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2014年11月発行<アフリカ研修

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2014年11月発行<アフリカ研修
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ニュース & レポート❶ アフリカ研修―21 年間で 40 カ国 451 名が参加
ニュース & レポート❷ 自給自足の農業から商業的農業への移行を目指して
ニュース & レポート❸ 関係者の声 今後のアフリカ向け研修事業に関する考察
ニュース & レポート❹ 帰国研修員の活躍
企 業 訪 問 小林桂㈱、㈱坂ノ途中、㈱トロムソ、㈱ヒロコーヒー
PREX だより
ニュース & レポート ❶
アフリカ研修―21年間で40カ国451名が参加
今号は「アフリカ」特集です。昨年 6 月、第 5 回アフリカ開発会議(TICAD V)が横
アフリカ
浜で開催され、日本の官民が一体となりアフリカでの持続可能な経済成長を支援する政策
が示されました。また、今年1月には安倍首相が日本から民間企業の代表らを同行しアフ
リカを訪問。日本とアフリカのビジネス関係の強化のためのトップセールスも推進されています。PREX は 20 年以
上前からアフリカからの研修員受け入れに携わっていますが、近年は日本とアフリカの関係の変化を反映し、より
幅広い分野の研修を実施しています。
上の活動を地域の企業に指導・推進する組織の職員とモデ
中小企業振興政策から農業の産業化まで
幅広い分野の研修を実施
ル的に実践する企業の幹部とが研修に参加し、国内・地域
PREX がアフリカからの研修員を初めて受け入れたのは
これらの分野は、PREX が従来からアジアや中南米を対
今から 21 年前の1993 年度です。当初はアフリカ以外の国
象として研修実施していますが、アフリカ諸国対象とするに
企業への生産性向上活動の普及を目指しました。
も対象国となる「集合型」の研修への参加が中心でしたが、
あたり、アフリカの産業構造や政策課題、企業の現状を踏
ケニアや南アフリカ、仏語圏アフリカなど特定の国や地域を
まえた研修とすること、また日本での経験や具体的な取り組
対象とした研修も次第に始まりました。
み事例をアフリカの国々に活かせるよう、参加者自らが自国
現在、年間 30 ~ 50 人ほどがアフリカ諸国から研修
での課題に対応した活動計画の作成と実践を目指しました。
に参加していますが、研修分野は幅広く、中小企業振興
政策、貿易投資促進、太陽光発電、産業人材育成、生
産性向上などを中心に、今年度からは次頁以降でご紹介
アフリカと関西のパートナー関係構築に向けて
するように、農業の産業化に関する研修も開始しました。
ここ数年、日本の民間企業の中にはアフリカ諸国をビ
PREX がこれまでにアフリカ諸国対象に実施した研修
ジネスパートナーと位置づけ、CSR だけではなく実業で
としては、2001 年度から 5 年間実施した「仏語圏ア
アフリカでのビジネスに乗り出す企業も出てきています。
フリカ中小企業政策セミナー」があります。西アフリ
また、安倍首相が訪問時にトップセールスも行われたよ
カを中心としたフランス語圏アフリカ諸国(セネガル、
うに、外交においてもビジネスにおいても、日本はアフ
トーゴ、コートジボアール、ブルキナファソほか)から、
リカをパートナーと位置づけるようになりました。
5 年間で 50 名以上が参加しました。PREX で長年実施
これまでの「遠い国・地域」というイメージは次第に
してきた「中小企業振興政策」セミナーの経験を活か
変化し、アフリカがアジアのような身近な存在となる日
すとともに、アフリカの現状に合わせた振興政策の立
もそう先ではないでしょう。
案能力向上を目的とし、各国での取り組みを参加者間
