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N -アシルホスファチジルエタノールアミンの代謝
〔生化学 第8 3巻 第6号,pp.4 8 5―4 9 4,2 0 1 1〕 !!!! 特集:リン脂質代謝と脂質メディエーター研究の最新の成果 第1部 リン脂質代謝酵素 !!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 三本鎖のリン脂質 N-アシルホスファチジルエタノールアミンの 動物組織における代謝 坪 井 一 人,宇 山 徹,上 田 夏 生 N-アシル-ホスファチジルエタノールアミン(PE)は PE のアミノ基にもう1本の脂肪 酸鎖が結合した三本鎖のリン脂質であり,微量ではあるが自然界に広く分布する.アナン ダミドを初めとする種々の脂肪酸のエタノールアミド(N-アシルエタノールアミン)が多 様な生物活性を示すことからその前駆体である N-アシル PE の代謝が注目され,関与する 酵素の研究が活発に展開されている.動物組織での生合成経路はグリセロリン脂質の sn1位の脂肪酸鎖を PE に転移させる N-アシル化反応であり,N-アシルトランスフェラーゼ が触媒する.一方,N-アシル PE から N-アシルエタノールアミンを一段階で遊離させる反 応には特殊なホスホリパーゼ D 型酵素が関与する.最近の研究により複数の加水分解酵 素が関与する多段階経路の存在も明らかになった. 1. は じ め に 鎖がアミド結合でつながった「N-アシル化グリセロリン脂 1, 2) 質」である(図1) .そのうち N-アシル PE は1 9 6 5年に ホスファチジルコリン(PC) ,ホスファチジルエタノー 小麦粉から最初に単離され3),後に種々の動物組織でも見 ルアミン(PE) ,ホスファチジルセリン(PS)など一般的 出されたが1),イヌの心筋梗塞部位で多量に蓄積すること なグリセロリン脂質はグリセロール骨格の sn-1位と sn-2 が特に注目された4).sn-1位と sn-2位にそれぞれ脂肪酸鎖 位に各1本,計2本の脂肪酸鎖を有し,生体膜の主要構成 を有するジアシル型に加えて sn-1位にアルケニル鎖また 成分である.細菌やミトコンドリア膜に豊富なカルジオリ はアルキル鎖を有するものも相当量存在する点は PE と同 ピンはグリセロリン脂質2分子が結合した構造をとってお 様である4).これらの分子の総称としては「N-アシルエタ り,計4本の脂肪酸鎖を有する.一方,脂肪酸鎖を1本し ノールアミンリン脂質」が適当であるが,本稿では便宜的 か持たないリゾリン脂質では脂質メディエーター,すなわ に N-アシル PE と呼ぶことにする.N-アシル PS について ち G タンパク質共役型レセプターのリガンドとして働く もヒツジ赤血球で総リン脂質の数%を占める等,動物組織 ものが多い.ところが自然界にはこの他にも3本の脂肪酸 で検出されている5).N-アシル PE の主要代謝物である脂 鎖を有するグリセロリン脂質が微量ではあるが普遍的に存 肪酸のエタノールアミド(N-アシルエタノールアミン)に 在する.それは PE や PS のアミノ基にもう1本の脂肪酸 ついては,1 9 5 7年に N-パルミトイルエタノールアミンが 卵黄から単離されたのが最初である6).その後 Schmid ら 香川大学医学部生体分子医学講座生化学(〒7 6 1―0 7 9 3 香川県木田郡三木町大字池戸1 7 5 0―1) Metabolism of N-acylphosphatidylethanolamine, a phospholipid molecule with three acyl chains, in animal tissues Kazuhito Tsuboi, Toru Uyama, and Natsuo Ueda(Department of Biochemistry, Kagawa University School of Medicine,1 7 5 0―1Ikenobe, Miki, Kagawa7 6 1―0 7 9 3, Japan) のグループが N-アシル PE と N-アシルエタノールアミン の代謝に関する研究を精力的に進めたが1),これらの脂質 分子が生化学の領域で広く注目を集めることはなかった. 転機となったのは1 9 9 0年代初頭のカンナビノイドレセ プター CB1の cDNA クローニングの成功7)とそれに引続く 同レセプターの内在性リガンドとしての N-アラキドノイ 4 8 6 〔生化学 第8 3巻 第6号 図1 PE,PS と N-アシル化グリセロリン脂質の構造 ジアシル型 PE(1, 2-diacyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine) ,アルケニルアシル型 PE(1-alkenyl-2acyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine) ,PS(1, 2-diacyl-sn-glycero-3-phosphoserine)とそれらの N-ア シル化誘導体であるジアシル型 N-アシル PE (1, 2-diacyl-sn-glycero-3-phospho(N-acyl) ethanolamine) , アルケニルアシル型 N-アシル PE(1-alkenyl-2-acyl-sn-glycero-3-phospho(N-acyl) ethanolamine) ,N-ア シル PS(1, 2-diacyl-sn-glycero-3-phospho(N-acyl) serine)の構造式を示す. 