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「電気」と「磁気」ものがたり
物理基礎 テレビ学習メモ 講師:結城千代子 第 2 編 さまざまな物理現象とエネルギー 第 40 回 「電気」と「磁気」ものがたり 今回学ぶこと 電気と磁気の理解と利用は,18 世紀以降,私たちの生活を根底から変えました。 16 世紀になって本格的に電気と磁気の力が区別され研究が盛んになると,静電気を 作ったりためたりすることができるようになります。そして,1800 年には電気を流し 続けられる電池が発明されます。さらに,電流が流れる導線の周りにできる磁界が発 見され,電気と磁気の関係が明らかとなり,モーターや発電機の発明につながってい きます。19 世紀の後半には電磁波が発見され,無線通信への道が開かれます。 学習のポイント 静電気の性質の解明から,電池の発明までのみちのり モーターや発電機につながる実験など,電気と磁気の関係の探求 有線通信の発達から電磁波の発見による無線通信,情報革命へ 静電気から電池へのみちのり ▼ コハクを乾いた布でこすると細かいワラくずを引きつける様子が,磁石が鉄を引きつけるのに 似ているという記録が古代ギリシャにある。このように,磁石や静電気は古くから観察されてき た。16 世紀にギルバートは,電気と磁気の力は引きつけるところが似ていても別のものだと示した。 17 世紀の中ごろには静電気を作る装置が,18 世紀の中ごろにはためるためのライデン瓶が作られ, 静電気の実験はヨーロッパのサロンや大道芸で人気になる。そのころ,正体のわからなかった雷が たこ ライデン瓶の放電とよく似ていると考えたフランクリンが,大変危険ながら凧を揚げて雷の電気を ライデン瓶にためることに成功,雷が静電気であることを示した。 18 世紀の末には,カエルの解剖の過程で筋肉に 2 種の金属が触れると電気が起きることが見い だされ,それをヒントに 1800 年,ボルタが食塩水を含ませた紙を二種の金属で挟んでいくつも重 ねた電池を作った。ボルタの電池は大きく使いにくかったが,19 世紀の末になって今の乾電池の − 80 − 高校講座・学習メモ 物理基礎 「電気」と「磁気」ものがたり 元となる電池が考えられる。さらに持ち運びやすい実用的な乾電池を日本人の屋井先蔵が発明した。 電気と磁気の関係の探求 19 世紀の初め,導線を電流が流れるとその向きに応じて周囲に磁界ができ,2 本の平行な導線に 電流が流れると向きによって,互いに引き合ったり退け合ったりすることをアンペールが発見した。 また,電流の大きさと電流が流れる金属の長さ(後の電気抵抗)の積が一定(後の電圧)であるこ とをオームが発見した。そして,電流が作る磁界どうしが影響するなら,磁石が作る磁界と電流の 流れる導線も互いに影響するはずだとファラデーは考え,実験で証明した。 これがモーターにつながっていく。さらに,磁界の変化によって電流が生じることも発見し,こ れは発電機につながっていった。このように電気と磁気のかかわりが解明され,その利用が進んで いく。 電磁波による情報革命 電池が発明され,電気と磁気のかかわりが解明されてくると,それらを利用して電信機がつくら れ,1837 年にイギリスで,7 年後にはアメリカで実用化された。日本には開国を促しに来たペリー 提督が江戸幕府にモールス電信機を贈っている。また,電気で音を伝える試みが 1860 年代から始 ▼ まり,1876 年に電話機が実用化され,翌年には日本に伝わった。 これらはいずれも専用の導線で電気情報を伝える有線通信だった。19 世紀後半にマクスウェル により電磁波の存在が予言され,ヘルツによってその存在が実験的に証明されると,時代は無線通 信に変わっていく。同じ 19 世紀後半には,照明器具である白熱電灯が 1879 年にエジソンにより実 用化され,発電所も造られ,電気を伝える電力網も発達した。エジソンの白熱電球はフィラメント に京都八幡の竹が使われていた。このように実用化が進むなかで,電流の正体の解明は少し遅れ, 1897 年にトムソンが電子を発見した。 − 81 − 高校講座・学習メモ