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43039円返還命令

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43039円返還命令
平成 20年 12月 26日 半J決言渡 同 日原本領収
裁判所書記官 塩 谷廣乃
平成 17年 の第 28号 政 務調査費返還請求事件
i日
由頭弁論終結
平 成 20年 8月 29日
判
決
浜松市東EXIケ
原
告
浜松市浜北区│‐
同i
浜松市北区
同
浜松市西区7
同
原告 ら訴 訟 代理 人弁護 士
藤
森
克
美
浜
松
市
長
鈴
木
康
友
同訴 訟 代 理 人 弁 護 士
黒
木
辰
芳
同訴 訟 復代 理 人 弁護 士
餌
持
友
浩
松
山
喜
是
同
岡
本
ふ み
の
同
徳
田
純
同
森
田
哲
同
佐
野
浜松市中区元城町 103番 地 の 2
被
同 指
告
定
代
理
人
一 司 晃
文
主
1 被 告は,浜 松市議会創造浜松に対 し,浜 松市に対し3万 8149円 及びこれ
に対する平成 17年 12月 24自 から支払済みまで年 5分 の割合 による金員を
と1‐
支払 うよ う請求せよ。
2 被 告は,浜 松市議会市民 クラブに対 し,1浜松市 に対 し4890円
及 びこれに
対す る平成 17年 12月 24日 か ら支払済み まで年 5分 の割合 による金員 を支
払 うよ う請求せ よ。′
3 原 告 らのその余 の請求 をいずれ も棄却す る。
4 訴 訟費用 は,原 告 らの負担 とす る。
事 実
皮 ″び 理
由
第 1 請 求 の趣 旨
相手方」欄記載 の各会派 に対 し,浜 松市 に対 し,
被 告は,別 紙会派―覧 の 「
一
請求額」欄記載 の各金員及 び これに対す る平成 17
これに対応 す る同 覧の 「
年 12月 24日 か ら支払済みまで年 5分 の青J合に ふる各金員を支払 う│,そ れ
ぞれ請求せ よさ
第 2 事 案 の概要
1 事 案
本件は,浜 松市議会 の別紙会派一覧記載 の各会派が,そ れぞれ図書 の購入 に
要 した費用 を同市から交付を受けた政務調査費から支出 したところ,こ れ らが
いずれも政務調査費の 目的外 の支 単であるにもかかわらず,被 告が上記各会派
に対する同支出金相当額 の返還請 求権 の行使 を怠ってい るとして,原 告 らが,
法」 とい う。)242条
被告 に対 しチ地方 自治法 (以下 「
の 2第 1項 4号 に基
づ き,上 記各会派 に同支 出金相当額の返還及び訴状送達 の 日の翌 日である平成
17年 12月 24日 から支払済みまで民法所定の年 5分 の割合による遅延損害
金 の支払の請求をするよ う求める事案 (住民訴訟)で ある。
2 前 提事実 (証拠等により認定 した事実は末尾にその証拠等 を掲げる。)
(1)当 事者等
ア 原 告 らは,い ずれも浜松市民である (弁論の全趣 旨)古
イ 被 告は,浜松市長であり,法 242条 の 2第 1項 4号 の執行機関である。
‐
2
‐
―
別 紙会派一覧記載 の各会派は,い ずれ も浜松市議会 の会派である (以下
ウ
「
本件各会派」 とい う。争 いがない。)。
(2)関 連法令 の定め
ア 浜 松市議会政務調査費 の交付に関す る条例 (以下 「
本件条例」 とい う。
甲 1)
i
171 政務調査費は,浜 松市議会における会派 (以下 「
会派」 とい う。)に
:
対
して交付す る (2条 )。
仰 会 派は,政 務調査費を規則で定める使途基準に従 つて使用す るもの と
し,市 政 に関す る調査研究に資するため必要な経費以外 の もの に充てて
はな らない (7条 )。
lpl 政務調査費 の交付を受 けた会派は,そ の年度 において交付を受けた政
i―
調査費 の総額 か ら,当 該会派 がその年度 において行 つた政務調 査費 に
務
1
よ
る支出 (第 7条 に規定す る使途基準 に従 つて行 った支 出をい う。)の
││イ
総
額 を控除 して残余 があるときは,当 該残余 の額 に相 当す る額 の政務調
査費を返還 しなければな らない (9条 )。
l こ の条例 に定めるもののほか,この条例 の施行について必要な事項は,
l‐
規則 で定める (10条 )。
イ 浜 松 市議会政務調査費 の交付に関する条例施行規則 (以下 「
本件規貝J」
とい う。 甲 2)
▼
‐
171 本
と
件条例 7条 の規則 で定め る政務調査費 の使途基準は,別 表 の とお り
す る (5条 )。
m 別 表 (抜粋)
資料購入費
会 派 が行 う調査研究活動 のために必要な図書 ,資 料等
,の購入 に要す る経費
備考
'
内
係
容欄 に掲げる経費 の うち,交 際的経費,政 党活動 に
る経費,選 挙活動に伴 う経費,議 員個人 の利益 とみ 1
-
3
-
な され る飲食費等 の経費を除 く。
(3)図 書 の購入及 び政務調査費 の支出 (以下,下 記 アない し力記載 の政務調査
本件各支出」 とい う。)
′ 費 の支出をまとめて 「
i
ア 創 造浜松は,平 成 16年 度 (年度 とは,そ の年 の 4月 1日 か ら翌年 3月
31日 までを指す。以下同 じ。)中 ,別 紙一覧表 1の 「日付」欄記載 の各
国に,同
「
品名」欄記載 の各図書 (ただ し,一 部図書名 が不明なものが あ
iる 。)を 同 「
金額」欄 ない し同 「
品名」欄記載 の金額で購入 し,こ れ らに
要 した費用合計 53万
い
。 )
1606円
を政務 調 査費 か ら支 出 した (争いが な
。
一
イ 新 世紀浜松は,平 成 16年 度中,別 紙 覧表 2の 「日付」欄記載 の各 日
に,!同「
品名」欄記載 の各図書 (ただ し,T部 図書名 が不明なものがある。)
を同 「
金額」欄 ない し同 「
品名」lFS記
載 の金額で購入 し,こ れ らに要 した
費用合計 17万 3831円
を政務調査費 か ら支出 した (争いが ない。)。
ウ 市 民クラブは,平 成 16年 度 中,別 紙一覧表 3の 「日付」欄記載の各 日
に,同 「
品名」欄記載 の各図書 (ただ し,丁 部図書名 が不明なものがあると)
を同 「
金額」欄ない し同 「
品名」欄記載 の金額 で購入 し,こ れ らに要 した
費用合計 13万 3135円
を政務調査費 か ら支出 した (争いがない。)。
工 公 明党は,平 成 16年 度中,別 紙 一覧表 4の 「日付 」欄記載 の各 日に,
同 「
品名」欄記載 の各 図書 (ただ し,二 部図書名 が不明なものがあ る。)
を同 「
金額」欄 ない し同 「
品名」欄記載 の金額 で購入 し,こ れ らに要 した
費用合計 16万 2085円
を政務調査費か ら支 出 した (争いがない。)。
オ 社 会民主党は,平 成 16年 度 中,別 紙 す覧表 5の 「日付」欄記載 の各 日