図2 生物作用を示す N-アシルエタノールアミン ) ルエタノールアミン(アナンダミド) の発見である8(図2 ) . アミンには抗炎症作用や鎮痛作用が認められ13,14),N-オレ その結果,N-アシル PE の一つである N-アラキドノイル オイルエタノールアミンは食欲抑制作用を示すことで最近 PE もアナンダミドの前駆体として注目されるようになっ ) 注目されている15(図2 ) .これらの N-アシルエタノールア た .またアナンダミドは,バニロイドレセプター TRPV1 ミンはペルオキシソーム増殖剤活性化レセプター PPARα の内在性リガンドとしても報告されている .ところで生 のリガンドとして機能することが報じられているが16),N- 9) 1 0) 体内に存在する N-アシルエタノールアミンで量的に多い オレオイルエタノールアミンについては GPR1 1 9レセプ のはパルミチン酸,ステアリン酸,オレイン酸,リノール ターのリガンドとしても機能する17).N-アシル PE それ自 酸のエタノールアミドであり,アナンダミドが全 N-アシ 体の生物作用については生体膜の安定化作用が以前から知 ルエタノールアミンに占める割合は5% に満たない11).ま られていたが18),最近,食欲抑制作用19)や Rac1および Cdc た,カンナビノイドレセプターの内在性リガンドとして 4 2の阻害によるマクロファージ貪食能低下作用20)を示すこ は,後に見出された2-アラキドノイルグリセロール(2- とが報告されている.本稿では N-アシル PE の主として動 AG)の方が,より重要な役割を果たしていることが明ら 物組織における代謝について,著者らの成果を交えて最新 かになっている12).その一方で N-パルミトイルエタノール の知見を紹介したい.なお,アナンダミドを初めとする N- 4 8 7 2 0 1 1年 6月〕 アシルエタノールアミンを脂肪酸とエタノールアミンに分 鎖の分子種はアシル基供与体基質の sn-1位のアシル鎖の 解する加水分解酵素(脂肪酸アミドヒドロラーゼと N-ア 組成を反映し,結果的に N-アシルエタノールアミンの分 シルエタノールアミン水解酸性アミダーゼ)の研究も活発 子種にも影響する.アラキドン酸鎖は一般に sn-2位に多 に進められており21,22),特異的阻害剤の医薬品としての開 く sn-1位に少ないが,このことが総 N-アシルエタノール 発も期待されているが23),本稿では省かせて頂く. アミンのうちでアナンダミドの占める割合が小さい理由で 2. N-アシル PE の生合成 (1) Ca2+依存性 N-アシルトランスフェラーゼ あると考えられている.一方,アシル基受容体基質として は,ジアシル型,アルケニルアシル型(プラスマローゲン 型) ,アルキルアシル型の PE およびリゾ PE のいずれもが 心筋梗塞部位で N-アシル PE が著明に増加するとき PE 利用可能であった.著者らはラット脳から同酵素を部分精 が減少し,互いの分子種が似通っていることから,PE が 製し,Ca2+依存性や PC の sn-1位からの選択的脂肪酸引抜 N-アシル PE の前駆体であることが示唆された4).すなわ きを確認している27). ち図3に示すように PE のエタノールアミン部分のアミノ Ca2+非依存的に同じ反応を触媒する酵素(後述)と区別 基に脂肪酸鎖が結合する N-アシル化反応が N-アシル PE するために,本酵素は Ca2+依存性 N-アシルトランスフェ の生合成経路であると考えられた.このようなアシル基転 ラーゼとも呼ばれる.高度な精製や cDNA クローニング 移反応におけるアシル基供与体としてはアシル CoA とグ は達成されていない.N-アシル PE と N-アシルエタノール リセロリン脂質が想定されるが,以下に詳述するように, アミンは心筋梗塞部位のみならず種々の変性組織や炎症部 これまでのところ動物組織ではグリセロリン脂質を,植物 位で増加することが知られている.細胞内 Ca2+濃度の増 組織ではアシル CoA をアシル基供与体基質とする酵素反 加により本酵素は活性化されるものと考えられているが, 応が見出されている24). 単離した酵素の活性化に必要な Ca2+濃度が前述のように 1 9 8 0年以降,イヌの心臓や脳,ラットの脳や精巣など 比較的高いことから細胞内での活性化の分子機構には不明 N-アシル PE 含量の高い動物組織を用いて明らかにされて な点が多い.ラットにおける本酵素の活性の臓器分布が調 きたことをまとめると ,これらの組織には本反応を べられており,脳で最も高く,次いで精巣,筋肉の順で, 触媒する膜結合酵素「N-アシルトランスフェラーゼ」が発 その他の臓器では低値であった28).脳の部位別では脳幹で 2 2, 2 5, 2 6) 現している.同酵素の可溶化には Nonidet P-4 0のような界 最も高く,大脳皮質,線条体,小脳,海馬,延髄で中等 面活性剤を要する.酵素活性は0. 1―1mM 程度の Ca2+で著 度,嗅結節,視床,視床下部,嗅球で低値であった28).興 しく増加する.PC,1-アシル-リゾ PC,PE,カルジオリピ 味深いことに脳における活性は成長に伴って低下した29,30). ンなど種々のグリセロリン脂質がアシル基供与体基質とな 植物における N-アシル PE の生合成については,「N-ア る一方,アシル CoA や遊離脂肪酸は利用されなかった. シル PE シンターゼ」の存在が以前から知られていたが31), また,グリセロリン脂質の sn-1位と sn-2位の脂肪酸鎖の 最近,同酵素の cDNA がシロイヌナズナからクローニン うち,もっぱら sn-1位の脂肪酸鎖が利用される点が特徴 グされた32).一次構造は2 8 4個のアミノ酸からなり,出芽 的であった.