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蛋白質核酸酵素:新しい誘導型シクロオキシゲナーゼ : 遺伝子構造と発現

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蛋白質核酸酵素:新しい誘導型シクロオキシゲナーゼ : 遺伝子構造と発現
新 しい誘導型シクロオキ シゲナーゼ
遺伝子構造と発現調節機構を中心にして
井上裕康 ・横山知永子 ・田辺
忠
プロスタグランジン・
エンドペルオキシド合成酵素 [
シクロオキシゲナーゼ (00X) と
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絡称される場合が多い]はそのユニークな酵素化学的性質のみならず,アスピリンなど多
くの抗炎症薬の標的と考えられる点で注目されてきた。近年,本酵素の新 しい誘導型アイ
ソザイムが見いだされ,以前より研究されてきた酵素とは組織分布や発現パターンが異な
り,さまざまな刺激によって迅速かつ一遇性に誘導されることか ら,炎症との関与が示唆
されている。本稿では, この数年間に多くの知見が得られている誘導型アイソザイムにつ
いて,遺伝子構造と発現調節機構を中心にして紹介する。
【プ ロ ス タ グ ラ ン ジ ン ・エ ン ドペ ル オ キ シ ド合 成 酵 素-2】
【シ ク ロ オ キ シ ゲ ナ ー ゼ 】 【
遺 伝子構 造 】 【
発 現調 節】
a
ン酸 よ り生 成 さ れ る生 理 活 性 物 質 の 生 合 成 経 路 を ア ラ
better aspirin” と題 す る記 事 が 掲 載 さ れ た1)
。「
副 作用
キ ドン 酸 カ ス ケ ー ド と総 称 す る。 ア ラ キ ド ン酸 カ ス ケ
の 少 な い 抗 炎 症 剤 」 を 開 発 す る た め に は, 以 前 よ り解
ー ドの 中 で 重 要 な 経 路 の ひ と つ で あ る プ ロ ス タ グ ラ ン
析 が 進 め られ て い る プ ロ ス タ グ ラ ン ジ ン ・エ ン ドペ ル
ジ ン合 成 系 は, そ の律 速 酵 素 で あ るPESに
は じ め に1994年1月
のNature誌
に“Towards よ って お も
オ キ シ ド合 成 酵 素
(prostaglandin endoperoxide
に制 御 され て い る。PESは2分
synthase以
略 す )の1型
て ア ラ キ ド ン酸 か ら プ ロ ス タ グ ラ ン ジ ンG2(PGG2)
下PESと
ア イ ソザ イ ム (PES-
1)の 活 性 に は 影 響 を与 え ず , 新 し く発 見 され た2型
イ ソザ イ ム
ア
生 成 す る シク ロオキ シゲ ナー ゼ 反 応 と,PGG2よ
(PES-2) の 活 性 を 特 異 的 に 阻 害 す る必 要
が あ る とす る魅 力 的 な仮 説 を 著 者Vaneは
子 の酵 素 の導 入 に よ っ
を
りPGH2
を生 成 す る ヒ ドロ ペ ル オ キ シ ダ ー ゼ 反 応 と2つ の 反 応
紹 介 して い
を触 媒 す る二 機 能 性 酵 素 (bifunctional enzyme)
る。
る2)
。 分 子 量 約70Kの
サ ブ ユ ニ ッ トの2量
であ
体 か らな る
外 か らの 刺 激 を受 け た 細 胞 は ホ ス ホ リパ ー ゼA2の
活
本 酵 素 は, ヘ ム を 含 む 膜 結 合 性 糖 蛋 白 質 で あ り, シ ク
性 化 に よ り, 細 胞 膜 な ど の リ ン脂 質 か ら炭 素 数20の
不
ロ オ キ シ ゲ ナ ー ゼ (COX)
飽 和 脂 肪 酸 で あ る ア ラ キ ド ン酸 を遊 離 す る。 こ の遊 離
した ア ラ キ ドン酸 は , 細 胞 内 のPES,
と一 般 的 に よ ば れ る こ とが
多い。
リ ポキ シゲ ナ ー
以 前 よ り研 究 さ れ て きたPES-1が
, さ まざ まな 組 織
ゼ な どの 酵 素 の 働 きに よ り, プ ロ ス タグ ラ ン ジ ン (PG),
に 広 く分 布 し, お も に構 成 的 (constitutive) な発 現 を
トロ ン ボ キ サ ン, お よ び ロ イ コ ト リエ ン な どの さ ま ざ
示 す の に 対 して , 新 し く見 い だ さ れ た誘 導 型 ア イ ソザ
ま な 生 理 活 性 物 質 に転 換 さ れ る 。 この よ う な ア ラ キ ド
イ ムPES−2は
Hiroyasu
Inoue,Chieko
[Department
Structure
Yokoyama,Tadashi
of Pharmacology,National
and
Expression
of
an
Tanabe,
Cardiovascular
Inducible
Prostaglandin
, イ ン タ ー ロ イ キ ン (IL)-1な ど の 炎 症
国 立 循 環 器 病 セ ン タ ー 研 究 所 薬 理 部
Center
Endoperoxide
Research
(〒565
吹 田 市 藤 白 台5-7-1)
Institute,Fujishiro-dai,Suita,Osaka565,Japan]
Synthase
Gene
399
Ⅰ
Ⅱ
42
蛋 白質
核酸
酵素
Vol.40
No.4(1995)
性 サ イ トカ イ ンや リ ポ ポ リサ ッ カ リ ド (LPS) 刺 激 に
と を 明 らか に し た12)
。 こ の よ う に,PES-2が
よ り短 時 間 に誘 導 され る な ど, 発 現 パ タ ー ンがPES-1
