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中東で持続可能な観光開発を!

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中東で持続可能な観光開発を!
途 上 国と関 西 にとって、なくて は ならな い 存 在 に な ることを め ざ す
公益財団法人
太平洋人材交流
センター
PACIFIC RESOURCE
EXCHANGE CENTER
CO NT E NT S
PREX NOW
1
2
3
4
5
6
ニュース&レポート
中東で持続可能な観光開発を!
ニュース&レポート
日本の省エネ推進を支えた制度、
技術、
背景を学ぶ
ニュース&レポート
アフリカの経営者が日本のモノづくり企業に学ぶ
専門家の声
日本で中小企業振興を学ぶ意義は
協力企業特集
㈱雨風/㈱テイエルブイ/リマテック㈱
世界の現状レポート/PREXだより
March
2012
212
ニュース&レポート ❶
中東で持続可能な観光開発を!
受入研修 観光振興
中東地域 持続可能な観光開発研修
2011年10月29日から11月18日、イラク、エジプト、パレスチ
ナ、
ヨルダン、
レバノンの観光振興に関わる行政官6名が、地域特性
に基づく観光振興策を地域住民主体で持続的に実施している日本
の事例を学びました。本研修は、3カ年コースの初年度の実施です。
高島のコースを体験中、琵琶湖をバックにした一枚。
水が貴重な中東の人々は、広大な湖の風景に皆はしゃいでいました。
た後、
実際にコースを歩いて確認するプロ
を募り、
まとめ、巻き込んでいく過程は、根
グラムを体験しました。高島市商工会の活
気と時間が必要な作業です。彼らは帰国
今回この研修は、
新たに京都嵯峨芸術
動には真板先生も関わっており、
講義で学
後、
様々な困難に直面することも予想され
大学の真板昭夫教授をコースリーダーと
んだ地域の宝を探し、
それを磨き、PRして
ます。そんな時、是非日本のことを思い出
して迎えスタートしました。持続可能なエ
ゆくという考えが、
現場でどのように活かさ
してほしいと、研修担当者として願ってい
コツーリズムをテーマにした先生のご指導
れているかを実感する絶好の場でした。
ます。PREXとしても、
コースリーダーの真
では、
とにかく笑顔が絶えませんでした。
研修員はそれぞれ、
日本側が伝えた
板先生と共に、出来る限りのアフターフォ
笑顔を伝える先生
豊かな経験と知見に基づくお話にはユー
かったメッセージを受け止め、噛み砕き、
ローを実施したいと思っています。人と人
モアも織り交ぜられており、研修員の心を
そして自分の考えを加えて帰国しました。
とのつながりが広がり、
中東での観光振興
掴んだようで、
「地域に眠っている宝(観
ただ、高島市のように、地域住民から意見
に発展していくことを願ってやみません。
光資源)
を見つけたいと思うようになった」
(国際交流部 折井)
「もっと先生の体験を共有したかった」な
どの感想が述べられていました。
高島市商工会の取り組みを見学
“伝統と歴史の町 堺”
で地域住民主体の観光を実感
11月3日の文化の日、
「堺市の観光戦略再構築」の講義を受けた後、
ボランティアガイドの
研修の終盤では、
滋賀県高島市に訪問
ご案内で、鉄砲鍛冶屋敷をはじめとする古い町並みが残る旧市街地のまち歩きに出かけ、堺
しました。
ここでは、商工会女性部の方々
の伝統産業線香・打刃物の老舗などモデルコースの見どころを巡りました。江戸、明治からの
が中心となり、地域の資源である季節毎
伝統を引き継ぎ暖簾を守っている老舗の店主から直接お話を伺うことができ、地域の宝・誇りを
の魚料理・自然や、
エリア別の観光コース
を紹介する美しいパンフレットを、住民が
実感できました。
コースの最後は、鳳翔館でお茶と和菓子をいただきながら、
お店の方、
お世話
になったボランティアガイド、学生ボランティアの方々とも交流し、観光客に接する皆さんの活き
活きした姿から地域住民主体の観光が根付いていることをあらためて感じることができました。
意見を出し合い、
まとめていった話を聞い
No.212 March 2012 PREX NOW 1
ニュース & レポート ❷
日本の省エネ推進を支えた制度、
技術、
背景を学ぶ
受入研修
環境
「省エネに関する企業と行政の取り組み
2011年11月10日から12月2日、カザフスタン、スリランカ、中国の行政
官である研修員たちは、省エネルギー法、エネルギー管理者制度、
トップラン
ナー制度などの法や仕組み・制度、そして産業界の最先端の省エネ・環境技
術、企業や自治体の教育・啓発プログラムを学びました。制度や技術はもちろ
ん大切ですが、日本を省エネ大国に導いたのは、それ以外にも大きな要因が
あったことを、研修員たちは研修が進むにつれて気づいてきたようです。
関西経済連合会でおこなわれた関西の省エネ企業との交流会で
熱心に質問を浴びせるカザフスタンの研修員
プログラムとしました。研修員からは、
「省
先進事例を効果的に学ぶための
プログラム
研修員たちが体感した日本の
エネ実践事例はもちろん、
行政の役割、
省
省エネ推進力
エネと設備投資の関係、環境教育のあり
日本では世界に先駆けて多方面の省
方、
見える化の大切さ、
など実践できること
研修員から多かった質問に、省エネ対
エネ・環境対策に取り組み、
さまざまな施
を幅広く学べた」
との声がありました。
策にはどのくらいの補助金がでるのか?