転移される脂肪酸鎖の分子種については明ら 酵母のリゾ PC アシルトランスフェラーゼ(Ypr1 4 0wp)や かな特異性が認められないので,N-アシル PE の N-アシル シロイヌナズナのリゾホスファチジン酸アシルトランス 図3 N -アシル PE の生合成経路 4 8 8 〔生化学 第8 3巻 第6号 フェラーゼ(Slc1)のようなグリセロ脂質アシルトランス ファミリーは LRAT の活性中心を形成するアミノ酸残基 フェラーゼと相同性を示した.大腸菌で発現させた組換え を保有していることから,N-アシルトランスフェラーゼ活 体の精製標品を用いて検討したところ,アシル基供与体基 性を示す可能性が考えられた.そこで著者らは,ラット, 質は従来言われていた遊離脂肪酸ではなく,アシル CoA ヒト,マウスから HRASLS5 の cDNA を単離し,COS-7細 であることが明らかになった. 胞で組換え体を発現させたところ,予想通りの酵素活性が 検出された27,43).ラット脳から部分精製した Ca2+依存性 N- (2) HRASLS ファミリー アシルトランスフェラーゼと比較すると,mM 濃度域のジ HRAS-like suppressor(HRASLS)ファミリーは,がん原 チオスレイトールや Nonidet P-4 0で活性化される点は共通 遺伝子 Ras の機能を負に制御する分子として単離された していたが,活性発現に Ca2+を必要とはしない点,PC の がん抑制遺伝子群で,ヒトでは5分子(遺伝子名 HRASLS sn-1位のみならず sn-2位からもアシル基を引き抜く点, 1―5)が存在する (図4A).HRASLS ファミリーは様々 ながん細胞においてその発現が著しく低下,もしくは消失 しており,II 型がん抑制遺伝子として位置付けられてい る.HRASLS ファミリーの中で最初に見出された分子は H-rev1 0 7(HRASLS3)で,Hajnal らによって1 9 9 4年にク 3 5) ローニングされた .がん原遺伝子産物 H-Ras による形質 転換に感受性が高い線維芽細胞と抵抗性を示す線維芽細胞 の間で subtraction cloning を行い, H-rev1 0 7が単離された. H-Ras で形質転換された線維芽細胞に H-rev1 0 7を発現さ せると細胞の増殖やコロニー形成能が抑制されることか ら,同分子が H-Ras の機能を負に制御することが示され た36).そ の 後,一 次 構 造 の 類 似 し た 分 子 と し て TIG3 3 7) 3 8) (HRASLS4) ,A-C1(HRASLS1) ,HRASLS239)が順次見 出され,同様に H-Ras で形質転換された細胞の増殖を抑 制することが報告されている.精巣で強く発現している HRASLS5 産物に関してはそのような報告はない.最近, TIG3と HRASLS2が Ras の下流のシグナル伝達を抑制す ることで Ras の活性を制御することが報告されたが39),具 体的なメカニズムは明らかになっていない. HRASLS ファミリーの遺伝子産物は N 末端側からプロ リンに富んだ proline rich domain,H ボックス,NC ドメイ ンおよび疎水性アミノ酸がクラスターし,膜結合に関わる ) 疎水性ドメインから構成されている40(図4 A) . とりわけ, NC ド メ イ ン と H ボ ッ ク ス は 高 度 に 保 存 さ れ て い る. HRASLS ファミリーはビタミン A の体内動態を制御する レ シ チ ン・レ チ ノ ー ル・ア シ ル ト ラ ン ス フ ェ ラ ー ゼ (LRAT)とホモロジーを示し,LRAT ファミリー内のサブ ) ファミリーとして位置付けられている34(図4 B) .LRAT に おいて,NC ドメインに含まれるシステインと H ボックス のヒスチジンは活性中心を形成している41,42).proline rich domain と疎水性ドメインについては Ras の機能制御に重 要であると報告されている36). LRAT は PC の sn-1位のアシル基を all-trans-レチノール に転移してレチニルエステルを生成する酵素である41,42). Ca2+依存性 N-アシルトランスフェラーゼと LRAT は,ア シル基供与体であるグリセロリン脂質の sn-1位のアシル 基を用い る 点 で 共 通 し て い る.上 述 の よ う に HRASLS 主として可溶性画分に局在する点,脳での発現レベルが相 3 3, 3 4) 対的に低い点で,Ca2+依存性酵素とは異なっていた.これ よ り HRASLS5 産 物 を Ca2+非 依 存 性 N-ア シ ル ト ラ ン ス フェラーゼ(iNAT)と名付けた.iNAT の NC ドメインの システインと H ボックスのヒスチジンの点変異体をそれ ぞれ作製したところ不活性であった.このことと一致し て,SH ブロッカーのヨード酢酸で濃度依存的に阻害され た.また,iNAT は Ca2+非依存的にリン脂質から脂肪酸を 遊離させるホスホリパーゼ(PL) A1/2 活性を併せ持ってい た. 続いて H-rev1 0 7,TIG3,HRASLS2についても同様に検 討を行ったところ,これらの組換えタンパク質も Ca2+非 依存性 PLA1/2 活性を示した44,45).PLA1 活性の方が PLA2 活 性よりも数倍高値を示し,異なる脂肪酸鎖を有する PC や PE に対して作用した.Duncan らは H-rev1 0 7が PLA2 活性 を有することを報 告 し て い る46).ま た,PE の 存 在 下 で HRASLS2には比較的強い N-アシルトランスフェラーゼ活 性が,H-rev1 0 7と TIG3には弱い同活性が検出された.さ らにこれらのタンパク質は PC のアシル基をリゾ PC に転 移するリゾ PC O-アシル化活性も保有していた.