第 二 の 目 的 をメデ イア分析 及 び ク リテ イカル分 析 の 実態 解 明及 び低 年齢 の 学 習 者 に対 応 した教 材 開 発 へ の 示 唆 と し 1)坂 元昴 :「 メデ イア リテラシーJ,後 藤和彦他編「メデ イ ア 教育 を拓 く」,ぎ ょうせい,東 京,1986 て,カ ナ ダ ・ オ ン タ リオ州 の メデ ィア分析 モ デ ル を基 2)鈴 木み ど り編 にク リテ イカル分析 に対応 した絵 本 の メデ イア分析 モ デ ル を構 築 した。 モ デ ル 構 築 の 前 提 と して ,メ デ イ :メ デ イア・ リテラシー を学ぶ人のために , 世界思想社 ,1997 3)鈴 木み ど り編 :MEDIA LITERACYメ ア ・ リテ ラシー 及 び メデ イア ・ リテ ラシ ー教 育 を整理 し,初 等 中等教 育 にお け る メデ イア ・ リテ ラシ ー教 育 デ ィア リテラシー の現 在 と未来 ,世 界思想社 ,2001 4)後 藤康志 の妥 当性 や メデ イア ・ リテ ラシ ー教 育 にお ける絵 本 の :日 本 の メデ ィア ・ リテ ラシー研 究 の系譜 と 課 題 ,現 代社 会文化研 究 ,29,2004 教材 と しての有用性 を示 した。 また先行研 究 の整理 や 5)Mastcrman,L:ル 有用 な実践事例等 の 紹 介 を行 った 。 また モ デ ルの構 築 ασカルg′ た ″″ ノ α,Comcdia Publishing 及 びモデルの評価 の ため に メデ ィア分析 及 び ク リテ イ Group,1985(宮 崎寿子訳 カル分析 を定義 し,特 に ク リテ イカ ル分析 につ て は メ カルなアプ ローチヘ』 世界思想社 ,2010) デ イア ・ リテ ラ シ ー の 教 育 実 践 や Mastemanの 統 合 ― 系 列 関 係 に よ る 実 践 ,井 日 の カ ル チ ュ ラ ル ・ ス タ デ イーズ にお け る記 号論 的分析 方 法 か る「単純 比較 ア 6)文 部 科 学 省 :『 メデ イアを教 える :ク リテ イ :教 育 の 情 報 化 に 関 す る手 引 き,開 隆 堂 . 2011 7)総 務 省 ,放 送分 野 にお ける メデ イア リテ ラシー授 業実践 プ ロー チ」「意識 化 ア プ ロー チ 」「 創 造 的 ア プ ロー チ J パ ッケージ「お話 には,作 者が い ることを知 ろ う の 3つ の アプ ロー チ を定 義 した。構 築 した モ デ ルの 評 hipノ /wwwsoumu : gOjp トを作 成 して実 際 に分析 を行 い ,回 答 を説 明的 内容分 8)阪 本 一 郎 ,讀 書指導 :原 理 と方 法 ,牧 書店 ,1950 9)上 山和 久 ・所 浩子 浜野智 明 森知佐 登 小村典 夫 ・野 析 した。 回答 の説 明的 内容 分析 よ り,モ デ ルの 有用性 中拓 夫 :文 学 の授 業 を活性 化 させ る言語活動 の構 築 及 び妥 当性 の 示 唆 を得 た。 また絵 本 を分析 対 象 と した ―実践論 の基 軸 としての生 産的方法 ことで ,低 年齢 の学 習者 や初学 者 へ の 対応 が可 能 で あ 第 VttБ F5, 61(1), pp l-22, 2012 価 では,モ デ ルの項 目に対 応 した 5種 類 の ワ ー クシ ー り,ま た ワー クシー トの作 成 よ リク リテ イカル分析 に 対応 した絵 本 の メデ イア分析 モ デ ル を用 い た教 材 の 開 (1) ,大 阪教育大学紀要 10)三 森 ゆ りか :絵 本 で 育てる情報分析 カ ー論理的 に考 える力 を引 き出す [2],一 声社 ,2012 11)野 口武悟 ,讀 書興味 の 発達段 階 モデルについての再検討 発が可能 で あ る こ とが 分 か つた 。 以上 よ り第 一 の 目的 で あ る メデ イア 分 析 及 び ク リ テ ィカル分析 に対応 した モ デ ルの構 築 は達 成 され た と 水越敏 行 :メ デ ィア ・ リテ ラ シーの構 成要素 と 実 践 事 例 分 析 ,日 本 教 育 工 学 会論 文 誌 ,27,pp 41 44, クリテ イカル分析 の 実 態 を明 らか にす る とい う 目的 に 2003 13)後 藤康 志 ・ 丸 山裕輔 :メ デ イアに対 す る批判 的思考 を育 しク リテ イカ ル 分析 の ア プ ロー チ 法 を設 定 した こ と 成 す る教 材 パ ッケ ー ジの 開発 ,日 本教 育 工 学 会論 文誌 で,達 成す る こ とが で きた と考 える。 