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折り紙から発想を得た現実のトランスフォーマー

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折り紙から発想を得た現実のトランスフォーマー
Embargoed Advance Information from Science
The Weekly Journal of the American Association for the Advancement of Science
http://www.aaas.org/
問合せ先:Natasha Pinol
+1-202-326-6440
[email protected]
Science 2014 年 8 月 8 日号ハイライト
折り紙から発想を得た現実のトランスフォーマー
コンピュータチップが本物の脳を真似る
アンモニアのカーボンフリーワンポット合成法
油の中に浮遊する水滴の中で生きる微生物
折り紙から発想を得た現実のトランスフォーマー
A Real-Life, Origami-Inspired Transformer
平らな材料と折り紙をヒントにしたパターンを使って、現実のトランスフォーマー(集合す
るとすぐに、這ったり向きを変えたりできる自己折り畳み式ロボット)が作られた。こうし
た機械は多方面に応用できる可能性がある。たとえば、倒壊した建物のような閉鎖空間へ送
り込み、捜索や救出を行うことなどが考えられる。関連する報告では、折り紙を基にした技
術を用いて、調整可能な特性を備えた、軽量かつ超強靭な材料の設計法が示されている。こ
うした材料を機械に組み込むことで、機能が拡張できるという。
自己集合過程は至るところで見られる。たとえば、生体分子はウイルスのような構造体を外
部からの誘導なしに形成するし、集団で生活する昆虫も同様の方法で巣を作る。何種類かの
自己集合は工学に応用できる。ひとつは、平らな材料を自己組織化して 3 次元にすることで
ある ―― この結果できる複雑で拡大縮小可能な形状は、重さの割には非常に強靭なので、
特に役に立つ。しかし、こうした方針に沿った既存の方法では、自ら折り畳まれて、外から
人間の助けがなくても機能するような機械は、まだ実現していない。こうしたロボットがで
きれば、平らな状態で大量に運んで多様な作業を行えるので、非常に役に立つだろう。今回、
S. Felton らは大きな飛躍を遂げ、這うことのできる自己折り畳み式ロボットの作成方法を示
した。彼らがロボットを作るのに使用したのは簡単に見つかる材料、つまり、100℃で収縮
するように設計された透明な形状記憶ポリマーと、自己折り畳み式の蝶番だった。蝶番をポ
リマーに取り付けるとともに、(発熱回路によって)蝶番が折り畳まれる状態にしたところ、
複雑な 3 次元の機械ができた。折り畳み過程を自動化するため、彼らは 3 次元折り紙設計ソ
フトウェアを利用して、ポリマーにつける細かい折り目のパターンを作成した。彼らが作っ
たロボットは、自己集合したのちに歩き、向きを変えることもできた。この研究は自己集合
する機械を作るための実際のプロセスを示している。著者によると、比較的簡単に作れるの
で幅広く応用できるという。
関連する報告では、Jesse Silverberg らが、ジグザグの折り目をつける特殊な折り畳み方を研
究した。この方法は、宇宙ミッションで使うソーラーパネルを効率よく格納するのに使用さ
れている。彼らはこのパターンを使って折り畳まれたシートを作り、欠陥を加えたり取り除
いたりすることによって、シートを構造的に変化させて、その機械的特性を制御する方法を
考案した。この方法を使えば、望ましい特徴(強さや堅さなど)を備えた材料を作り出すこ
とができるだろう。今回開発された調整可能な設計原理を、自己折り畳み式ロボットシステ
ムに拡張することで、要望に応じて機械的な機能を変えられる機械への道が開かれる。
Perspective では、両報告に関するさらなる見識が述べられている。
Article #10: "A method for building self-folding machines," by S. Felton; M. Tolley; R. Wood at
Wyss Institute for Biologically Inspired Engineering in Cambridge, MA; S. Felton; M. Tolley; R.
Wood at Harvard University in Cambridge, MA; E. Demaine; D. Rus at Massachusetts Institute of
Technology in Cambridge, MA.
Article #11: "Using origami design principles to fold reprogrammable mechanical metamaterials," by
J.L. Silverberg; L. McLeod; I. Cohen at Cornell University in Ithaca, NY; A.A. Evans; C.D.
Santangelo; R.C. Hayward at University of Massachusetts, Amherst in Amherst, MA; T. Hull at
Western New England University in Springfield, MA.
Article #4: "Folding structures out of flat materials," by Z. You at University of Oxford in Oxford,
UK.
