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蛋白質核酸酵素:生体機能調節にかかわるプロリンに富む領域とプロリン

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蛋白質核酸酵素:生体機能調節にかかわるプロリンに富む領域とプロリン
●ショートレビュー●
生体機能調節にかかわるプロリンに富む領域と
プロリン特異的ペプチダーゼ
丸山 進
近年,蛋 白質 リン酸化 酵素のSH3ド
メインと結合す るプロリンに富む10残 基のア ミノ酸
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配列が 見いだ される など,生 体機能 の調節 にかかわ るい くつもの重 要な蛋 白質 にプロ リン
に富 む領域が発 見され るよ うにな った。一 方,プ ロ リンの周辺,と くにイミ ノ基 側のペプ
チ ド結 合はペ プチダ ーゼ による加水 分解を 受け にくい。そ れで もプロ リンの周辺 を切断す
るペ プチダー ゼが これま でにい くつ か報告 され,プ ロリルエ ン ドペプチ ダーゼ,ジ ペ プチ
ジルペプチダーゼIV,HIV-1プ
key words
ロテアーゼな どはその機能 やインヒビターが注目されている。
【プ ロ リ ン に 富 む 配 列 】 【プ ロ リ ン特 異 的 ペ プ チ ダ ー ゼ 】
【プ ロ リル エ ン ドペ プ チ ダ ー ゼ 】 【ペ プ チ ダ ー ゼ イ ン ヒ ビタ ー 】
は じめ に
プ ロ リ ン は一 般 の ア ミ ノ酸 と は異 な り,分
子 内 環 状 構 造 を もっ イ ミ ノ酸 で あ り(図1),プ
のN末
ロ リン
1.蛋 白質中のプロリンに富む領域
端 側 は イ ミノ 基 に よ り隣 の ア ミ ノ酸 の カ ル ボ キ
シ ル 基 とペ プ チ ド結 合 を す る 。 そ し て,プ
ロ リンの存
在 部 位 で ペ プ チ ドの コ ン フ ォ メ ー シ ョン は制 限 を 受 け,
植 物 の 細 胞 壁 に 存 在 す る蛋 白 質 は ヒ ドロ キ シ プ ロ リ
ン に 富 ん で い る こ とが1960年
に 報 告 され,そ
プ ロ リ ン残 基 が 多 数 つ な が っ た場 合 に は ポ リプ ロ リ ン
ドロ キ シ プ ロ リ ン に 富 む糖 蛋 白質(エ
IIヘ リ ッ ク ス(3残
も よ ば れ る)や
基 で1回
転 の左 巻 き らせ ん 構 造)と
の 後,ヒ
クス テ ンシ ンと
プ ロ リ ン に 富 む 蛋 白 質(PRP)が
次々
よ ば れ る構 造 を と る こ とが 知 られ て い る1)。 この よ う な
と見 い だ され た2)。エ ク ス テ ン シ ン は 主 と し て双 子 葉 植
こ とか ら,多
物 の 細 胞 壁 に見 いだ され,Ser-Hyp-HyplHyp-Hypが
くの ペ プ チ ダ ー ゼ は プ ロ リ ン周 辺 の ペ プ
チ ド結 合 に は作 用 し に くい 。 一 方,プ
ロ リ ン を有 す る
生 理 活 性 ペ プ チ ドが 多 数 知 られ て い る ほ か,動
ラ ー ゲ ン はGly-Pro-Xの
物の コ
く り返 し で あ り,最 近 で は多
く り返 され て い る ケー ス が 多 く3),ニ ン ジ ン根 由来 の も
の は ポ リプ ロ リンIIヘ リ ッ クス 構 造 を とる ことがCDス
ペ ク トル か ら推 定 さ れ て い る4)。PRPはcDNAの
くの 蛋 白質 に プ ロ リ ン に 富 む 配 列 が 見 い だ さ れ る よ う
か ら明 ら か に な っ た 蛋 白 質 の 一 群 で,Ser-Hyp-HyPl
に な っ た(表1)。
Hyp-Hypモ
と,プ
本 稿 で は プ ロ リ ン に富 む配 列 の 機 能
ロ リ ン周 辺 の ペ プ チ ド結 合 を 切 断 す る ペ プ チ ダ
ー ゼ お よ び そ の イ ン ヒ ビ タ ー に つ い て 概 説 す る。
解析
チ ー フ とは 異 な る プ ロ リン に富 む く り返 し
配 列 を 有 す る5,6)。ま た,こ
の よ うな 蛋 白 質 は,穀 類 の
貯 蔵 蛋 白質 に も存 在 す る7)。植 物 に は ほ か に も グ リシ ン