制度に従わなかったときの罰則はどのよう
策や経験が蓄積されています。一方、途
上国では技術、
コスト面の問題から対策
が遅れているものの、
その関心は次第に
関西の省エネ企業と研修員の
なものか?というものがあります。
ところが、
交流会を実施
補助金の額は決して多くはない、
また罰則
高まってきています。今回はカザフスタン、
関西経済連合会、近畿経済産業局の
を受けた事業者はほとんどいないことを知
スリランカ、
中国から5名の研修員を迎えま
協力を得て、
研修プログラムの中に関西の
り、首を傾げはじめます。そして、多くの訪
したが、エネルギー事情も人々の環境意
省エネ企業6社と研修員の相互プレゼン
問先で話を聞くにつれて、環境問題に取
識も異なる国々、
また研修員の立場も政
テーションと情報交換を行う場を設けまし
り組まないと生き残れないと企業は考えて
策立案者であったり、
エネルギー関係の技
た。参加した企業からは、大気汚染対策、
いること、市民も自分たちが環境にとって
術者であったり様々です。
どのような研修
排水処理、断熱塗料などの先端技術が
今できることは何かを考えて自然に行動し
内容にすれば母国での省エネ推進に役
次々と紹介されました。研修員たちは母国
ていることを理解してきたのです。研修員
立つ情報や知識を持って帰ってもらえる
に導入できそうな技術をもった企業の担
からも
「省エネ実践は強制するものではな
か、
試行錯誤しながら研修プランを組み立
当者と予定時間を大きくオーバーするまで
く、
取り組む人々の意識改革を優先させる
てていきました。第一に省エネ推進の制度
熱心に話しこんでいました。研修の場を一
ことが重要であることがわかった」
との意
そのもの、次に推進を支える多方面の具
歩進んだビジネスマッチングまで進めてい
見もあったように、
制度や技術の学習に加
体的な省エネ・環境技術、最後に推進の
く新しい取り組みとして有意義であったと
え、
日本の省エネ推進を支えてきた強みも
基盤となる企業や国民の教育、啓発活動
思います。研修員からも大変好評で、
「今
理解してもらえたものと思います。
という三本柱で構成し、研修員たちが分
後も企業との交流の機会をもっと増やして
野に応じて、効果的に深くも広くも学べる
ほしい」
という要望が多くあがりました。
おおさかATCグリーンエコ
プラザで最新の省エネ技
術の説明に耳を傾ける研
修員たち
(国際交流部 浜口)
研修概要
研 修 名
実施期間
省エネに関する企業と行政の取り組み
2011.11.10
(木)
∼12.2
(金)
研修参加者
カザフスタン3名、
スリランカ1名、中国1名
委託元機関
独立行政法人 国際協力機構
(JICA)大阪国際センター
お世話になった方々、企業・団体(敬称略、訪問順)
:京都女子大学 蒲
生孝治教授、
パナソニックエクセルインターナショナル、
パナソニックセ
ンター東京、資源エネルギー庁、省エネルギーセンター、パナソニック
電工東京本社、富士通、近畿経済産業局、
サントリーホールディング
ス、
おおさかATCグリーンエコプラザ、
ダイキン工業、山武、IDEC、
オム
ロン、山岡製作所、京エコロジーセンター、TLV、
関西経済連合会
2 PREX NOW No.212 March 2012
ニュース & レポート ❸
アフリカの経営者が日本のモノづくり企業に学ぶ
受入研修 中小企業振興
アフリカ地域 中小零細企業の経営改善に向けた生産性向上
PREXは、2009年から、アフリカ地域を対象に、企業の生産性向上の取
り組みを学ぶ研修を実施してきました。ねらいは、パイロット企業の育成
を通じた生産性向上策の実施・普及です。アフリカ諸国には、経済安定と
貧困削減に必要な雇用・所得の創出や地域経済の活性化が必要であり、
民間セクターの大多数を占める中小零細企業が経営を強化し、経済活動
を活性化させるため、企業経営者と公的支援機関職員の能力向上が求
められています。今年度は3年計画の最終年にあたり、パイロット企業幹
部が来日し、今後必要とされる自社の生産性向上に向けた具体的手法を