そのような変化を受けて、PREX も研修事業、交流事
で継承しながら政策に反映させるという内容でした。
業を通じた、アフリカの人々、国々と関西とのパートナー
また、2009 年度から 3 年間実施した「アフリカ地域もの
関係を築くことに取り組んでいきたいと思います。
づくり中小零細企業の生産性向上セミナー」は、生産性向
(国際交流部 瀬戸口)
No.228 November 2014 PREX NOW
1
ニュース & レポート ❷
自給自足の農業から商業的農業への移行を目指して
受入研修
農業開発
JICA タンザニア地方農業開発研修
タンザニアでは、食料安全保障の確保、農家の収入向上に向けて、農業の商業化を推進していくことを目指し
ており、より戦略的・包括的な農業開発政策の策定と具体的な取り組みを模索しています。PREX は、今年度
から5年間にわたり JICA タンザニア国別研修「地方農業開発」を実施します。6 月には、農業開発の政策立
案に携わる高官等 8 名が来日し、関西の農業事業者を訪問し、様々な関係者がどのように連携し地方農業が推
進されているのかその取り組み事例を視察しました。
対アフリカ農業開発支援とタンザニアの課題
2013 年 6 月、第 5 回アフリカ開発会議(TICAD V)
が開催されました。日本政府は、今後 5 年間で政府
開発援助(ODA)を約 1 兆 4000 億円、民間資金を
合わせると最大で 3 兆 2000 億円を投じてアフリカ
支援に取り組む考えを表明しました。特に、アフリカ
経済の要とされる農業分野に関しても、「儲かる農業」
を目指して重点的に取り組んでいく方針です。
中央アフリカ東部に位置するタンザニアは、国民の
多くが地方で農業に従事しています。アフリカ大陸最
高峰のキリマンジャロの麓で栽培されているコーヒー
は世界中で好まれて飲まれていますが、コーヒー以外
兵庫県三木市吉川町の女性食品加工グループ『彩雲』の方より、で
きたての大福をいただく研修員
にも、トウモロコシ、コメ、キャッサバ、茶、カシュー
ナッツなどさまざまな農作物を栽培しています。土地
の一連の全てを担う六次産業化や、農業事業者と商工
も広大で農業のポテンシャルが高い国なのです。しか
業間での連携を強化し、新商品開発や地域活性化に貢
し、タンザニア農業において、小規模な農地、未整備
献する農商工連携の取り組みが各地で行われていま
なインフラ、農産物加工技術の不足などによる「フー
す。
ドバリューチェーンの構築の欠如」が課題とされてい
関西滞在中は、近畿農政局と京都府農林水産部を訪
ます。
問し地方農業振興政策について、講義や意見交換を通
して理解を深めた後、農業の産業化に向け、六次産業
農業の産業化に向けた関西の取り組みを視察
化や農商工連携に取り組む先進的な事例を視察しまし
た。農業事業者の方よりこれまでの苦労話、政府の補
近年日本では、農業事業者が生産(第一次産業)、
助金や融資の活用、雇用の拡大、地域活性化への貢献
製造・加工(第二次産業)、流通・販売(第三次産業)
などの具体例をお話しいただきました。また食品加工
現場や直売所も見学させていただき、日本のシンプル
な農産品加工技術から高度な食品製造技術、生産者の
ネットワーク形成の仕組みについても十分理解を深め
ました。
日本での学びと今後の展望
2 週間の研修では、中央省庁、金融機関、地方自治
体などの政府機関や農業生産法人、民間企業への訪問、
また大学教授や研究者との意見交換のプログラムを設
定しました。成果報告会では講義や訪問での学び、自
国で活かせる点、そしてその可能性について研修員各
九条ねぎの生産・加工・販売を行っている農業生産法人こと京都(株)
にて、ねぎの洗浄過程を見学
2
PREX NOW No.228 November 2014
自が発表しました。地方農業開発を推進していくため
には、農民や農業事業者に対するローン、融資、補助
金や加工技術、販路拡大のための支援など、政府機関