に 富 む 蛋 白 質 が 知 られ て い る。 エ ク ス テ ン シ ン は 植 物
に傷 を つ ける と細 胞 壁 に 蓄 積 され る といわれ て いるが2,3,5),
Susumu
Maruyama,
Technology,
Function
工 業 技 術 院 生 命 工 学 工 業 技 術 研 究 所(〒305つ
Higashi, Tsukuba,
of Proline-Rich
Ibaraki
くば市 東1-1)
[National
Institute
of Bioscience and Human-
305, Japan]
Regions in Proteins
and Proline Specific Peptidases
857
56
蛋 白質
核酸
酵素
Vol.42
No.6(1997)
Database Center for Life Science Online Service
表I プ ロ リンに 富 む配 列 を有 す る蛋 白質 の例
a)く
り返 し回数 は 類 似 シ ー ク エ ン ス を 合 計 し た も の で あ り,タ
ン デ ム に く り返 され て い る ケ-ス
が 多 い。
これ ら の 蛋 白 質 の 詳 細 な機 能 に つ い て は 不 明 な 部 分 が
ナ ー ゼ ドメ イ ン 以 外 に見 い だ さ れ る相 同領 域 と して 発
多 い。
見 さ れ,こ
唾 液 蛋 白質 の70%は
プ ロ リ ン に 富 む ペ ブ チ ドが く り
返 し 配 列 と し て 存 在 す るPRP(酸
PRP,グ
リコ シ ル 化PRPな
とが 知 られ て い る8)。 唾 液PRPは
る こ と,ヒ
性PRP,塩
基性
ど に 分 類 され る)で あ る こ
カ ル シ ウム と結 合 す
ドロ キ シ ア パ タ イ トと結 合 す る こ と,dental
の う ちSH2ド
合 す る こ とが 知 ら れ て い た が,SH3の
よ り発 見 さ れ,こ
の グル ー プ に
れ ら蛋 白 質 のSH3と
プ ロ リ ン に 富 む10残
同 様 のSH3結
物 に 含 ま れ る ポ リ フ ェ ノ ー ル(タ
成 に 重 要 なforminや,ム
結合 す る
メ イ ンに 結 合
す る蛋 白 質3BP1,3BP2がBaltimoreら
成 に関 与 す る こ と,口 腔 細 菌 に結 合 す る こ と,ま た,食
ン ニ ン)と
機能 につ いて は
不 明 な部 分 が 多 か っ た 。 そ の後,SH3ド
pellicle(エ ナ メ ル 質 表 面 に形 成 され る 蛋 白質 薄 膜)形
こ とな どが 報 告 さ れ て い る1,9,10)。
メ イ ン に つ い て は リン酸 化 チ
ロ シ ン残 基 を含 む ペ プ チ ド配 列 を認 識 して 特 異 的 に結
結 合 す る領 域 は
基 の ア ミ ノ 酸 配 列 よ りな る こ と,
合 モ チ ー フが マ ウス 胎 仔 の 四 肢 の形 態 形
ス カ リン性 ア セ チ ル コ リン レ
セ プ タ ー に存 在 す る こ とが 明 らか に な った11)。Schreiber
細胞 内 シグナ ル伝達 制御 に もプ ロ リンに富 む配 列が
ら の グ ル ー プ は3BP1由
来 の ペ プ チ ドに注 目 し,XXX
重 要 な 役 割 を 果 た し て い る こ とが 明 らか に な っ て い る 。
PPXPXX(XはCysを
SH3(Src
プ チ ドラ イ ブ ラ リ ー を作 成 し,SrcとPI3(ホ
homology
3)ド
メ イ ン はSH2ド
メインと
と もに非 レセ プ タ ー 型 チ ロ シ ン キ ナ ー ゼ に共 通 して,キ
ジ ル イ ノ シ トー ル3)キ
除 く任 意 の ア ミノ 酸 残 基)の ペ
ナ ー ゼ のSH3ド
す るペ プ チ ドを ス ク リー ニ ング し,N末
ア ミ ノ酸 配 列 を もつ グ ル ー プ(ク
にLPXRの
し て,ク
図I
858
プ ロ リ ンの 構 造
ス ファチ
メ イ ン に結 合
端 側 にRXLの
ラ スI)とC末
端側
配 列 を もつ グ ル ー プ(ク ラ スII)を 得 た。 そ
ラ スIのRLP1ペ
プ チ ド(RKLPPRPSK)は
ポ リプ ロ リ ンIIヘ リッ ク ス構 造 を 形 成 しSH3ド