理解し、今後の生産性向上の成果達成につなげる知見を習得しました。
以下にガーナにおける3年研修の取り組み、成果をご紹介します。
榛木金属工業での工場見学後のディスカッションの様子
1年目:支援策理解と
2年目:パイロット企業へのセミナー
3年目:パイロット企業における
パイロット企業選定
実施及び具体的な改善指導
生産性向上策の試行と成果の達成
3年目の研修に
参加したパイロット
企業幹部
加工食品・スパイス
有限会社 社長
エロフラ果実加工工業
社長
通産省中小零細技術局及び国家小規模産業局から
参加
果物加工製造組合、
グラティス財団、食糧省女性農業
振興部から参加
(中央はコースリーダーの杉村氏)
1年目は、企業支援に従事する公的機
2年目は、パイロット企業を直接的に支
関職員が、
日本の中小零細企業支援と企
援している民間産業組合や公的機関職
業経営を学びました。
またパイロット企業
員が、中小零細企業支援手法の理解と
候補の選定基準を作成、帰国後、生産性
実践、及び日本企業における経営改善活
向上策を試行する現地パイロット企業5社
動を学びました。
またパイロット企業の実
を選定しました。
際の状況に基づいた生産性向上策を検
3年目は、
パイロット企業5社の経営幹部
研修で作成したガーナパイロット企業選定基準(一部)
討し、帰国後はセミナー及び経営改善指
が、
日本企業における実際の生産性向上
アレックス・オワレ
有限会社 社長
アパサレ・パーム油
加工協会
アシスタントマネジャー
ブライトネス協会
アシスタントマネジャー
業種 食品加工
導を行いました。指導結果については、
レ
活動の状況や実践手法を体得しました。
従業員数
6∼30名
ポート及びテレビ会議システムを用い報告
また各社の生産性向上計画を作成、
帰国
社歴 5年以上
生産体制
●
がなされました。納期厳守や労働環境改
後は、
他企業への状況共有とともに、
生産
善、
そしてコスト削減の状況が確認できま
性向上策の試行と成果達成に向け、
活動
その他 100%ガーナ人によって所有、運営
した。
(国際交流部 西阪)
を継続しています。 ●
一部自動化
原材料を地域で確保
研修概要
初の試み!工場演習(榛木金属工業のご協力を得て)
研 修 名
本研修の初年度から本年に渡り、
「全員参加による3S活動」
をテーマに研
実施期間
修でご協力いただいている榛木金属工業のご協力を得て、一日がかりの3S
研修参加者
活動を体得するカリキュラムを実施しました。同社の3S活動の取組み講義、
委託元機関
アフリカ地域 中小零細企業の経営改善に向けた生産
性向上
2011.11.14
(月)
∼12.2
(金)
パイロット企業幹部またはパイロット企業を指導する支援機
関職員9名
(エチオピア、
ガーナ、
ケニア、
レソト、
ジンバブエ)
独立行政法人 国際協力機構
(JICA)大阪国際センター
そして工場調査を行った上で、同社社長、常務の2グループに分かれ、①自社
に適用したい取組み、②同社への改善提案、
をテーマにディスカッションを実
施しました。
このプログラムで研修員は、
日本企業の生産性向上活動を自ら実
践、体得し、
自らの力で、
自社に適用すべき生産性向上策を見つけ出しました。
お世話になった方々、企業・団体
(敬称略、訪問順)
:サミット・ラボ 杉村
取締役社長、喜八洲総本舗、雨風、田中食品興業所、清浄野菜普及
研究所、
カワノ、榛木金属工業、
日本生産性本部、東京都立皮革技術
センター、福島化学工業、
サントリー酒類 大阪工場
No.212 March 2012 PREX NOW 3
専門家の声
日本で中小企業振興を学ぶ意義は
受入研修 中小企業振興
中小企業振興のための金融・技術支援研修
中小企業振興をテーマとする研修は途上国からのニーズが高く、PREXでは今年
度計4件の研修を実施しました。
うち2件の「中小企業振興のための金融・技術支援
研修」には、アフガニスタン、アルバニア、エチオピア、エルサルバドル、
グルジア、ケ
ニア、スリランカ、タイ、中国、チュニジア、パキスタン、パプアニューギニア、バング
ラデシュ、マケドニア、マレーシア、