し初 期 に 応 答 す る遺 伝 子 の ひ と つ と して 同定 され た こ
と異 な っ て い る 。 こ の2つ
と は, そ の 機 能 を考 え る う え で 興 味 深 い 。
の ア イ ソザ イ ム の発 現 調 節
刺 激 に対
機 構 , ひ い て は そ の 生 体 内 で の 役 割 を 明 らか に す る こ
とは,前述 の魅 力的 な仮 説 の検 証 につ なが るので はな
い か と考 え られ , 世 界 中 の研 究 者 か ら注 目 を集 め て き
た 。 こ の数 年PES-2に
関 す る多 くの知 見 が , 分 子 生 物
cDNAク
ロー ニ ン グ とその塩 基 配 列 の 解 析 の結 果 , ヒ
学 的 な手 法 を取 り入 れ る こ とに よっ て蓄 積 され てお り3)
,
ツ ジ , マ ウ ス お よ び ヒ トのPES-1mRNAは
本 稿 で は遺 伝 子 構 造 と発 現 調 節 機 構 を 中 心 に し て , こ
約2.8kbの
れ ら の成 果 を 紹 介 し た い 。
含 む599∼600ア
長 さで ,23∼24残
基 の シグ ナ ル ペ プチ ドを
ミノ 酸 残 基 を コ ー ドす る翻 訳 領 域 を も
ち , ア ミノ酸 配 列 は互 い に約90%
方 ,PES-2で
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は, ヒツ ジ気 管 上 皮 細 胞 の初 代
培 養 で , 既 知 のPESmRNA(2.8kb)
し な いPESの
の 変 動 に一 致
酵 素 活 性 変 動 が , 緩 や か なハ イ ブ リダ イ
の相 同 性 を示 した。 一
は, ニ ワ トリ8)
, マ ウ ス11)
, ラ ッ ト13)
およ
び ヒ ト14)
のmRNAは
1989年Holtzmanら
いず れ も
,4∼4.5kbの
長 さで,17残 基 の
シ グ ナ ルペ プ チ ドを 含 む603∼604ア
ミ ノ酸 残 基 を コ ー
ドす る翻 訳 領 域 を も ち, 互 い に約81∼88%
示 した 。 な おPES-2の
成 熟 酵 素 のN末
の相 同性 を
端 は ラ ッ トで 報
ゼ ー シ ョン条 件 で 検 出 され るPES様mRNA(4.0kb)
告 され た結 果15)に基 づ い て い る。 同 じ種 にお け るPES−
の 変 動 に よっ て 説 明 で き る こ とを 報 告 した4)
。 この 結 果
2とPES-1の
は新 し いPESの
間 の 相 同 性 よ り低 く約59∼61%
で あ った 。 この結 果 は,
2の 発 見 は, 刺 激 に対 し初 期 に応 答 す る遺 伝 子 (imme-
哺 乳 類 と鳥 類 の 分 岐 以 前 に2つ
の ア イ ソザ イ ム が 誕 生
diate-early
し た こ と を示 唆 して い る16,17)
。 ヒ トPES-1とPES-2に
存 在 を示 唆 す る もの で あ った が,PES-
geneま
解 析 し て い た2組
た はprimary
gene) を
の グ ル ー プ に よ り, そ れ まで に 報 告
され て い たPES-1cDNAの
し,PESと
response
塩 基 配 列 と高 い相 同 性 を示
して の 酵 素 活 性 を も つ こ とが 予 想 され る遺
伝 子 発 現 産 物 と し て ほ ぼ 同 時 (1991年 )に報 告 さ れ た。
す なわ ちSimmonsら
は, ニ ワ トリ胚 繊 維 芽 細 胞 にお
お け る1次
相 同 性 は, 同 一 ア イ ソザ イ ム に お け る種
構 造 上 の 比 較 を 図1に
違 点 と し て , ①N末
示 したが, お もな相
端 の シ グ ナ ル ペ プチ ドにお け る 長
さ, お よ び ア ミ ノ 酸 配 列 の 違 い , ②C末
PES-2はPES-1に
比 べ18残
端 領 域 が,
基 長 い こ とが あげ られ る。
しか し な が ら, そ の ほ か の 構 造 上 の 特 徴
(
ヘ ム結 合 部
い て ラ ウ ス 肉 腫 ウ イ ル ス の 感 染 に よ っ て速 や か に発 現
位 , ア ス ピ リ ン で ア セ チ ル 化 され る セ リン 残 基 な ど )
が 誘 導 され る一 群 のmRNAを
解 析 してい た とこ ろ, そ
は よ く保 持 さ れ て い た 。
の 中 の1つ で あ るCEF-147の
塩 基 配 列 か ら予 想 され る
ア ミノ 酸 配 列 が ,cDNAの
塩 基 配 列 か ら導 か れ る ヒ ツ
ジ精 嚢 腺PES-15∼7) の ア ミノ 酸 配 列 と約59%
の相 同 性
を 示 す こ と を 報 告 し た8)
。
一方
,Herschmanら
PES-2酵
素 蛋 白質 の 立 体 構 造 は不 明 で あ るが , 最 近
ヒツ ジPES-1酵
3.5Aの
素 蛋 白 質 の構 造 がX線
解 像 度 で 決 定 さ れ た19)
。 図1に
PES-1とPES-2の1次
は, 休 止 期 のマ ウ スSwiss3T3
細 胞 を発 癌 プロモ ー ター であ るホ ルボ ールエ ステル (TPA)
結 晶解析 により
示 した よ うな
構 造 の相 同 性 か ら, 立 体 構 造
に 関 して も, 両 者 は か な り近 似 して い る と考 え られ る。
PES-1酵
素 蛋 白質 は,EGF(
上 皮 増 殖 因 子 )様 ドメ イ
で 処 理 した と き に , 短 時 間 の う ち に誘 導 さ れ る遺 伝 子
ン20)
