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Title 迷走神経肺水腫の研究( Abstract_要旨 ) Author(s) 鄭, 茂松

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Title 迷走神経肺水腫の研究( Abstract_要旨 ) Author(s) 鄭, 茂松
Title
Author(s)
Citation
Issue Date
URL
迷走神経肺水腫の研究( Abstract_要旨 )
鄭, 茂松
Kyoto University (京都大学)
1967-03-23
http://hdl.handle.net/2433/212133
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
【198 】
氏
鄭
茂
松)
てい
も
しよ う
博
士
学 位 の 種 類
医
学 位 記 番 号
論
学位授与 の 日付
昭 和 42 年 3 月 23 日
学位授与 の要件
学 位 規 則 第 5 条 第 2 項 該 当
学位論文 題 目
迷走神経肺水腫 の研究
論文 調査 委員
教 授 長 石 忠 三
学
医
博
第 347 号
(主 査)
論
文
教 授 内 藤 益 一
内
容
の
要
教 授 辻
周 介
旨
両側迷走神経 の切断後 にいわゆ る迷走神経肺水腫 が招来 され ることは周知であるが, その発来機序 はい
まだ明 らかにされていない。 ことに, 肺血管 にどのよ うな変化が招来 され るかについては確 め られていな
い。
そ こで, 著者 は, これを明 らかに しよ うと して, 以下 の病理形態学的な らびに病態生理学的研究 を行な
った
。
第 1 篇では , 40 匹のモルモ ッ トを用い, 液体窒素 による臓器組織 の急速冷凍法 を応用 して, 両側頚部迷
走神経 の切断後 に肺血管 に招来 され る病理形態学的な変化 について経時的 に観察 した。
迷走神経の切断群 では, 術後早期か ら肺静脈 の哲血像 がみ られ , その度合 は時間の経過 とともに著明 と
な る。
また, 肺動脈 にみ られ る変化 を, 血管切 断面の最短 内外径の比率や , 肺動脈 とその随伴気管支 との最短
外径の比率 を基 に して観察す ると, 神経 の切断直後か ら35 分を経過す るまでの期間, すなわ ち肺水腫 の症
状がいまだ招来 されていない時期では, 対鵜群 に比べて特記すべ き変化 はみ られないが, その後 は時間の
経過 とともに肺動脈径 の著明な縮小 が認 め られ る。
筋層の厚 い, 直径 250 p ない し 400 /` の小動脈では , と くにその度合 が著明である。
以上でわか るよ うに, 迷走神経肺水腫 の発来時 には, 肺動脈 では血管径 の狭小像 がみ られ, 肺静脈 では
血管径 の拡大像 が認 め られ る。
つ ぎに, 第 2 篇では , 22頭の犬を用 い, 両側頚部迷走神経 の切 断後 における心肺動態 , 胸腔 内圧 , 呼吸
曲線等 について詳細 に観察 した。
H ering-B reuer 反射の速 断によ り胸腔 内圧 はその直後か ら著明に変化 し, と くに吸気時に強い除圧 を示
す。 この ことは, 迷走神経 の切断によ り惹起 され る肺血管 の 自律神経支配の変調 と相侯 って , 肺模入圧 の
著 明な低下や , 肺血管 の内外圧差の変化 をきた し, 肺哲血招来の原 因 とな る。
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一方 , 1 回換気量 が増加す ると, 呼吸の弾性抵抗仕事量が増加す る。 そのさい, 気道抵抗や運動を負荷
して呼吸数 を増加 させ ると, 非弾性抵抗仕事量がさ らに著明に増加す る。 その結果 , 換気量 の増加 に対す
る呼吸抵抗仕事量が急激 に増加 して, 換気/ 血流 ア ンバ ランスが一層強め られ , 肺水腫 の発生が促進 され
る。
ちなみに, 本実験 では, 迷走神経切断群 の約43% に肺水腫症状 が認 め られた。
以上第 1 および第 2 篇 の実験成績か ら, 以下 の結論 をえた。
(1)
両側頚 部迷走神経 の切 断は, 肺水腫 の発生 に促進的に働 くが, これのみでは必ず しも肺水腫 が招
来 され るとは限 らない。
(2 )
これ になん らかの因子が負荷 され ると, 肺水腫 が招来 され る。
(3 ) 両側頚 部迷走神経を切断す ると, 肺血管 の 自律神経支配 に変調 を きた し, 肺毛細管か ら肺静脈 に
至 る領域の血管 が拡張す る。 これ らの血管 は, H ering-B reuer 反射が速 断 され る こ と に よ り招来 され る
胸腔 内の強い陰圧 によ り機械的な影響 を受 けて さらに拡張す る。 これによ り肺の轡血傾 向が促進 されて,
肺水腫準備状態が醸成 され る。
(4 )
迷走神経 の肺静脈 に対す る収縮調節機序 は, 肺動脈 に対す る拡張調節機序に比べてよ り強いよ う
に思われ る。
(5 ) 肺水腫 の発生前や発生時 にみ られ る肺小動脈 の収縮 は, 自律神経支配の変調 による直接的な作用
によるとい うよ りも, む しろ換気障害 によ り惹起 され る急性 ア ノキ シアに対す る肺小動脈 の局所的な反射
によるもの と考え られ る。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
両側迷走神経 の切断後 に多発す るいわゆ る迷走神経肺水腫 の発来機序 について, 病理形態学的な らびに
病態生理学的に検討 した。
まず , 40 匹のモルモ ッ トを用 い, 液体窒素 による臓器組織 の急速冷凍法 を応用 して, 両側頚 部迷走神経
の切断後における肺血管 の病理形態学的変化 について経時的に観察 し, ついで22頭の犬を用 い, 同条件下
における心肺動態 , 胸腔 内圧 , 呼吸曲線等 について病態生理学的に観察 した。
両側頚 部迷走神経 を切断す ると, 肺血管の 自律神経支配 に変調を きた し, 肺毛細管か ら肺静脈 に至 る領
域 の血管が拡張す る。 これ らの血管 は H ering-B reuer 反射が遮 断 され ることによ り招来 され る胸腔 内の
強い陰圧 によ り機械的な影響 を受 けてさらに拡張する。 これ によ り, 肺の轡血傾 向が促進 されて, 姉水腫
の準備状態が醸成 され る。 一方 , 換気障害 によ り惹起 され る急性 ア ノキ シアに対す る肺小動脈 の局所的な
反射 によ り肺小動脈 が収縮 し, 肺静脈 にみ られ る前述の諸変化 とあいま って肺水腫 を招来す る原因が醸成
され る。
迷走神経肺水腫 の発来機序を肺血管面か ら明 らかに した本研究 は, 肺生理学の進歩発達上寄与す るとこ
ろ大である。
本論文 は学術上有益 に して医学博士 の学位論文 と して価値 あるもの と認定す る。
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