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Yoshida Press Release

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Yoshida Press Release
Embargoed Advance Information from Science
The Weekly Journal of the American Association for the Advancement of Science
http://www.aaas.org/
問合せ先:Natasha Pinol
+1-202-326-6440
[email protected]
Science 2012 年 5 月 25 日号ハイライト
かつては珍しかったチョウが気候変動の恩恵を受けている
結晶が火山噴火の手がかりに
腫瘍増殖を説明する新しい仮説
グリシン中毒の癌細胞
かつては珍しかったチョウが気候変動の恩恵を受けている
Once-Rare Butterfly Is Benefitting From Climate Change
フチベニヒメシジミの生息域はこの 20 年間に拡大しており、これは寄主として普通は利用
してこなかった植物が、温暖化によって産卵に適した場所となったためであることが報告さ
れた。一般的には、ある種が他の種に依存している場合、気候変動に応じて生息域を移動さ
せる能力は制限されるとされている。しかし新しい研究により、その逆のことも起こり得る
ことが示された。英国のRachel Patemanらは、ボランティアらが過去 40 年間にわたって収集
したさまざまな寄主植物でのフチベニヒメシジミの目撃データの分析を行った。この美しい
オレンジ色と茶色のチョウは従来、主にロックローズ(Helianthemum nummularium)を寄主
として利用していた。1980 年代には珍しい種であったが、その後、北の方へと生息域が急
速に拡大した。新たな研究結果によると、フチベニヒメシジミはフウロソウ科の植物、主に
dove's-foot cranesbillを寄主植物として利用することが増えており、また、この傾向は比較的
暖かい夏に見られる。以前、ロックローズを主な寄主植物として選んでいた理由の 1 つとし
て、ロックローズは南向きの傾斜地に成育するため、日光を十分に受け、フチベニヒメシジ
ミにとって居心地の良い場所であったことがあげられる。しかし、夏の気温の上昇で、フチ
ベニヒメシジミは寄主植物に関してあまり選り好みをする必要がなくなり、他の植物を寄主
植物として利用することが可能になった。
Article #12: "Temperature-Dependent Alterations in Host Use Drive Rapid Range Expansion in a
Butterfly," by R.M. Pateman; J.K. Hill; C.D. Thomas at University of York in York, UK; R.M. Pateman;
D.B. Roy at Natural Environment Research Council (NERC) in Wallingford, UK; R. Fox at Butterfly
Conservation in Wareham, UK.
結晶が火山噴火の手がかりに
Crystals Offer Clues to Volcanic Eruptions
最新の研究報告によると、マグマに含まれる結晶から火山噴火を予測できる可能性があると
いう。ほとんど、あるいはまったく兆候がなくても火山は噴火することがあり、広範にわた
って周辺地域を破壊する。世界各地の多くの(すべてではないが)活火山は、マグマが溜ま
っている火山直下の供給系の変化を示していることが多い、いくつかの兆候に基づいて監視
されている。マグマは、溶岩、火山性ガスの泡、浮遊結晶が高温で混ざったものである。地
中の溶岩から成長する結晶は、樹木の年輪のように同心円状の帯を形成することが多い。各
帯の化学組成は微妙に異なるため、結晶の形成過程の手がかりとなる。Kate Saunders らは、
法科学で事件を解決する刑事のように、セントヘレンズ火山(アメリカ太平洋岸北西部の活
火山)の過去の噴火物から採取した試料の中から、様々な結晶の帯の特徴を化学的に記録し
た。Saunders らは、通常、噴火の 12 ヵ月以内にマグマ内部で結晶成長が生じることを発見
し、セントヘレンズ火山の実際の観測記録からこれらの結果を立証した。また、結晶成長の
ピークは、その火山の地震活動や二酸化硫黄の流量の増加と関連があることが判明した。
Article #11: "Linking Petrology and Seismology at an Active Volcano," by K. Saunders; J. Blundy; K.
Cashman at University of Bristol in Bristol, UK; R. Dohmen at Ruhr-Universität Bochum in Bochum,
Germany.