メイ ン
に 結 合 す る こ と,SH3ド
ク ラス
メ イ ン上 で ク ラ スIと
IIは ま っ た く逆 向 き に 結 合 す る こ と が 明 ら か に な っ
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生体機能調節 にかかわるプロ リンに富む領域 とプロリン特異的ペプチダーゼ
図2
典 型 的 な プ ロ リ ン 特 異 的 ペ プ チ ダ ー ゼ(a)とStreptomyces
sp.由
57
来 プ ロ リン特異 的 ジペ プチ ジル カル ボ キ シペ プチ
ダ ー ゼ(b)
HIV-1プ
ロテ ア ー ゼ は プ ロ リン に の み 特 異 性 が あ る わ けで は な い。
た12,13)。ま た,SH3に
類 似 のWwド
ト リ プ トフ ァ ンが 保 存 さ れ た38残
メ イ ン(2残 基 の
基 程 度 の ア ミノ 酸 配
列)の 存 在 がYAP(Yes-asSociated
protein)な
在 す る こ とが 知 られ,YAPのWWド
る蛋 白 質WBP-1,WBP-2が
らがPPPPYの
WWド
た,最
どに 存
メ イ ン に結 合 す
ク ロ ー ニ ン グ され,こ れ
配 列 を有 し,WBP-1は
近,HIV-1(ヒ
やLynな
RNAポ
日和 見 感 染 菌 のCandida
albicansの 菌 糸 表 面 に特 異 的
な 蛋 白質 に は プ ロ リ ン ・グ ル タ ミ ン に 富 む 配 列 が タ ン
デ ム に く り返 さ れ て い る こ とが 報 告 さ れ て い る27)。
II.プ ロリン特異的ペプチダーゼとその インヒビター
こ の よ う に 多 くの 蛋 白 質 に プ ロ リ ン に 富 む 領 域 が 見
ァ ミリー のHck
メ イ ン に結 合 す る こ とが 報 告 され
て い る15,16)。
つ か り,こ
の 領 域 が 蛋 白質 問 の 相 互 作 用 に 重 要 で あ る
と推 定 さ れ る よ う に な っ た が,プ
リ メ ラ ー ゼIIのC末
位)に もYSPTSPSの
白質 に は プ ロ リ ンを 含 む ジペ プ チ ドの くり返 しが あ り26),
ト免 疫 不 全 ウ イ ル ス)のNef蛋
チ ー フ を 介 してSrcフ
ど のSH3ド
菌 のTonB蛋
この配 列 部 位 で
メ イ ン に 結 合 す る こ とが 報 告 され て い る14)。ま
白質 もPXXPモ
腸 由 来)25)な どが 知 られ てい る。 一 方,細
端 ドメ イ ン(リ ン酸 化 部
コ ンセ ンサ ス配 列 が26回
以上 の
ロ リ ン に 富 む配 列 は
ど の よ うに 代 謝 さ れ て い る の で あ ろ う か 。 先 に述 べ た
よ う に,プ
ロ リ ン の 周 辺,と
く に イ ミノ 基 側 のペ プ チ
く り返 し で 存 在 し,こ の 部 分 に 転 写 因 子 が 結 合 す る と
ド結 合 は 酵 素 に よ る加 水 分 解 を 受 け に くい 。 そ れ で も
い わ れ て い る17,18)。生 体 機 能 との 関 係 で は ほ か に カル シ
プ ロ リ ン の 周 辺 を 特 異 的 に切 断 す る 酵 素 が これ まで に
ニ ュー リンAのN末
い くつ か 報 告 さ れ て きた(図2)28∼30)。 しか し,プ
端 付 近19),シ ナ プ シ ンI20),ロ
ド
ロリ
プ シ ン21),プ ロ ア ク ロ シ ン22)な ど 多 数 の 蛋 白 質 に プ ロ
ン の 連 続 配 列 を切 断 す る酵 素 の 数 は 非 常 に 限 ら れ て い
リ ン に 富 む 配 列 が 見 い だ さ れ て い る。
る。
また,抗 菌 活 性 の あ るプロ リンに富 むペ プ チ ドabaecin
(ミ ツ バ チ 由来)23),bactenectin(ウ
PR-39(プ
シ好 中 球 由 来)24),
ロ リ ン ・ア ル ギ ニ ン に富 む ペ プ チ ド,ブ タ小
1.プ
ロ リ ル エ ン ドペ プ チ ダ ー ゼ
プ ロ リ ル エ ン ドペ プ チ ダ ー ゼ(EC
3.4.21.26,
PEP)
859
58
蛋白質
核酸
酵素
Vol.42
No.6(1997)