, 膜 結 合 モ チ ー フ, お よび 酵 素 機 能 ドメ イ ン とい う
発 現 産 物 (TIS;TPA-inducible-sequence)
3つ の 独 立 し た 折 り た た み 単 位 に よ り構 成 され て い た
て い た が , そ の 中 で ,TIS10mRNAの
を解 析 し
塩 基 配 列 が604
ア ミノ 酸 残 基 を コ ー ド して お り, マ ウ ス9)
, ヒツ ジ , ヒ
ト10)
のPES-1の
配 列 と約60%
の 相 同 性 を示 す ことを報
(
図1)。EGF様
ドメ イ ン はEGF様
ドメ イ ン内 , お よ び
酵 素 機 能 ドメ イ ン と の 問 で ジ ス ル フ ィ ド結 合 を し て お
り,蛋 白質 /蛋 白 質 お よび 蛋 白 質 /膜 との相 互 作 用 に関 与
胞で
す る こ とが 示 唆 さ れ て い る21)
。膜 結 合 モ チ ー フ は4つ の
同 様 に シ ク ロ オ キ シゲ ナ ー ゼ 活 性
両 親 媒 性 を も つ α ヘ リ ッ クス 構 造 よ り構 成 され ,そ の構
と ヒ ドロ ペ ル オ キ シ ダ ー ゼ活 性 の 両 方 の活 性 を も つ こ
造 か ら本 酵 素 が リ ン脂 質 膜 を 貫 通 せ ず に結 合 し て い る
告 した11)
。 その 後 彼 らはTIS10蛋
発 現 さ せ ,PES-1と
400
白 質 をCOS-1細
43
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新 しい誘導型 シク ロオキシゲナーゼ
図1
ヒ トPES-1とPES-2の1次
ア ミ ノ酸 配 列 の 比 較
構 造 の 比 較10,14,19,26)
(A)お よ び そ の 模 式 図 (B)を示 す 。 ヘ ム の リガ ン ドと な っ て い る ヒス チ ジ ン残 基
反 応 に関 与 す るチ ロ シ ン残 基
(▲ ), ア ス ピ リン に よ っ て ア セ チ ル 化 され る セ リ ン残 基
(
● ), シ ク ロ オ キ シ ゲ ナ ー ゼ
(〇) を 示 す 。 成 熟 酵 素 蛋 白 質 のN末
端 の残 基
を下 線 で 示 す 。 矢 印 は , 遺伝 子 構 造 決 定 の 結 果 見 い だ され た イ ン トロ ン の挿 入位 置 を 示 す 。
401
Ⅲ
44
“
蛋 白質 核 酸 酵 素 monotopic Vol.40 No.4(1995)
membrane
protein*I” で あ る こ とが 予 想
さ れ て い る 。 基 質 で あ る遊 離
ア ラ キ ドン酸 が 脂 質 二 重 層 と
結 合 し た 状 態 に あ る と考 え ら
れ る こ とか ら, この 知 見 は 基
質 の活性部 位 への 出入 りを考
える うえで興味 深 い。
酵 素 機 能 ドメ イ ン は ミエ ロ
ペ ル オ キ シ ダー ゼ とア ミ ノ酸
配 列 で は約20%
の相 同 性 を示
す16)に す ぎな い が , 全 体 的 な
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トポ ロ ジー は, お ど ろ くほ ど
よ く似 てい た19)
。 シ クロオ キ シ
ゲ ナ ー ゼ 活 性 部 位 は膜 結 合 ド
メ イ ン か ら酵 素 機 能 ドメ イ ン
図2
ヒ トPES-1遺
伝 子 とPES−2遺
伝 子 の 構 造 の 比 較10,26}
エ キ ソ ン ーイ ン トロ ン構 造 お よ び, ス プ ラ イ シ ン グ後 のmRNA構
造 を示 す。 陰 影 をつ け た領 域
は 翻 訳 領 域 を , つ け て い な い領 域 は 非翻 訳 領 域 を, 枠 内 の 数 字 は ヌ ク レオ チ ド数 を示 す。
に 向 か っ て , 長 く細 い 疎 水 性
の チ ャ ン ネ ル (8×25A) に よ り構 成 され て い る の に対
し, ペ ル オ キ シ ダ ー ゼ 活 性 部 位 は そ の 近 傍 の, た だ し
空 間 的 に は区 別 され た 場 所 に 存 在 し て い た 。 シ ク ロ オ
キ シ ゲ ナ ー ゼ 活 性 部 位 を構 成 す る疎 水 性 の チ ャ ン ネ ル
筆 者 ら は ヒ トPES-1遺
伝 子 の 構 造 を 決 定 して , その
は非 ス テ ロ イ ド性 抗 炎 症 薬 の 結 合 部 位 と な っ て い る と
遺 伝 子 が 約22kbの
考 え られ , た と え ば ア ス ピ リ ン の 場 合 , ア ス ピ リ ン に
構 成 され て い る こ と を1989年
よ っ て セ リ ン残 基 が ア セ チ ル 化 され る こ とで チ ャ ン ネ
最 近 ヒ トPES-2遺
ル を塞 ぎ, 活 性 を 阻 害 す る と推 測 さ れ た 。 一 方 ,PES
kbの 長 さ を もち ,10個
酵 素 の膜 上 の 存 在 様 式 に関 し て , 以 前 , 膜 貫 通 型 の モ
こ と を見 い だ した26)
。 両 者 の 比 較 を図2に
デ ル が 複 数 の研 究 室 か ら提 出 さ れ て い た が , 最 近 , 界
ヒ トPES-2遺
PES-2遺
面 活 性 剤 と抗 体 を 用 い た 方 法 に よ っ て , 「monotopic
membrane
proteinと
して 小 胞 体 の ル ー メ ン側 (
内腔側 )
に位 置 し て い る 」とす るX線
解 析 の結 果 に合 致 したモ
デ ル が 提 出 され て い る22)