に,同
「
品名」欄記載 の各図書を同 「
品名」欄記載 の
金額」欄ない し同 「
金額で購入 し,こ れ らに要 した費用合計 1万 8018円
を政務調査費か ら
支出 した (争いが ない。)。
力 浜 松市政向上委員会 は,平 成 16年 度 中,別 紙一覧表 6の 「日付」欄記
‐
4
‐
載 の各 日に,同
「
品名」欄記載 の各図書 (ただ し,一 部図書名 が不明なも
のが ある。)を 同 「
金額」欄 ない し同 「
品名」欄記載 の金額 で購入 し,こ
れ らに要 した費用合計 10万 2779円
を政務調査費か ら支出 した (争い
がない。)。
キ 別 紙 一 覧表 1な い し6(以 下 「
別紙各 一 覧表」 とい う。)の
記載 の各図書 の内容は,概 要,同
「
品名」欄
「
図書内容」欄記載 の とお りである (た
だ し,図 書名 が不明なもの等 につい ては空欄 である。 乙 7(枝 番号 を含
む。), 8, 13,弁
論 の全趣 旨)。
(4)住 民監査請求等
ア 原 告 らは,平 成 17年 9月 21日 ,本 件 訴 えと同趣 旨の住民監査請求 を
したが (争いが ないと),浜 松市監査委員 は,同 年 11月 15日 ,同 請 求
を棄却 した (甲 15)。
イ 原 告 らは,平成 17年 12月 14自 ,本件 訴 えを提起 した (顕著 な事実)。
点
争′
別紙各一覧表 の 「
原告分類番号」欄①ない し③ に該 当する各図書 の購入 (以
下,同 ① に該当す る図書 の購入 を ,本件図書購入①」 といい,同 ② ない し③ に
ついて も同様 とし,本 件 図書購入①ない し③をま とめて 「
本件各図書購入」 と
い う。)が
「
市政に関す る調 査研究に資する」 (本件条例 7条 ,本 件規則 5条 )
ものでない と認 め られるか
(原告 らの主張)
本件各図書購入は,以 下 の理由によ り,本 件規則 5条 に定める使途基準に合
致 しない もので あつて,F市 政 に関す る調査研究に資す る」 もの とは認 め られ
ないか ら,本 件各会派は,い ずれ も本件条例 9条 に基づ き,浜 松市に対 し,本
件各支出に相 当す る金員 を返還す る義務を負 う。
(1)本 件図書購入① は,い ずれ も個人 の趣味 ・教養 ・娯楽 の範囲,あ るいは,
個人 の 日常的な情報収集 の範囲にとどまるものであ り,個 人的な趣味 ・興味
-
5
-
を満足 させ る程度 の資料 にすぎない。
なお,被 告は,ス ポヤ ツ新聞の購入代金 を政務調査費 か ら支出す ることも
適法 である 旨主張す る。 しか しなが ら,ス ポー ツ新聞の記事内容 は,ギ ヤ ン
ブル ,芸 能界,有 名人 のスキャングル等を含 む諸情報や スポー ツ界 の娯楽情
市政 に関す る調査研究に資す る」
報 が主であ り,ス ポー ツ新聞の記事内容 が 「
とは到底認 め られない。
また,別 紙各一覧表 の 「
被告分類番号」欄 7に 該当す る各図書 の うち,宗
教 に関連 した団体 (社団法人実践倫理宏 正会)か ら購入 した ものが あるとこ
ろ,二 れ らについては選挙時の集票等の 目的をもつて購入 されたものである
としか考えようがないから,当 該各図書の購入は,本 件規只け5条 別表の備考
欄で政務調査費の使途か ら除外 されている交際的経費,政 党活動に係る経費
にも該当する。
(2)本 件図書購入②は,い ずれも特定の宗教団体の図書であるところ,政 務調
査費 とい う公金によつて特定の宗教団体の図書を購入す ることに法的根拠は
なく,許 されない とい うべきである。 `
(3)本 件図書購入③は,い ずれも図書名,そ の内容 ともに不明な図書であり,
「
市政に関する調査研究に資する」ために必要な経費であることの裏付けの
ない不当な支出である。
(4)本 件図書購入④は,い ずれも発行の都度購入する必要性が認められないも
のである。
(5)本 件図書購入⑤は,ぃ ずれも複数部を購入す る必要性が認められないもの
である。
(6)i浜松市議会では,領 収書金額が2000円
以上の場合 には領収書に図書名
その購入図書名 を明らかにする必要があるところ,本 件図書
を記載す るなiど
購入⑥は,こ れに反する。
(7)浜 松市議会では,年 間購読契約 における購読料は,当 該年度期間内分を対
‐
6
-
象 としなければならないところ,本 件図書購入⑦は,こ れに反する。
(8)本 件図書購入③は,い ずれもクレジ ッ トカー ドを利用 してその代金が支払
われているが,こ れは,公 金支出の際には許 されない支払方法である。 なぜ
なら,ク レジ ッ トカー ドによる支払は後払い となることから,政 務調査費が
実際には目的外に使用 されたとの疑いが持たれる上,ク レジッ トカー ドを利
用 した議員個人が,現 金や商品券 と同様に利用できるポイ ン トを獲得するこ
ととなり,議 員個人 に対する不 当な利益 となるからである。
(被告 の主張)
本件各図書購入は,以 下の理由により,本 件規則 5条 に定める使途基準に合
致 し,「市政 に関する調査研究に資する」 もの と認め られるか ら,本 件各会派
は,い ずれ も浜松市に対 し,本 件条例 9条 に基づいて本件各支出に相当す る金
員を返還す る義務を負 わないる
ア
なお,議 員活動が広範であるこ とや平成 20年 法律第 69号 による改正前の
法 100条
13項 が 「
調査研究に資するため必要」な経費 と定義 していること
に照 らし,議 員 が議員活動をする上で直接有用 であればもちろん,議 員活動 に
有益な一般的知識 の涵養 に役立つ ものであれば,議 員活動 にとつて直接有用で
なくとも,調 査,研 究のために有用,有 益であるとして,「市政 に関す る調査
研究に資する」もの と認 められるとい うべ きである。
(1)本 件図書購入①について
別紙各丁覧表の 「
被告分類番号」欄 1に 該当する各図書 は,い ずれも議員
活動上の法的,制 度的な知識や技術 を身につ けるために役立つ ものであり,
地方 自治に直結する図書である。
、
同欄 2に 該当する各図書は,い ずれも議員 の諸種 の活動 と関わ りの大きい
法律,経 済 に関する解説書であり,議 員 がこれ らの分野の知識を獲得,酒 養
す るために有用である。
同欄 3に 該当する各図書は,い ずれも時事一般的な社会経済関係 に関す る
二 7 -
ものであり,議 員 が時代 の流れを把握するのに有益で,議 員の調査活動にと
っても有益 である。
同欄 4に 該当する各図書は,い ずれも地域の産業,文 化,自 然 に関するも
のであり,地 方議会の議員 としての活動上有用なものである。
同欄 5に 該当する各図書は,い ずれも音楽文化 に関す るものであ り,浜 松
市特有の音楽文化に関わる知識を得るために有用である。
