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学習メモ
テレビ学習メモ 地学基礎 監修講師:樋口 聡 第 4 編 地球のこれから 第 36 回 自然環境の変化 今回学ぶこと 地球環境はどんなことが起こると変化するのでしょう。今回は自然環境の変化 に注目します。火山が噴火すると火山灰が大気中にとどまり日射を遮ってしまい、 太陽の活動が弱まると地球は寒くなってしまいます。逆に活発になれば電離層が 乱れ通信障害を引き起こすこともあります。大気と海の相互作用によっても気候 は変わります。このように自然は大変複雑ですが、それを理解するために日夜研 究が続けられています。地球環境は微妙な関係の上に成り立っているのです。 火山と地球環境 ▼ 火山活動は時として地球規模で環境を変えること ル)を観測している。レーザー光線を空に向かって がある。1991 年、フィリピンのピナトゥボ火山は 照射し微粒子に反射して戻ってくる光を測定するも 20 世紀最大規模の大噴火を起こした。このとき噴 ので、エアロゾルがどの高さにどれくらいあるか調 出した火山灰は成層圏に達し、微粒子となって地球 べることができる。成層圏のエアロゾルは地球の気 を巡る風に乗り、何年ものあいだ成層圏にとどまっ 候を考える上で非常に重要な働きをしており、もし た。このため日射がさえぎられ、数年間にわたり地 大規模な噴火が起これば、地球の熱収支を変えてし 球の平均気温は約 0.4℃低下した。 まう可能性もある。したがってエアロゾルの量や動 つくば市にある気象研究所では 30 年以上にわた きを調べ続けることは大切である。 り、この微粒子に代表される細かいチリ(エアロゾ 太陽と地球環境 太陽と地球は 1 億 5 千万 km も離れている。しか 太陽からのフレアやコロナの大放出が起こると、地 し太陽活動が変化すれば地球環境は大きく変化する。 球では磁気嵐が起き電離層が乱れ、電波障害や通信 − 71 − 高校講座・学習メモ 地学基礎 自然環境の変化 黒点の数が少ないときは太陽活動が不活発なため、 障害、信号トラブルなどを起こすことがある。 また太陽の黒点の数は 11 年周期で増減する。黒 地球規模の寒冷化を引き起こしたこともあった。 点の数が増えるときは太陽活動が活発である、逆に エルニーニョとラニーニャ エルニーニョとは元々、南米のペルー沖で数年に 一度イワシがとれなくなる現象をこのように呼んで 少なくなり、気圧差も小さくなり、貿易風も弱まっ ているのである。 いた。太平洋赤道域では通常、太陽であたためられ ラニーニャはこの反対の現象と考えてよい。ラ た海水が貿易風によって西のインドネシア沖に集 ニーニャのときは貿易風が強く、東西の海面温度の まっている。このためインドネシア沖ではあたたか 差や気圧差も大きい。 く対流活動が活発である。一方、ペルー沖では深い ところから冷たい海水が上がってくる。この湧き上 このようにエルニーニョやラニーニャは大気と海 がりのおかげでペルー沖は栄養分が豊富な海となり が相互に作用しあい、地球環境が変わる現象なので 良い漁場となっている。 ある。さらにこれらの現象は、太平洋赤道域にとど ところがエルニーニョになると、貿易風が弱くな まらず世界各地の気候を変える。 ▼ り、インドネシア沖に集まっていたあたたかい海水 例えばエルニーニョになると太平洋赤道域の対流 がペルー沖のほうに広がってしまうため、海面温度 活動が弱まるため、日本への太平洋高気圧の張り出 が平年よりも低くなり対流活動が弱まる。またペ しが弱まり冷夏になりやすい。またインドでは干ば ルー沖の湧き上がりは弱まるために栄養分の供給が つになりやすくなるなど世界中に影響が広がる。気 減り、イワシやそれを追う魚も減少する。つまりエ 象研究所では過去に起きたエルニーニョ現象をシ ルニーニョのときは太平洋赤道域の東西の温度差が ミュレーションし今後の予想に役立てている。 学習の まとめ 大規模な噴火では火山灰を起源とする微粒子が、何年ものあいだ成層圏にとどま ることがある。すると日射量が減り地球の平均気温が低下するなど、地球の熱収 支を変えてしまう可能性もある。 太陽のフレアやコロナの変化、黒点の数の変化など、太陽は数日から長期間にわ たりさまざまな影響を地球にもたらす。 エルニーニョでは貿易風が弱まりペルー沖の海面温度が上昇する。ラニーニャは その反対の現象である。これらは赤道付近にとどまらず世界の気象に影響を与え ている。 − 72 − 高校講座・学習メモ