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Title 体外精子の生存並に代謝に影響ある卵黄中の有効成分に 関する
Title Author(s) Citation Issue Date URL 体外精子の生存並に代謝に影響ある卵黄中の有効成分に 関する研究( Abstract_要旨 ) 桝田, 博司 Kyoto University (京都大学) 1970-05-23 http://hdl.handle.net/2433/213398 Right Type Textversion Thesis or Dissertation none Kyoto University 氏 名 桝 田 だ ひろ 博 司 学 位 の 種 類 農 学 博 士 学 位 記 番 号 論 農 博 学位授与の 日付 昭 和 45 年 5 月 23 日 学位授与の要件 学 位 規 則 第 5 条 第 2 項 該 当 学位論文題 目 体外精子の生存並に代謝 に影響ある卵黄中の有効成分に ます し 6 6号 第 2 関す る研究 (主 査) 論 文 調 査 委員 教 授 西 川 義 正 論 文 内 教 授 上 坂 章 次 容 の 要 数 授 小 野寺 孝 之進 旨 本論文は現在家畜の精液希釈剤の主成分 として広 く用 い られている鶏卵黄中の精子の生存性に対する有 効成分を明 らかにす ることを 目的として行なわれた もので, 精子の生存延長に有効な物質, 精子に対す る 低温衝撃と凍害に対する保護物質な らびに代謝促進に有効な物質の三つの面か ら検討を加えている。 なお 有効成分の検索には親卵黄を超遠心分離法, 透析法 などを用いて分画 し, 各分画部につ き有効性の有無を 調べ, さらに各分画か ら個 々の成分を抽出して精子に対する影響を調べつ ぎの成績をえている。 1. 精子の生存延長に対 しては, 卵黄の リポタンパ クおよび リペテンが きわめて有効であるが, その有 効性は動物種 によって異なる。 すなわち リポ ビテ リンおよび リボ ビテ レニンは山羊および牛の精子の生存 に有効であり, β- リポビテ リンは α- リポ ビテ リンよ りもこの有効性が高い。 リベチンは山羊および馬 の精子 に対 しては有効であるが, 牛の精子に対 しては, ほとん ど影響力がない。 2. 精子に対する温度衝撃の保護物質 としては, 卵黄中の中性油脂に最 も効果が認め られ, ついで αおよび β- リポ ビテ リンな らびに レシチンが有効である。 精子の受ける凍害に対 しては , リポビテ リンお よび リボ ビテ レニンが有効であ り, 後者は前者 よりも有効性が高い。 また リポ ビテ リンでは α- より βの方がい くぶん良い影響が認め られた。 3 . 卵黄の添加によって 認め られ る精子の呼吸促進作用は, 主 として 卵黄中の透析性成分に よるもの で , これ については透析性成分に含 まれ る各種ア ミノ酸と糖を一緒に添加 して も糖の単独添加以上には代 謝の促進が認め られないこと, 1 1種のア ミノ酸 と糖を混合添加 して も糖の単独添加の場合の代謝を うわま わ らないことなどの結果か ら, 卵黄中の精子の直接のエわ レギー源 とな りうるものは , 主 として遊離の糖 で あると考え られ る。 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 新鮮な鶏卵黄 と リン酸塩液 とか らなる, いわゆる卵黄緩衝液が牛精子の生存を著 しく延長することが, -7 4 8- P. H. Phi l l i psによ って 1 9 3 9年 に発表 されて以来 , 今 日まで卵黄を主成分 とす る精液希釈剤が広 く家畜の 人工授精に用 い られて きた。 しか し, 精子の生存性 に対す る有効作用が卵黄中のいかなる成分によるかについては未 だ明確な結論が 出されていない。想 うに これは卵黄の構成成分が非常に複雑な ことによるもので あろ う。著者は卵黄中の精 子の生存性に対す る有効成分 を明 らかにす る目的で, 山羊および牛の精子を中心 に, 馬の精子を も用 い, 精子の生存性を延長す るのに有効 と思われ る物質 , 低温衝撃や凍結の害作用 に対 し精子を保護す るのに有 効な物質および精子の代謝促進 に効果のある物質につ き検討を加えている。 その結果精子の生存性の延長 に対 しては, 卵黄の リポタンパ クおよび リペテンが著 しく有効で・, しか もその有効性は動物種によって異 なることおよび卵黄の有効性は主 として遊離の糖 , 各種 ア ミノ酸 , リポ タンパ クおよび リベチンな どの複 合 的な作用によることを明 らかに した。 また温度衝撃に対 しては中性油脂が最 も高い保護効果が あ り, つ いで リポタンパ クおよび レシチンに有効性のあることを認め, さ らに精子に対す る凍害の保護物質 として リポタンパ クをあげている。 また精子の呼吸促進にはた らく物質は , 主 として遊離の ブ ドウ糖で あろうと 推定 している。 このように本論文は精子の生存性 に有効 にはた らく鶏卵黄中の有効成分につ き検討を加え, 多 くの新 し い知見をえた もので, 家畜繁殖学 ことに精子の生理学に貢献す るところが きわめて大 きい。 よ って, 本論文は農学博士の学位論文 として価値 あるもの と認める。 -7 4 9-