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Title Author(s) Citation Issue Date URL 淡水魚の鰓の構造とガス交換の機能( Abstract_要旨 ) 鈴木, 紀雄 Kyoto University (京都大学) 1968-11-25 http://hdl.handle.net/2433/213014 Right Type Textversion Thesis or Dissertation none Kyoto University 氏 名 木 鈴 紀 き すず 雄 のり お 博 士 学 位 の 種 類 理 学 位 記 番 号 論 理 学位授与の 日付 昭 和 4 3年 11月 2 5日 学位授与の要件 学 位 規 則 第 5 粂 第 2項 該 当 学位 論文題 目 淡 水魚 の鯉 の構 造 とガス交換 の機 能 論 文 調 査 委員 教授 森 (主 学 博 第 2 55号 査) 論 主一 文 教授 森 下 正 明 内 容 の 教授 加 藤幹 太 要 教授 加 藤 勝 旨 主論文は, 淡水魚の髄の表面積や鮭の各部分の長 さな どと, ガス交換量やガス交換率 との関係を しらペ て, 鯉の構造 がいかに魚 に対 して, 直接的な酸素不足 (環境水が低酸素圧 の場合) や相対的な 酸 素 不 足 (運動や成長 の盛んな場合) が起 こらないように適応 した状態を示 しているかを考察 した もので ある。 32 種 (うち 9 種 は鯉弁数のみ調査) の淡水魚 を しらべた結果, 直接的酸素不足や相対的酸素不足 にさら される魚類 は組の表面積が大 きい. gi l lf i l ame nt) の数 は, 同 じ体重 (または体長) の ものを比較 して も, よ く生長す る魚種や運動 鯉弁 ( の盛んな魚種 ほ ど多 くな っている。 Se c o ndar yl e me l l a )の長 さと鯉弁片問の距離の比 ( i /d) は溶存酸素量の少ないところにすむ 鯉弁片 ( 魚で大 き く, 酸素の豊富な ところにすむ魚で小 さい。 この値 は主 として組弁片の長 さの変化 による。 鯉弁 片の長 さや Z/d の値は, 運動の非常に活発な魚種で も体重の増加 につれて急 に大 き くな る. 以上新 しく見 出 した結果を, ガス交換の面か ら理論的に考察 して次のような結論を導 いた。 紙弁の数が多いとガス交換の効率 は変わ らないがガス交換量が大 き くな る。 さらに, 紙弁数が多い と呼 吸水量に比較 して, 呼吸運動 に要す るエネルギーが節約で き, それだけエネルギーの損失が少な くな る. したが って, 成長の盛んな魚や運動の盛んな魚 には, 鯉弁の数が多いことは都合がよいo l/d の値が大 きい こと, 鯉 が呼吸水 と接触す る時間がその値の 2 乗 に比例 して長 くなるので, 環境の溶 存酸素量が少 な くな って も, 生理的死腔が大 き くな ることがな く, 酸素の と りこみ率 も低 くな らない。 さ らに紙弁片の長 さが長いと, 血流量や呼吸水量に影響を与えてガス交換 の効率 は高 くな り, 溶存酸素量の 少ないところにすむ魚種で も血液の酸素分圧が低 くなることがない。 また, 非常に運動の盛んな魚では, i/d の値が大 きいので, 呼吸水量が多 くな って も生理的死腔が増大す ることがない. このように, もし対応処置がなければ, 直接的酸素不足 や相対的酸素不足 にさらされ る可能性のある魚 は, それぞれ考え られ る酸素不足の状況 に応 じて, ガス交換の上でそのような事態が起 こらないように,紘 -1 3 9- の構造が変化 していることを明 らかに した。 参考論文 1 - 9 および13 は, すべて生物の適応や変異 に関す る問題をとり扱 ってお り, ジ ョウジ ョウバ 工, フジツボ, 七面鳥, フナな どを実験材料 に選んで, 生物の変異の起 こり方を環境 との関係や系統 との 0-1 2は陸水生物学上の問題を取 り扱 ってお り, その中で 関係か ら考察を行 な ったものである。 