。 彼 ら は ま た ,PES−2と
脂 質 膜 との 結 合 様 式 に関 し て も,PES-1と
長 さ を もち ,11個
の エキ ソンより
に 明 らか に した10)
。 また ,
伝 子 の 単 離 に成 功 し, そ れ が 約8.3
の エ キ ソ ン よ り構 成 さ れ て い る
示 す。
伝 子 は, マ ウ ス11)お よ び ニ ワ ト リ27)
伝 子 とそ の 大 き さ お よ び 構 成 が ほぼ 同 じで あ
り, 遺 伝 子 の 構 造 に お い て も, 種 を越 え て保 存 さ れ て
い る こ とが わ か っ た。 エ キ ソ ン/イ ン トロ ンの 境 界 に関
リン
同様 であ ろ
し て は ,PES-1の
PES-2で
第1イ
ン トロ ン に 相 当 す る 部 分 が
は除 去 され た 構 造 とな っ て い る以 外 ,PES-
う と予 想 して い る。 最 近 筆 者 ら は , ヘ ム を 有 す る膜 蛋
1とPES-2の
白 質 で あ る トロ ン ボ キ サ ン合 成 酵 素 , プ ロ ス タ サ イ ク
れ て お り, 両 遺 伝 子 が 同 一 の 祖 先 遺 伝 子 か ら遺 伝 子 重
リ ン合 成 酵 素 のcDNAク
複 に よ っ て 生 成 し た こ とが 示 唆 され る16)
。mRNAの
ロ ー ニ ン グ を行 な い , そ の構
造 を明 らか に し た23∼25)
が ,PES-1お
よ びPES-2酵
素
の 次 の 反 応 に か か わ る 酵 素 と し て , こ れ ら酵 素 の 基 質
結 合 部 位 の構 造 や 膜 上 の 存 在 様 式 に も興 味 が もたれ る。
間 で エ キ ソ ン の 構 造 は非 常 に よ く保 存 さ
きさに関 して見 る と,PES-2はPES-1よ
く, これ はPES-2の
Blobelは
膜 内 在 性 蛋 白質
(integral
membrane
protein)
402
定 義 し て い る 。 [Blobel,G.
どに
不 安 定 化 に 関 与 す る と考 え られ
をmonotopic,bitopic,polytopicの3種
層 の う ち , 一 層 に の み 埋 め 込 ま れ た 結 合 を し て い る 膜 内 在 性 蛋 白 質 をmonotopic,
る膜 蛋 白 質 を そ れ ぞ れbitopic,polytopicと
り約1.2kb長
長 い3〆 非 翻 訳 領 域 に起 因 す る。 ま
た, い くつ か の 癌 遺 伝 子 や サ イ トカ イ ンmRNAな
見 い だ され ,mRNAの
*1
大
リ ン 脂 質 二 重 層 を1回
に分 類 した 。 リ ン脂 質 二 重
あ る い は複 数 回 貫 通 し て い
:Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77,1496-1500(1980)
]
Ⅳ
45
新しい誘導型シク ロオキシゲナーゼ
図3
マ ク ロ フ ァ ー ジ 様 に 分 化 させ た ヒ トU937細
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る 配 列“AUUUA”18)
がPES-2の3'非
胞 にLPS添
翻 訳 領 域 に多 数
加 後 のPES-1お
よ びPES-2のmRNAの
誘導 時 間経 過
て 示 す 。 この 細 胞 にお い て,PES-2遺
伝 子 の 発 現 は単
見 つ か っ た (図2)。 エ キ ソ ン /イ ン トロ ンの 境 界 と前 述
にLPS刺
し たX線
っ て 単 球 /マ ク ロ フ ァー ジ様 細 胞 に 分 化 させ る とPES-
構 造 解 析 の 結 果 を 考 えあわ せ る と,EGF様
ド
メ イ ン お よび 膜 結 合 モ チ ー フ が そ れ ぞ れ ほ ぼ1個
のエ
キ ソ ン に よ っ て コ ー ド され て お り (図1), エ キ ソ ン が
機 能 的 な1つ
の 単 位 とな っ て 蛋 白質 を 生 成 した 可 能 性
(exon-shuffling説
2mRNAが
) が 示 唆 さ れ る10)。
他 の ペ ル オ キ シ ダ ー ゼ に対 して 進 化 的
に 非 常 に 遠 い 関 係 で あ る こ とが 報 告 さ れ て い る が , ど
の よ う に し てペ ル オ キ シダ ー ゼ 祖 先 遺 伝 子 か らPESが
認 め られ る よ う にな り30)
, さ らにLPS刺
よ う に ,TPAは
マ ウスSwiss3T3細
胞 に お い てPES-
胞 にお い て は, 分 化 誘 導 剤 として 働 く と考 え られ た。 こ
の よ う にU937細
胞 は分 化 に伴 う発 現 と分 化 後 の刺 激 に
よ る発 現 誘 導 を同 時 に解 析 で き る 特 徴 を備 え て い る。
図3に
示 す よ う に分 化 し たU937細
2mRNA発
た の か , 興 味 が もた れ る16,19)
。PES-2の
見 い だ され ,4∼12時
イ ン トロ ンの
比 べ て全 般 的 に 短 い 。 この こ と は
immediate-earlygene力
激
に よ っ て 迅 速 な発 現 誘 導 が 起 こ る (
投稿中)
。 前述 した
シ ク ロオ キ シ ゲ ナ ー ゼ 活 性 部 位 を 進 化 の過 程 で 獲 得 し
大 き さ は ,PES-1に
理 によ
2遺 伝 子 の 迅 速 な 発 現 誘 導 ひ き起 こ す11)が ,U937細
真 核 生 物 の ペ ル オ キ シ ダ ー ゼ が 遺 伝 子 フ ァ ミ リー を