・
同欄 6に 該当する各図書は,い ずれも育児,教 育,人 口問題,高 齢社会,
環境,都 市問題等,近 時問題 となってい る事柄 に関するものであり,議 員 の
日常活動をす る上で有益である。
同欄 7に 該当する各図書は,い ずれも精神,文 化,ス ポーツ,教 養; 日常
マナー等に関するものであり (新聞を含む。
),議員活動上で間接的に有益
である。
同欄 8に 該 当す る各図書 は,い ずれ もベ ス トセ ラー等 の教養書 であ り,議
員活動上必要な一般的教養 に属す る知識 の獲得源 として有益 である。
同欄 9に 該当する各図書は,い ずれ も議員活動 の補助 ツール として有効 な
事柄 に関す るものであるところ,パ ー ソナル コンピュー タ,イ ンタヤネ ッ ト
等 の活用技術 の理 解,修 得や研修 (視祭 を含 む。)に 関連す る知識 を得 る こ
とは,間 接的で はあるが,議 員活動上有効 である。
なお,ス ポ‐ ツ新聞の購読 (別紙 一、
番号」欄 1, 3)に ついて
覧表 3の 「
も,娯 楽情報 が大部分を占めるもののi浜 松市近辺 のスポ ツ や社会事件 に
市
関す る記事等,浜 松市政に資する記事 が含 まれてい るか ら,こ れが全 く 「
政 に関す る調査研究に資する」ものではない と断ず る ことはで きないる
本件図書購入② について
(2)、
公明党以外 の会派 で本件図書購入②に該当す る図書 (聖教新聞)を 購読 し
てい るのは,新 世紀浜松,市 民クラブ及び浜松市政向上委員会 であるが,同
各会派が聖教新聞 を購読することは,公 明党 の政治活動 の方針や内容等 を知
由
_8ニ
り,ま た,同 各会派が所属 i支持 ・連携する国政 レベルの政党の主義主張や
活動 を同新聞がどの よ うに見ているかなどを知 る情報源 としての意義 があ
る。
(3)本 件図書購入③ について
浜松市議会 の各会派が政務調査費 により図書を購入 した場合,被 告 (議会
事務局)へ の収支計算報告書をどのよ うに記載 し, どのよ うな証拠資料を添
付するかについて申 し合わせがあり,こ れにより, 1冊 2000円
以上の図
書の場合 には,購 入図書名 を領収書の余 白に記載することとなった。すなわ
ち, 1冊 2000円
書籍代」 と記
未満 の図書の場合 には,領 収書には単に 「
載すれ ば足 り,購 入図書名を記載する必要はない。そ して,本 件各会派から
これ らを受け取つた被告 (議会事務局)は ,上 記 申し合 わせに照 らし,こ れ
らを適正な使途に充てたもの として,政 務調査費の支出を承認 してい るもそ
うす ると,図書名 が明らかでない ものについても,使途基準に合致 した支出,
すなわち,「市政に関する調査研究に資する」もの と評価することができる。
(4)本 件図書購入④ について
時刻表や雑誌,月 刊誌等を継続的に購入することは,情 報の獲得漏れを防
止する上で有益である。 そもそも,毎 号連続 して購入す ること自体が政務調
査費 による支出が許容 されるか否かの判断基準 となるわけではなく,何 を購
入 したかとい うことが問題 となるにすぎない。
なお,時 刻表は,新 幹線等の時刻だけではなく,蕗 線バスや航空機 の時亥J
等も掲載 されてい る上,毎 月その内容が更新 されてい るところ,会 派が活動
をするに当た り常に最新情報を取得す る必要があるため,定 期購読で購入 し
たものである。
(5)本 件図書購入⑤ について
同一 の資料を複数部購入することの意義は,同 一会派内の複数の議員が回
ば,
し読みではなく,同 時に閲覧 したいとい う要望に応える点にある。fTllえ
‐
9
"
別紙一覧表 1の 「
番号」欄 173の 図書は,平 成 16年 に浜名湖で開催 され
た国際園芸博覧会 の特集記事が掲載 されてお り,創 造浜松所属議員や関係者
が早急かつ丹念にこれを開覧す るため,複 数部を購入する必要があつたし,
同欄 195の 図書は,調 査研究活動において現代用語やカタカナ語等を調べ
る際に便利 であるため,議 員 5人 に 1冊 程度の割合 で購入 した ものである。
なお,同 一の資料を複数部購入することは,仮 に各議員が区々に購入 した
一
ものであった│し ても,適 法である。すなわち,同 会派内の複数の異なる
議員が政務調査費を充てることができると判断して購入 し,そ れがたまたま
競合 した場合 に,そ れによつていずれ か一方 の購入代金分 に政務調査費を充
てたことが違法 となるわけではない し,あ る図書 を購入す る場合 に各議員が
他 の議員に対 して 当該図書を購入 したか否 かを問わなければな らなぃわけで
もない。
(6)本 件図書購入⑥ について
前記(3)のとお り,浜 松市議会 では, 1冊 2000円
未満 の図書につ いて は
そ の具体的な購入図書名 を記載す る必要はない とい う申 し合わせ になってい
たのであるか ら,こ の点に関する原告 らの主張は理 由がない し,ま た,こ れ
によつて被告 の本件各会派 に対す る返還請求権が発生す るわけでもない。
(7)本 件図書購入⑦ について
会派による政務調査費 の支出について会計年度制度 が設けられ てい るわ け
ではないか ら,年 間購読契約 のある購読料に関 し,当 該年度中に翌年度分 を
支出する ことは許 され るとい うべ きである。
(8)本 件図書購入③ について
本件 図書購入③ の うち,別 紙 一覧表 3の 「
番号」欄 7の 図書 は,ク レジ ッ
トカー ドによる支払 ではなく,現 金による支払で購入 されたもので ある。す
ク レジ ッ ト
なわち,コ ンビニエ ンスス トアでは,振 込手数料があるときに 「
収納」 とレシー トに記載 されるだけで,そ の支払方法は現金 である。
-10-
また,別 紙二覧表 4の 「
番号」欄 9の 図書は,株 式会社紀伊囲屋書店 のイ
ンターネ ット販売 を利用 して購入 されたものであるが,ポ イ ン トシステムに
よつて もたらされるポイン ト獲得額 は,直ちに経済的な利得 とはいえない し,
浜松市にそのポイ ン トに相当する損失が生ず るわけでもない。 しか も,イ ン
ターネ ッ ト販売を利用 して図書を購入す ることは,議 員活動の コス トを考え
た場合,時 間の節約 とな り,活 動 の効率化 にもつながるもようて,ク レジ ッ
トカー ドによる支払方法は,政 務調査費制度上,許 容 されてい るとい うが き
である。
第 3 当 裁判所 の判断
1 争 点 (本件各図書購入が 「
市政に関する調査研究に資す る」(本件条例 7条 ,
本件規則 5条 )tものでない と認 められるか)に ついて
(1)「 市政 に関す る調査研究に資する」か否 かの解釈
本件条例は, 1条 で 「
浜松市議会議員 の調査研究に資するため必要な」経
会派は,政 務調査