酵素活性 の発現には iNAT の場合と同様に mM オーダーのジチオス レイトールが不可欠で,ヨード酢酸で濃度依存的に阻害さ れた.H-rev1 0 7においても NC ドメインのシステインや H ボックスのヒスチジンの変異体は不活性であった.以上の 結果から HRASLS ファミリーメンバーの触媒する反応機 構は LRAT のそれと類似していると考えられた.すなわ ち,図5に示すように,同メンバーはアシル基供与体であ るグリセロリン脂質から脂肪酸鎖を NC ドメインのシステ イン残基に転移してアシル酵素中間体を形成し,その後, 共存するアシル基受容体基質が水,PE もしくはリゾリン 脂質であるかによって PLA1/2,N-アシルトランスフェラー ゼもしくは O-アシルトランスフェラーゼとして機能し, それぞれ遊離脂肪酸,N-アシル PE,グリセロリン脂質を 生成するものと想定された.また,proline rich domain と 疎水性ドメインをそれぞれ欠失した H-rev1 0 7の変異体も 酵素活性を示さなかったことから,これらのドメインは Ras の機能制御に加えて酵素活性発現にも必要であること 4 8 9 2 0 1 1年 6月〕 図4 HRASLS ファミリーの一次構造 (A) と進化系統樹 (B) (A) proline rich domain(二重下線) ,H ボックス(下線) ,NC ドメイン(破線)および疎水性ドメイン(ボックス)を 示す.*は活性中心を形成するヒスチジンとシステインを示す.(B) ヒト HRASLS ファミリーメンバーと LRAT の系 統樹を示す. が示唆された44).著者らは A-C1にも他のメンバーと同様 バーのすべてがグリセロリン脂質を基質とする酵素である の脂質代謝酵素活性を検出しているので(データ未発表) , ことが明らかとなった. ヒトで発現している5種類 の HRASLS フ ァ ミ リ ー メ ン 上述のように HRASLS ファミリーは複数の脂質代謝酵 4 9 0 〔生化学 第8 3巻 第6号 からホスファチジルアルコールを生成する反応)を触媒し ないことも報告された54).こうして本酵素は N-アシル PE 水解 PLD(NAPE-PLD)と呼ばれるようになったが,その 実体は長らく不明であった. 著者らは NAPE-PLD をラット心臓の膜画分からオクチ ルグルコシドを用いて可溶化した後に部分精製し,可溶化 後の本酵素が mM 濃度の Ca2+,Mg2+などの二価陽イオン やポリアミン類で2 0―3 0倍程度まで活性化されることを見 出した55,56).さらに精製を進めて酵素タンパク質の部分ア ミノ酸配列を決定し,データベースからマウス,ラット, ヒトにおける候補遺伝子を推定することができた.そして 各 cDNA を COS-7細胞に導入して組換え酵素を発現させ たところ,いずれも強い NAPE-PLD 活性を認めた57). NAPE-PLD の一次構造は推定アミノ酸数3 9 1―3 9 6から 図5 HRASLS ファミリーの推定反応機構 なり,分子量は4 5―4 6kDa である.データベースで検索す ると,ヒト,ラット,マウス以外にも,霊長類,ジャイア ントパンダ,ウマ,ウシ,ウサギにホモログが存在し,ヒ 素活性を保有していることから,生体内での N-アシル PE ト NAPE-PLD との比較においてアミノ酸の同一性は8 9% の生合成にどの程度関わっているかは不明であり,さらな 以上であった.一次構造より本酵素はメタロ-β-ラクタ る検討が必要である.また,同ファミリーは Ras の機能を マーゼファミリーに属する.本ファミリーには多種類の加 負に制御すると報告されているが,これに脂質代謝酵素活 水分解酵素が含まれており,ファミリー内のタンパク質間 性が関与するのか否かは現時点ではわかっていない.最 で高度に保存されたヒスチジン残基とアスパラギン酸残基 近,H-rev1 0 7欠損マウスが作製されたが,同マウスでは を含むモチーフを NAPE-PLD も有している49,57).PLD1や 脂肪組織における脂肪滴の蓄積が著しく減少していた47). PLD2等の HKD/ホスファチジルトランスフェラーゼファ 高脂肪食摂取による肥満に耐性があり,同分子は脂肪組織 ミリーの PLD 型酵素とはホモロジーを示さない. で何らかの生理機能を発揮していると考えられる.今後, 著者らはさらに本酵素の組換え体を大腸菌で発現させて 細胞レベルや個体レベルでのこれらの分子の詳細な機能解 高度に精製した.精製酵素を用いた解析により,PC,PE 析が必要である. 等一般的なグリセロリン脂質とはほとんど反応せず N-ア 3. N-アシル PE から N-アシルエタノールアミンへの変換 (1) NAPE-PLD シル PE に極めて特異的であること,N-アシルリゾ PE な ど N-アシル PE の代謝物との反応性も低いこと,N-アシル PE の N-アシル鎖の分子種については炭素数が4以上であ N-ア シ ル PE の 分 解 経 路 と し て は 後 述 す る よ う に れば大差なく反応することが明らかになった49).すなわ PLA1/2,C,D による加水分解や,その結果生じた代謝物 ち,本酵素が生物作用の異なるアナンダミド,N-パルミト のさらなる加水分解が報告されているが,PLD により一 イルエタノールアミン,N-オレオイルエタノールアミンを 段階で N-アシル PE から N-アシルエタノールアミンを切 区別することなく生成することが示された.この結果は生 り出す反応が N-アシルエタノールアミンの主たる生合成 体試料中の N-アシル PE と N-アシルエタノールアミンに 経路と考えられてきた(図6) .植物では PLD の β および 含まれる N-アシル鎖の分子種の存在比が類似しているこ γ イソフォームが一般的なグリセロリン脂質に加えて N-ア とと一致した.