メキシコ、モンゴル、ラオスの18カ国から24名
の行政官が参加しました。途上国にとって日本の中小企業振興の事例を学ぶ意義
について、
「中小企業振興のための金融・技術支援研修」にアドバイザーとしてご協
力いただいたJICAの国際協力専門員 上田隆文氏から寄稿いただきました。
東大阪商工会議所で商工会議所の役割について学んだ研修員。
言えるでしょう。
また、
ジェンダー平等促進
国際協力機構(JICA)
国際協力専門員
上田 隆文 氏
に関する関心はむしろ途上国のほうが高
い状況です。
日本での研修の
「百聞は一見に如かず」
より実り多い研修を目指して
今年度JICA大阪国際センターの「中
小企業振興のための金融・技術支援」に
二度ばかり関わらせていただき、PREXの
方々が上記のような違いを真摯に受け止
このように日本との状況が違うため、高
め、創意工夫をされていることを知って感
い交通費を払って極東の日本に連れて来
銘を受けました。
日本での様々な政策・施
多くの途上国では成長のエンジンとし
て研修する意義があるのかと問う向きも
策をそのまま学ぶだけではなく、
それらの
て民間セクターの役割が重視されてお
あろうかと思います。
しかし、他国の状況
基となっている考え方や背景を学ぶことに
り、中でも中小零細企業は雇用の源とし
は英語(或いはフランス語やスペイン語)
より、
自国で課題に取り組む際の参考にし
ての役割を果たすことが期待されていま
で情報が伝わりますが、
日本は「不言実
てもらうこと。
日本での事例をきっかけにし
す。
そのため中小零細企業振興が大きな
行」の良き伝統と言語の壁によって対外
つつも、他の国から同じコースに参加して
政策課題として取り上げられることが多く
的な情報発信がなかなかされない状況
いる研修員達同士が互いの国でのやり方
なっています。
ここで単に「中小企業」
と
が続いています。
このような中で「百聞は
を参考にする機会を与えること。
これらの
言わず、
「中小零細企業」
としたのは、現
一見に如かず」の諺の通り、実際に日本
工夫を重ねながら、少しでも実り多い研修
地で言う
「中小企業」は日本人から見ると
に来ていただき、
いろいろなものを見聞き
を実施しようと努力されています。
「零細小企業」であることが多いからで
し、時には香りをかぎ、肌で感じてもらうこ
但し、
研修員がせっかく研修で学んだこ
す。
また、政府の財政上の制約や政策・施
とで日本のやり方を知ってもらうことが必
とを帰国後の仕事に生かそうとしても、上
策の策定・実施能力の不足、汚職防止制
要で、
それには日本での研修が効果的で
司や財政当局の理解を得られなければ
度拡充の必要性等、
日本の状況とは様々
す。研修内容自体が参考になるかどうか
実行には移せない状況も頻繁に起こりま
な違いがあります。特に国によっては農
ということに加え、西洋とは別のやり方が
す。
そのため研修事業と他の技術協力ス
業以外の雇用の9割を占めるとも言われ
あるということを知ってもらう意義もありま
キームとの効果的な組み合わせが必要と
る
「インフォーマルセクター」
と呼ばれる行
す。
また、
日本人に日々接することで日本と
なりますが、
これはJICAの他の部局や事
政の網から漏れている零細小企業或い
の絆を作っていただくという副産物もあり
務所の責任で、我々の今後の努力次第と
は自営業の人達の多さも途上国の現実と
ます。
肝に銘じている次第です。
中小零細企業は雇用の源
優れた企業経営を行っている企業を訪問。
4 PREX NOW No.212 March 2012
上田専門員の指導を受け、帰国
後のアクションプランを作成し、
発表する各国の研修員。
2010年度総訪問先数
PREXの事業に賛同いただいている
PREXでは、年間30件前後の研修を実施し、
協 力 企 業 特 集
手造り糀にこだわって
320余年
㈱雨風
本社=大阪府堺市西区
H P=http://www.amekaze-sakai.com/
多くの訪問先にご協力いただいています。
その中から特色ある企業などをご紹介します。
322 件
うち新規 62件