形 成 し,PESは
激 を して も誘 導 され な い が ,TPA処
雪
い ず れ も小 さな 遺 伝 子 で, そ
の うち の 多 数 の遺 伝 子 はイ ン トロ ンの数 も少 な く,6kb
現 は,LPS刺
激 後2時
胞 に お け るPES間 で 明 らかな上 昇 が
問 で 最 大 に達 し, 以 下 漸 減 す る 。
ヒ ト肺 胞 マ ク ロ フ ァー ジ お よ び単 球 に お い て ,LPS刺
激 に よ りPES-2の
発 現 が 誘 導 され る とい う報 告31)が あ
り, 筆 者 らが 観 察 したTPAで
分 化 させ たU937細
胞 の
以 下 の 大 き さで あ る こ と と関 連 して いるか も しれ な い28)
。
性 質 とほ ぼ 一 致 して い る。 一 方 ,PES-1の
な お ,PES-1お
化 ・未 分 化 に か か わ らず 検 出 さ れ (
投稿中)
, 分 化 した
よびPES-2遺
伝 子 は, 染 色 体 上 で 連 鎖
し て お らず , ヒ トの 場 合 ,PES-1は
q33.3,PES-2遺
伝 子 は第1染
第9染
色 体q32-
細 胞 に お い て も,PES-2ほ
発 現 は, 分
どの :LPS刺 激 に よ る発 現 誘
色 体q25.2-q25.3に
位
導 は観察 され なか った (
図3) 。PES-2遺
置 し て お り26・29)
, マ ウ ス に お い て は, そ れ ぞれ 第2染
色
導 は 程 度 の 差 は あ る もの の 一 過 性 で あ る 。 例 外 的 に ニ
体 (PES-1) と第1染
色 体 (PES-2) に 位 置 して い た27)
。
伝 子 の発 現 誘
ワ ト リ胚 繊 維 芽 細 胞 に お け る発 癌 遺 伝 子 産 物pp60v-src
(V-SYCに よ っ て コ ー ドさ れ る チ ロ シ ン リ ン酸 化 酵 素 )
に よ るPES-2mRNAの
た だ し,NIH3T3細
PES−2のmRNAの
発 現 レベ ル は通 常 は非 常 に低 く,
っ てPES-2遺
発 現 誘 導 は持 続 的 で あ っ た8)
。
胞 に お い て は,V-SYCの
伝 子 の発 現 誘 導 は観 察 され ず , 他 の 発 癌
さ ま ざ ま な 刺 激 に よ っ て 短 時 間 に 著 し く誘 導 さ れ る こ
遺 伝 子 で あ るv-fesに
とが 多 くの グ ル ー プ よ り報 告 され て お り, こ の 現 象 は
が 報 告 さ れ て い る32)
。
PES-2の
注 目 す べ き特 徴 の ひ とつ で あ る。 図3に
者 らの 用 い た ヒ ト単 芽 球 由 来U937細
,筆
胞 の結 果 を例 とし
Kujubuら
発現によ
よ るPES-2mRNAの
発現誘 導
は ラ ッ ト副 腎 褐 色 細 胞 腫 由来 のPC12細
にお いて, 神経 成長 因子
(NGF) やTPA処
胞
理 により
403
Ⅴ
46
蛋 白質
核酸
PES-2(TIS10)
酵素
Vol.40
以 外 のTIS遺
No.4(1995)
伝 子
TIS8,TIS11,TIS21,c-fos/TIS28)
PES-2は
は誘 導 され るが ,
い だ され たが ,5ノ上 流 領 域275bpの
よ るPES-2の
と約60%
の相 同 性 を示 し, この 領 域 に はKF-κBお
びNF-IL6(
別 名C/EBPβ
発 現 を 調 べ た が , 非 常 に 限 られ た細 胞 に の み 発 現 が 観
レ メ ン ト (CRE),TATAボ
察 され た11)
。
た26)
。 図4Aで
今 まで にPES-2遺
配 列 はマ ウ ス12}お
よび ラ ッ ト43)PES−2遺 伝 子 の相 当 す る領 域 の塩 基 配 列
誘 導 され ない こ とを報 告 し て い る33)
。 さ ら に,
彼 ら は い くつ か の 樹 立 細 胞 株 でTPAに
答エ
ッ ク ス な どが 見 い だ され
模 式 的 に 示 す よ う に,NF-IL6結
列 ,CRE,TATAボ
伝 子の発現 誘導 が観察 されている
)結 合 配 列 ,cAMP応
よ
合配
ッ ク ス は, マ ウ ス お よ び ラ ッ トに
の は , 繊 維 芽 細 胞8・11)
単 球 /マ ク ロ フ ァ ー ジ 系 細
お い て もほ ぼ 同 じ位 置 に 見 い だ さ れ た 。 マ ウ ス44)お よ
胞31・34,35)
, 内 皮 細 胞14,36)
, 骨 芽 細 胞37,38)
,卵胞穎粒 膜
び ヒ ト45)PES-1遺 伝 子 の 上 流 領 域 の 配 列 はPES-2と
細 胞13)
, 平 滑 筋 細 胞39)
, 滑 膜 細 胞40)
,HEL細
は ま っ た く異 な り,TATAボ
胞41)な
ッ クス は 見 い だ さ れ な か
ど で あ る 。 ま た 同 じマ ウ ス の マ ク ロ フ ァー ジ 系 細 胞 で
っ た。 な お , ニ ワ トリPES-2遺
あ っ て も,RAW264.7細
塩 基 配 列 の相 同 性 は見 い だ され な か っ たが , ①TATA
胞 で はLPS刺
導 が 観 察 され るが ,P388D1細
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(TIS1,TIS7,
激 に よ る発 現 誘
胞 で は検 出 され な い とい
伝 子27)の上 流 領 域 に は
ボ ッ ク ス が 転 写 開 始 点 の 約30bp上
CREが5'上