また,メタロ-β-ラクタマーゼファミリー シル PE を基質とするが ,N-アシル PE に特異的に作用 の多くのタンパク質と似て,活性発現に必須の亜鉛を含有 する酵素は見つかっていない .市販されている放線菌 していた. 4 8) 3 1) Streptomyces chromofuscus の PLD も PE と同程度に N-パル NAPE-PLD の体内分布については発現レベルの違いは ミトイル PE を加水分解する .一方,動物組織での解析 あっても多くの臓器に広く分布していた56,57).脳では動物 は1 9 8 1年の報告に始まり ,ラットの心臓・脳やイヌの 種に係わらず相対的に高い発現レベルが認められたが,本 脳由来の粗酵素標品等を用いた結果から N-アシル PE を特 酵素の精製に用いた心臓での発現レベルは動物種により大 異的に水解する新規 PLD が膜画分に存在することが示さ きく異なっていた58).ラットの脳内での局在を検討したと れ51∼54),既 知 の PLD に 特 徴 的 な ト ラ ン ス ホ ス フ ァ チ ジ ころ,視床で最も高値を示したがその他のすべての部位で レーション(一級アルコールの存在下でグリセロリン脂質 も発現していた59).マウス脳の組織化学的観察においても 4 9) 5 0) 4 9 1 2 0 1 1年 6月〕 図6 N-アシル PE から N-アシルエタノールアミンへの変換経路 広範な発現が確認されたが,海馬歯状回の顆粒細胞層での LPS が NAPE-PLD 遺伝子のプロモーター領域に結合して 発現が際立っていた .また軸索での強い発現は,CB1カ いるヒストンの脱アセチル化を促進することによって ンナビノイドレセプターを介してシナプスの逆行性シグナ NAPE-PLD の発現レベルを抑制することが示された63).併 6 0) ルとして作用する2-AG がシナプス後細胞で生成するのと せて Sp1が定常時の転写調節に関与することも示唆され は対照的であることが注目された60).脳内の NAPE-PLD た63). の発現レベルは,出生直後は極めて低いが14日目を過ぎ NAPE-PLD の 遺 伝 子 欠 損 マ ウ ス の 解 析 が Leung ら に ると急激に上昇した59,61).前述の N-アシルトランスフェ よって報告されたが,マウスには明らかな表現型の異常を ラーゼの活性が出生直後に高く,その後低下するのとは対 認めなかった64).遺伝子欠損マウスにおける N-アシル PE 照的であり,実際,脳虚血モデルにおける N-アシル PE の と N-アシルエタノールアミンの脳内レベルを N-アシル鎖 含量は出生直後のラットで著しく高値を示した30).このよ の分子種ごとに測定して野生型マウスと比較したところ, うな現象の生理的意義はわかっていない. 飽和脂肪酸鎖とモノエン脂肪酸鎖を有するものでは有意な 著者らは二価陽イオンや PE 等の生体膜成分が本酵素を N-アシル PE の増加と N-アシルエタノールアミンの減少が 活性化することを報告したが ,in vivo での活性調節機構 認められ,本酵素が確かに脳内で N-アシル PE から N-ア は不明である.発現調節については,マクロファージ細胞 シルエタノールアミンの生成を担っていることが証明され 6 1) RAW2 6 4. 7を リ ポ 多 糖(LPS)で 処 理 す る と NAPE-PLD た.ところがアナンダミドとその前駆体の N-アラキドノ の mRNA レベルが低下することが知られていた62). 最近, イル PE のようなポリエン脂肪酸鎖を有するものでは有意 4 9 2 〔生化学 第8 3巻 第6号 な変化は認められなかった.また遺伝子欠損マウスにおい いて N-アシルリゾ PE 水解活性は脳,脊髄,精巣で高値を て N-アシル PE から N-アシルエタノールアミンを生成す 示し,ABH4の mRNA 分布とよく一致した.このことか る活性が残存していることも示された.以上の結果から, ら本酵素が NAPE-PLD 非依存性経路に含まれ,N-アシル 生体内での N-アシルエタノールアミン,とりわけアナン リゾ PE の加水分解を担う主要な酵素と考えられる. ダミドの生成には NAPE-PLD 以外の酵素が関与する代謝 グリセロホスホ-N-アシルエタノールアミンからの N-ア シルエタノールアミンの生成を触媒する酵素について 経路の存在することが明らかになった. は,2 0 0 8年に初めて報告がなされた67).マウスの脳におけ (2) NAPE-PLD 非依存性経路 るグリセロホスホ-N-アシルエタノールアミンの含量が N- NAPE-PLD 非依存性経路の提唱は1 9 8 4年 に さ か の ぼ アシルエタノールアミン含量の約1/1 0に過ぎないことか る52).すなわち,イヌ脳のホモジネートにより N-アシル ら,グリセロホスホ-N-アシルエタノールアミンの分解活 PE から N-アシルエタノールアミンが生成する際に,sn-1 性の高いことが示唆された.脳ホモジネートを EDTA の 位または sn-2位の脂肪酸鎖が脱離(O-脱アシル化)した 存在下でインキュベートするとグリセロホスホ-N-アシル N-アシルリゾ PE や,その両方が脱離したグリセロホスホ- エタノールアミンが蓄積することから,EDTA 感受性の酵 N-アシルエタノールアミンが代謝中間体として生成するこ 素の関与が示唆された.グリセロホスホジエステラーゼ とが報告された(図6) .