同社は酒、
味噌、
醤油、
食酢、
甘酒、
漬物などの原料となる日本古来の常在真菌の一
種「こうしかび」
を自社で育て、
主に米糀を生産している。
こだわりで伝統食品の味を守
りつつ、近畿経済産業局や堺市の指導を受け新規事業に取り組み成功している企業
です。店舗内で開催している糀を使った料理教室で顧客に教えたり、
ケーブルテレビの
取材に対応するなど忙しい中、
アフリカの
研修員へ豊田社長から発酵食品を大切に
している日本食文化や、小規模会社が事
「アフリカ地域中小零細企業の経営改
善に向けた生産性向上研修」で訪問
業革新と柚子味噌、甘酒、
白味噌キムチな
どのオリジナル商品を開発して、地域に貢
献する優れた企業であり続ける事業意欲
を話していただき、研修員が自国で産業振
興に寄与することを一層鼓舞するものとな
りました。
蒸気関連製品の
スペシャリスト企業
㈱テイエルブイ
本社=兵庫県加古川市
H P=http://www.tlv.com/
店舗の前でアフリカ研修員と案内していただいた豊
田社長
(中央)
同社は、
スチームのスペシャリスト企業として、
スチームトラップをはじめとした蒸気関
連製品を開発、生産、広く産業界に提供し、高い評価をうけてこられました。
そして、
そ
の独創的な製品開発やコンサルティングにより、省エネ、CO2排出量削減に貢献されて
います。
カザフスタン、
スリランカ、
中国からの研修員たちは、工場見学、蒸気とスチーム
トラップのメカニズムについての講義、実験
室でのデモンストレーションを通じて、蒸気
の効率的な利用の重要性を十分に理解し
「省エネに関する企業と行政の取
り組み」で訪問
ました。講師の皆さんが、
アメリカ、
フランス、
シンガポールの方々ということもあって、
にぎ
やかで有意義な国際交流の場にもなりまし
た。
同社からは、
海外の研修員には、
いつで
も学習の場を提供したいとのお言葉をいた
だきました。
リサイクル技術で
循環型社会に貢献
リマテック㈱
本社=大阪府岸和田市
H P=http://www.rematec.co.jp/
早船常任理事、講師の皆さんに広い事業所内をご
案内いただきました。
母体の水産会社が海洋汚染の公害の被害を受けたことから、
自ら廃油・廃液を処
理・リサイクルしようと当社を設立。今ではリーディングカンパニーとして、亜臨界水反応
を用いた資源循環事業などで資源循環の先端を走っています。
また、
近畿経済産業局
の研究会での活躍や、海外進出への取り組みなど「環境分野における社会的課題に
対応するイノベーションの創出」をミッション
としており、東日本大震災後も、海水を被っ
た災害廃棄物の除塩技術をいちはやく開
「関経連アセアン経営研修」で訪問
発し、復興に欠かせない技術となっていま
す。
「今すぐ対策をとらないと、公害発生後
では必要以上の費用も手間もかかります。
ぜひとも日本の失敗を学んで下さい」
との社
長の強いメッセージは、参加したアセアンの
企業経営幹部にしっかりと届いたでしょう。
自社設計及び施工による亜臨界水プラント
(リマ
テック 堺SC工場)
No.212 March 2012 PREX NOW 5
上海のボイラー事情
上海市省エネルギーセンター
侯 震寰 さん (2011年11月「大阪府・上海市草の根技術協力事業」訪日研修に参加)
中国の省エネ業界では「企業の衛生への取り組みを知りたいならば、
トイレを見ればいい。企業の管理レベルを知りた
いならば、
ボイラー室を見ればいい」、
そして「中国の省エネなら上海を見習い、
世界の省エネなら日本を見習う」
という共
通認識があります。実際に、
日本のボイラー企業を訪問し、企業のボイラー室が日本の街並みと同じく清潔な様子を目の
世 界 の 現 状 レ ポ ー ト
当たりにしました。私はその度に心から感嘆し、
ボイラーが企業の大切なエネルギー利用設備であるとともに、
安全、
環境
保護、
省エネ対策の重要なポイントであることを理解しました。
ボイラーは、
中国の「十大重点省エネ」事業のトップです。
中国のエネルギー構造は石炭が中心で、