る 過 程 で 単 に そ の 性 質 を欠 失 し た た め に よ る も の で あ
PES-2遺
ろ う か 。 そ れ と も, た と え ば マ ク ロ フ ァ ー ジ 系 細 胞 を
合 配 列 が 存 在 す る 点 で , ヒ ト遺 伝 子 と共 通 し て い た 。
さ ら に 分 類 し た場 合 ,PES-2を
発 現 して い る 細 胞 と発
流 領 域275bpの
流 にあ る点 ,②
っ た例42)な どが あ る。 この 現 象 は細 胞 株 と し て樹 立 す
中 に 存 在 す る 点 で は他 の
伝 子 と共 通 し, ま た この 領 域 内 でNF-xB結
そ こで 筆 者 ら は こ れ ら の シ ス エ レ メ ン トが 実 際 に 機
現 してい ない細胞 が存在 して
お り, 樹 立 細 胞 株 は そ の う ち
の ひ と つ の 性 質 を反 映 して い
る の で あ ろ うか 。 また ,U937
細 胞 で み られ る よ うな 未 分 化
状 態 と分 化 状 態 の 相 違 を意 味
して い る の で あ ろ うか 。 い ず
れ にせ よPES-2遺
伝 子 の発 現
お よ び そ の 誘 導 が,他 の
immediate-early
geneに
比
べ , 限 られ た 細 胞 で の み 観 察
さ れ る こ と は そ の 機 能 を考 え
る うえで,今 後 に残 された課
題 であ る。
ヒ トPES-2遺
伝 子 の転 写
は翻 訳 開 始 コ ド ン の134塩
基
上 流 か ら始 ま る こ とが , プ ラ
イ マ ー 伸 長 法 に よ り明 ら か と
な った26)
。 ヒ トPES-2遺
の5'上
伝子
流 領 域 約1.69kbの
配 列 を決 定 した と こ ろ , さ ま
ざまな転 写因 子認識 配列 が見
404
図4
ヒ トPES-2遺
伝 子 の転 写 調節 領 域 とプ ロモ ー タ ー活 性
(A) 転 写 開 始 点 の 上 流 約300塩
配 列 は 文 献60を
基 に お け る ヒ ト, ラ ッ ト, マ ウ ス の 間 の 比 較 。 コ ンセ ン サ ス
用いた。
(B) そ れ ぞ れ 転 写 因 子 結 合 配 列 を 標 的 に した ル シ フ ェ ラー ゼ レ ポ ー タ ー ベ ク タ ー を作 製 し,
分 化 したU937細
導 入 した30)
。
胞 に導 入 し た。 ま た , 遺 伝 子 導 入 効 率 の 補 正 の た め ,pCMV-βgalを
同時 に
Ⅵ
47
新 しい誘導型シク ロオキ シゲナーゼ
能 して い る か ど うか を解 析 す
るため, ル シ フェ ラー ゼ をレ
ポ ー タ ー とす る発 現 ベ ク タ ー
を 分 化 し たU937細
胞 に導 入
す る実 験 を 行 な っ た 。 そ の 結
果 ,CREが
ヒ トPES-2遺
伝
子 の 転 写 活 性 に必 要 で あ る こ
と を 明 らか に し た (
図4B)30) 。
この こ とはHerschmanら
の報
告46)と一 致 し, フ ォ ル ス コ リ
ンに よ りこの細 胞 でPES-2の
発 現 誘 導 が 起 き る こ と と も一
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致 して い る26)
。CRE結
合蛋 白
質 (CREB) は, 当 初 プ ロ テ イ
ン キ ナ ー ゼAに
よ り リ ン酸 化
さ れ 転 写 活 性 を促 進 す る も の
と して 見 い だ され た が , 現 在
で はCREに
結 合 す る蛋 白 質 と
し て, 複 合 体 形 成 能 を も っ た
塩 基 性 領 域 ・ロ イ シ ン ジ ッパ
図5
U937細 胞 に お け るCRE結
合能
32Pで 標 識 した ヒ トPES -2遺 伝 子 上 流 のCRE配
分 化 したU937細
列 を プ ロ ー プ に して
(U)未 分 化 お よ び
(D)
胞 の 核 抽 出液 を 用 い て ゲ ル シ フ トア ッ セ イ を 行 な っ た30)
。
ー転 写 因 子 フ ァ ミ リー に属 す
る10種
類 以 上 の メ ンバ ー が 明 らか とな り, 複 雑 な様 相
を呈 して い る47)
。 筆 者 ら は未 分 化 のU937細
され な いが ,TPAで
胞 で は検 出
分 化 した細 胞 で は検 出 され るCRE
に結 合 す る蛋 白質 複 合 体 を ゲ ル シ フ トア ッ セ イ に よ り
見 い だ して お り (
図5)30)
, 現 在 解 析 中で あ る。
一方
,SiroisとRichardsは
ラ ッ ト穎 粒 膜 細 胞 に おい
て , 性 腺 刺 激 ホ ル モ ン に よ るPES-2遺
に ,NF-IL6結
伝 子 の発 現 誘 導
合 配 列 が 重 要 で あ る こ とを 報 告 して い
る48)
。 筆 者 ら もPES-2遺
伝 子 の 発 現 誘 導 に はCRE以
階 にお け る調 節 , ②mRNAの
安 定 性 に よる調 節 , ③ 翻
訳 段 階 にお け る調節 ,④ 酵 素蛋 白質 の安定 性 に よる調
節 な どが あ げ られ る。
① に っ い て は, ニ ワ トリPES-2の
転 写 産 物 に お いて ,
ラ ウ ス 肉 腫 ウ イ ル ス の 感 染 に よ り, 通 常 は ス プ ラ イ シ
ン グ さ れ な い 第 一 イ ン トロ ンの ス プ ラ イ シ ン グ が 起 こ
り, 成 熟PES-2mRNAの
だ し マ ウ スSwiss3T3細
蓄 積 が 観 察 され て い る8)