費の二部 として政務調査費 を交付するもの とし, 7条 で 「
費 を規則で定める使途基準に従 うて使用するもの とし,市 政 に関する調査研
究に資するため必要な経費以外 の ものに充ててはならない」 とし,こ れを受
けて,本件規則 5条 は,政務調査費の具体的な使途基準 を別表において定め,
会派が行 う調査研究活動 のために必要な」図書,資 料等
資料購入費 として 「
の購入 に必要な経費 を定めている。 また,本 件条例 9条 は,政 務調査費 の返
還義務 として,交 付を受けた総額から 「
支出 (第7条 に規定す る使途基準に
従 つて行 つた支 出をい う。)」の総額を控除 した残余 と規定 し,使 途基準に
合致 しない政務調査費の支出を認 めていない。そして,平 成 20年 法律第 6
9号 による改正前の法 100条
13項 が政務調査費交付制度 を設けた趣 旨及
び 目的は,地 方議会 の活性化を図るため,地 方議会議員め調査活動基盤 を充
点にある と解 されるもそ うすると,政 務
実させてその審議能力を強化 させる″
調査費 は,会 派 による調査研究活動 と関連性 を有する経費に支出され ること
が求められてい るとい うべ きである。
もつ とも,平 成 20年 法律第 69号 による改正前の法 100条
13項 は,
「
条例の定めるところにより」 として政務調査費交付制度 の具体的な実施方
法等を条例 の制定に委ね,地 方 の実情に応 じた政務調査費交付制度 を策定で
きるよう,地 方議会の 自律的判断を尊重 している。そ して,会 派 は,地 方議
会 の中ネ政治的な一つの主体 とな つて活動 してお り,普 通地方公共団体にお
ける住民 自治を支える根幹 として重要な機能を果た していると解 される'とこ
ろ,そ の活動 は,様 々な政治課題や市民生活に係わ りすその専門性や関心も
多種多様 であつて,会 派を構成す る議員 がその議員活動 について政治的責任
を負 ってい ることを考えれば,そ の調査対象は自ず と広範 なものにならざる
を得 ない。
そ うすると,政 務調査費により購入 された図書 ,資 料等 と調査研究 との関‐
連性 の判断については,当 該会派 の判断 (裁量権)を 尊重すべ きであるから,
政務調査費 は,市 議会議員 としての具体的な調査研究活動 と直接的な関連性
を有する図書,資 料購入に限定する必要はなく,市 議会議員 としての政治活
動全般に必要,有 益な知識を得るために必要な図書,資 料購入 に支出されれ
ば足 りるとい うべ きでありす当該図書,資 料 の購入が市議会議員 としての政
治活動全般 に必要,有益な図書,資料 でないことが明らかである場合に限 り,
市政に関する調査研究に資するため必
当該図書,資 料購入 に要 した費用が 「
要な経費」に該当 しない として,「政務調査費 による支出 (第7条 に規定す
る使途基準に従 つて行 つた支出をい う。)の 総額」 (本件条例 9条 )に 含 ま
れず,当 該会派は,浜 松市に対 し,同 条に基づ き,当 !該支出相 当額の返還義
務 を負 うこととなると解すべ きである。
(2)本 件図書購入① について
原告 らは,本 件図書購入① は,い ずれも個人の趣味 ・教養 ・娯楽の範囲,
あるいは,個 人の 日常的な情報収集 の範囲に とどまるものであり,個 人的な
-12-
趣味 ・興味を満足させる程度 の資料 にすぎない 旨主張す るほか,別 紙各一覧
表の 「
被告分類番号」欄 7に 該当する各図書の中には,選 挙時の集票等の 目
的をもつて購入 されたものがあるとして,政 務調査費の使途から除外 されて
い る交際的経費,政 党活動 に係る経費 に該当する旨主張す るので;以 下,検
討す る6
ア 本 件図書購入①の うち,別 紙各丁覧表の 「
裁判所分類番号」欄 A(以 下
アルファベ ッ トのみで示す。)に 該 当する各図書 は,い ずれ も法律 の解説
や法律的問題への対応に関する図書,政 治,経 済,環 境 (エネルギー資源
を含む。),教 育,育 児,文 化,歴 史 ,医 療,時 事問題等を含む社会 が抱
える問題■般 に関する図書及び地方 自治体の問題点や行政改革Ⅲ行政施策
等 に関するもので地方 自治に直結する内容をテーマ とす る図書であるとこ
ろ,こ れ らは,市 議会議員 としての政治活動全般 に必要,有 益な知識を得
るために必要な資料に該当す ると認 められるから,当 該資料 の購入が市議
会議員 としての政治活動全般 に必要,有 益な資料でないことが明らかであ
るとはい えない。
イ 本 件図書購入①の うち,Bに 該当する各図書は,いずれも浜松市の産業,
文化等に関連する図書であり,浜 松市議会議員に とつては,そ の政治活動
全般に有益であると認め られるから,当 該資料の購入 が市議会議員 として
の政治活動全般に必要,有 益な資料でないことが明らかであるとはい えな
い
0
ン
ウ 本 件図書購入① の うち,Cに 該当する各図書は,いずれもベス トセ ラT,
倫理,精 神,人 間の在 り方,あ い さつ,文 章の作 り方等,一 般教養 に関す
るものであるところ,前 記のとお り,市 議会議員の調査対象 の範囲が極 め
て広範である上,こ れ らの各図書,特 にベス トセ ラ‐,倫 理,精 神,人 間
の在 り方等に関する図書が将来の教育,環 境,福 祉,政 治等 の在 り方等に
ついて知識,見 聞を深 めることができる側面を有す ることを考慮す ると,
13
これ らが市議会議員の政治活動全般 に全 く必要,有 益でないとまでは認め
難いか ら,当 該資料の購入が市議会議員 としての政治活動全般に必要,有
益な資料でないことが明らかであるとまではいえない。
工 本 件図書購入① の うち,Dに 該当する各図書は,いずれも時刻表,地 図,
宿泊施設案内,辞 書類,パ ー ソナル コンピユー タの操作方法等 に関す る図
書であるところ,こ れ らは,市 議会議員が政治活動,調 査研究活動等をす
るに当たつて作業の効率化等 に資す るものであると認め られるか ら,当 該
資料の購入が市議会議員 としての政治活動全般に必要,有 益な資料 でない
ことが明らかであるとはいえない。
オ 以 上に対 し,本 件図書購入①の うち,Ё に該当する各図書 (別紙‐覧表
1の 「
番号」欄 15, 17, 18, 23, 60な
い し62, 67, 75,
いし
80な い し82, b3, 101, 102, 104, 110, 117な
1 1 9 ,
6 3 ,
1 2 6 ,
1 7 0 ,
1 3 2 ,
1 4 3 ,
1 8 5い
なし 1 8 7 ,
212な い し214, 216な
41, 245, 250,同
1 4 5 ,
1 9 7 ,
1 4 6 ,
1 6 0 ,
1 6 2 ,
2 0 1 ' ,
2 0 3 ,
2 0 4 ,
いし218, 225, 238, 240, 2