本報告ではこれらの代謝中間体 (GDE) 1は GDE ファミリーのメンバーの一つであり,グ から N-アシルエタノールアミンを遊離するホスホジエス リセロホスホイノシトールを水解する酵素として知られ テラーゼ活性を検出しているが,関与する酵素の解析は行 る68).GDE ファミリーのうち5種類(GDE1―4, 7)の組換 われなかった. え体を検討したところ,GDE1のみがグリセロホスホ-N- 著者らは2 0 0 4年に N-アシル PE の O-脱アシル化を触媒 アシルエタノールアミンから N-アシルエタノールアミン するほ乳類の PLA1/2 様酵素について初めて報告した .こ を 遊 離 す る 活 性 を 持 ち,こ の 活 性 は Mg2+で 増 強 し, の活性はラットの種々の臓器に分布していたが,胃で最も EDTA や Ca2+で阻害された.一連の酵素学的特徴はマウス 高い活性を示した.タンパク質精製の結果,胃の酵素は分 脳におけるグリセロホスホ-N-アシルエタノールアミン水 泌性 PLA2(sPLA2) -IB であることが判明した.さらに組換 解活性のそれとよく一致した.また,マウスにおいて本活 6 5) え酵素を用いた検討により,IB,IIA,V 型の sPLA2 に N- 性は脳,脊髄,肝臓,腎臓,精巣で比較的高値を示し, ア シ ル PE 水 解 活 性 を 認 め た が,X 型 sPLA2 や 細 胞 質 GDE1の mRNA 分布とよく一致した.以上の結果から本 PLA2α ではほとんど認められなかった.PLA2 によって生 酵素がグリセロホスホ-N-アシルエタノールアミンから N- 成される sn-2位の脂肪酸鎖を欠いた N-アシルリゾ PE を アシルエタノールアミンを遊離させる責任酵素であると考 N-アシルエタノールアミンに変換する“リゾ PLD”活性 えられた.しかしながら,ABH4や GDE1は N-アシル基 は,ラットの様々な組織において認められたが,脳と精巣 の分子種を区別しないことから,この NAPE-PLD 非依存 で 最 も 高 い 活 性 を 示 し た.NAPE-PLD 自 体 も 弱 い リ ゾ 性経路はアナンダミドのようなポリエン脂肪酸を含有する PLD 活性を示すが,本活性とは酵素学的性質が異なるこ N-アシルエタノールアミンの生成に特異的に関与する経路 とからそれ以外の酵素の関与が想定された.しかしながら ではなさそうであった. 酵素タンパク質の同定には至らなかった. 2 0 0 6年には前述の NAPE-PLD 欠損マウスの解析によっ 2 0 1 0年に GDE1の欠損マウスが報告された69).本マウ スの脳ホモジネートには,N-アシルリゾ PE やグリセロホ て,N-アシル PE の sn-1位と sn-2位の脂肪酸鎖が順次脱 スホ-N-アシルエタノールアミンからの N-アシルエタノー 離することで N-アシルリゾ PE を介してグリセロホスホ- ルアミンの生成活性がほとんど見られず,in vitro の系に N-アシルエタノールアミンが生成し,その後 N-アシルエ おいて本酵素が N-アシルリゾ PE からグリセロホスホ-N- タノールアミンが遊離される経路が再び提唱された66). アシルエタノールアミンを介して N-アシルエタノールア sn-1位と sn-2位からの脂肪酸の脱離はメチルアラキドニ ミンを生成する過程に貢献することが確認された.しかし ルフルオロホスホネート(MAFP)によって阻害されるこ ながら,脳での N-アシルエタノールアミンの含量は GDE1 とから,セリン加水分解酵素の関与が示唆された.フルオ 欠損マウスと野生型の間で変わらず,また NAPE-PLD 欠 ロホスホネート-ビオチンプローブを用いたプロテオミク 損マウスと NAPE-PLD/GDE1二重欠損マウスの間でも差 ス解析により,それまで機能が不明であった α/β ヒドロ は見られなかった.さらに,この二重欠損マウスの脳の初 ラーゼ4(ABH4)が責任酵素として同定された.本酵素 代培養系においても放射標識 N-アシル PE からの N-アシ の組換え体は N-アシル PE や N-アシルリゾ PE の O-脱ア ルエタノールアミンの生成が認められたことから,GDE1 シル化を触媒したが,リゾ PE,リゾ PC,リゾ PS といっ にも NAPE-PLD にも依存しない新たな経路の存在が示唆 た他のリゾリン脂質には活性を示さなかった.マウスにお された. 4 9 3 2 0 1 1年 6月〕 今一つの経路として,N-アシル PE から PLC 型の反応で N-アシルエタノールアミンリン酸が遊離し,引き続いて起 こる脱リン酸化により N-アシルエタノールアミンが生成 する経路が示唆されている(図6) .この経路は主にマク ロファージ細胞 RAW2 6 4. 7で解析されているが,マウス の 脳 に も 存 在 す る と 考 え ら れ て い る.RAW2 6 4. 7で は LPS の刺激により NAPE-PLD 非依存性のアナンダミド産 生が亢進する62,70).PLC 阻害剤であるネオマイシンによっ てこの産生亢進が阻害されることから,このアナンダミド 産生に PLC 型酵素の関与が示唆されたが,それ以上の解 析はなされていない.アナンダミドリン酸の脱リン酸化反 応へのチロシンホスファターゼ PTPN2 2の関与が,RAW 2 6 4. 7での siRNA を用いた実験や,PTPN2 2欠損マウスの 脳の解析により報告されている62).加えて,イノシトール リン酸5-ホスファターゼ SHIP1も同様の脱リン酸化反応 を触媒した70).NAPE-PLD 欠損マウスの脳ホモジネートを 用いて N-アラキドノイル PE からのアナンダミドの生成経 路を検討したところ,1 0分以内の短いインキュベーショ ンでは PLC を介する経路が優位であり,6 0分程度の長い インキュベーションでは ABH4を介する経路が 優 位 で あった70). 