は プ ロ リ ン の カ ル ボ キ シ ル 基 側 を 特 異 的 に 切 断 す る分
子 量76Kの
セ リ ン酵 素 で,最
初,オ
キ シ トシ ンを不 活
表2
ウ シ脳 か ら見 い だ したPEP阻
チ ドの脳PEP阻
害 ペ プ チ ドと関連 ペ プ
害活性
性 化 す る酵 素 と して ヒ ト子 宮 中 で 発 見 さ れ た 。 そ の 後,
仔 ヒツ ジ腎 や ウ シ脳 な ど数 種 の動 物 臓 器 か ら精 製 され,
同 様 の 酵 素 がFlavobacterium属
て い る28,30)。このPEPと
な どか ら も見 い だ され
後 に 述 べ る ジペ プ チ ジル ペ プ
チ ダ ー ゼIVや プ ロ リル カ ル ボ キ シ ペ プ チ ダ ー ゼ は ア ミ
ノ 酸 配 列 に 相 同 性 が あ り,触 媒 作 用 に 関 与 す る3つ
ア ミ ノ酸(セ
リ ン,ヒ
位 置 が トリ プ シ ン,ズ
ス チ ジ ン,ア
の
ス パ ラ ギ ン酸)の
Nlは 阻 害 活 性 な し
ブ チ リ シ ン と は 異 な る新 しい セ
リ ン プ ロ テ ア ー ゼ フ ァ ミ リー で あ る プ ロ リル オ リ ゴペ
プ チ ダ ー ゼ フ ァ ミ リー に属 し て い る こ と が 知 られ て い
一 方 ,PEPの
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る33,32)。
PEPは10ア
作 用 し,サ
ミノ酸 残 基 程 度 の 低 分 子 ペ プチ ドに よ く
ブ ス タ ン スPや
バ ソ プ レ ッ シ ン な どの 生 理
活 性 ペ プ チ ドの代 謝 に関 係 す る と考 え られ て い る。PEP
は体 内 に 広 く分 布 し て い るが,な
か で も脳 の 海 馬 領 域
に 高 い 活 性 が 認 め ら れ て お り,Z-Pro-prolina1な
PEPに
告 さ れ て い る。
どの
特 異 的 な 合 成 イ ン ヒ ビ タ ー の い くつ か は ラ ッ ト
内 在 性 イ ン ヒ ビ タ ー の 探 索 が い くつ か
の グ ル ー プ に よ り行 な わ れ,ブ
タ 膵 臓,ラ
か ら熱 に 安 定 な 分 子 量 約7Kの
ポ リペ プ チ ドが 見 い だ
さ れ た が,構
そ こで,筆
ッ ト脳 な ど
造 は明 ら か に され て い な い40,41)。
者 ら は ウ シ脳 を材 料 と してPEPイ
ン ヒビ
タ ー の 探 索 を試 み た 。 屠 殺 直 後 に ウ シ脳 を凍 結 し,細
か く砕 い た の ち,熱
水 抽 出 を 行 な っ た と こ ろ,抽
出液
の 受 動 的 回 避 学 習 実 験 に お い て ス コ ポ ラ ミ ン誘 発 性 の
中 にPEP阻
記 憶 障 害 を 回 復 で き る こ とが 示 され て い る33)。また,ア
液 体 ク ロ マ トグ ラ フ ィー に よ りPEP阻
ル ツ ハ イ マ ー 症 の 脳 組 織 でPEPの
ペ プ チ ド を精 製 し,構 造 を解 析 した 。 ホ モ ロ ジ ー 検 索
活 性 が増 加 す る こ
害 活 性 を確 認 し た。 そ こで,6段
と34),老 化 促 進 マ ウ ス 海 馬 の ア ミ ロ イ ド β ペ プ チ ド と
の 結 果,本
PEPの
fibrillary acidic protein(GFAP)のN末
分 布 が 免 疫 組 織 化 学 的 に 一 致 す る こ とが 報 告 さ
れ て い る35)。記 憶 過 程 あ るい は アル ツハ イ マ ー病 にPEP
階 の各種
害活 性 を有す る
ペ プチ ドはグ リア細 胞 に特 異 的 な 蛋 白質glia1
フラ グ メ ン ト[GFAP(38∼55)]で
端38∼55の
あ った(表2)。GFAP
が ど の よ う に か か わ っ て い る の か 不 明 な と こ ろが 多 い
(38∼55)の 活 性 の 強 さ は 前 述 し た ラ ッ ト脳 由 来 の 構 造
が,SUAM-1221〔N-[N-(phenyl)butyryl-L-pro-
未 知 の ポ リペ プ チ ドに 近 い 値 で,ウ
pyl]pyrrolidine〕
PEPに
誘 導 体,Y29794〔2-(8-dimethy1.