また低 年齢 の 学 33, pp 89-92, 2009 14)棚 橋美保 習者 に対応 した教材 開発 へ の 示 唆 で は ,モ デ ルの 実践 にお ける ワー クシー トの作 成 に よ リー 定 の示 唆 を得 た ため,達 成す る こ とが で きた と考 える。 , EI汗 グ :, 26, p103-120, 2012 ラ占掟 12)中 橋 雄 い える。次 に,第 二 の 目的 で あ る.メ デ ィア分析 及 び つい て も,メ デ ィア分析 及 び ク リテ イカル分析 を定義 , 今井 亜湖 :教 科 教 育 にお け るメデ イア . リテ ラシー 教 育 を支援 す るための分類 表 の作成 ,日 本教 育 工 吉 民営,こ 言 葛 ま, 31, pp 9-12, 2007 今後 の課題 と して は,本 研 究 で はモ デ ルの 有用性 や 15)望 `ヽ 月純 子 野 中陽 一 :メ デ イア ・ リテ ラシーの視 点 を取 妥当性 につ い て客 観 的 な考 察 を行 う こ とが で きなか っ り入れ た小学校 にお け る情報教 育 カ リキ ュ ラム開発の試 たため ,よ り多 くの 回答者 に よる分析 を行 い ,量 的分 み ,和 歌 山大学教育学部教育実践贈号 セ ンター紀要 ,16. 析 に よる評 価 を行 う必 要 が あ る。 また実践 に つ い て pp 49-57. 2006 , 本研 究 で は都 合 上 大 学 生 及 び大 学 院生 に よる 分析 を 16)河 野卓也 ・澤 田一 彦 安谷元伸 :中 学校 にお ける「情報 行 ったが ,小 学 生 に よる分析 の 実践 を行 い ,モ デ ルの 科 Jの 構 築 と実 践 ,日 本 教 育 情 報 学 会 学 会誌 ,26(4). 改良や妥 当性 の検 証 を行 い た い 。更 に ク リテ イカル分 pp 13-24, 2011 -475 - 総 合教 育科 学系 Ⅱ 東 京 学 芸 大 学 紀 要 第 66集 (2015) 28)井 口博 充 :情 報 三宅正 太郎 :初 等教 育 にお け る メデ イア ・ リテ ラシ ー教 メデ ィア 教 育 の 社 会学 ―カ ルチ ュ ラ ル・ ス タデ イーズ してみ ませ んか 育用 リソース 及 び リソー スガイ ドの 開発 ,基 礎研 究 (B), ,東 信堂 .2003 29)石 崎 理 恵 :絵 本 か ら見 た子 ど もの 世 界 ―絵 本 研 究 の動 2008 ,金 沢 大 学 教 育 開 放 セ ン タ ー 紀 要 ,15,pp 和 田正 人 :メ デ ィア ・ リテ ラ シー教 育 にお け る ク リテ イ 向 カル分析 の 学 習暴 力 的 ビデ オゲ ー ム と表 象,東 京学 芸大 1995 27 36. 30)奥 田倫子 西垣悦代 ・ トマ ス ・ヘ イ ステ ィ ングズ・ 落合 学紀要 ,総 合教育科学系 Ⅱ,62,pp 337 350,2011 内藤寿子 :メ デ イア リテ ラシー教育 におけ る く絵 本 >の 可 正行 :日 米 の絵 本 に表現 れ た主題 及 び主 人公 の性格特性 能性 ―『お ち ゃの じか ん に きた と ら』 を補 助線 に ― ,湘 北 に関す る分析 ,1991 31)長 谷 川真里 ・堀 内 由樹 子 佐 渡真紀 子 ・鈴 木佳 苗 坂元 糸己ラ尋, 27. pp l-10, 2006 か なが わ メデ イア リテ ラ シ ー研 究所 :畳 とメデ イア リ テ ラシー,文 化堂印刷株式会社 .2013 .