ていきたいということでした。
が果たすべき役割について理解できたと同時に、農業
本研修は 5 年間かけて実施します。次年度以降は、
開発に携わる関係省庁、金融機関、地方自治体が協力
現地のニーズ調査結果を踏まえ、さらに研修トピック
して実施する必要性を感じていたようです。また、民
を絞り込んでいく予定です。
(国際交流部 浅沼、坂口)
間企業との連携もさらに強化し、商業的農業を目指し
研修概要
実施期間 2014 年 6 月16 日〜 6 月 27 日
研修参加者
委託元機関
TOPIC
タンザニア国農業関連省庁、州、県の高官 計8名
(農業省、畜産・漁業開発省、産業・貿易開発省、
タンザニア投資銀行、農業投資信託基金、
州知事、県知事)
JICA 関西
お世話になった方々、企業・団体(敬称略、順不同)
●農林水産省 ●経済産業省 ●日本政策金融公庫
●近畿農政局 ●京都府農林水産部
●吉川まちづくり公社
●鹿児島大学 岩元教授
●龍谷大学 河村教授、末原教授、西川教授
●京都大学 辻村准教授
●イースクエア
●トロムソ
●歴史街道推進協議会
●坂ノ途中
●グンゼ博物苑
●伊賀の里モクモク手作りファーム
●こと京都
●クボタ
●カタシモワインフード
タンザニア研修員が自国の農業振興事例をレポート発表
研修員は 2 名 1 組になり、来日前に下記のテー
マ で プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン を 準 備 し ま し た。 ① バ
リューチェーンアプローチの強化(農業省、畜産・
漁業開発省)
、
②アグロインダストリーの促進(産業・
貿易開発省)
、③農業金融の促進(タンザニア投資
銀行、農業投資信託基金)
、④県農業開発計画と地
域資源の活用
(州知事、県知事)。各テーマにおいて、
現状課題、グッドプラクティスの事例紹介、そして
今後の展望をまとめて発表しました。
タンザニアでは現在、農業セクター関連省庁、民
修了式後の記念撮影
間企業、援助団体などが連携を深め、農業バリュー
チェーンの構築強化に取り組んでいるようです。タ
わらず、特に地方の農村部においては農業金融への
ンザニアが抱える主な課題は、未整備な農業インフ
アクセスが限定的ということです。しかし近年、農
ラや天水農業への依存により、農業生産性が低く、
村部の低所得者層の女性や青年を対象に、農業生産
また農産品加工やパッケージのスキルが不足してい
に投資できるよう低金利でのローン貸付スキームが
るということでした。また、政府は農業金融を推進
導入されつつあるという事例も挙げられていました。
するためにさまざまな政策を打ち出しているにも関
国家開発戦略として「タンザニア開発ビジョン
2025」を掲げ、農民の生活向上と競争力のある経
済を目指しています。農業セクターが経済成長にも
たらす期待が高まるものの、今後政府としてどのよ
うな政策を掲げ実行していくかが重要になってくる
のだと思います。
今回のレポート発表には、タンザニアをフィール
ドに調査・研究を行っている大学教授や研究員の方
に同席いただきました。アフリカ、特にタンザニア
に精通されている専門家であり、貴重な質疑やコメ
ントをいただき、有意義なセッションとなりました。
タンザニアに精通する専門家の前でレポート発表をする研修員
No.228 November 2014 PREX NOW
3
ニュース & レポート ❸
関係者の声
今後のアフリカ向け
研修事業に関する考察
(独)国際協力機構 国際協力専門員(農業・農村開発) 相川 次郎 氏
ODA の実施機関である JICA は、技術協力の一環と
本の最新事例を学んだとしても、それを自国ですぐに活
して対象国における技術協力プロジェクトと合わせて
用することは難しいものです。また、研修員の多くは、行
研修員受入事業を実施してきました。研修員受入事業
政に勤務する公務員です。よって、研修員は、行政官の
