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米消費者ローンに先行き懸念
No.2014-113 2014年9月26日 ≪藤井英彦の 藤井英彦の視点≫ 視点≫ http://www.jri.co.jp 米消費者ローンに先行き懸念 ~ 学生・自動車ローンに火種 ~ (1)アメリカの消費者ローン残高は、リーマン・ショック以降、ほぼ一貫して減少してきたが、 昨年4~6月を底に増勢回復。住宅ローンと非住宅ローンに大別してみると、残高では、直近の 本年4~6月でも74%と引き続き住宅ローンが大半を占めるものの、このところの消費者ローン の増加は非住宅ローンが主導(図表1)。なお本年4~6月、住宅ローンは前期比マイナス。 (2)主要ローン別に非住宅ローンをみると、本年4~6月残高では学生ローンが1兆1,200億ドルで 最大(図表2)。次いで9,100億ドルの自動車ローン。さらに近年の推移を辿ると、まず学生 ローンが2010年7~9月から増加に転じ、以来3,600億ドル増。次いで自動車ローンが11年7~9 月から増加し始め、以来2,000億ドル増。一方、クレジットカードやその他ローンは、減勢は 脱したものの、依然底這い。近年の消費者ローン増は学生ローンと自動車ローンが牽引役。 (3)しかし両ローンとも火種。まず学生ローンでは延滞増(図表3)。延滞比率は昨年7~9月を ピークに低下。しかしローン残高に延滞比率を掛けて延滞債権の残高をみると、昨年10~12月 の1,242億ドルから本年に入り、1~3月、4~6月とも1,221億ドルと▲21億ドル減ったものの、 総じてみれば既往最大規模の延滞。過去2年にわたり、就職期に当たる7~9月に延滞が大幅増。 非農業部門雇用者数の対前月増加数が本年8月14万人増に鈍化するなど雇用情勢の改善にやや ペースダウンの兆しがみられるなか、本年も7~9月に延滞が増える懸念は払拭されず。一方、 自動車ローンでは相対的に返済能力が低い層向けの貸出、いわゆるサブプライムオートローン が最大の増加(図表4)。連銀データから、本年4~6月の同ローン取組金額に占めるシェアを 5段階クレジットスコア別にみると最下層28%、下から2番目16%、中央24%、上から2番目9%、 最上位22%。2011年末以降ほぼ同様。銀行融資オフィサー調査によれば、本年に入り、自動車 ローンの貸出態度厳格化。消費者ローンの質低下が景気下押し圧力に作用するリスクが視野。 (図表1)アメリカの住宅ローンと非住宅ローンの残高 40 (図表2)非住宅ローンの分野別残高 102 77 115 (百億ドル) (千億ドル) 非住宅ローン(左目盛) 住宅ローン(右目盛) 36 その他(左目盛) 学生ローン(右目盛) クレジットカード(右目盛) 自動車ローン(右目盛) 98 67 32 28 105 94 57 95 90 47 85 (千億ドル) (百億ドル) 24 86 37 20 75 82 27 2007 08 09 10 11 12 13 14 (出所) Fed 65 2010 (年/期) 11 12 13 14 (出所) Fed (図表3)学生ローンの延滞比率と延滞債権残高 (年/期) (図表4)クレジットスコア別自動車ローン取組金額 10 12 (10億ドル) 11 延滞比率(%) 延滞債権残高(百億ドル) ~619点 620~659点 660~719点 720~759点 760点~ 8 10 9 6 8 7 4 6 5 2 4 3 0 2007 08 09 (出所) Fed 10 11 12 13 14 (年/期) 2010 11 (出所) Fed 12 13 (注) 対2010年1~3月差。 14 (年/期) 【ご照会先】日本総研理事 藤井英彦([email protected] , 03-6833-6373) ≪藤井英彦の視点≫は、理事・藤井英彦が独自の視点から、新興国や一次産品動向を中心とするホットなトピックスに鋭く切り込むレポートです。