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米国営利大学が経営難-不良債権増加リスク(PDF:406KB)
No.2014-076 2014年7月2日 ≪藤井英彦の 藤井英彦の視点≫ 視点≫ http://www.jri.co.jp 米国営利大学が経営難 ~ 不良債権増加リスク ~ (1)米国営利大学の経営難が進行。主要営利大学運営企業の株価をみると総じて近年下落傾向 (図表1)。とりわけコリンシアン・カレッジは深刻。先週末0.28ドルと0.3ドルを割り込み。 活況を呈した2009年初は20ドル前後。倒産を織り込んだ水準。 (2)近年、営利大学は急速に存在感拡大。入学者数をみると、公立や非営利私立大学が総じて 横這いで推移するなか、ほぼ一貫して増加(図表2)。米国教育省公表の最新値2009年では 197万人。公立大学の1,351万人には及ばないものの、262万人の非営利私立大学と僅差。 (3)背景にはリーマン・ショック後の雇用難。スキルアップで就業機会を目指す動きが拡大。 人口に対する雇用者数の比率を年齢階層別に07年と直近で対比してみると、25~54歳の就業 年齢層が総じて▲3%ポイント前後の低下に対して、16~24歳の若年層では▲6%と大幅低下 (図表3)。もっとも、公立大学をはじめ一般に大学教育は、施設や教育スタッフなど供給 制約から需要増への即応が困難。需要増と供給制約が営利大学躍進の原動力。 (4)近年、消費者ローンの増加は学生ローンが主導(図表4)。入学者数動向と重ね合わせて みれば、営利大学在学者向けが増加の中心。学生ローンは連邦政府管轄。補助金と併せ営利 大学の経営は連邦政府依存。雇用者数比率の低迷など雇用情勢の改善が遅延するなか大学を 卒業しても就職が困難で学生ローンが不良債権化するケースが増加。大半の消費者ローンで 不良債権比率が近年、期を追って低下するも、学生ローンは12年央、一段と上昇し、その後、 一進一退。カリフォルニア州をはじめ多くの州政府も営利大学に疑念。連邦政府とも閉鎖か 経営母体の変更を迫る動き。もっとも、公立大学をはじめ供給制約は大きく、受け皿確保は 予断を許さず。雇用情勢の緩慢な改善のもと、不良債権が一段と増加する展開が視野。 (図表1)主な米国営利大学運営企業の株価動向 42 (図表2)米国大学入学者数 140 12 (ドル) (ドル) 35 コリンシアン(左目盛) 120 キャリア(〃) 10 ITT(右目盛) アポロ(〃) 100 28 8 18 私立(営利、左盛) 私立(非営利、左盛) 総数(右目盛) 公立(右目盛) 80 21 20 (百万人) 16 6 14 60 (百万人) 14 4 12 10 40 7 20 2 0 0 0 8 2000 01 (出所) NASDAQ、NYSE (年/月/日) (図表3)年齢階層別雇用者比率(対人口、季調済) 68 62 77 56 71 50 65 16~24歳(左目盛) 55歳~(左目盛) 25~34歳(右目盛) 35~44歳(右目盛) 45~54歳(右目盛) 44 59 38 53 32 47 26 41 1948 53 58 63 68 73 78 83 88 93 98 03 08 13 (出所) USDL (年/月) 03 04 05 06 07 08 09 (年) (図表4)消費者ローン残高(対11年1~3月差)と不良債権 83 (%) (%) 02 (出所) USED 14 12 10 8 6 4 2 0 ▲2 ▲4 ▲6 ▲8 残高(不動産) 残高(自動車) 残高(学生) 不良債権比率(不動産) 〃(自動車) 〃(学生) 残高(ホームエクイティ) 残高(クレジットカード) 残高(その他) 〃(ホームエクイティ) 〃(クレジットカード) 〃(その他) (%) 14 12 10 8 6 4 2 0 -2 -4 -6 -8 (千億ドル) 2011 (出所) Fed 12 13 14 (注) 残高は左目盛。不良債権比率は右目盛。(年/期) 【ご照会先】日本総研理事 藤井英彦([email protected] , 03-6833-6373) ≪藤井英彦の視点≫は、理事・藤井英彦が独自の視点から、新興国や一次産品動向を中心とするホットなトピックスに鋭く切り込むレポートです。