。た
胞 に お い て , そ の よ うな 現 象
は観 察 され な か っ た12)
。 ② について ,IL-1α
外 の 因 子 も必 要 で あ る とい う結 果 を 得 て い る (
投稿 準 備
2mRNAレ
中 )。 遺 伝 子 の転 写 は, 複 数 の転 写 因 子 の複 合 体 形 成 お
1α に よ る成 熟mRNA半
よ び,RNAポ
つ こ と が 報 告 さ れ て い る50)
。PES-2mRNAの
リメ ラー ゼ を含 む基 本 転 写 因 子 複 合 体 と
に よるPES-
ベ ル の上 昇 に は , 転 写 の活 性 化 以 外 にIL減 期 の 延 長 が 重 要 な役 割 を も
場 合3'
の 複 雑 な相 互 作 用 に よっ て行 なわれ る と考 え られ る49)
が,
非 翻 訳 領 域 に 見 い だ さ れ た“AUUUA”
PES-2遺
どが 考 え ら れ る が , 実 際 に ど の よ う に 調 節 が 行 な わ れ
伝 子 の 転 写 機 構 の解 明 は大 きな 課 題 の ひ とつ
で あ る。
配 列 の関与 な
て い る か は興 味 あ る 問 題 で あ る。 さ ら に, ③ と も密 接
に 関 連 す る と考 え られ る が ,COS-7細
胞 で のワクシニ
ア ウイ ル ス 発 現 系 を 用 いた 実 験 において ,PES-2cDNA
の翻 訳 領 域 の み を 含 む 組 換 え体 で は低 い 酵 素 発 現 し か
PES-2酵
素蛋 白質 の発 現 調節 機構 を考 えた場 合,遺
観 察 され な か っ た が ,PES-1の3’
非 翻 訳 領 域 を組 換 え
伝子 の転 写 レベ ル の調 節 のみ で説 明す る ことはむず か
体 に 付 加 す る こ と に よ り, 高 い 発 現 が 得 ら れ た との 報
しい。 そ の他 の調 節 機構 として,① スプ ライ シ ング段
告 が あ る51)
。 こ の こ とは ,PES-2mRNAの
翻訳領 域
405
Ⅶ
48
蛋白質
核酸
酵素
Vol.40
No.4(1995)
に, すで に発 現 量 を制 御 す る配列 が含 まれ, そ れ が
や コ ン カ ナ バ リ ンA刺
RNAの3'非
る こ とが 示 さ れ た55,56)
が ,nuclear-runonア
翻 訳 領 域 と関 連 して調 節 され て い る こ とを
示 唆 す る 。 翻 訳 領 域 の 中 にRNAの
不 安 定 化 をひ き起 こ
よ っ て ,IL-10に
激 に よ るPG産
よ るPES−2遺
生 増 加 を抑 制 す
ッセイ に
伝子 の転写 阻害 が報 告
す 配 列 が 存 在 す る こ とは, す で にc-fos,c-myc,R-チ
され た57)
。 以 上 の 結 果 は, 遺 伝 子 の さ らに上 流 また は下
ュー ブ リ ンな どで報 告 され て い る52)
。 ま た, ④ に つ い て
流 にDEXな
は, ニ ワ ト リ胚 繊 維 芽 細 胞 に お い て, パ ル ス チ ェ イ ス
示 唆 す る が , 転 写 抑 制 以 外 の 可 能 性 も否 定 で き ず , 非
実 験 の 結 果 , 誘 導 さ れ るPES-2酵
常 に 興 味 深 い 問 題 で あ る。
素 の 半 減 期 が22分
どに よ る転 写 抑 制 に か か わ る配 列 の 存 在 を
と非 常 に 短 い32)こ とが 報 告 され て い る。
お わ りに
最 初 に 述 べ た よ う に , 非 ス テ ロイ ド性 抗 炎
症 薬 (NSAIDs)
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種 々 の 刺 激 に よるPG産
生 の増 加 は さ まざ まな細 胞 で
の 副 作 用 がPES-1の
抗 炎 症 作 用 はPES-2の
活 性 阻 害 に あ り,
活 性 阻 害 に よ る とい う考 え方 が
報 告 さ れ て い る が , い ず れ もグル コ コ ル チ コイ ド(GC)
提 出 さ れ て い る が , そ れ を検 証 す る た め に は,PES-2
に よ っ て抑 制 され る。GCの
特 異 的 阻 害 剤 の 開 発 が 望 ま れ る。 現 在 そ の 有 望 な候 補
抗 炎 症 作 用 とPG生
合 成抑
制 の 関 係 に つ い て は, 今 ま で に 種 々 の 研 究 が な さ れ て
と して 報 告 さ れ て い るNS-39857)
き た が ,PES-2の
腺PES-1の
る。PES-2の
発 見 に よ っ て 新 た な局 面 を迎 えて い
発 見 以 前 ,GCに
に ホ ス ホ リパ ー ゼA2活
よ るPG産
生 低 下 はお も
性 の レベ ル で制 御 さ れ る た め と
が ,70% 精 製 し た ヒツ ジ胎PES-2の
的 に阻 害
は精 製 し た ヒツ ジ精 嚢
活 性 に対 して100μMで
も影 響 を与 え な い
活 性 を濃 度 依 存
(IC50=3.8μM) した。 ま た,NS-398は0.3
考 え られ て きた が , 種 々 の 刺 激 に よ り誘 導 され るPES-
∼5mg/kgラ
2遺 伝 子 の 発 現 が デ キ サ メ サ ゾ ン (DEX) で 抑 制 さ れ
と 同 程 度 の 抗 炎 症 作 用 を 示 し, さ ら に, 今 ま で の
る こ とか らPES-2関
NSAIDsで
与 の 可 能 性 が 検 討 さ れ て い る。
ReddyとHerschmanは
