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再生医療に画期的進展をもたらす人工皮膚を英国企業が開発中

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再生医療に画期的進展をもたらす人工皮膚を英国企業が開発中
NEDO海外レポート
NO.1006,
2007.9.5
【産業技術】ライフサイエンス
再生医療に画期的進展をもたらす人工皮膚を英国企業が開発中
英国ケンブリッジの細胞治療企業 Intercytex plc(以下、Intercytex 社)が、2007
年 6 月 26 日、世界で初めて、実験室で培養された代替皮膚移植片のヒト移植に係る臨
床試験(フェーズⅠ)において、移植後も安定的に移植片が残り、かつ傷跡がほとん
ど残らないという結果を得たと発表した。これは、他の代替皮膚移植片ではこれまで
に例のない成果であり、関係者からは、再生医療における画期的な進展として注目を
集めている。
細胞治療をリードする英国企業 Intercytex 社
欧州一のバイオクラスターである英国ケンブリッジに本社を構える Intercytex 社は、
美容形成医療(aesthetic medicine)や組織復元・再生に焦点を置いた最先端の細胞治
療企業である。同社は、商業的に実現可能なスケールで、培養によるヒト細胞ベース
の製品を開発するための、高度に統合された細胞テクノロジー基盤(プラットフォー
ム)を有している。
現在同社が開発中の製品は以下の 4 つである。
①
ICX-PRO:通常の治療では治癒しないような慢性創傷の活発な回復を促す製品
(下肢の静脈潰瘍(Venous Leg Ulcers)向けはフェーズⅢ、足の糖尿病性壊疽
(Diabetic Foot Ulcers)向けはフェーズⅡ)
②
ICX-RHY:顔の若返りを促す製品(フェーズⅡの効能試験。2007 年後半にも販
売予定)
③
ICX-TRC:毛髪の再生を促す製品(フェーズⅡ)
④
ICX-SKN:耐久性があり丈夫な代替皮膚移植片として開発される製品(フェー
ズⅠが終了)
これら全ての Intercytex 製品は手が加えられていないヒトの細胞に由来するもので
ある。
今回発表されたのは、④「ICX-SKN」に係るフェーズⅠの臨床試験結果である。
自動合成により培養したコラーゲンベースの代替皮膚移植片
通常、深刻な傷や火傷の治療では、患者自身の体の傷とは異なる部位から採取した
皮膚片を移植することが最適な方法とされている。しかしその方法は、移植の際に更
なる傷を生み出し、痛みを伴い、かつ、心的外傷(トラウマ)も伴うプロセスである
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ため、可能な限り避けられている。また、これまで存在する培養による代替皮膚移植
片は、人体への移植後 2∼3 週間程度で退化してしまい、皮膚移植片としての効果を表
すことができなかった。
こうした中、Intercytex 社はこの度、手術・病気・外傷によって失われる細胞組織へ
の応用のために開発中である、実験室で培養した代替皮膚移植片「ICX-SKN」について臨
床試験(フェーズⅠ)を行い、実際にヒトに用いた初めての臨床データを取得した。
「ICX-SKN」は、自然の皮膚中にコラーゲンを蓄える働きをするヒト繊維芽細胞と同
じ皮膚細胞を用いて自動合成されたコラーゲンベースの素地からなる。この繊維芽細
胞はコラーゲン組織を作り出すものであり、このコラーゲン組織は、皮膚中にあるコ
ラーゲン組織を模倣し、かつ皮膚の構造的特性の多くを共有する。
世界初の成果を示した臨床試験(フェーズⅠ)
臨床試験では、健康な 6 人の女性ボランティアの上腕から、全層皮膚のほんの一部
を摘出し、その部分に「ICX-SKN」を移植した。移植後 28 日間観察され、その後各
被験者から皮膚片を摘出し顕微鏡を用いての組織学的検査を行った。
皮膚片摘出前、28 日間に亘って行われた肉眼的検査によると、被験者 6 人全てのケ
ースにおいて、「ICX-SKN」はヒトの皮膚にしっかり統合され、再上皮形成が起こっ
ていることが確認された。また、摘出皮膚片の組織学的検査によれば、「ICX-SKN」
は退化することなく元々移植した場所に安定的に残っており、急速に血管も形成され、
被験者自身の細胞とともに急速に成長し、結果として傷が持続的に閉じたまま治癒し
た。更に、移植後の副作用事象もなく、治癒した傷跡には瘢痕や拘縮も見られなかっ
た。
専門誌「再生医療」(Regenerative Medicine)も、これは、予備的な検証結果では
あるものの、組織工学的に自動合成により培養されたヒトの皮膚の代替物が急性の皮
膚外傷の治療において効果を示した世界で初めての成果であるとしている。
培養代替皮膚移植片に大きな期待
米国連邦保健福祉省(DHHS)の最新の報告書
1
においても、再生医療は 2010 年
までに 5,000 億ドルの世界規模の市場になると見込まれており、21 世紀のヘルスケア
分野の先頭に立っている。しかしながら、自然かつ完全に人体に統合され得る細胞組
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2020: A New Vision - A Future for Regenerative Medicine
http://www.hhs.gov/reference/newfuture.shtml#exsum
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織を実験室で作る難しさによって制限されてきていた。
再生医療の世界的権威として知られているキングス・カレッジ・ロンドン幹細胞生
物学研究所所長の Stephen L Minger 博士は、「今回の臨床試験結果は、傷の治癒及び
再生医療の分野全般における真の画期的進展を示すものと考える。多くの患者が利用
することが可能な、棚から取り出すように容易に手に入れられる代替皮膚移植片製品
を作り出すことは、火傷や皮膚外傷を負った患者の治療に革命を起こすだろう」と述べ
ている。
Intercytex 社の創設者かつチーフ・サイエンティフィック・オフィサーの Paul Kemp
博士は、今回の治験は仮段階のものであり、小規模の皮相部分のみに関する結果であ
るとしながらも、その人工皮膚に大きな期待を寄せている。
Intercytex 社は、臨床試験の次なる段階として、「ICX-SKN」をより大きな傷に適
用させ、極めて重要な試験を迅速に進め、かつ、医薬品承認を可能とするデータ取得
を行っていくとしている。
再生医療を飛躍的に前進させる可能性を多分に秘めている今回の開発成果の今後が
注目される。
【参考】
○ Intercytex 社ホームページ
http://www.intercytex.com/icx/about/profile/
○ Financial Times 2007 年 6 月 27 日付記事「Artificial skin could avert painful grafts」
○ Future Medicine 「 Regenerative Medicine-Integration and persistence of an
investigational human living skin equivalent (ICX-SKN) in human surgical wounds-」
July 2007, Vol.2, No.4, p.363-370
http://www.futuremedicine.com/doi/abs/10.2217/17460751.2.4.363
○ Intercytex Press Release 「Intercytex announces world first in skin repair using
laboratory-manufactured human skin」 26th June 2007
http://www.intercytex.com/icx/news/releases/2007/2007-06-26/
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