aminoOctylthio)-6-isopropyl-3-pyridyl
ketone
2-thienyl
citrate,Ki=0.95nM],JTP-4819[(S)-2-
N-(phenylmethyl)-1-pyrrolidinecarboxamide,
な ど,す
は8.6μMで
ンヒ ビタ
た 。 な お,GFAP(38∼55)は
阻害す
競 争 的 にPEPを
間 イ ン キ ュ ベ ー トした と こ ろ,わ ず
る切 断 は 受 け ず,GFAP(38∼55)と
ー リス タ チ ン な どのPEPイ
を 阻 害 し た 。 そ こ でGFAP(38∼55)の
マ ウ ス の腹 腔 内 投
与 に よ り実 際 に 脳 内 に到 達 してPEPを
阻 害 し,そ の ア
害 を 回 復 す る。 ま た,Y29794は
プ チ ドもPEPを
ラ ッ ト(23∼24カ
ブ ス タ ン スP抗
860
経 口 投 与 に よ り脳 内 に
経 口投与 で高齢
月)大 脳 皮 質 の サ ブ ス タ ン スP(サ
体 で 測 定)を 増 加 さ せ る こ とな どが 報
でPEP
さま ざまなフラ
基 で も欠 け た ペ プ チ ドは ほ とん どPEP
を阻 害 せ ず,SH3結
阻 害 し,JTP-4819は
同 じKi値
よ
グ メ ン トを 合 成 し た が,Met-Pro-Pro-Pro-Leu-Pro
の 構 造 か ら1残
ミン誘 導 体 は ス コ ポ ラ ミ ン で誘 発 し た マ ウ ス の 記 憶 障
到 達 してPEPを
るペ
プ チ ドが 生 成 した 。 この ペ プ チ ド は これ 以 上PEPに
ー が 合 成 さ れ36∼38)
,微 生 物 か ら も ポ ス トス タ チ ン,ユ
ン ヒ ビタ ー が 見 い だ され て
ト,
阻害 し
か に 切 断 を 受 け,Met-Pro.Pro-Pro-Leu-Proな
で に多 数 のPEPイ
い る34,39)。こ の う ちSUAM-1221は
シ脳 か ら精 製 し た
あ っ た42)。また,ヒ
マ ウ ス の相 同 な 合 成 ペ プ チ ドも,同 様 にPEPを
るが,PEPと1時
[[(S)-2-(hydroxyacetyl)-1-pyrrolidinyl]carbonyl]-
IC50=0.83nM〕
対 す るKi値
合 ペ プ チ ドな どプ ロ リン に 富 むペ
阻 害 しな か っ た43)。筆 者 らが 脳 か ら精
製 した ペ プ チ ドは前 述 の合 成PEPイ
ン ヒ ビ タ ー と比 較
す る と,そ の 阻 害 活 性 は 弱 い 。 しか し,実 際 に 脳 内 に
存 在 す る と考 え られ る こ と か ら,脳
に お け る機 能 に つ
生体機能調節 にかかわるプロリンに富む領域 とプロリン特異的ぺプチダーゼ
表3
N末
端 か ら2番
目 に プ ロ リ ン を 有 す る ヒ トポ リペ プ チ
ドの 例
3.ア
59
ミ ノ ペ プ チ ダ ー ゼP
ア ミ ノペ プ チ ダ ー ゼP(EC3.4.11.9,APP)は
酵 素 で あ り,N末
端 か ら2番
金属
目 の ア ミノ 酸 が プ ロ リ ン
で あ る ペ プ チ ド(長 鎖 の ペ プ チ ド を含 む)のN末
ミ ノ酸 を遊 離 す る(図2a)。
れ,細
菌,酵
母,哺
最 初E.coliBか
ら発 見 さ
乳 動 物 な ど広 く分 布 し て い る 。 可
溶 状 態 で 存 在 す る も の は ヒ ト白血 球,血
小 板,ラ
脳 な どか ら,膜 結 合 の も の は ブ タ 腎 臓,ウ
ら精 製 さ れ て い る。APPは
が2量
端ア
ッ ト
シ肺 な どか
分 子 量50∼90Kの
単 量体
体 ない し4量 体 を形 成 してお り,ほ とん どがMn2+
で 賦 活 化 さ れ る29・30)。APPは 血 液 細 胞 に 多 く存 在 し,
血 小 板APPは
ブ ラ ジ キニ ンのArg1-Pro2結
合 を切 断 す
Database Center for Life Science Online Service
