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人間活動がもたらす自然環境の変化
地学基礎 テレビ学習メモ 監修講師:松本直記 第 4 編 地球のこれから 第 37 回 人間活動がもたらす自然環境の変化 今回学ぶこと 地球に暮らす生き物のうち、人間は高度な社会を構築しました。そのための様々 な活動を通じて、ついには地球環境に影響を及ぼすまでになってしまったのです。 その環境変化が、ときとして人間をはじめとする地球上の生き物に悪影響を及ぼ すことさえあり得ます。地球に暮らし、地球の恩恵を受けている私たちは、その 影響力を知り、環境を変化させないよう意識して社会活動を行っていく必要性が あるのです。 オゾン層の破壊 オゾン層は、地上 10km ~ 50km の成層圏に存在 いた。しかも安価で、エアコンや冷蔵庫の冷媒、ス する。このオゾン層は,地球の生命を守るバリヤー プレー剤、発泡スチロールの膨張剤、洗浄剤などそ のはたらきをしている。 の用途は多岐にわたった。しかし、光の強い成層圏 ▼ 太陽からの紫外線は、生物の細胞内にある DNA では分解し、含まれる塩素原子を放出する。塩素原 によく吸収されて、DNA を破壊してしまう。正常 子が成層圏にまき散らされると、非常に効率的にオ な細胞分裂ができなくなるので単純な生物だと死ん ゾンを破壊する。1985 年には、南極上空にオゾン でしまうし、高等な生物は腫瘍の原因となる。オゾ ホールが発見され、地球のオゾン全量が減少してい ンは生成、分解時に紫外線を吸収し、地上に到達す るのではないかと危ぶまれるようになった。 しゅよう る紫外線を大幅に減じる役割を持っている。約 4 億 さまざまな論争はあったものの、「手遅れになっ 年前にオゾン濃度が現在と同じ程度になったのを てからでは遅い」のでフロン類を規制する国際的な 待っていたかのように、生物が陸上進出を果たした。 取り決めが作られた。その結果、オゾンホールの拡 オゾン層の重要性がわかるだろう。 大は抑制され、今から数十年後にはオゾンホールは 1920 年代に発明されたフロンは、非常に安定、 解消するのではないかと考えられている。 無毒、無臭でわずかな圧力で液化する特性を持って − 73 − 高校講座・学習メモ 地学基礎 人間活動がもたらす自然環境の変化 二酸化炭素の増加 現在、大気に含まれる二酸化炭素の割合はおよ の間で変動していることがわかった。さまざまな方法 そ 0.04%である。しかし、1950 年代にアメリカの で大気中の二酸化炭素濃度の変動を調べると、最近 キーリングが二酸化炭素の高精度観測を始めたとき の 200 年で大きく上昇していることがわかった。これ は、およそ 0.03%であった。それ以前の大気の様子 は、人類が社会活動を行って放出する二酸化炭素の は、極に近い氷床をくりぬいて、その氷に含まれる 約 6 割が大気に留まっていると考えるとよく説明がつ 気泡(大気)を調べると知ることができる。 く。二酸化炭素は温室効果ガスである。地表から放 それによると、過去数十万年間には、0.02 〜 0.03% 射される赤外線を吸収して熱にするはたらきがある。 環境変化の予測 大気中の二酸化炭素濃度が増え続けると、環境は 年ほどの間に数度、温度上昇することで起きる環境 どう変動するだろうか。その予測のためにスーパー 変化はかなり大きいものであることが予想される。 コンピュータによるシミュレーションが行われてい 急激な環境変化は人類にとっても他の生物にとって る。 も歓迎されるものではない。地球環境を変えてしま ▼ コンピュータシミュレーションは万能ではないの うほどに社会活動が巨大になってしまったことを知 で、すべてその予測通りになるとは言えないが、多 り、急激な環境変化が起きないような仕組みを人類 くのシミュレーションで 21 世紀末において平均気 が協力して作り上げるべきであろう。 温が数度上昇することを予測している。たった 100 学習の まとめ オゾン層は陸上生物が生きていくのになくてはならないものである。そのオゾン層 が、フロンによって破壊されていることが明らかになった。そのためフロンを国際的 に規制する取り決めを行った。そのおかげで、オゾン破壊は抑制されてきたのでは ないかと考えられている。 大気中の二酸化炭素濃度は、人間の社会活動によって上昇している可能性が高い。 二酸化炭素は温室効果ガスであり、濃度上昇によって気温も上昇すると考えられる。 将来の気候がどうなるのか、コンピュータシミュレーションで予測されている。それ によるとかなり急激な温度上昇が見込まれている。急激な環境変化を招かないよ うな国際的な協力や取り組みが必要である。 − 74 − 高校講座・学習メモ