コンピュータチップが本物の脳を真似る
Computer Chip Mimics Features of Real Brain
研究者らによって、脳と類似したネットワークと構造をもち、リアルタイムで高度な課題を
遂行でき、しかもエネルギー消費がきわめて少ないコンピュータチップがデザインされた。
このチップにより、これまでのコンピュータではうまく行えなかった課題に適したコンピュ
ータ・デバイスのデザインが可能になるであろう。ヒトの脳は、複雑な作業を行いながら、
きわめて少ないエネルギーしか使わず、占める空間もきわめて少ない。工学研究者らはこの
事実にヒントを得て、小型でエネルギー効率の高いチップがヒトの脳と同等の作業を行う、
新世代の認知コンピュータ装置の開発に取り組んできた。このようなデバイスは、長年にわ
たる科学者の夢であった。しかし、現時点でそのようなコンピュータは存在せず、その一因
として、John von Neumann らによって最初に提示された古典的なデジタル方式のコンピュー
タ・アーキテクチャは、特に脳で実現されている相互接続された神経ネットワークと比較す
ると効率性が限られていることがあった。今回、ヒトの脳を真似たコンピュータ装置への道
を進めるため、Paul Merolla らは別のアーキテクチャに基づくチップを作製した。これは、
通常用いられている神経ネットワークであるスパイキング・ネットワーク(spiking network)
にヒントを得たものである。すなわち、このアーキテクチャにおける人工ニューロンは、定
期的な間隔で発火するのではなく、電荷が特定の値に達した場合にのみ発火するようになっ
ている。ニューロンの発火は、他のニューロンの電荷に影響を及ぼすが、これはヒトの脳内
で生じていることときわめてよく似ている。このチップの基本的な構成要素は、256 の入力
ライン(「軸索」)と 256 の出力ライン(ニューロン)から成るコアである。著者らは、こ
のようなコアを 4,000 個以上接続し、電気信号をやり取りする 2 億 5600 万個の「シナプス」
を有する「TrueNorth」と呼ばれるデジタルコンピュータチップ上に装備した。このチップ
は、背景内から人間やサイクリストなどの対象物を識別するという、複雑な画像検出テスト
に合格した。著者らはエネルギー効率の高さだけでなく、拡張可能性も目的にしている。
TrueNorth チップを組み合わせることで、数十万個のコア、数億個のニューロン、そして数
千億個のシナプスから成るシステムを構築することが可能である。Merolla らは、このチッ
プを従来のコンピュータ・アーキテクチャと組み合わせて、両者が補い合って課題を遂行で
きるようにすることを計画している。この研究に DARPA が資金提供している。
Article #15: "A million spiking-neuron integrated circuit with a scalable communication network and
interface," by P.A. Merolla; J.V. Arthur; R. Alvarez-Icaza; A.S. Cassidy; F. Akopyan; B.L. Jackson;
S.K. Esser; R. Appuswamy; B. Taba; A. Amir; M.D. Flickner; W.P. Risk; D.S. Modha at IBM
Research–Almaden in San Jose, CA; J. Sawada; I. Vo at IBM Research–Austin in Austin, TX; N.
Imam at Cornell University in Ithaca, NY; C. Guo at IBM Engineering and Technology Services
in San Jose, CA; Y. Nakamura at IBM Research–Tokyo in Tokyo, Japan; B. Brezzo at IBM T. J.
Watson Research Center in Yorktown Heights, NY; R. Manohar at Cornell Tech in New York,
NY.
アンモニアのカーボンフリーワンポット合成法
One-Pot, Carbon-Free Ammonia Recipe
水と窒素からアンモニアを合成する新しい電気化学的方法が完全な再生可能資源から肥料を
製造する方法につながるかもしれない。肥料用アンモニアの一般的な合成方法には窒素の水
素化という工程を伴うが、この工程で使用する水素は世界で産出される天然ガスの 3~5%を
消費して大量の二酸化炭素を排出し、汚染を引き起こしている。Stuart Licht らが開発したこ
の電気化学的方法では天然ガスが不必要であり、このため、はるかに環境に優しい製造プロ
セスになっている。彼らの「ワンポット」合成法では、溶融水酸化物塩の中で水と窒素が直
接作用し合い、アンモニアができる。この相互作用を引き起こすのは電流で、触媒となるの
はその溶融混合物の中に散らばったナノ構造の酸化鉄である。この混合物は数時間は安定し
ているが、Licht らは自分たちの実証した方法がさらに安定した効率的なアンモニアの製造
方法につながることを望んでいる。
Article #8: "Ammonia synthesis by N2 and steam electrolysis in molten hydroxide suspensions of
nanoscale Fe2O3," by S. Licht; B. Cui; B. Wang; F.-F. Li; J. Lau; S. Liu at George Washington
University in Washington, DC.
油の中に浮遊する水滴の中で生きる微生物
Microbes Live in Water, Suspended in Oil
Rainer Mechenstock らの新しい報告によると、微生物は油に閉じ込められた小さな水滴の中
で生きることができるという。微生物は、自然環境の中で水と油が接する境界で繁栄するこ
とが可能で、その場所で油の分解に重要な役割を果たしている。しかし油の中に微生物が存
在すること自体、石油の生分解が拡大している可能性を示唆している。油は海底の網目状の
亀裂を通ってゆっくりと流出しており、その量は生分解によって減少し得る。ただ不測の事
態で流出した油も、この生分解によって除去できる。Mechenstock らは、世界最大のアスフ
ァルト湖であるトリニダード・トバコのピッチ湖の試料の水滴に微生物群を発見した。彼ら
の分析によると、この微生物群には多様な微生物種が含まれており、それらが油を様々な有
機分子へと分解しているという。水滴自体の組成から、それらが埋蔵された油に由来するも
のであり、表面から浸透したものではないことが示された。
Article #16: "Water droplets in oil are microhabitats for microbial life," by R.U. Meckenstock; F. von
Netzer; C. Stumpp; T. Lueders; A.M. Himmelberg; N. Hertkorn; P. Schmitt-Kopplin; M. Harir at
Helmholtz Zentrum München in Neuherberg, Germany; R. Hosein; S. Haque at University of the
West Indies in St. Augustine, Trinidad and Tobago; D. Schulze-Makuch at Washington State
University in Pullman, WA; D. Schulze-Makuch at Technical University Berlin in Berlin, Germany;
R.U. Meckenstock at University Duisburg-Essen in Essen, Germany.
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