表 2の 同欄 41,同 表 3の 同欄 1, 3, 14)
は,海 外ガイ ドブ ック,旅 行雑誌,ス ポー ツ新聞;ク ラシ ック演奏会 に関
これ
する情報誌,鉄 道雑誌,情 報雑誌,植 物 に関す る書籍であるところ,、
らは,い ずれもその図書名及び内容からして,‐ 般的に個人的な趣味 ・興
味の範囲に属する読み物であることが明らかであるから,娯 楽性 が高い も
のであるとい うほかはない。そ うすると,こ れ らの購読が市政 に直接,か
つ,具 体的に関わるような特段 の事情があることを被告が主張立証 しない
限り,当 該資料の購入 が市議会議員 としての政治活動全般に必要,有 益な
資料でないことが明 らかであると認 めるのが相当である。
番号」欄 41,同
171 海外 ガイ ドブ ック (別紙一覧表 2の 「
4)に ついて
-14-
表 3の 同欄 1
1
新世紀浜松は,海 外視祭旅行 の参考資料 として海外ガイ ドブ ックを癖
入 したことが認められ (乙2),市 民クラブについても,同 会派 が平成
17年 度に海外視祭旅行を行 つたことは当裁判所に顕著な事実であるか
ら,同会派も,海外視祭旅行の参考資料として海外ガ1イ
ドブツクを購入
した と推認することがで きる。 したがつて,上 記各 ガイ ドブ ックについ
ては,い ずれ も前記特段 の事情 があると認 めるのが相 当であ るか ら,当
該資料 の購入 が市議会議員 としての政治活動全般 に必要,有 益 な資料 で
ない ことが明 らかであるとはい えない。
側 旅 行雑誌 (別紙一覧表 1の 「
番号」欄 75)に
ついて
被告 は,旅 行雑誌 につい て,視 祭を含む研修等 の議員活動 の補助 ツエ
ル として,間 接的 に議員活動上有効 である旨主張する。 しか しなが ら,
その図書名及び内容 か らして,当 該図書は,単 なる宿泊施設案 内ではな
く,旅 行 とい う個人的趣味 ・興味をテーマ にした娯楽性 の高い読み物 で
あると認 めるのが相当であるか ら,被 告 の上記 主張を採用す ることはで
きない。 そ して,被 告は,当 該図書購入 に係 る前記特段 の事情について
何 ら主張立証 しないか ら,当 該資料 の購入 は,市 議会議員 としての政治
活動全般 に必要,有 益な資料でない ことが明 らかであると認 めるのが相
当である。
例 ス ポー ツ新聞 (別紙千覧表 3の 「
番号」欄 1, 3)に ついて
被告 は,ス ポー ツ新聞について,浜 松市近辺 のスポー ンの記事や社会
事件 に関す る記事等 ,浜 松市政に資す る記事が含まれてい るか ら,こ れ
が 「
市政に関す る調査研究」 に全 く資 しない とはい えない 旨主張す るも
しか しなが ら,市 民クラブは'平 成 16年 5月 分及び平成 17年 3月 分
のスポー ツ紙を定期購読 して いた と認 め られ るところ (別紙 一覧表 3の
「
番号」欄 1, 3),通 常,こ の全期 間 におい て浜松 市 あるい はその近
辺に関連す る記事が掲載 されてい た とは考 え難 い上,掲 載 されていた と
口
1
5
‐
してもそれは全体的にみればごくわずかであり,そ れ以外の大部分は娯
楽性の高い記事であると推認するのが合理的であるから,被 告の上記主
張を採用す ることはできない。 したがって,当 該図書購入 に係 る前記特
段 の事情があるとは認 められない か ら,当 該資料 の購入 は,市 議会議員
としての政治活動全般 に必要,有 益な資料でないこ とが明 らかである と
認 めるのが相 当である。
l ク ラシ ック演奏会に関する情報誌 (別紙一覧表 1の 「
l‐
番号」欄 15,
い し62, 80な
17, 18, 60な
4, 117な
163, 185な
い し82, 101, 102, 10
い し119, 143, 145, 146, 160, 162,
い し187, 201, 203, 204, 216な
Vヽし
ついて
218, 238, 240, 241)に
被告 は,ク ラシ ック演奏会に関す る情報誌 にういて,浜 松市特有 の音
楽文化 に係 る知識 を得 るために有用 である旨主張す る。 しか しなが ら,
これ らの情報誌 の内容は,い ずれも全国のクラシ ング演奏会の情報や注
目の演奏家等に関するものであつて,`
音楽文化 とい うよりも単にクラシ
ック演奏会の情報 を紹介す る点に主眼があると認 められる上,浜 松市特
有の音楽文化 にういて掲載 していることも窺われないか ら,前 記特段 の
事情があるとは認 められない。 したがって,当 該資料の購入 は,市 議会
議員 としての政治活動全般 に必要j有 益な資料でないことが明らかであ
ると認 めるのが相当である七
側 鉄 道雑誌 (別紙一覧表 1の 「
番号」欄 67, 93, 132, 179,
197, 214, 250)に
ついて
被告は,鉄 道雑誌 につ き,視 祭を含む研修等の議員活動の補助 ツール
として,間 接的に議員活動上有効である旨主張する。 しかしながら,そ
の図書名及び内容 からして,こ れ らの図書は,鉄 道を利用 した旅行 の情
報を掲載 した情報誌,あ るいは,単 なる鉄道に関する図書であると推認
中16-
することができ,旅 行ない し鉄道 とい う個人的趣味 1・
興味をテ■マにし
た娯楽性 の高い読み物であると認 めるのが相当であるから,被 告 の上記
主張を採用することはできない。そ して,被 告は,当 該図書購入に係る
前記特段 の事情について何 ら主張立証 しないか ら,当 該資料 の購入は,
市議会議員 としての 政治活動全般に必要,有 益な資料でないことが明ら
かである と認 めるのが相当である。
lBl 情報雑誌 傷可
紙一覧表 1の 「
番号』欄 23,126,212,213,
225, 245)に
ついて
被告は,情 報雑誌につ き,精 神,文 化,ス ポす ツ,教 養メ 日常マナー
等に関するものであ り,議 員活動上で間接的に有益である旨ない し議員
活動の補助 ツァル として有効な事柄に関するものである旨主張する。 し
かしなが ら,こ れ らの図書は,そ の図書内容 に照 らし,′
趣味,興 味をテ
ーマ にした情報雑誌 であると推認するのが合理的であり,被 告が主張す
るよ うな内容の図書であると認 めるに足 りる証拠はない。そ して,被 告
は,当 該図書購入に係 る前記特段の事情について何 ら主張立証 しないか
ら,当 該資料 の購入 は,市 議会議員 としての政治活動全般に必要,有 益
な資料 でないことが明らかであると認 めるのが相当であるも
側 植物に関する書籍 10U紙一覧表 1の 「
番号」欄 110)に
ついて
被告は,植 物に関する書籍 につき,育 児,教 育,人 日問題,高 齢社会,
環境,都 市問題等,近 時間題 となってい る事柄に関するものであ り,議
日常活動をする上で有益である旨主張する。 しか しながら,当 該図