参考論文 1 1 0は魚類生産の基礎資料 として魚類の標準代謝量を求めたもので あ り, また1 1 -1 2はびわ湖の性質を長期 的に追跡す る研究の一環 として底生動物について しらべたもので ある0 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 従来淡水魚の鯉 の構造 と機能については若干 の生理学的および形態学的研究があったが, 鯉 の細部の構 造 がガス交換 と関係 して変化す る種 々の様式を, 環境の状態や魚の生活様式 とむすびつけ, 実際のデ- タ の裏付けの もとに, 理論的に考察 した ものはなか った。 もともと魚の呼吸の際にみ られ る酸素不足 に対す る適応には, 大 き く分けて 2つの様式がある。 環境水 の酸素不足 に対す るばあい (直接的酸素不足) と, 魚の生長や活動が盛んで, したが って魚の酸素要求が 大 き くなる状態 に対す るばあい (相対的酸素不足) のこうになる. このような酸素不足の生ず る条件に対 2 種を用いて, まず実際の鯉の形態の計 し, 魚の鯉 の構造 はどのように適応 しているか。 申請者は淡水魚3 測デー タを集め, つ ぎのような ことを明 らかに した。 まず, いずれの様式の酸素不足 にさらされ るばあいで も, 一般 に紙の表面積が大 き くなるという事実が ある。 d)との比 また直接的酸素不足 に対 しては, 鯉奔片の長 さ(l) と鯉弁片間の距離 ( ( i / d)が大 き くなる. すなわち, 環境水中に溶けている酸素の量が少 ないところにすむ ものは l/d の値 が大 き くなる傾向 が あ る。 この際特に J の値が大 き くなるものが多い。 相対的酸素不足 に対 しては, 鯉弁の数を多 くして対応す る。 また特に運動が非常に活発な魚種では, 体 重の増加 につれて l/d の値が急 に大 き くなるo これ らの事実はいずれ も新 しく発見 された ものであるが, これを紙 におけるガス交換の面か ら理論的に 考察 して, つ ぎのような結論をみちぴいた。 I/d が値が大 きいと, 鰻 が呼吸水 と接触す る時間が長 くな り, 環境の酸素量が少な くな って も, 生理的 死腔が小 さ くな り, 酸素の とりこみ率が高 くな るはずである。 特 に紙弁片の長 さが長いと, 血流量や呼吸 水量に影響を与えてガス交換の効率が高 くな り, 溶存酸素量の少ないところにすむ魚で も血液の酸素分圧 を高 く保つ ことがで きると考 える。 つ ぎに鯉弁の数が多いと, ガスの交換量は, 効率が変わ らないままで, 大 き くなるはずである。 また鯉 弁数が多いと, 呼吸水量に比べて呼吸運動に要するエネルギーが節約で きるはずで ある。 すなわち生長の 盛んな魚や運動の盛んな魚 には鯉弁の数が多い とつ どうがよいはずである。 特に運動が非常に 盛 ん な 魚 では, l/d の値が大 き く, 呼吸水量が大 き くな って も生理的死腔が増大す ることがないのでつ どうがよか ろ う。 このような理論的結果を, 自然の種 々の環境 にすむ魚にあてはめてみると, その観察 にもとづ く生態 と -1 4 0- よ く一致 し, 形態一生理一生態一環境 をむすぶ一貫 した説 明の可能な ことが分 った. こうして こ の 研 究 はノ , 自然のいろいろな環境 とそ こにすむ いろいろな生態を もつ魚を, 呼吸に関す る形態 と生理 を仲介 とし て結 びつけ, その適合性の因果を理論的に証明 した もので, 陸水生物学の新 しい境地を開拓 した もの とし て高 く評価で きる。 参考論文は, 主 とし動物の適応現象 と, 免疫反応を利用す る系統学に関す るものであ り, いずれ も高 い 内容を もち, それぞれの方面で新境地 を開いた もの として注 目されている。 以上 申請者の研究 は, 魚類の形態学, 生理学, 生態学および環境学を広 くむすぶ陸水生物学の新 しい境 地 を開いたもので, 参考論文 に示 された研究能力 と併わせ考えて, 理学博士の学位論文 として十分の価値 があるものと認める。 ー1 4 1-