4. お わ り に 1 9 8 0年代に Schmid らのグループが確立した N-アシル PE の代謝経路については,著者らのグループが報告した NAPE-PLD の cDNA クローニングを契機として分子生物 学的解析が急速に進んだ.その結果,当初考えられていた 以上に多種類の酵素が N-アシル PE の生成と分解に関与し ていることが明らかになりつつある.一方,動物組織にお ける主要な合成酵素と考えられる Ca2+依存性 N-アシルト ランスフェラーゼの実体が未だに不明であるなど解決すべ き重要な課題が残されていて,今後の進展が待たれる.ま た,N-アシルエタノールアミンの前駆体として注目される ことの多い N-アシル PE であるが,それ自体の生体内での 役割についての解明も急がれる. 文 献 1)Schmid, H.H.O., Schmid, P.C., & Natarajan, V.(1 9 9 0)Prog. 3. Lipid Res.,2 9,1―4 2)小林哲幸(1 9 9 2)生化学,6 4,4 1―4 5. 3)Bomstein, R.A.(1 9 6 5)Biochem. Biophys. Res. Commun., 2 1, 4 9―5 4. 4)Epps, D.E., Natarajan, V., Schmid, P.C., & Schmid, H.H.O. (1 9 8 0)Biochim. Biophys. Acta,6 1 8,4 2 0―4 3 0. 5)Nelson, G.J. (1 9 7 0) Biochem. Biophys. Res. Commun., 3 8, 2 6 1―2 6 5. 6)Kuehl, Jr., F.A., Jacob, T.A., Ganley, O.H., Ormond, R.E., & Meisinger, M.A.P.(1 9 5 7)J. Am. Chem. Soc.,7 9,5 5 7 7―5 5 7 8. 7)Matsuda, L.A., Lolait, S.J., Brownstein, M.J., Young, A.C., & Bonner, T.I.(1 9 9 0)Nature,3 4 6,5 6 1―5 6 4. 8)Devane, W.A., Hanus, L., Breuer, A., Pertwee, R.G., Stevenson, L.A., Griffin, G., Gibson, D., Mandelbaum, A., Etinger, A., & Mechoulam, R.(1 9 9 2)Science,2 5 8,1 9 4 6―1 9 4 9. 9)Di Marzo, V., Fontana, A., Cadas, H., Schinelli, S., Cimino, G., Schwartz, J.C., & Piomelli, D.(1 9 9 4)Nature, 3 7 2, 6 8 6― 6 9 1. 1 0)van der Stelt, M. & Di Marzo, V.(2 0 0 4)Eur. J. Biochem., 2 7 1,1 8 2 7―1 8 3 4. 1 1)Hansen, H.S. & Diep, T.A.(2 0 0 9)Biochem. 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M., Tang-Christensen, M., Widdowson, P.S., Williams, G.M., & Reynet, C.(2 0 0 6)Cell Metab.,3,1 6 7―1 7 5. 1 8)Sandoval, J.A., Huang, Z.H., Garrett, D.C., Gage, D.A., & Chapman, K.D.(1 9 9 5)Plant Physiol.,1 0 9,2 6 9―2 7 5. 1 9)Gillum, M.P., Zhang, D., Zhang, X.-M., Erion, D.M., Jamison, R.A., Choi, C., Dong, J., Shanabrough, M., Duenas, H.R., Frederick, D.W., Hsiao, J.J., Horvath, T.L., Lo, C.M., Tso, P., Cline, G.W., & Shulman, G.I.(2 0 0 8)Cell,1 3 5,8 1 3―8 2 4. 2 0)Shiratsuchi, A., Ichiki, M., Okamoto, Y., Ueda, N., Sugimoto, N., Takuwa, Y., & Nakanishi, Y.(2 0 0 9)J. Biochem.,1 4 5,4 3― 5 0. 2 1)McKinney, M.K. & Cravatt, B.F.(2 0 0 5)Annu. Rev. Biochem., 7 4,4 1 1―4 3 2. 2 2)Ueda, N., Tsuboi, K., & Uyama, T.(2 0 1 0)Prog. Lipid Res., 4 9,2 9 9―3 1 5. 2 3)Di Marzo, V.(2 0 0 8)Nat. Rev. Drug Discov.,7,4 3 8―4 5 5. 2 4)Ueda, N., Tsuboi, K., & Uyama, T.(2 0 1 0)Biochim. Biophys. Acta,1 8 0 1,1 2 7 4―1 2 8 5. 2 5)Hansen, H.S., Moesgaard, B., Hansen, H.H., & Petersen, G. (2 0 0 0)Chem. Phys. Lipids,1 0 8,1 3 5―1 5 0. 2 6)Schmid, H.H.O.(2 0 0 0)Chem. Phys. Lipids,1 0 8,7 1―8 7. 