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ミツバチを殺すウイルスが助けを借りていかに広がるか

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ミツバチを殺すウイルスが助けを借りていかに広がるか
Embargoed Advance Information from Science
The Weekly Journal of the American Association for the Advancement of Science
http://www.aaas.org/
問合せ先:Natasha Pinol
+1-202-326-6440
[email protected]
Science 2012 年 6 月 8 日号ハイライト
ミツバチを殺すウイルスが助けを借りていかに広がるか
北極の氷の下でひそかに異常発生していた植物プランクトン
確実にたたき割る
ケモカインのサイレンシングはどのようにして赤ちゃんを安全に守るのか?
ミツバチを殺すウイルスが助けを借りていかに広がるか
How a Bee-Killing Virus Spreads, With Help
ハワイのミツバチコロニーにおける寄生ダニの拡散により、この有益な昆虫のコロニー内で、
かつては無害だったウイルスが盛んに繁殖するようになった、と研究者らが報告している。
それ以外の地域では、このダニとウイルスの両方の出現に伴って大規模なコロニーの死滅が
発生しているが、ハワイではまだこのような事態は起きていない。ハワイにおけるこのダニ
の登場は、いくつかの島に広がっただけで、比較的最近のことである。Stephen Martin らは
このまれな機会を利用して、ウイルス侵入時のハワイのミツバチをモニタリングし、ウイル
スがどのように拡散し進化するかを調べた。DWV というウイルスは単独でミツバチに感染
できるが、ミツバチヘギイタダニ(Varroa mite)は宿主として、また保菌生物として感染を
助ける。ダニの摂餌行動も、ウイルスがミツバチの循環系に直接伝播することを可能にする。
Martin らは、ミツバチヘギイタダニの侵入により、ミツバチコロニー内での DWV の有病率
が 10%から 100%に上昇したと報告している。ミツバチの体内におけるウイルス量も激増し
たのに対し、ウイルス株の多様性は激減した。実際、ダニによる感染がみられるコロニーで
は 1 つの DWV 株のみが優勢となっている。Martin らは、ミツバチヘギイタダニの世界的な
拡散によって DWV 変異体が選択され、これによって新たに DWV が世界的にもっとも広く
分布し、伝染力の強い昆虫ウイルスの一つになったと結論付けている。
Article #16: "Global Honey Bee Viral Landscape Altered by a Parasitic Mite," by S.J. Martin; L.
Brettell at University of Sheffield in Sheffield, UK; A.C. Highfield; D.C. Schroeder at The Marine
Biological Association of the United Kingdom in Plymouth, UK; E.M. Villalobos; S. Nikaido at
University of Hawaii at Manoa in Manoa, HI; G.E. Budge; M. Powell at The Food and Environment
Research Agency in York, UK.
北極の氷の下でひそかに異常発生していた植物プランクトン
Phytoplankton Blooms Hidden Beneath Arctic Ice:
一見したところ、北極海は荒涼としており、一年中厚い氷に覆われている部分もある。今回
の Brevia の記事によると、北極の氷の下で、鮮緑色をした植物プランクトンの異常発生が発
見されたという。この発見から、北極海はこれまで考えられていたよりも豊かであることが
わかったが、植物プランクトンの異常発生がその領域の生態系に及ぼす詳しい影響について
はいまだに不明である。植物プランクトンの異常発生は、24 時間太陽の沈まない夏に見ら
れるもので、北極の食物連鎖において非常に重要な役割を担っている。そのため、人工衛星
を用いて宇宙からの観測が行われている。北極海調査遠征 ICESCAPE において、Kevin
Arrigo らは、衛星からは観測できない厚い氷の下で、大規模な植物プランクトンの異常発生
を発見した。北極の氷はとけ続けて小さな池が表面にできているので、植物プランクトンの
異常発生の頻度が高くなったり、時期が早まったりする可能性があるのではないかと著者ら
は示唆している。多くの動物が空や海を渡って北極にやって来て植物プランクトンを大量に
食べているが、異常発生の時期が早まるようになれば、季節の早まりにうまく適応できない
動物も現れるだろう。
Article #21: "Massive Phytoplankton Blooms Under Arctic Sea Ice," by K.R. Arrigo; Z.W. Brown;
G.L. van Dijken; K.E. Lowry; M.M. Mills; M.A. Palmer at Stanford University in Stanford, CA. For a
complete list of authors, please see the manuscript.