員のク
書は,単 に屋久島に存在する植物を紹介 した書籍にすぎないか ら,個 人
的な趣味,興 味をテーマ にした書籍 といわざるを得 ない上,当 該図書の
購読 と浜松市政 との間にどのよ うな関連性 があるのか不明である。 した
がつて,当 該図書購入に係 る前記特段の事情があるとは認 められないか
ら,当 該資料の購入は,市 議会議員 としての政治活動全般 に必要,有 益
-17-
な資料 でないことが明らかであると認 めるのが相当である。
力 な お,本 件図書購入①の うち,別 紙各一覧表 の 「
被告分類番号」欄 7に
該当する各図書の一部 (原告 らは,具 体的に特定 しないが,Sll紙一覧表 1
の
「
番号」欄 26な い し51の 各図書 であると解 される。)の 購入 が選挙
時の集票 目的等で購入 されたことを認 めるに足 りる証拠はないか ら,こ の
点に関する原告 らの主張は,原 告 らの推測 の城を出るものではな く,採 用
す ることができない。
キ 小括
以上より,本 件図書購入①の うち,別 紙一覧表 2の 「
番号」欄 41及 び
同表 0の 同欄 14の 各図書を除く別紙各一覧表 の 「
裁半J所分類番号」欄 E
に該当する各図書 (別紙一覧表 1の 「
番号」欄 15, 17, 18, 23,
60な い し62, 67, 75, 80な
104,110,117な
い し82, 93, 101, 102,
い し119,126,132,143,145,
146,160,162,163,1‐
79,1185な
201, 203, 204, 212な
い し187,197,
いし214, 216な
25, 238, 240, 241, 245, 250,同
い し218, 2
表 3の 同欄 1, 3)
については,そ の購入 が 「
市政に関す る調査研究に資する」 (本件条例 7
条,本 件規則 5条 )も のでない と認 められるが,本 件図書購入① の うちこ
れ ら以外 の各図書に関する原告 らの主張は,い ずれ も理由がない。
したがって,創 造浜松は,本 件条例 9条 に基づ き,浜 松市に対 し,上 記
各図書購入に充てた政務調査費合計 3万 8149円
を返還すべ き義務を負
う。
また,市 民クラブは,本 件条例 9条 に基づ き,浜 松市に対 し,上 記各図
書購入に充てた政務調査費合計 4890円
を返還すべ き義務を負 う。
(3)本 件図書購入②について
原告 らは,政 務調査費 とい う公金によって特定の宗教団体の図書を購入す
-18"
ることに法的根拠はなく,許 されない 旨主張すると
しかしながら,本 件条例等において,そ れが政党活動等 に該当す るような
場合 は格別 (本件規則 5条 別表 「
備考」欄参照),特 定 の宗教団体の図書購
入を禁止する旨の規定は存在 しない (甲1, 2)。 また,実 質的にみても,
聖教新聞は,公 明党 と密接な関係にある創価学会 (聖教新聞社)が 発行す る
日刊機関紙 であるところ (顕著 な事実),公 明党以外 の新世紀浜松,市 民ク
ラブ及び浜松市政向上委員会の各会派が聖教新聞を購読することは,同 新聞
で多 く取 り扱 われる公明党の政治活動の方針や内容等を知 り,他 方で,上 記
各会派が所属 ・支持 ・連携する国政 レベルの政党の主義,主 張等が どのよう
に評価ない し批判 されてい るかなどを知る情報源 として有意義であるから,
市議会議員 としての政治活動全般 に必要す有益であると認 められる。さらに,
聖教新聞以外 の図書についても,別 紙各一覧表 の 「
図書内容」欄記載のとお
り,い ずれも政治,経 済,教 育等 をテーマにしたものであるから,そ の内容
本
に照 らし,市 議会議員 としての政治活動全般 に必要,有 益であると認め られ
る。 したがつて,原 告 らの上記主張は,理 由がない。
(4)本 件図書購入③について
原告 らは,本 件図書購入③ は,い ずれ も図書名,そ の内容 ともに不明│な図
書であり,「市政 に関す る調査研究に資する」ために必要な経費 であること
め裏付けのない不当な支出である旨主張するb
そこで,検討するに,不 当利得返還請求訴訟においては,法律上の原因の
不存在 が不当利得返還請求権 の発 生要件 とされてい るのであ るか ら,一 般的
には,そ の返還を求める者 において,受 益者 が 「
法律 上 の原因なく」当該利
益を得た との事実を主張立証すべ きである (最高裁判所昭和 39年 4月 7 日
第二小法廷判決 ・集民 73 号 35頁 ,最 高裁判所昭和 59年 12月 21日 第
二小法廷判決 ・集民 143号
503頁
参照)。もつ とも,不 当利得 の返還 を
法律上の原因なく」 の事実 の主張立証責任 を負 うといって も,
求める者 が 「
19-
およそ考 えられ る一切 の法律 上の原因の不存在 を主張立証 しな ければならな
い ものではな く,そ の類型や証拠 との距離 を考慮 しつつ,当 該事案において
通常考え られ る程度 に財貨移転 の正 当化原因が存在 しないこ とを主張立証 じ
た場合 には,相 手方にお いてこれを正当化する具体的事情 につ き反証する必
要を生ずるとい うべ きである。そ うすると,本 件では,本 件図書購入③に充
てられた政務調査費が市議会議員 としての政治活動全般 に必要,有 益な知識
を得 るために必要な資料購入に充てられなかつた事実は,原 告 らにおいて主
張立証すべ きものであるが,そ の使途についての証票類等の証拠は,会 派の
経理責任者 が保存すべ きもの とされてい る (本件規則 7条 )こ とに照 らす と,
原告 らとしては,交付 された政務調査費の具体的使途を特定 して主張立証 し)`
それが市議会議員 としての政治活動全般に必要,有 益な知識を得るために必
要な資料購入に充てられなかつたことを明らかにす るまでの必要はなく,i例
えば,会 派が政務調査費を支給するに除 し,そ の使途 について所属議員から
領収書等 を徴するな どの管理を一切行 つていないな ど!当 該政務調査費が市
議会議員 としての政治活動全般に必要,有 益な知識を得るために必要な資料
購入 に充て られなかったことを推認 させる一般的,外 形的な事実を主張立証
した場合 には,被 告において,そ の推認を妨げるべ く,市 議会議員 としての
政治活動全般 に必要,有 益な知識を得るために必要 な資料購入 に充てられた
とい う具体的な使途を明らかにする必要 があるとい うべ きである。
これを本件についてみるに,原 告 らは,抽 象的に本件図書購入③がいずれ
も図書名,そ の内容 ともに不明な図書である旨主張するのみであ り,こ れ ら
が市議会議員 としての政治活動全般に必要,有 益な知識を得るために必要な
資料購入 に充てられなかったことを推認 させる一般的,外 形的な事実につい