2 7)Jin, X.-H., Okamoto, Y., Morishita, J., Tsuboi, K., Tonai, T., & Ueda, N.(2 0 0 7)J. Biol. Chem.,2 8 2,3 6 1 4―3 6 2 3. 2 8)Cadas, H., di Tomaso, E., & Piomelli, D.(1 9 9 7)J. Neurosci., 1 7,1 2 2 6―1 2 4 2. 2 9)Natarajan, V., Schmid, P.C., & Schmid, H.H.O.(1 9 8 6)Biochim. Biophys. Acta,8 7 8,3 2―4 1. 3 0)Moesgaard, B., Petersen, G., Jaroszewski, J.W., & Hansen, H. S.(2 0 0 0)J. Lipid Res.,4 1,9 8 5―9 9 0. 3 1)Kilaru, A., Blancaflor, E.B., Venables, B.J., Tripathy, S., Mysore, K.S., & Chapman, K.D. (2 0 0 7) Chem. Biodivers., 4, 1 9 3 3―1 9 5 5. 3 2)Faure, L., Coulon, D., Laroche-Traineau, J., Le Guedard, M., Schmitter, J.M., Testet, E., Lessire, R., & Bessoule, J.J.(2 0 0 9) 4 9 4 J. Biol. Chem.,2 8 4,1 8 7 3 4―1 8 7 4 1. 3 3)Hughes, P.J. & Stanway, G.(2 0 0 0)J. Gen. 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Chem.,2 7 9,5 2 9 8―5 3 0 5. 5 8)Moesgaard, B., Petersen, G., Mortensen, S.A., & Hansen, H.S. (2 0 0 2)Comp. Biochem. Physiol. B Biochem. Mol. Biol., 1 3 1, 4 7 5―4 8 2. 5 9)Morishita, J., Okamoto, Y., Tsuboi, K., Ueno, M., Sakamoto, H., Maekawa, N., & Ueda, N.(2 0 0 5)J. Neurochem., 9 4, 7 5 3― 7 6 2. 6 0)Egertová, M., Simon, G.M., Cravatt, B.F., & Elphick, M.R. (2 0 0 8)J. Comp. Neurol.,5 0 6,6 0 4―6 1 5. 6 1)Wang, J., Okamoto, Y., Tsuboi, K., & Ueda, N.(2 0 0 8)Neuropharmacology,5 4,8―1 5. 6 2)Liu, J., Wang, L., Harvey-White, J., Osei-Hyiaman, D., Razdan, R., Gong, Q., Chan, A.C., Zhou, Z., Huang, B.X., Kim, H.-Y., & Kunos, G. (2 0 0 6) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.,1 0 3,1 3 3 4 5―1 3 3 5 0. 6 3)Zhu, C., Solorzano, C., Sahar, S., Realini, N., Fung, E., Sassone-Corsi, P., & Piomelli, D.(2 0 1 1)Mol. Pharmacol., 7 9, 7 8 6―7 9 2. 6 4)Leung, D., Saghatelian, A., Simon, G.M., & Cravatt, B.F. (2 0 0 6)Biochemistry,4 5,4 7 2 0―4 7 2 6. 6 5)Sun, Y.-X., Tsuboi, K., Okamoto, Y., Tonai, T., Murakami, M., Kudo, I., & Ueda, N.(2 0 0 4)Biochem. J .,3 8 0,7 4 9―7 5 6. 6 6)Simon, G.M. & Cravatt, B.F. (2 0 0 6) J. Biol. Chem., 2 8 1, 2 6 4 6 5―2 6 4 7 2. 6 7)Simon, G.M. & Cravatt, B.F. (2 0 0 8) J. Biol. Chem., 2 8 3, 9 3 4 1―9 3 4 9. 6 8)Zheng, B., Berrie, C.P., Corda, D., & Farquhar, M.G.(2 0 0 3) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.,1 0 0,1 7 4 5―1 7 5 0. 6 9)Simon, G.M. & Cravatt, B.F.(2 0 1 0)Mol. Biosyst., 6, 1 4 1 1― 1 4 1 8. 7 0)Liu, J., Wang, L., Harvey-White, J., Huang, B.X., Kim, H.-Y., Luquet, S., Palmiter, R.D., Krystal, G., Rai, R., Mahadevan, A., Razdan, R.K., & Kunos, G.(2 0 0 8)Neuropharmacology, 5 4,1―7.