マ ウ スPES-2mRNAに
対す
ッ トに 経 口投 与 に よ っ て イ ン ド メ タ シ ン
副 作 用 と して 認 め られ る 胃腸 障 害 を1g/kg
と い う多 量 投 与 に よ っ て も有 意 に 示 さ な か っ た 。PES-
る ア ンチ セ ン ス オ リゴ ヌ ク レオ チ ドを細 胞 内 に 導 入 し,
1お よ びPES-2酵
PES-2の
398の
発 現 を特 異 的 に抑 制 で き る こ とを 見 い だ す と
と もに, そ の 結 果 ,TPAやPDGFに
繊 維 芽 細 胞 にお け るPG産
よって 誘 導 され る
素 のX線
よ う なPES-2特
構 造 解 析 に よ っ て ,NS-
異的 阻害 剤の作 用機構 が解 明 さ
れ , さ ら に優 れ た 薬 が 開 発 され る こ とが 期 待 され る。 一
生 , お よ びLPSに
よ っ て誘
方 前 述 した よ う に, 酵 素 活 性 阻 害 で は な く,PES-2酵
導 さ れ るマ ク ロ フ ァー ジ系 細 胞 にお け るPG産
生が抑 え
素 遺 伝 子 の 発 現 そ の もの を特 異 的 に 阻 害 す る ア ン チ セ
られ る こ と を明 らか に した53)
。 この 結 果 は リガ ン ドに よ
ン ス オ リ ゴ ヌ ク レオ チ ド を 用 い た 技 術 は 次 世 代 の 薬 の
っ て 誘 導 され るPG産
必要 であ るこ と
可 能 性 と し て興 味 深 い。 ア ンチ セ ン ス 法 の 作 用 機 構 は
を示 す と同 時 に , ア ン チ セ ン ス オ リ ゴ ヌ ク レ オ チ ドの
い ま だ 不 明 で あ り, こ の 方 法 を確 立 , 発 展 させ る た め
抗 炎 症 薬 と し て の 可 能 性 も示 して い る。
一方
,nuclear-runonア
ッセ イの 結 果 か ら,DEXに
に は,PES-2遺
よ るPES-2の
生 に はPES-2が
誘 導 抑 制 機 構 は, 転 写 阻 害 に よ る とす る
伝 子 の 転 写 か ら翻 訳 を含 む 調 節 機 構 の
解 明 が 必 要 で あ ろ う。
以 前 よ り,PGが
脳 神 経 系 に お い て睡 眠 /覚 醒 サ イ ク
報 告42・54)
と, 転 写 に は影 響 を与 え ず , 先 に述 べ た転 写
ル58》な ど, 重 要 か つ 多 様 な 役 割 を もっ こ とが 知 られ て
後 調 節 の 可 能 性 とす る報 告32)が あ る。CATや
い る が ,PES-2が
ルシフェ
脳 神 経 系 の機 能 に 関 与 して い る可 能
ラ ー ゼ を レ ポ ー タ ー とす るプ ロモ ー ター 解 析 に お い て ,
性 が あ る。 実 際 , ニ ュー ロ ン にお け るPES-2の
ニ ワ トリPES−2遺
脳 に お けるPG情
伝 子 上 流 約1.6kb27) お よ び マ ウ ス
発現 が
報 伝 達 系 を制 御 す る うえ で重 要 で あ る
プ ロモータ
こ とが 示 唆 され て い る59)
。 今 後 , さ まざ ま な領 域 で 開 発
ー 活 性 の 抑 制 を 示 し た知 見 は 報 告 され て お らず , 筆 者
さ れ た 新 し い 手 法 を, 酵 素 化 学 的 知 見 の う え に 導 入 す
ら も ま た, ヒ トPES-2遺
る こ と で ,2っ のPESア
PES−2遺
伝 子 上 流 約1kb42} の 中 にDEXで
伝 子 に お い て 同様 な 結 果 を得
て いる (
未 発 表 デ ータ)。 最 近 , 抑 制 性 サ イ トカ イ ンの 一
種 で あ るIL-4やIL-10に
406
よ って もDEXと
同 様 にLPS
イ ソザ イ ム の 生 理 的 意 義 が さ
ら に 明 らか に な っ て い くこ とが 期 待 され る。
49
新 しい誘導型シクロオキシゲナーゼ
文
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本誌 のバ ッ クナ ンバ ー は, 次 の書 店 で 品 揃 え され て お り
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,
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岡 山市 表 町)
408
平 成6年
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消 費 税 込 み定 価 )
[
特集 ] 繊 毛虫 の分 子 生物 学 (1,000円)2月
号
[
増 刊 ] 酵 母 に見 る最新 の真 核 生 物 像 (6,500円)
2月 号増 刊
[
特 集 ] 分 子 シ ャペ ロ ン とそ の誘 導 (1,000円)4月
号
[
増 刊 ] 蛋 白質 の時 代
構 造 ・物 性 ・機 能 研 究 の新局 面
(5,500円)5月
号増 刊
[
特 集 ] コ レス テ ロ ー ル代 謝 の 細 胞 生 物 学 ・分 子 生 物 学
(1,200円)7月
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[
増 刊 ] バ イ オ 高 性 能 機 器 導 入 ・共 同 利 用 マ ニ ュ ア ル
(5,700円)8月
号増 刊
[
増 刊 ] エ ボル ー シ ョン (6,000円)11月
号増刊
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