る こ とか ら キ ニ ナ ー ゼ と して 働 くと考 え られ て い る49)。
いて解 析 中 であ る。
また,生
体 内 の ポ リペ プチ ドに はN末
を 有 して い る もの が 多 くあ り(ホ
2.ジ
ペ プ チ ジ ル ペ プ チ ダ ー ゼIV
ン,神 経 伝 達 物 質,血
ジペ プ チ ジ ル ペ プ チ ダ ー ゼIV(EC3.4.14.5,DPP-IV)
はセ リ ン タ イ プ の ペ プ チ ダ ー ゼ で ペ プ チ ドのN末
ら2番
目 の ア ミノ 酸 が プ ロ リ ン(ア
ラ ニ ン,ヒ
シ プ ロ リ ン で も あ る程 度 切 断)で あ る場 合 にN末
ペ プ チ ド を遊 離 す る活 性 が あ り,サ
か,比
部 を表3に
端か
ドロ キ
端 ジ
ブ ス タ ン スPの
ほ
較 的 小 さ い ペ プ チ ド を よ く分 解 す る(図2a)。
DPP-IVは
腎 臓 や 小 腸 の 刷 子 縁 膜,胎
織 に 広 く分 布 す る ほ か,Tリ
す る29)。そ し て,Tリ
抗 体 がDPP-IVと
盤 な ど,多
モ ノ ク ロー ナル
交 差 反 応 す る こ とや,cDNA解
結 果 か らCD26はDPP-Ivと
析の
同 一 で あ る と推 定 され て い
る44・45)。
また,DPP-IVの
イ ン ヒビター [
N-Ala-Pro-
O-(nitrobenzoyl-)hydroxylamineな
ど]が マ イ トジ ェ
ン とホ ル ボ ー ル エ ス テ ル で 刺 激 したTリ
示 し た。APPが
ンパ 球 のIL-
実 際 に生 体 内 で こ の よ うな
が,N末
端X.Pro結
合 の切 断 に よ り活 性 を 失 う もの,
安 定 性 を失 い タ ー ンオ ー バ ー す る と思 わ れ る ポ リペ プ
チ ドが あ る こ とか ら,APPは
ペ プ チ ドや 蛋 白質 の 活 性
調 節 の 役 割 を し て い る と も推 定 さ れ て い る29)。
4.プ
ロ リンの連 続配 列 を切 断す るペ プチ ダー ゼ
蛋 白 質 中 の プ ロ リ ン に富 む領 域 に み られ る プ ロ リ ン
の 連 続 配 列 を切 断 で きるペ プ チ ダ ー ゼ の 種 類 は少 な く,
微 生 物 由 来 の ア ミノペ プ チ ダ ー ゼP(哺
ミ ノ ペ プ チ ダ ー ゼPは
水 分 解 しな い)の
側 か ら働 く もの で あ り,エ
糸球 体
濾液 中 の プロ リンを含 むペ プチ ドをジペ プチ ドに して
は り微 生 物 由 来 の プ ロ リ ン
イ ミ ノペ プ チ ダ ー ゼ(EC3.4.11.5)が
IVはTリ
ンパ 球 の 免 疫 応 答 に深 くか か わ っ て い る と考
乳 動物 由来 のア
プ ロ リ ン の 連 続 配 列 は あ ま り加
ほ か,や
度 で あ る28,50)。ま た,こ
臓 刷 子 縁 膜DPP-IVは
イ トカ イ
素 な ど),そ の一
ポ リペ プ チ ドを 分 解 し て い るか に つ い て は不 明 で あ る
2や イ ンタ ー フ ェ ロ ンの産 生 を抑 制 す る こ とか ら,DPP-
えられ てい る46)。一 方,腎
ル モ ン,サ
液 凝 固 因 子,酵
列
くの 組
ン パ 球 の 膜 表 面 に も存 在
ンパ 球 のCD26の
端 にX-Pro配
報 告 され てい た程
れ らの ペ プ チ ダ ー ゼ はN末
ン ドあ る い はC末
端
端 のプ ロ
リ ン 連 続 配 列 を認 識 す る酵 素 は知 られ て い な か っ た 。
そ こ で,筆
者 ら は テ トラ プ ロ リ ン な ど を 基 質 と して
再 吸 収 さ せ る の に役 立 っ て い る の で は な い か と推 定 さ
プ ロ リ ンの 連 続 配 列 を切 断 す る酵 素 を 微 生 物 や 動 物 組
れ て い る47)。DPP-IV活
