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ブッシュ大統領が航空分野の研究開発計画を承認(米国)
NEDO海外レポート NO.1019, 2008.3.19 【航空・宇宙特集】航空分野の研究計画 ブッシュ大統領が航空分野の研究開発計画を承認(米国) ―2020 年までの短期・中期・長期の各段階における研究開発の最優先目標を提示― 1. 概要 米国ブッシュ大統領は 2007 年 12 月、初めての「航空分野における研究開発および関連 基盤に関する国家計画(以下「研究開発計画」)」を承認した。本計画は、昨年大統領が承 認した「航空分野における研究開発国家基本政策(以下「国家基本政策」)」の流れに沿っ た位置づけのものある。 今回の研究開発計画では、航空分野における研究開発の優先事項を、モビリティ(交通・ 移動) 、国家安全保障および国土安全保障、国民生活の安全、エネルギー・環境問題に置き、 上述の「国家基本政策」と整合性のとれたものにしている。 「国家基本政策」を遂行するた めに、研究開発計画では航空分野の研究開発における国家的な課題、最終目標、期間を短 期・中期・長期分けた段階的な支援目標に高い優先順位が置かれている。また、航空研究、 開発、試験、評価を行う基盤を発展させる道筋を示す指針を与える。 本研究開発計画策定を主導した大統領府科学技術政策局(OSTP)1 のジョン・マーバーガー 長官は、本計画について、 「昨今、航空機の過密飛行スケジュールや遅延を減らすための、 ブッシュ大統領の最近の行動に照らし、本計画は時宜に適っている」と述べた。 「今回の計 画に基づき、2020 年までに米国の航空分野を発展させ、航空運輸システムを転換させるた めに必要な長期研究に取り組むことにより、短期的な取組を補完するものである」と続けた。 本計画ではさらに、研究開発の目標に関する追加的な技術内容や、航空に関する研究、 開発、試験、評価のための補足的な報告書の作成を求めている。大統領令に基づき、本計 画は 2 年おきに見直しを行う予定である。 「国家基本政策」と今回の第一次「研究開発計 画」は、いずれも国家科学技術会議(NSTC)2 に属する宇宙航空科学技術小委員会(ASTS) 3 が策定したものである。 Office of Science and Technology Policy National Science and Technology Council 3 Aeronautics Science and Technology Subcommittee 1 2 30 NEDO海外レポート 2. 解 NO.1019, 2008.3.19 説 (1)計画の詳細 2006 年 12 月 20 日、 「航空分野の研究開発」に関する大統領令 13419 号が発令され、航 空分野における国家的な研究開発とそれに関連する基盤を固めるための計画作りが命ぜら れた。これは、2020 年までの航空分野における国家的研究開発の針路を示す「航空分野に おける研究開発国家基本政策(国家基本政策) 」の実施の一環である。 「航空分野における研究開発および関連基盤に関する国家計画(研究開発計画) 」は、 「国 家基本政策」の骨格を継承し、当該分野における研究開発の課題、優先事項、段階的目標 を定めている。同様に、航空分野の研究開発・試験・評価(RDT&E)基盤計画の策定を 目指した道筋を示している。研究開発の優先課題は、「国家基本政策」に謳われた次の 4 つの基本方針と軌を一にするものである。 1)モビリティ(交通・移動) 2)国家安全保障および国土安全保障 3)国民生活の安全 4)エネルギー・環境問題 大統領令 13419 号に従い、本計画は 2 年ごとに見直しが行われる。 「研究開発計画」の内容は以下の通りである。 • 上記の 4 基本方針に関連する事項 a) 当該分野に関する最先端の知識、能力、技術の詳細 b) 一連の基本的課題と、それらに取り組むための研究開発上の最優先目標 c) 3 段階(短期:5 年未満、中期:5-10 年、長期:10 年以上)にわたる研究開 発の各段階における最優先目標の段階別支援方針 • 「研究開発・試験・評価(RDT&E)に関する基盤計画」を策定する道筋の概要。 これは、航空研究開発の国家目標を後押しするために不可欠な研究開発、試験、 評価の能力に重点を置いたもの。 (補足説明) 「研究開発計画」では、上記の 4 つの基本方針をさらに何段階かにブレイクダウンして いるが、まず、それぞれの基本方針について、3∼5 つの目標を定めている(表 1 参照) 。 31 NEDO海外レポート NO.1019, 表1 2008.3.19 4 つの基本方針とそれに対応した目標 基本方針 基本方針に対応した目標 目標 1:管制間隔の短縮化と性能に基づいたオペレーション モビリティ(交 目標 2:全米航空システム(NAS)の機能向上化―リソース管理や航空交通 通・移動) 流通事故の管理を通じて 目標 3:航空交通管理の意志決定に与える天候の悪影響の軽減 目標 4:大都市圏内空港の離発着数の最大限化 目標 5:航空機性能の拡大―航空輸送システムの高性能化を有効利用して 目標 1:抗力に対する揚力の向上と、超高性能の高度飛行および機動的航空 国家安全保障お 機の機体構造の革新的コンセプトの開発 よび国土安全保 目標 2:回転翼航空機の揚力、航続距離、任務能力の強化 障 目標 