では、開発途上国から、国造りの担い手となる研修員
視点で日本の事例を見ています。一方、研修中に紹介さ
(おもに行政官)を受入、様々な分野で専門的知識、
れる一部の先進事例は、むしろ行政の手を借りずに民間
技術の移転を行っています。2012 年度は、143 カ国・
活力によって発展を遂げてきたものもあります。先進事
地域から 11,581 名の研修員を新規に受け入れ、前年
例が出てきた背景をよく理解せずに、表面的な事象のみ
度からの継続の人数を合わせると 12,216 名でした。
に感銘を受け、ただ単に「それを自分の国でも」と考え
地域別でみると、サブサハラ以南のアフリカは、ア
る研修員が少なくないように感じています。アフリカから
ジアに次いで全体の研修員のうち約 20% を占めます。
の研修員は、脆弱で機能的とは言い難い行政機関が出身
ODA 全体の予算が縮小する中で、研修員受入事業の
母体であり、業務の質的改善を目的として研修に参加し
効果の最大化は重要な課題となっており、プログラム
ています。日本の行政機関が「普通」のこととして実践
化の議論と相まって JICA 及び関係機関の間で活発な
していることも、研修員にとっては、大いに参考になるで
議論がなされています。以下、小職が考える2つのポ
しょう。
例えば、
日本の普及員が農家と頻繁にコミュニケー
イントを共有したいと思います。
ションをとっている姿や普及機関と卸売市場が定期的に
情報交換を取っている現場を見ることは、研修員にとっ
1.現地での実践にかかる支援体制
て刺激的であるようです。行政のサービスとは離れます
が、日本の一般的な農家の方々は、
「普通」のこととして
研修が終了し帰国すると、各研修員は、研修で学ん
施肥時期や量などの投入量と金額とともに、収穫量やそ
だことを実践することが期待されます。しかし、活動
の販売額などマメに記帳して営農の効率化を図っていま
実施のための予算不足、あるいは研修で習得したもの
す。小職が知る限り記帳をしているアフリカの農家は非
に対する理解不足など種々の事情により、活動が進ま
常に少ないです。研修員が、公的な普及サービスの一環
ないケースが多々見られます。一方、出身母体が技術
で営農記帳を広めることは、現実的なアクションのように
協力プロジェクトの CP 機関であったり、研修員自体
思えます。研修計画に際しては、
日本の「普通」を見せて、
がプロジェクト CP である場合、高い確率で研修にお
研修員に考えさせることが重要であると思われます。
いて習得したことが何らかの形で活かされます。ある
いは、研修後のフォローアップが研修の一環として盛
研修員受入事業は、非常に手がかかります。すべて
り込まれてある場合、現地で活動実施の阻害要因を取
の研修を上記 1 で述べたよう
り除くことができ、より実現性が高くなります。
な短期的な成果を求めるもの
研修の立案計画に当たっては、研修成果の有効活用
にしようとすると実施回数を減
にかかる対象国における支援体制の有無を十二分に検
らすしかないでしょう。しかし、
ウガンダ元研修員と圃場視察
討されるべきです。例えば、
特に本邦研修には、日本ファン
技術協力プロジェクトとの連
を増やし長期的な成果が見込
携を考える場合、研修目的と
める効果があります。今後は、短期的成果重視の研修
プロジェクトの目標との整合
と長期的な成果を期待する研修とターゲットを明確に
性についてまで考えることも
分けたメリハリのある調整も必要かもしれません。
必要ではないでしょうか。
今回、急きょアドバイザーとして参加の機会をいた
ジンバブエ農業省スタッフ
(元研修員)らと協議
だいたタンザニア行政官向け研修では、研修員が多く
2.先進事例より「普通」
4
のものを学び、充実した日々を過ごしたことをうかが
い知ることができました。今後、上記私見を多少なり
一定の成長を遂げたアジアと異なり、昨今経済発展が
とも加味いただいたうえで、さらに素晴らしい研修を