確実にたたき割る
Hammering Away Without Fail:
シャコ類の鎌のようなハサミは、軟体動物の貝殻から小魚の頭、水槽のガラス壁さえも打ち
破ることができる。一方、ハサミ自体は何度も相手を殴打して傷ついても致命的な損傷を負
うことはない。今回、シャコ類のハサミがこれほどまでに頑丈である理由が明らかになった。
James Weaver らは、電子顕微鏡法およびその他一連の手法を用いてシャコ類のハサミの構造
をナノスケールまで研究した。彼らの報告によると、ハサミは 3 領域に分かれ、各領域は物
質組成も力学的性質も異なる。殴打に使う面、つまり衝撃領域には、脊椎動物の骨や歯にも
あるミネラル、水酸燐灰石が密集している。この薄く硬い層を支えているのは、キトサンと
呼ばれる有機物質が棒状にさまざまな向きで重なった「周期構造領域(periodic region)」で
ある。この構造は耐破壊性に優れている。これは、どのような亀裂でも拡大する際には絶え
ず方向を変えざるを得ないことから、亀裂拡大の速度が低下するためである。この周期構造
領域と同じく、ハサミの側面に沿った 3 つ目の「筋状領域」の各部も衝撃領域ほど堅くはな
い。衝撃領域の表面とその下の材質の急激な変化によって亀裂が偏向するため、構造がさら
に保護される。これらの研究結果は、繰り返し発生する強い衝撃に耐える必要のある物に適
した、頑丈な素材の開発に役立つであろうと Weaver らは述べている。関係する Perspective
では K. Elizabeth Tanner も、より性能の高い防弾衣など、この研究結果の応用の可能性につ
いて考察している。
Article #10: "The Stomatopod Dactyl Club: A Formidable Damage-Tolerant Biological Hammer," by
J.C. Weaver at Harvard University in Cambridge, MA; G.W. Milliron; S. Herrera; D. Kisailus at
University of California, Riverside in Riverside, CA; A. Miserez at Nanyang Technological
University in Singapore; K. Evans-Lutterodt; E. DiMasi at National Synchrotron Light Source,
Brookhaven National Laboratory in Upton, NY; I. Gallana; P. Zavattieri at Purdue University in West
Lafayette, IN; W.J. Mershon at Tescan-USA in Cranberry Township, PA; B. Swanson at Gonzaga
University in Spokane, WA.
Article #3: "Small But Extremely Tough," by K.E. Tanner at University of Glasgow in Glasgow, UK.
ケモカインのサイレンシングはどのようにして赤ちゃんを安全に守るのか?
How Chemokine Silencing Keeps Baby Safe:
妊婦の体内ではいかにして、自らの免疫系が、育ちつつある胎児を攻撃しないようになって
いるのだろうか?胎児の遺伝子の半分は父親から受け継がれるため、胎児は、移植臓器のよ
うに、母親の免疫系に異物として認識されることがある。今回、Patrice Nancy らは、マウス
を用いて、母親の免疫系が胎児を確実に許容するためには、細胞動員シグナルの的確な制御
が必要であることを明らかにした。Nancy らは、妊娠マウスの子宮組織内で T 細胞がどのよ
うに自らを構成するかを検討し、ほとんどの T 細胞が子宮壁の中間層(子宮筋層)に集まっ
ていたが、ごく少数が脱落膜(胎児と胎盤を包む子宮組織)に入ることを明らかにした。
Nancy らによれば、この T 細胞の挙動は、脱落膜における重要なケモカイン(T 細胞を組織
へと動員する小細胞シグナル伝達タンパク質)のサイレンシングと、子宮筋層におけるこれ
らのケモカインの発現により促進されている。Nancy らの結果は、この種のケモカインの組
織特異的な発現が、哺乳類において臓器および胎児特異的な免疫寛容を導いていることを示
唆している。
Article #19: "Chemokine Gene Silencing in Decidual Stromal Cells Limits T Cell Access to the
Maternal-Fetal Interface," by P. Nancy; E. Tagliani; C.-S. Tay; P. Asp; D.E. Levy; A. Erlebacher at
New York University School of Medicine in New York, NY; P. Asp at Albert Einstein College of
Medicine in Bronx, NY.
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