世 界思 想 社 の検討 ,昭 和音楽大学研究紀要,23.pp 85 99,2Clk14 , 33)野 村 具木夫 :マ ルチモー ダル テクス トとしての絵本 一言 2009 ニー ル ・ ア ンダー セ ン他 原作 ,鈴 木 み ど り監修 :ス キ ャ ニ ング :TV番 組 の 向社 会的行為 にかかわるキ ャラ クター の内 文予 て,夕)湘斤, 日フ ト孝 宇Iう 滲 `), 30, pp 105-108, 2006 32)田 代康子 :昔 話絵本 における残酷 な部分 を書 き換 える根拠 藤 田真 文 ・ 岡井崇 之編 :プ ロセ スが 見え るメデ イア分析 入 門 ―コ ンテ ンツ か ら 日常 を問 い 直 す 章 語 テ クス トと絵 画 テクス トの関係性 と類比性 テ レビジ ョン 日本版 :テ ィー チ ングガ イ ド,株 ,上 越教育 大学研 究紀 要 ,29,pp 219 230,2010 34)古 屋喜 美代 ・田代康 子 :幼 児 の絵 本受 容過程 にお ける登 式会社 イメー ジサ イエ ンス,2003 、 道 田泰 司 :批 判 的思 考概 念 の 多様性 と根底 イメ ー ジ,′ し 場 人 物 と 読 者 の 関 わ り,教 育 心 理 学 研 究 ,37(3) 11弓 左 言子言舒, 46, pp 617-639, 2003 pp 252-258, 1989 平 山 るみ ・楠 見孝 :批 判 的思 考態 度が結論 導 出 プ ロセ ス 35)守 屋慶 子 :対 人認識 にみ われ る「発達 Jと 「性差」:日 韓 に 及 ぼ す 影 響 ―証 拠 評 価 と結 論 生 成 課 題 を用 い て の 検 英 三 か 国比較 に よる検 討 (遊 び ヽ し 退 里 討 ―, 孝えデ テ′ 日本教育心理学総会発表論文集 ,30,pp 44 45,1988 ヒ, 52, pp 186-198, 2004 升多 ==石 村 ll郷 子 :メ デ ィア リテ ラシ ー と批 判 的 (ク リテ イカ 仲 間 ・ 発 達 2・ 発達 ), 36)南 元 子 :欧 米 と 日本 の 絵 本 に 見 られ る子 ど も観 の違 い ル )批 判 的 思 考 ,埼 玉 学 園大 学 紀 要 (人 間学 部 篇 ),9, , 愛知教育大学幼児教育研究 .15,pp 73 80,2010 pp 257-266, 2009 本稿 は平成 26年 度の修士論文 を加筆修正 した もの 岡田明 :最 新読書 の心理 学 ,日 本文化科学社 ,1972 EBゼ ツク ミス タ JEジ ヨンソ ン著 ,宮 元 ら訳 :ク リ テ ィカルシ ンキ ング ー入門編 - 1ヒ 大路書房 .1996 - 476 - である。 クリテ イカル分析 に対応 した絵本 の メデ イア分析 モ デ ル A NIedia Analytical Nlodel Enabling Critical Analysis for Picturebooks ││ 島 佳 ノ、 示 日日 壬→ り * 田 正 入 ノ 、 * Kana KAWASHIⅣ■ ,Ⅳlasato NKDA 教育実践 研 究支援 セ ンター Abstract A rcsearch On mcdia litcracy has been conductcd tioll1 1990s,but an cducational practicC of rnedia litcracy is insufflcient for bcing dif゛ uscd into Japan A mcdia analysis is oRen used lor undcrstanding mcdia A mcdia analytical rnodclis a gcneral model,but it dcmands on sk‖ lcd tcachcrs And,A critical analysis has bcen provcn to be usenul in the cducation of rnedia literacy,、 vhercas it hasn't had a gcneral deflnition Accordingly,ヽ ve need to improve upon thesc educational analyses for the classroolll in Japan This study improvcd llpon thc mcdia analytical modcl in ordcr that mcdia analysis and critical analysis can be casily for impotting into the cducation in Japan Our mcdia analytical inodel for picture book is based on the vcen media tcxts, analytical