今や世界最大の石炭消費国です。2009年の中国のエネルギー総消費量
は約30.66億トン標準石炭。石炭がエネルギー総消費量に占める割合は70.4%で、
石油と天然ガスの消費比率はそれ
ぞれ17.9%、
3.9%です。
中国の工業ボイラーは石炭が主で、
中国で現在使われている工業ボイラー数は約53.4万台。石炭工業ボイラーの
石炭年間消費量は約5億トンで火力発電所に次ぐ2番目の石炭消費先です。石炭工業ボイラーは往々にして都市部の
住宅地の近くにあり、
さらには地上から低位置にある排出源であるため、
汚染がより著しい状況です。
上海は大規模な工業都市であり、市中心にはかつて多くの工場が分布し、市全体に石炭工業ボイラーが1万台以
上ありました。
その後、
上海の産業構造の調整と工場の移転に伴い、
今では約3,400台ですが、
外環状線内にまだ一定
数の石炭工業ボイラーがあり、市街区と郊外の大気の質に大きな影
響を与えています。
また、
石炭工業ボイラーはエネルギー効率が低く、
CO2排出量も大きいですが、上海は「第十二次五カ年計画」期間中
に単位GDP当たりで18%の省エネ、CO2排出量の19%削減という指
標を達成しなくてはならず、
非常に大きな課題となっています。石炭工
業ボイラーは省エネや排出削減の重点対象であり、
なかでもボイラー
の石炭使用量の大幅な削減が必要です。上海市政府は、今年から
石炭工業ボイラーのクリーンエネルギーへの代替プロジェクトをスター
トさせこれらの課題に取り組んでいます。
研修でサントリー高砂工場のボイラー室を熱心に見学し
「ホテルのよう」
と感想を述べた研修員。
★「世界の現状レポート」
はPREXホームページでも紹介しています。PREXに集まる様々な国・地域の情報をご覧いただけます。
PREXだより
ワンワールドフェスティバルで
「ビジネスを通じた世界への貢献」
セミナーを実施
PREXは、2012年2月4日
(土)15時から、
ワン
ワールドフェスティバル(於:大阪国際交流セン
ター)
で、
「ビジネスを通じた世界への貢献」セミ
ナーを実施しました。セミナーでは、PREXの人材
育成事業を紹介し、PREXの研修で長年にわた
り訪問させていただいている中央電機製作所畑
野吉雄代表取締役に「グローバル人材像」につ
いてお話しいただきました。
PREXの
研修実績
(1990∼)
当日は、50名の定員を超える国際協力に関心の
高い学生や先生、企業の方々にご参加いただき
ました。参加者からは、
「グローバルに展開する企
業の社長の話を直接聞くことができ、刺激になっ
た」
「社長の講演は、大変人間味があふれ他で
は聞くことができないものだった」等ご意見をいた
だきました。
ワンワールドフェスティバルは、年1回関西で開催さ
れる国際協力のお祭りです。今年も関西の主要な
NGO、NPO、国際機関、ODA実施機関、教育機
関、企業など国際協力に取り組む約150の団体が
一堂に会し、国際協力の最新情報を発信しました。
PREXは、1990年4月設立以降、途上国
の人材育成事業とその活動を通しての国
際的人材交流促進に努めています。
●
研修累計 515コース ● 研修員累計 131カ国・地域 14,226名
●
受入研修 4,563名 ● 海外研修 9,663名 (2012年1月末現在)
PREX NOW 第212号〈2012年3月発行〉
編集・発行:公益財団法人 太平洋人材交流センター 専務理事 藤田賢次
〒543-0001 大阪市天王寺区上本町8-2-6 大阪国際交流センター2階 Tel 06-6779-2850 Fax 06-6779-2840
ホームページ:http://www.prex-hrd.or.jp 電子メールアドレス:[email protected]
6 PREX NOW No.212 March 2012
セミナーで学生から
「グ
ローバル人材とは」
と
質問を受け、
「人間力」
とお 話しいただいた
中央電機計器製作所
畑野代表取締役。
当財団の機関紙「PREXNOW」は、
2012年度から隔月発行とし、より
充実した内容でお届けします。
次回の発行は5月初旬の予定です。
Fly UP