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マッシュルームの環境浄化作用(EU)【PDF:16KB】
NEDO海外レポート NO.1006, 2007.9.5 【環境特集】バイオレメディエーション ゲノム解析 マッシュルームの環境浄化作用 (EU) マッシュルーム( Agaricus bisporus)の遺伝子配列を解読しようとする世界的な取 り組みが、欧州の研究者の主導により行われている。欧州各地で栽培される丈の低い 白色のマッシュルームは、欧州では馴染みのある食材である。この世界的なプロジェ クトにより、これらのマッシュルームが炭素量の低減や土壌に含まれる重金属の除去 など環境を浄化する働きを持つ可能性があることが明らかになった。このプロジェク トは、英国のウォーリック大学の主導で行われており、マッシュルームが最も多く生 育する欧州と北米のパートナーが参加している。 ハラタケ科に属するマッシュルームの品種は、他のキノコ類やバクテリアでは分解 されない植物の葉などを効率的に二次分解する働きを持つことで知られる。しかし、 詳しい仕組みは謎に包まれており、その解明を目指してゲノム配列の解読が行われて いる。研究者達は、このプロセスを完全に解明できれば今までにない方法でバイオ燃 料を生産できるようになると考えている。 マッシュルームは、地球の炭素循環に重要な役割を果たしている。このため、炭素 循環の過程に影響を与える要因を研究するための最適な材料として使われてきた。世 界の温帯地域と寒帯地域では、10∼20 億トンの炭素が吸収されている。これは、化石 燃料の燃焼と産業活動によって世界で 1 年間に排出される炭素の 30%に相当する。マ ッシュルームが生態系の炭素循環に果たす役割を知ることは、世界の炭素を管理する 上で極めて重要である。 森林の炭素循環に与える影響に加えて、マッシュルームは他のキノコ類よりも遙か に短時間で土壌中の有毒金属を吸収する特性を持っている。この仕組みを突き止める ことができれば、汚染土壌のバイオレメディエーション(生物による環境修復技術) への有効活用が進む可能性がある。 マッシュルームを環境浄化に役立てるための研究は、消費者市場にも思わぬ影響を もたらす。マッシュルームの研究が進めば、病気に強い品種などが栽培されるように なる可能性がある。 ウォーリック大学は遺伝子配列のデータ分析に必要な研究材料を管理しており、プ ロジェクト責任者としての役割を果たしている。この他のパートナーは、米国の共同 ゲノム研究所(Joint Genome Institute)、英国のブリストル大学、ドイツのゲッティ ンゲン大学森林植物学研究所(Institut für Forstbotanik der Universität Göttingen)、 49 NEDO海外レポート NO.1006, 2007.9.5 スペインのナバラ大学(Public University of Navarre)、米国のペンシルバニア州立 大学、 オランダの ワーヘニン ゲン国際植 物研究所( Plant Research International Wageningen)およびオランダのユトレヒト大学である。研究者達は、2010 年までに マッシュルームのゲノム配列の 90%を解読することを目指している。 出 典 : Mushrooms may hold magic solution to environmental woes, European researchers say http://ec.europa.eu/research/infocentre/article_en.cfm?id=/research/headli nes/news/article_07_08_03_en.html&item=Infocentre&artid=4793 翻訳:山本 かおり 50