織 か ら探 索 した 。 そ の 結 果,オ
性 は女 王 バ チ の毒 液 腺 の 抽 出 液
中 に も確 認 され て お り,こ のDPP-IVは
ロ領 域 に2残
プ ロメ リチ ン(プ
基 ご とに プ ロ リ ン ま た は ア ラ ニ ンが 存 在)
か ら逐 次X-Pro/Alaを
遊 離 し メ リチ ン に変 換 させ る こ
とが 報 告 さ れ て い る48)。
断 す る酵 素(プ
ペ プ チ ダ ー ゼ)を
ptomyces
図2bの
リ ゴ プ ロ リ ン配 列 を切
ロ リ ン特 異 的 ジペ プ チ ジ ル カ ル ボ キ シ
土 壌 中 か ら分 離 し た 放 線 菌(Stre-
sp.)の 培 養 濾 液 中 に 見 い だ し た51)。本 酵 素 は
よ う に ペ プ チ ドのC末
端 か ら プ ロ リ ン を2残
基 ず つ 遊 離 させ る活 性 を有 し,基 質 ペ プチ ドのP1,P1',
P2'(と
くにP1',P2')が
プ ロ リ ン で あ る とい う高 い特
861
Database Center for Life Science Online Service
60
蛋 白質
図3
HIV-I前
核酸
酵素
Vol.42
No.6(1997)
駆 体 蛋 白 質 の 一 部 と プ ロ テ ア ー ゼ に よ る 切 断 部 位(a),切
断 部 位 付 近 の ア ミノ 酸 配 列(b)お
よ び 典 型 的 なHIV-
1プ ロ テ ア ー ゼ イ ン ヒ ビ タ ー(C)
異 性 を 有 す る 。 本 酵 素 は 分 子 量70Kの
蛋 白 質 で,
か ら よ く加 水 分 解 し た が,ア
EDTAや1,10-phenanthrolineの
プ トプ リル
常 に類 似 し た 性 質 を も っ て い た53)。
ほ か,カ
(ア ン ギ オ テ ン シ ン変 換 酵 素 イ ン ヒ ビ タ ー)で 阻 害 され
る金 属 プ ロテ ア ー ゼ の一 種 で あ る。 一 方,本
の 反 応 系 に高 濃 度 のPro-Proを
添 加 す る な ど逆 反 応 が
進 行 す る条 件 を 設 定 す る と,ペ プ チ ドのC末
Proを
酵 素 は,そ
端 にPro-
結 合 す る とい う 特 徴 が あ り,Boc-Pro-Proと
Pro-Proか
とPro-Proか
前 述 のDPP-IVはAla-Ala-Alaと
とAla-Ala-Ala-Ala-Alaを
非
し か し こ れ ら はエ キ ソ ペ プ チ ダ ー ゼ で あ り,ぺ プ チ
ドあ る い は蛋 白質 鎖 の 中 ほ どに 位 置 す る プ ロ リ ン の く
り返 し配 列 を加 水 分 解 す る こ と は で きな い 。 生 体 内 で
は ほ か の プ ロ テ ア ー ゼ の働 きで オ リゴ プ ロ リ ン配 列 が
ペ プ チ ド鎖 の 末 端 に露 出 し た と き に,ア
ー ゼPな
らBoc-Pro-Pro-Pro-proが,Boc-Leu
らBoc-Leu-Pro-Proが
ミノ ペ プ チ ダ ー ゼPに
ミ ノペ プ チ ダ
どで 加 水 分 解 され る可 能 性 も考 え られ る
。
合 成 で き る52)。
イ ンキ ュベ ー トす る
産 生 す る トラ ンス ペ プ チ デ
5.HIV-1プ
HIV-1プ
ロ テ ア-ゼ
ロ テ ア ー ゼ は99個
の ア ミノ酸 か ら な る アス
ー シ ョ ン反 応 を行 な う こ とが 知 られ て い るが29)
,筆 者 ら
パ ラ ギ ン 酸 プ ロ テ ア ー ゼ で,ホ
が 見 い だ した 酵 素 の 逆 反 応 で はPro-Pro結
の活 性 を発 現 す る。 本 酵 素 はHIV-1の
合 が形成 で
モ2量
体 を 形 成 し,そ
前駆 体 蛋 白質 を
き,こ の 反 応 は プ ロ リ ン特 異 的 ペ プ チ ダ ー ゼ と し て は
切 断 し,ウ イ ル ス 自体 の 酵 素 と構 造 蛋 白 質 を生 成 す る。
珍 し い も の で あ る。