ては何 ら主張立証 しない。む しろ,本 件図書購入③ においては,図 書名,そ
の内容が不明であるものの,い ずれ も 「
書籍代」
本代」ない し 「
,す なわち,
資料購入費 として支出 された旨の領収書等が存在す る上 (甲5な い し7, 1
-20-
1),図 書名 が不明な図書 の代金額 はいずれ も 700円
か ら 2202円
の間
であちて,そ の代金額 に照 らし,資 料購入費 とい う名 目での支出 として社会
通念上あ り得 る金額であると認 め られ る。 しか も,本 件 でこの よ うな図書名
が不明な図書 が存在す るのは,浜 松市議会 の政務調 査費研究会 において, 1
冊当た り2000円
未満 の資料購入 に関 しては領収書 に図書名 を記載す る必
要 はない 旨の 申 し合 わせが された結果 であうて (甲 3,4の
2),被 告 が本
件訴訟 において図書名 を明 らかにできない ことには合理的な理 由があるとい
うべ きである (なお,上 記 申し合 わせ の意味及び上記図書名 が不明な代金額
2202円
の図書に関 して上記 申 し合 わせ に反す るか否かについては,後 記
1こ
詳述す る。)。 れ らの事情 を総合す ると,結 局,本 件図書購入③ は,
(7)で
そ の購入 が 「
市政 に関す る調査研究に資す る」 (本件条例 7条 ,本 件規則 5
条)も のでない と認 めることは困難 であるか ら,原 告 らの上記主張を採 用す
るこ とはできない。
)本 件図書購入④についで
(る
原告 らは,本 件図書購入④は,い ずれも発行の都度購入する必要性が認め
られない ものである旨主張するb
しかしながら,前 記説示の とお り,会 派は,政 務調査費により購入 された
図書,資 料 と調査研究 との関連性 の判断 (当然,何 部購入す るか,い つ購入
するかなどの購入方法等 に関す る判断について も含 まれる。)に ついて広範
な裁量権を有する上,本 件図書購入④ に該当する図書は;い ずれも発行 の都
度その内容が異なることが認 められるか ら,発 行 の都度購入する必要性 がな
い とはいえない。 したがって;原 告 らの上記主張は,理 由がない。
(6)本 件図書購入⑤ について
原告 らは,本 件図書購入⑤は,い ずれも複数部 を購入する必要性が認 めら
れない ものである旨主張する。
しかしなが ら,前 記説示のとお り,会 派は,政 務調査費 により購入 された
-21-
図書)資 料 と調査研究との関連性 の判断 (当然,1何部購入す るか,V`つ購入
す るかなどの購入方法等 に関する判断についても含 まれる3)に ついて広範
な裁量権を有する上,本 件図書購入⑤ に該当す る図書の購入部数は,い ずれ
も 2部 ない し3部 にとどまること,!複数部を購入することにより,当 該会派
に所属する各市議会議員が政治活動,′
調査研究活動等をするに当たちて作業
の効率化等 に資する側面も有すると認 められることなどからすれ ば,同 上の
資料を複数部購入する必要性がないとはいえないる したがって,原 告 らの上
記主張は,理 由がない。
(7)本 件図書購入⑥ にっいて
原告 らは,領 収書金額が 20010円 以上の場合 には領収書に図書名 を記載
するな どその購入図書名を明らかにする必要があるところ,本 件図書購入⑥
は,こ れに反する旨主張する。
証拠 (申3,4の
2)に よれば,浜 松市議会 の政務調査費研究会が平成 1
5年 6月 13日 に作成 した 「
政務調査費 の概要及び使途について」は,資 料
購入費 に関 し,「領収書金額が 2000円
以上の場合 は,領 収書に書籍名を
記載 して もらう等,購 入書籍名を明 らかにする。」 としてい るところ,こ の
「
領収書金額が 2000円
以上」 とは, 1つ の領収書の金額が 2000円
以
上である場合,す なわち, 1回 で複数部購入 した場合 にその代金合計額が 2
000円 以上である場合 とい う趣 旨ではな く, 1冊 の金額が 2000円
以上
である場合を指すもの と認 められる。
しかしながら,上 記 「
政務調査費の概要及び使途について」は,そ の作成
者からも明らかなように,単 に政務調査費の使途 に関す る浜松市議会 の内部
的な申し合 わせにすぎず,法 的な拘束力はない と解 される上,原 告 らの上記
主張は,単 に領収書の記載 の不備 とい う手続面での違法性を主張するものに
すぎないか ら,上 記申し合 わせに反する政務調査費の支出が直ちに当該会派
に対 して本件条例 9条 に基づ く返還義務を課すような違法な政務調査費の支
(う
-22-
出であると判断するのは相当ではなく,前 記(4)の
場合 と同様,市 議会議員 と
しての政治活動全般に必要,有 益な知識 を得るために必要な資料購入 に充て
られなかった事実に関する主張立証責任 の問題 として捉えるのが相 当であ
る。
以上を前提 に本件をみるに,前 記(4)で
たとお り,本 件図書購入⑥ に
認定│し
おいては,「本代」,す なわち,資 料購入費 として支 出 された 旨の領収書等
が存在する (甲7)。 また,別 紙一覧表 3に よれば,本 件図書購入⑥ に該当
する図書 (同表 の 「
番号」欄 23)は ,平 成 16年 12月 23日 ,代 金 17
48円 及び 1200円
の各図書 (同表の同欄 24, 25)と
されてい ること (代金合計 5150円
同二機会 に購入
)カミ
認 められるから,そ の代金額が 2
202円 であると認 められるところ;確 かに,本 件図書購入⑥ に該当す る図
書が 1冊 であれば,上 記申し合わせに反する結果 となるが,そ れが 2冊 以上
であれば,そ の 1冊 当た りの代金額は 2000円
未満であると解す るのが合
理的であるから,本 件図書購入⑥ が上記申 し合わせに反 しない可能性 も十分
ころである。
に考えられると`
以上の事情を総合すれば,原 告 らが単に本件図書購入⑥ に該当す る図書が
上記申し合わせに反す る旨を抽象的に主張するにすぎない本件においては,
本件図書購入⑥ が 「
市政に関する調査研究に資す る」 (本件条例 7条 ,本 件
規則 5条 )も のでない と認 めることは困難 であるといわざるを得 ない。 した
がつて,原 告 らの上記主張を採用することはできない。
(8)本 件図書購入⑦について
原告 らは,浜 松市議会ではァ年間購読契約 における購読料は,当 該年度期
間内分を対象 としなければならないところ,本 件図書購入⑦は,こ れに反す
る旨主張する。
によれば,社 会民主党は,平 成 17年 3月 14日 ,同 年
前記前提事実(3)オ
4月 号から平成 18年 3月 号までの月刊 「
ガバナ ンス」の定期購読費用を平
-23-
成 16年 度交付分の政務調査費から支出 した ことが認 め られるところ,浜 松
市議会の政務調査費研究会が平成 15年 6月 13日 に作成 した 「