徐々に進んでいるとはいえ、アフリカからの研修員が日
運営いただくことを願っています。
PREX NOW No.228 November 2014
ニュース & レポート ❹
帰国研修員の活躍
PREX では帰国後も研修員との関係を持ち続けるべく、メールでの情報配信、フェイスブック活用、随時の研修フォローアッ
プを行っています。今回、2013 年 4 月に実施した JICA「ガーナ産業振興研修」の帰国研修員 12 人からアクションプラ
ンの進捗について聞くことができました。
この研修にはものづくり中小企業を支援する立場にある公的機関の部長クラスが参加。中小企業支援機関や中小企業を
訪問し、生産性向上支援などをテーマに1年間のアクションプランを策定しました。
大半の研修員がアクション
行動を受け止めて励ます
帰国後のアクションプランの進捗報告には予算不足
研修員は訪日中に帰国
という声もありましたが、大半の研修員が何らかの行
計画します。『帰国後半
や組織からの支援がもらえないことが壁になっている
動を起こしていました。下の表に示すように具体的な
活動もありました。講義や訪問先で本質を突いた質問
をし、終盤に近づくにつれ帰国後の活動へのモチベー
ションが高まっていった研修中の 12 人の姿が思い出
されます。
研修員からの報告に対して、訪日研修で指導いただ
いた杉村光二コースリーダーから一人一人の状況に応
じた励ましの言葉をもらい JICA 関西を通じて研修員
全員に届けました。思うように進められていない研修
員にとって「困難を乗り越える努力が必要です。決し
てあきらめずに小さなことから実績をつくり周りを巻
き込んでいってください」という言葉は大きな励まし
となったと
感じていま
す。
後の目標とアクションを
年か 1 年ほど経ったタイ
ミングでメールでレポー
トや写真を送ってもら
う、講師がメッセージを
返すことで、研修員が活
動結果を振り返りプラン
修正など次の行動に進む
ことを促す、しばらくし
てからまたこのやりとり
を繰り返す。』こんなサポートが研修員との継続的な
関係を作ることにつながると同時に、研修に協力いた
だいた講師や訪問先に帰国後の活動の様子をフィード
バックすることで喜んでいただけ、日本側での協力関
係も深まるはずです。
「菅原さん、必ずプランを実行しますよ」研修の最
終日にリーダー格の研修員が私に言ってくれました。
研修員の思いにこたえるためには、日本での研修で終
わらない、帰国後のフォローアップについて何をすべ
きか考えていくことが必要だと思います。
(国際交流部 菅原)
■マヌ・バシ氏(ガーナ国家中小企業局北西州事務所所長)のアクションプランと杉村コースリーダーからのメッセージ
1年間のアクションプラン
(訪日研修で作成)
(2013 年 4 月)
進捗状況の報告
(2014 年 2 月)
杉村コースリーダーのメッセージ
シアバター等を生産する企業の生産性 プランのほとんどを実施した。予算は 目標設定を小刻みにして一歩一歩達成
を高める。
若干不足。
していることは素晴らしい。
①企業からニーズをヒアリング。 ① 80 社からニーズをヒアリング。
小さなことでも良いので成功事例を作
②実施機関による生産性の研修を推進。 ②8 つの実施機関と生産管理の知見を れば、その積み重ねが大きな力となっ
③ス タッフと企業にカイゼンの意識を
共有し、カイゼンに着手。
て予算獲得にもつながり、大きな成功
広める。 ③実 施機関が企業に対し研修(改善、 を生むことでしょう。
④中 小企業をモニタリングし効果を報
品質、生産性向上)を 8 回実施。
告。
No.228 November 2014 PREX NOW
5
PREX では年間 40 件前後の研修を実施し、多くの企業を訪問させていただいて
います。その中からアフリカにちなんだ企業 4 社を紹介します。
小林桂㈱
㈱坂ノ途中
神戸市中央区
京都府京都市
「スパイス・ハーブを原産国から直輸入」を掲げて、
「未来からの前借り、