腫瘍増殖を説明する新しい仮説
A New Hypothesis to Explain Tumor Growth
遺伝子クラスターの全体を欠失させる大規模な変異はがんでよくみられるが、そうした変異
が実際にがんを促進するかどうかは明らかでない。新たな研究により、hemizygous focal
deletion と呼ばれるそうした変異は、ゲノムの中で腫瘍抑制遺伝子が豊富な領域に生じるた
め、細胞増殖を促進することが示唆された。ヒトの腫瘍は、広域の遺伝子を再構成、削除、
増幅、さもなければ混乱させるゲノム変異を多く有している。これら多くの変異のどれが、
がんの原因として関与しているかを明らかにすることは重要な課題である。特定の染色体領
域に多く生じ、結果として隣接する遺伝子を含むセット全体の 1 コピーの欠失をもたらす
hemizygous focal deletion はとくに謎である。Nicole Solimini らは、こうした欠失領域の中で
がんに関係する特性をもつ遺伝子を探索した。その結果、腫瘍増殖を抑制的または促進的に
調節する複数の「STOP」および「GO」遺伝子が同定された。hemizygous focal deletion は、
比較的 STOP 遺伝子が多く、また比較的 GO 遺伝子が少ない「遺伝子島(gene islands)」を
標的としているようである。Solimini らは、こうした欠失を有する細胞は増殖し、腫瘍を生
成する可能性が高いという「遺伝子島仮説」を提唱している。
Article #20: "Recurrent Hemizygous Deletions in Cancers May Optimize Proliferative Potential," by N.L.
Solimini; Q. Xu; A.C. Liang; M.R. Schlabach; J. Luo; A.E. Burrows; A.N. Anselmo; A.L. Bredemeyer;
M.Z. Li; R. Beroukhim; S.J. Elledge at Harvard University Medical School in Boston, MA. For a complete
list of authors, please see the manuscript.
グリシン中毒の癌細胞
Glycine-Addicted Cancer Cells
急速に増殖する癌細胞は、グリシン(ヒトが食物から得ている栄養分であるアミノ酸の一
種)を強く欲する傾向があることが、新しい研究で報告された。グリシンは癌細胞の
DNA・RNA合成をサポートするためにとくに重要なのかもしれない。癌細胞が異常にグリ
シンを必要とするならば、この知見によって、癌細胞を選択的に攻撃する方法が見つかる可
能性がある。グリシンを取り込む細胞または代謝する細胞の能力の阻害を目指した治療法を
利用すればよいのである。メタボロミクスと呼ばれる新しい技術は、生体液中のグリシンと
数百個もの代謝物の測定が可能である。この技術は、血糖値計(代謝物の 1 つであるグルコ
ースを測定できる、ドラッグストアで購入可能な器具)に幾分似た働きをする。Mohit Jain
らは、ペトリ皿に 60 種類の癌細胞を増殖させ、それぞれの癌細胞の「食事日誌」のような
ものを作成した。そして、急速に増殖する細胞はグリシンを消費する傾向があり、ゆっくり
と増殖する癌細胞はこのアミノ酸を放出する傾向があることを発見した。この結果は、医師
が疾患の転帰を予測するうえで役立つと考えられる(例えば、グリシン中毒の細胞の量が多
い癌は死亡率が高い、など)。また、癌細胞のグリシン消費のモニタリングを、薬剤感受性
の予測に利用できるかもしれない。Perspectiveでは、これらの知見を詳細に説明している。
Article #15: "Metabolite Profiling Identifies a Key Role for Glycine in Rapid Cancer Cell Proliferation,"
by M. Jain; R. Nilsson; N. Madhusudhan; T. Kitami; C.B. Clish; V.K. Mootha at Broad Institute in
Cambridge, MA; M. Jain; R. Nilsson; N. Madhusudhan; T. Kitami; R. Kafri; M.W. Kirschner; V.K.
Mootha at Harvard Medical School in Boston, MA; M. Jain; R. Nilsson; N. Madhusudhan; T. Kitami; V.K.
Mootha at Massachusetts General Hospital in Boston, MA; M. Jain at Brigham and Women’s Hospital in
Boston, MA; R. Nilsson at Karolinska Institutet in Stockholm, Sweden; S. Sharma at La Jolla Institute for
Allergy & Immunology in La Jolla, CA.
Article #4: "Systems Biology Meets Metabolomics in Tackling Cancer Metabolism," by M. Tomita; K.
Kami at Keio University in Fujisawa, Japan; M. Tomita; K. Kami at Human Metabolome Technologies Inc.
in Fujisawa, Japan.
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