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変化する速度について考える
物理基礎 テレビ学習メモ 講師:田原輝夫 第 1 編 物体の運動とエネルギー 第4回 変化する速度について考える ~加速度~ 今回学ぶこと 前回学んだ速度の意味を再確認し,身近にあるほとんどの運動が「速度が変わ る運動」であることを学び,瞬間の速度の変化のしかたを表す加速度について学 習します。また,速度が変わる運動の v-t グラフの描き方について学習し,v-t グラフから速度や加速度,移動距離など物体の運動に関するさまざまな情報が得 られることを学びます。 学習のポイント 速度が変わる運動を調べる 次々変わる瞬間の速度 加速度の表し方 ▪学習前チェック項目▪ 速さ 運動の向き 速度 m/s 位置 位置の変化 移動距離 時間 v-tグラフ ▼ 速度が変わる運動を調べる 前回学んだ速度の意味(速さと向きを合わせたものを速度という)を再確認することで,身近に あるほとんどの運動が「速度が変わる運動」であることがわかる。すなわち,速さが変わる運動だ けではなく,向きが変わる運動も,「速度が変わる運動」といえる。 一定時間ごとの物体の位置を記録し,位置の変化を計算し,それを一定時間で割って速度を求め ることができる。このような作業を通じて,物体の速度の変化のようすを知ることができる。さら に,速度と時刻との関係をグラフで表現することにより,速度の移り変わりを一目で読み取ること ができるようになる。速度と時刻の関係を表したグラフのこ とを v-t グラフ(右図)という。 −7− 高校講座・学習メモ 物理基礎 変化する速度について考える 次々変わる瞬間の速度 時間間隔を十分に短く取って求めた速度を瞬間の速度とい う。瞬間の速度の v-t グラフは右図のような滑らかな曲線と なる。このグラフからは,時々刻々と速度が変化し続けてい るようすが読み取れる。とくにスタート直後は急激に速度が 増し,その後は緩やかに速度が大きくなり,2.5 秒を過ぎた あたりから速度が減少していることがわかる。 速度が変化する運動のことを加速度運動という。加速度という言葉からは,速度が大きくなる運 動を連想しがちだが,速度が小さくなる運動や向きが変わる運動も加速度運動である。 加速度の表し方 速度の変化の緩急の違いを加速度という物理量で表す。 加速度は,「単位時間(1 秒)あたりの速度変化」を表す物理量と定められている。言いかえれ ば, 加速度とは,1 秒あたりに何 m/s ずつ速度が変化したか(するか)ということを表すものである。 したがって,単位は〔(m/s)/s〕となるが,〔m/s2〕のように表記する。これを「メートル毎秒毎 秒」と読む。 ▼ はじめの速度(初速度)が 2m/s で 5 秒後の速度が 6 m/s ならば, 5 秒間の速度の変化は 6 - 2 = 4 m/s だから,平均の加速度は 4 ÷ 5 = 0.8 m/s2(メートル毎 秒毎秒)である。 また,初速度が 7 m/s で 4 秒後の速度が 5 m/s ならば, 4 秒間の速度の変化は,5 - 7 =- 2 m/s だから,平均の加速度は- 2 ÷ 4 =- 0.5 m/s2 である。 このように,速度が増える場合の加速度は正,速度が減る場合が加速度は負の値をとる。 初速度を v0〔m/s〕,t 秒後の速度を v〔m/s〕とすると,平均の加速度 a〔m/s2〕は,次の式で 求めることができる。 a= v − v0 t column 加速度と慣性力 乗り物に乗っているときに加速度を体感することがある。例えば,電車が動き出すとき には後ろ向きに,電車がとまるときには前向きに力を受けたように感じる。これを慣性力 という。慣性力の大きさは物体の質量と加速度の積に比例し, 向きは加速度と逆向きである。 乗り物の加速度が急激に変化すると,人体に作用する慣性力が複雑に変化し,自律神経 のはたらきに異常を引き起こす。そのために乗り物酔いの症状が出るものと考えられてい る。乗り物酔いを医学用語で「加速度病」という。 (これは,英語の“motion sickness” という言葉の訳語だが,これを「運動病」と訳さずに「加速度病」としたところが何とも 素晴らしい。) 番組で紹介された加速度計は泡の動きによって加速度の大きさや向きがわかるように なっている。この加速度計も慣性力を利用している。チューブに閉じ込められた水が慣性 力によって加速度と逆向きに移動する。すると,チューブ内の空気の泡は,水の動きとは 反対に,加速度と同じ向きに移動することになる。 −8− 高校講座・学習メモ