政務調査1費
の概要及び使途について」 によれば,資 料購入費に関し,「年間購読契約に
おける購読料は,当 該年度期 間内分を対象 とする。領収書は,当 該年度分 と
次年度分に分けてもらう。 ただし,領 収書 の仕分けが困難な場合は,当 該年
度対象分 の金額を欄外に記載する。」 とされてい る (甲3)。
しかしながら,上 記 「
政務調査費の概要及び使途について」は,前 記(7)で
説示 したとお り,政 務調査費の使途に関する浜松市議会の内部的な申し合わ
せにすぎず,法 的な拘束力はない と解 されるから,法 や本件条例等がこれを
禁上 していると解 される場合であれば格別,本 件各会派ないし所属議員 が上
記 申 し合わせの趣 旨に沿つて政務調査費を支出する道義的義務を負 うことは
あつても,直 ちに当該会派に対 して本件条例 9条 に基づ く法律上の返還請求
権を発生 させるわけではない と解す るのが相当である。
これを本件についてみるに,原 告 らは,本 件図書購入⑦が上記申 し合わせ
に反する旨主張するにすぎないが,さ らに進 んで,法 及び本件条例等 の規定
について検討するに,ま ず,法 が当該年度に交付 された政務調査費 を翌年度
の資料購入費 に支出することを禁止 しているか否かとい う点について,同 法
208条
1項 , 2項 (及び 220条
3項 本文)は ,各 会計年度における歳出
は当該年度 の歳入をもってこれに充てなければならない 旨規定 し,会 計年度
独立の原則 を採用 している。しかしなが ら,同原則 は,一 定の期間を画 して,
普通地方公共団体の収入 と支出の均衡を図 り,金 銭の受払 の関係 を明確にす
るために設けられたものであるところ,法 208条 が同法の第 9章 財務 の章
の第 1節 「
会計年度及び会計の区分」の冒頭に置かれてお り,同 じ章 には,
第 2節 予算,第 3節 収入,第 4節 支出ぅ第 5節 決算,(中 略),第 10節 住
民による監査請求及び訴訟等が規定 されてい ることに照らす と,同 条は,地
方 自治法が財政運営の健全化を強く確保すべ く,.種々の規制を加 えてい る普
-24-
通地方公共団体に関するものであって,地 方議会の会派のよ うに,本 質的に
任意団体 としての性質を有する団体に適用ないし類推適用 されるべ き規定で
ないことは明らかである。また,実 質的に考えても,会 派に対 して,普 通地
方公共団体 と同様の会計年度や会計年度独立の原則を強制すべ き必要性は何
ら認められない。 したがつて,法 は,会 派による政務調査費の支出に関し,
当該年度に交付 された政務調査費 を翌年度 の資料購入費に支出することを禁
止 していない とい うべきである。
次に,本 件条例及び本件規則について検討するに,当 該年度に交付 された
政務調査費 を翌年度 の資料購入費に支出することを禁止 しているか否 かにつ
いては,直 接的 にこれを定める規定はなく,本 件条例 8条 1項 及び 2項 が一
応 この点 に関連する規定であると解 される (甲1, 2)。 しか しなが ら,同
条 1項 は,政 務調査費 の交付を受けた会派の代表者は,政 務調査費 に係 る収
入及び支出の報告書 (以下 「
収支報告書」 とい う。)及 び証拠書類を年度終
了 日の翌 日か ら起算 して30日 以内に議長に提出しなければならない 旨を,
同条 2項 は,会 派が消滅 したときは,そ の代表者 であった者は,当 該会派が
消滅 した 日の属する月までの収支報告書及び証拠書類 を,消 滅 した 日の翌 日
か ら起算 して 30日 以内に議長に提出しなければならない 旨をそれぞれ定め
ているところ,前 者は,前 年度における政務調査費 の収支報告書及び証拠書
類 の提出時期 を定めた ものであ り,後 者 は,会 派が消滅 した場合 における収
支報告書及び証拠書類の提出義務者を定めた ものにすぎないから,こ れ らの
規定をもつて,1会派による政務調査費 の支出に関し,当 該年度 に交付 された
政務調査費を翌年度 の資料購入費に支出することを禁止する趣 旨と解す るこ
とはできない。
そ うすると,法 や本件条例等は,当 該年度 に交付 された政務調査費を翌年
度 の資料購入費 に支出することを禁止 していない と解 されるのであ り,結局,
本件図書購入⑦ は,上 記申し合 わせに反するとい うにすぎないか ら,原 告 ら
-25-
の上記主張は理由がない とい うほかない。
(9)本 件図書購入③について
、
‐
告 らは,本 件図書購入③がいずれもク レジ ットカー ドを利用 して支払わ
1原
れてい る ところ,こ れは公金支 出の際には許 されない支払方法である旨主張
するが,そ もそも本件条例等でクレジ ッ トカー ドによる支払方法を禁止する
旨の規定は存在 しないと
ま
!
た,ク レジ ットカー ドを利用 して商品を購入 した場合にポイン トが獲得
さ
れたとしても,こ れによ り被告 に損失 が生 じるものではない とい うべ きで
ある。
したがって,ク レジ ン トカ ド による支払方法で購入 した図書の代金に政
務調査費を充てることを禁止すべ き理由は法律上 も実質上 も存在 しないか
、1
││ │'│
Ⅲ
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,本 件図書購入③がク レジッ トカー ドによる支払方法で購入 されたもので
ら
あ
2 結
るか否 かについて検討するまでもなく,原 告 らの上記主張は理由がない。
論
よって,原 告 らの請求は,主 文第 1項 及び第 2項 の限度で理由があるからこ
れ らを認容 し,そ の余はいずれも理由がないか らこれ らを棄却す ることとし,
!
主
文 のとお り判決する。 │
静岡地方裁判所民事第 1部
裁判長裁判官 三
裁半J官 財
-26-
木
勇
次
賀 1理 行
裁半J
官 佐
由27申
野
倫
久
(別紙)
会 派 一 覧
相手方
事務所 の所在地
浜松市議会創造浜松 (以下 「
倉1
造浜松」という。)
、
浜松市 中区元城町 103番 地の2
53万 1606円
自由民主党浜松( 本件当時の
会派名, は
, 浜松市議会新世紀
浜松である。以下 「新世紀浜
というも)
松」
浜松市 中区元城町 103番 地の2
17万 383可 円
浜松市 議会 市 民クラブ( 以下
「
市民クラブ」という。)
浜松市中区元城町 103番 地の2
13万 3135円
公明
浜松市議会公明党 ( 以下 「
党」という。)
浜松市中区元城町 103番 地の2
16万 2085円
社会民主党浜松
浜松市中区元城町 103番 地 の2
1万 8018円
浜松市政向上 委員会
浜松市中区元城町 103番 地の2
10万 2779円
-28-
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