3:ガスタービンの燃料消費の低減 目標 4:航空機の発電容量と温度管理の強化 目標 5:極超音速飛行の持続可能性と制御の強化 目標 1:航空事故の減少をめざした技術開発―機体の設計、構造、サブシス テムの強化を通じて 航空の安全性 目標 2:航空事故の減少をめざした技術開発―地上および空中オペレーショ ンの強化を通じて 目 3:事故発生時における乗客および乗務員の生存確率の向上 目標 1:航空燃料の多様化および国内燃料源の使用―燃料の供給保証と価格 安定化に向けて エネルギーと 目標 2:技術・オペレーションの開発強化―航空システムのエネルギー効率 環境 の飛躍的向上に向けて 目標 3:技術・オペレーション手順の開発強化―航空システムの環境負荷の 飛躍的抑制に向けて さらに、それぞれの目標(goal)について短期(5 年以内)、中期(5∼10 年)、長期(10 年以上)に分けて細目標(objective)を定めている。この細目標は原文で十数頁になるため、 本稿では詳細を紹介できないが、例えば、以下のように記載されている。 基本方針:エネルギーと環境(エネルギーの安定供給と効率性の確保は、航空業界の成 長の核―航空交通の持続的発展と環境保全の両立は不可欠) 目標 3:技術・オペレーション手順の開発強化―航空システムの環境負荷の飛躍的抑 制に向けて 細目標(抜粋) ・短期(5年以内) ・静かできれいな次世代(第一世代)航空機とエンジンの実現(騒音32デシ 32 NEDO海外レポート NO.1019, 2008.3.19 ベル減、窒素酸化物(NOx)排出量が基準値より70%低) ・中期(5∼10 年) ・静かできれいな次世代(第二世代)航空機とエンジンの実現(騒音42デシ ベル減、窒素酸化物(NOx)排出量が基準値より80%低) ・長期(10 年以上) ・静かできれいな次世代(第三世代)航空機とエンジンの実現(騒音62デシ ベル減、窒素酸化物(NOx)排出量が基準値より80%低) (2)計画が策定されるまでの経緯 国家科学技術会議(NSTC)の航空科学技術小委員会(ASTS)で 1 年間検討を重ね、本計画 の合意に至った。この小委員会は米国大統領府科学技術政策局(OSTP)と航空宇宙局 (NASA)が共同議長を務め、以下の省庁からの担当者がメンバーである。 商務省、国防総省、エネルギー省、国土安全保障省、国務省、運輸省および連邦 航空局、国立科学財団、環境保護庁 また、航空科学技術小委員会は、本計画を策定する全過程において、連邦政府関係者以 外のステイクホルダー達(産業界、学界、航空機利用者団体など)に対し、以下を通じて 意見陳述を求めた。 • 航空分野の研究開発や関連基盤に関する政府文書に対する要請・検討 • 全米で 4 つの会議を後援 • 本計画を策定する情報源となるようなパブリックコメントやレビューにむけた草 稿の一般公開および意見募集 • 当該分野の研究開発ニーズに関する膨大な既存報告書や文書の検討 (3)計画の位置づけ(利用目的) 本計画は、それぞれの基本方針について、航空分野における研究開発目標の最優先事項 を定めている。これらの目標は、2020 年に向けて、基本となる先進的航空機システムと航 空輸送システムの研究開発をする上で、高度な指針を示すことを目指している。特定技術 の後押しを意図したものではなく、また各省庁の任務に固有な研究開発の必要性を排除す るものでもない。 基本政策には、各省庁がそれぞれ航空分野の研究開発を行う上での指針が盛り込まれて おり、民間セクターに対して連邦政府の役割を明確に描くものである。 33 NEDO海外レポート NO.1019, 2008.3.19 (4)次なる段階にむけて(今後の予定) 「研究開発計画」で着手が義務づけられているものは、以下の通りである。 • 補足的報告書の作成: 航空分野の研究開発目標がわかるような追加的技術内容 と併せて、当該分野での連邦政府の研究開発に対する事前評価を含む(将来重要 性を増す可能性のある機会や、不必要な重複を生じさせる可能性のある分野を特 定するため) 。 • 基盤計画の策定: 航空分野における研究開発国家目標を達成するために不可欠 だと判断された研究開発・試験・評価の能力を特定することや、国家的見地や省 庁間の協力に基づいた、研究開発・試験・評価の連邦基盤に対する調整型アプロ ーチの確立が含まれる。 これらの文書は、国家科学技術会議(NSTC)が 2008 年に作成を開始する。 翻訳:京 希伊子、翻訳・編集:林 欣吾 (出典) “PRESIDENT BUSH APPROVES NATIONAL PLAN FOR AERONAUTICS RESEARCH AND DEVELOPMENT AND RELATED INFRASTRUCTURE” 2007.12, NSTC http://www.ostp.gov/galleries/press_release_files/National%20Plan%20for%20Aeronautics%20RD.pdf “National Plan for Aeronautics Research and Development and Related Infrastructure” 2007.12, NSTC http://www.ostp.gov/galleries/default-file/Final%20National%20Aero%20RD%20Plan%20HIGH%20RES.pdf 34