HIV-1プ
ま た,筆
者 ら は テ トラ プ ロ リ ン をN末
端 側 か ら1残
ロ テ ア ー ゼ に よ る基 質 切 断 部 位 に はPhe-Pro
お よびTyr-Proの
構 造 が あ り,HIV-1プ
ロテ アー ゼ は
基 ず つ切 断 す る ペ プ チ ダ ー ゼ 活 性 が ウ シ 脳 に 存 在 す る
エ ン ド型 で プ ロ リ ン の イ ミ ノ基 側 の ペ プ チ ド結 合 を切
こと も突 き止 め,分 子 量140Kの
る とい う 哺 乳 動 物 の 酵 素 に は な い 特 徴 が あ る(図3)54)。
蛋 白質 を精 製 した。 精
製 し た ペ プ チ ダ ー ゼ はオ リゴ プ ロ リン 配 列 をN末
862
端側
しか し,切 断 部 位 のP1'に
は プ ロ リン以 外 の ア ミノ酸 が
生体機能調節 にかかわるプロ リンに富む領域 とプロリン特異的ペプチダーゼ
く る こ と も あ り,必
ず し も プ ロ リン に 高 い特 異 性が あ
6)
る わ け で は な い 。 本 酵 素 は 活 性 中 心 にAsp-Thr-Gly配
列 を有 す る ア ス パ ラ ギ ン酸 プ ロ テ ア ー ゼ で あ る こ とか
ら,ペ
7)
プ ス タ チ ン や ア セ チ ル ペ プ ス タ チ ン(Ki=35nM
pH5.0)に
よ り 阻 害 さ れ る 。 ま た,Phe-Proを
含 む基
8)
質 の 遷 移 状 態 を 模 倣 し た 構 造 の イ ン ヒ ビ タ ーRo31-8959
9)
(Saquinavir,IC50<0.4nM,図3c),KNI-272
(Ki=0.0055nM)な
ど が 多 数 合 成 さ れ て い る55,56)。
おわ りに
プ ロ リン に 関 す る論 文 の 数 は膨 大 で あ り,こ
こで は,そ
の ご く一 部 を生 体 機 能 調 節 との 関 係 で 概 説
10)
11)
12)
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した 。 プ ロ リ ン に富 む 配 列 を有 す る ペ プ チ ドは 表1に
記 載 した 例 の ほ か に も多 数 知 られ て お り,プ
異 的 ペ プ チ ダ ー ゼ に つ い て は,ほ か にC末
ロ リ ン特
端 側 か ら働
く プ ロ リル カ ル ボ キ シ ペ プ チ ダ ー ゼ や ジ ペ プ チ ドに働
くプ ロ リダ ー ゼ な どが 知 られ て い る 。 また,加
13)
14)
水 分解
酵 素 と は別 に プ ロ リ ン残 基 の シ ス ートラ ン ス 異 性 を 調 節
す るペ プ チ ジ ル プ ロ リル シ ス トラ ン ス イ ソ メ ラ ー ゼ が
15)
16)
知 ら れ て い る。 こ れ は コ ラ ー ゲ ン の 三 重 鎖 構 造 な どの
高 次 構 造 形 成 を速 め る働 き を して お り,免 疫 抑 制 剤 シ
ク ロ ス ポ リ ンAあ
るい はFK506に
者 は シ ク ロ フ ィ リ ン,後
FKBP)で
17)
結 合 す る蛋 白 質(前
者 はFK506結
合 蛋 白 質;
18)
も あ る。
ま た,HIV-1プ
ロ テ ア ー ゼ の イ ン ヒ ビタ ー の い くつ
か は す で に 米 国 で認 可 さ れ て い る ほ か,古
治 療 薬 カ プ トプ リル もAla-Proが
くは 高 血 圧
ア ン ギ オ テ ン シ ン変
19)
20)
換 酵 素 の 活 性 中 心 に よ く収 ま る こ とか ら デ ザ イ ン さ れ
た 薬 剤 で あ る。 今 後 は,SH3ド
メ イ ン に結 合 す る プ ロ
21)
リ ン に 富 む 配 列 な ど の研 究 成 果 が 新 し い 医 薬 の 開 発 へ
とつ な が っ て い く と考 え ら れ る 。
文
1)
2)
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