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(欧州)【PDF:371KB】 - 新エネルギー・産業技術総合開発機構
NEDO海外レポート NO.991, 2006.12.13 【産業技術】ナノテクノロジー に 欧州のナノテクテクノロジーの民間動向 新エネルギー・産業技術総合開発機構 ナノテクノロジー・材料技術開発部 欧州のナノテクノロジーの民間動向 欧州のナノテク関連の民間企業の動向としては、ナノ材料分野で注目される企 業を、第六次フレームワーク計画における調査プロジェクト「ナノロードマッ プ」の資料から拾い出してみる。ナノロードマップ・プロジェクトは、ナノ材 料、エネルギー、健康医療システムの3分野におけるナノテク関連のアプリケ ーションにつき、今後 10 年間のロードマップを作成するのを目的にして、 2004 年初めから 30ヵ月の予定で開始されている。イタリア、フランス、ドイ ツ、フィンランド、オランダ、イスラエル、チェコの研究所やコンサルタント 会社が参加し、2004 年 11 月には、三つの分野における欧州および世界の現状 をまとめた最初の成果物が発表された。ここではナノ材料分野に関しオランダ のコンサル W&W 社がまとめた作業文書から、欧州のナノ材料分野で注目され る民間の動きをみる。 「ナノ材料分野の既存の ナノテクノロジー情報に基づいた現状概観と見通し」 と題された作業文書は、ナノ材料のアプリケーションを次の 12 に分けている。 • • • • • ナノ構造物質 ナノ粒子/ナノパウダー ナノキャプセル ナノポーラス材料 ナノファイバー 94 NEDO海外レポート NO.991, • • • • • • • 2006.12.13 フラーレン ナノワイヤー 単壁/多壁カーボン・ナノチューブ デンドリマー 分子エレクトロニクス 量子ドット 薄膜 これらのアプリケーション毎に欧州で注目される企業や活動(主に研究開発) が簡単に言及されている。 ■ ナノ構造物質 MEMS もしくは NEMS 分野の lab-on-chip の開発を行っている企業として、以 下が挙げられている。 • • • ■ 半導体大手 ST ミクロエレクトロニクス(ガラスではなくシリコンをサ ブストレートにした技術で lab-on-chip を発表している) デンマークのスピン・オフとして、Cation と Thorion Diagnostics AKZONobel, ASML, DSM, Oce, フィリップス、ユニレバーなどの大企業 が参加する官民融資の研究開発プロジェクトとしてオランダ Nanolmpus (2003 年から5年間で 2270 万ユーロの助成額) ナノ粒子/ナノパウダー 欧州では Bayer 社が活発な研究開発を行っている。Bayer Polymers 社は食料品 プラスチック包装用に、珪酸塩のナノ粒子を使用して液体やガスの侵入を防ぐ 気密性に優れた技術を開発している。また Bayer 社は、信頼性に欠ける有機蛍 光ダイの代わりにナノ発光性合成物を利用した蛍光パウダーによる医療診断法 を開発中である。 ■ ナノカプセル 仏ロレアルは、CNRS との協力により、ビタミン A、レチノル、ベータ・ケロ テーヌなどの老化予防効果のある活性物質を、皮膚の深い層にまで届ける技術 を開発している。活性物質を極小化して、生体分解性ポリマーのコーティング を施すもので、皮膚表面で皮膚の自然酵母によってポリマー・コーティングが 破れ、活性物質がそれより深い層に届けられ、老化予防などの効果がいっそう 高められる。こうした化粧品への ナノテクノロジーの利用としてロレアルは、 反射などの光学効果を有したナノ粒子の特性の活用を目指した研究を行ってい る。 95 NEDO海外レポート NO.991, 2006.12.13 スタート・アップ企業としてはドイツのナノサイエンス AG が、順次活性成分 を投与できる薬成分体内搬送用キャプセルを開発したうえ、多くの利用途にカ スタマライズされたソリューションを提供するビジネスで、今後急速に事業規 模を拡大すると期待されている。 ■ ナノポーラス物質 欧州では研究所や大学などでの研究が中心で、企業の活動は少ない。わずかに 米 Air Products のスペイン子会社 Carburos Metalicos がスペインの材料科学研究 所と共同で、ナノポーラスの形成における圧力と温度の調節を確実に行える CO2 超臨界技術を開発している。Air Products と材料科学研究所はバルセロナに 合弁研究施設 MATTGAS を設置して開発強化を図っている。さらに MATTGAS は 2006 年に新たに設置されるカタロニア・ ナノテクノロジー研究所との共同 研究開発を予定している。 ■ ナノファイバー 企業レベルで注目される動きは報告されていない。 ■ フラーレン 伝導ポリマー/電子ポリマー分野で成果を発表している企業が幾つかある。 • • • フォト探知におけるシーメンス ソーラー・セルに関するフィリップス、Agfa、シーメンス ポリマー特性に関するアルカテル(光ファイバー・ケーブル設置用の高 速設置樹脂) またフィリップスと Agfa はすでにフラーレン・ベースのトランジスターの特 許を取得しており、フラーレンに対する需要を大きく拡大させる可能性がある。 ■ ナノワイヤー スイスの連邦技術研究所がカリフォルニア大学と共同で、100nm 幅の金のスト ライプをガラス上に描く技術を研究している他、目立ったものはない。 ■ 単壁/多壁カーボン・ナノチューブ フレームワーク計画における研究開発プロジェクトが二本(CANAPE と SPANG) と、未来産業用コンポジットのためのカーボン・ナノチューブ(フランスの研 究開発プロジェクト)以外には、ケンブリッジ大学が単壁カーボン・ナノチュ ーブのコントロールされた製造技術とを開発したと発表している。これ以外に、 企業レベルの動きは報告されていない。 96 NEDO海外レポート NO.991, ■ 2006.12.13 デンドリマー BASF が特殊コーティングや自動車塗装用にデンドリマーとハイパーブラン チ・ポリマーの開発を進めている。開発されれば、自動車、家具、建設材、ス ポーツ用品、レジャー製品他の日常品まで幅広い利用が期待できる。スウェー デンの Perstorp 社はデンドリマーのような材料をボート用の高性能ワニスなど 様々な用途に販売している。またオランダの DSM は製紙過程において幾つか の段階を省略し、効率的かつ環境に優しくするデンドリマー・ベースの材料を 開発している。 ■ 分子エレクトロニクス スウェーデンのリンケーピング大学に理論計算から実験まで、関連の研究をす べて実施できる能力があり、スウェーデン防衛研究所のエレクトロニクス・プ ログラムは同大学に隣接した施設で実施されている。フレームワーク計画にお ける SANDiE は自己組成ナノ構造物半導体分野のプロジェクトであるが、主に ドイツとオランダの企業が参加して行われている。 ■ 量子ドット スウェーデンのルント大学の活動が活発で、当初エリクソンと Nutek の資金で 開始された Q-NANO プログラムに、日本の大学と協力して参加している。ルン ト大学は他に、米国インディアナ州ノートルダム大学と量子細胞オトマート、 オーストラリアのニュー・サウス・ウエールズ大学と非対称量子材料に関する 共同研究もおこなっている。同大学はさらに CMOS 技術の一部を代替する EU の長期研究 Q-SWITCH(電子波ガイドによる半導体デバイスの実現)にも参加 している。ルント大学はスウェーデンのナノリトグラフィー設備メーカー Obducat AB との間で協力関係にある。この分野ではもう一つ QuMAT Technologies AB というスタート・アップ企業が注目されている。 ■ 薄膜 この分野で企業との共同研究が多いのはスウェーデンのチャルマーズ技術大学 で、エリクソン、サーブ・アビオニクス、フィリップス、ボッシュ、STM、 OMMIC、Zarlink などとの間で、ワイヤレス高速通信、レーダー、マイクロウ ェーブ・フォトニクス、宇宙研究用遠隔操作やデータ取得などの研究が行われ ている。この他、関連分野で重要な北欧企業としては、DCA インスツルメント と Obducat が挙げられている。 イタリアには、フィアット研究所、ピレリ・ラボ、ST ミクロエレクトロニクス の三社が共同で、コーティング生産とその特性か設備とナノトリボロジーをメ 97 NEDO海外レポート NO.991, 2006.12.13 イン・テーマにした研究ラボを設置している。ST ミクロエレクトロニクスはこ のテーマを扱うラボをシンガポールにも設置した。 BASF のナノテク製品としては、紫外線を遮るサンスクリーン、透明な床コー ティングや顔料があるが、今後は、燃料電池用水素吸蔵ナノチューブ、チリや 水をはじく「蓮の葉」効果を持つ窓用の透明フィルムの開発を行っている。 以上 -----------------------------------------------------------------------この報告書は、NEDO平成17年度成果報告書「欧州のナノテクノロジー戦略・標準等に 関する動向調査」(バーコード番号 100008031)より一部抜粋したものである。 NEDO成果報告書データベースは、 http://www.tech.nedo.go.jp/index.htm 98