modcl and has somc itcms、 vhich covcr critical analysis Thosc itcms are stor/,relationship bet、 ideology and valucs,and tcchnique of rcprescntation And the itcms、 verc classiflcd into a family of itcnls:(contcnt and Vc rcdeflncd t、 vo analyscs and thrce approachcs for critical analysisi comparativc approach,conscious reprcsentaion' ヽ approach,crcativc approach Fulthermorcヽ vc provided critcrions of two analyses for cvaluating thc modcl Follo、 ving thc dcvelopmcnt ofthe modcl,、 vc carricd out flvc analytical trials on some undergranduatc and graduatc students,and vcrifled the validity ofthc nlodel by qualitative content analysis Keywords:rncdia literacy,rncdia analysis,critical analysis,rncdia trianglc,picturc book c`′ ra″ ル ″″ `Rζ ′9/Eグ ンεα″ο″α′P7・ r7``た ζ グSttЙ?ο ′ Saα κ力α″ ― ′ s″ /77 KOgα ″′ V″ tr7ノ ″rr7-777α ε あり οGα bge′ じ″ソθβfrlィ ノイ ノ , 85θ ノ ルリ。ノδイー ,Jの α″ め るれて いる。 メデ イア・ リテ 要 旨 : メデ イア ・ リテラ シー教育 では汎用性 や柔軟性 に富 む多様 な教材が求 を行 うカナダ・オ ンタリオ州に ラシー教育 の一教授法 であるメデ イア分析 は定義が多様 であ り,代 表的 な実践 に欠ける。同 じく一教授法 おける メデ イア分析 モデルは, 日本におけ る授業 での活用には抽象的であ り汎用性 は存在 しない。 の であ り有用性 のあるクリテ イカル分析 も,分 析 の視座 に留 ま り,定 義や具体 的な分析 指針 ことがで きるモデルの構築 ,メ これ らの現状 に鑑み ,本 研究 ではメデ イア分析 及 びクリテ イカル分析 を行 う ttandshn.Q蟷 48501,ね pa0 ∫乳 i糖 1∬■ 熙 k懲 l∬ 没紺署 憮温 :程 - 477 - 東 京 学 芸 大 学 紀 要 総 合教 育科 学 系 Ⅱ 第 66集 (2015) デ イア分析 及 び ク リテ ィカル分析 の 実態 解 明 ,低 年齢 の学 習者 に対応 した教材 開発へ の示 唆 を 目的 と して ,カ ナ ダ ・ オ ン タ リオ州 の メデ ィア分析 モ デ ル に基 づ く「 ク リテ ィカル分析 に対応 した絵 本 の メデ ィア分析 モ デ ルJを 構 築 した。 研 究 の 方 法 は ,ま ず メデ ィア分析 及 び ク リテ ィカル分析 の 定義 を行 い ,ク リテ ィカル 分析 の ロー の 3つ ア プ チ 法 「単純 比較 ア プ ロー チ 」「 意識化 ア プ ロー チ J「 創 造 的 ア プ ロー チ 」 を設 定 した .そ して カ ナ ダ・ オ ンタ リオ州 の メデ ィア分析 モ デ ル を基 に教 育 実践 や先 行研 究 に鑑 み た項 目の分類 を行 う こ とで ,ク リ テ ィカ ル分析 に対 応 す る絵 本 の メデ ィア分析 モ デ ル を構 築 した。 そ して定 義 に基 づ く評価 基準 を設 定 した上 で ,ワ ー クシー トに よる実践 を行 い ,分 析 結果 につ い て 説 明 的内容分析 を行 う こ とでモ デ ルの項 日の検 討 及 び 妥 当性 の 評価 を行 った 。 キー ワー ド:メ デ ィア ・ リテ ラシー教 育 ,メ デ ィア分析 ,ク リテ ィカル分析 ,メ デ ィア分析 モ デ ル,絵 本 -478-