スパイス輸入量 No.1 の創業 130 年の老舗、小林桂 ( 株 )
やめましょう」を掲げ
は、西アフリカのモロッ
て、環境負荷の小さい
コで日本市場向け規格
持続可能な農業をすす
をクリアした唐辛子の
めておられる(株)坂
栽培・加工に挑戦して
ノ途中は、東アフリカ
おられます。PREX では
のウガンダで有機農業
講義中の宮下さん
を普及する活動をされ
2014 年 9 月 に JICA 研
修「貿易投資促進のた
講義中の常深さん
ています。PREX では 2014 年 3 月に JICA 研修「貿
めのキャパシティディ
易投資促進のためのキャパシティディベロップメント
ベロップメント A」で同社の常深克典さんに、モロッ
B」で同社の宮下芙美子さん(同社現地法人 Saka no
コでの活動と途上国の潜在的な魅力について研修員に
TochuEast Africa 社、代表)にアフリカ、ウガンダで
講義をいただきました。
の活動について講義をいただきました。
モロッコの生産地の様子
現在日本は、唐
ウガンダで最初に取り組まれたのが「ゴマ」。乾燥
辛子の 90%以上が
に強く、農薬・化学肥料に頼ら
中国からの輸入に
ずにやせた土地でもたくましく
頼っており、代替
育ってくれるゴマを、干ばつに
産地を探しておら
苦しむ現地の農家さんたちと一
れた同社が目を付
緒に栽培された宮下さんの活躍
けられたのがアフ
に、講義を受けた研修員一同感
リカ大陸における
銘を受けていました。
北の玄関モロッコ。
モロッコの唐辛子
ブルキナファソ研修員
の質問に答える講師の
宮下さん
収穫されたゴマは日本に輸出
され、(株)山田製油(京都市)
は暑い太陽の日差
の熟練の技術でオ
しとアトラス山脈
リジナルの商品に
から流れる豊富な
仕上げられていま
水、肥沃な大地に
す。更に現在ゴマ
よって辛く・香の
に続いて化粧品原
良いものだそうで
料のシアバターや
す。スパイス輸出国の 80%以上は途上国で、スパイ
菓子材料のバニラ
研修員と講師の常深さん・小林専務
スは国の重要な産業品であり、多くの農家の副収入源
JICA 研修員と講師の宮下さん
つや野菜なども現
となっています。研修員には、あらためて自国の魅力
に気付かされた講義となりました。
(国際交流部 森本)
ビーンズ、はちみ
地で栽培され、販路が乏しい現地農家の支援に尽力し
ておられます。
(国際交流部 森本)
6
PREX NOW No.228 November 2014
㈱トロムソ
広島県尾道市
㈱ヒロコーヒー
大阪府吹田市
瀬戸内海に浮か
最近はコンビニでも淹れ
ぶ因島を拠点とす
たてが買え、一層身近に楽
る 同 社 は「 モ ミ ガ
し め る よう に な っ たコ ー
ライト=もみ殻を
ヒー、その中でも「サステ
原料とする固形燃
イナブルコーヒー」という
料( ブ リ ケ ッ ト )」
言葉をご存知ですか?語感
を製造するグライ
から想像できるように、目
ンドミルのメー
タンザニアで現地事業調査を実施
先だけでなく、
将来の環境、
カ ー で す。 同 社 見
作 っ て い る 人、 土 地 の 事
学に訪れたアフリカの研修員の「森林減少対策になる
も 考 え つつ 作 ら れ るコ ー
ので是非アフリカに紹介してほしい」との意見を契機
ヒーをこう称します。
に JICA の途上国案件化調査でタンザニアを訪問。環
おいしく、かつ、人も土
境面や原料であるもみ殻の状況、家庭燃料の動向等の
地 も 大 切に し た コ ーヒ ー
現地調査を実施し、モミガライト製造・普及の事業化
を! ヒロコーヒーは、世界各国から基準をみたす農
を検証しました。
園と契約し、生産者の顔がみえるコーヒーを提供さ
「タンザニア地方農業開発」研修でも協力いただき、
れています。アフリカではタンザニアの農場、エチ
同社の製品・事業を紹介、さらには研修会場に同機を
オピアの組合と契約。農園の人が健康な状態で働き、
上/タンザニアの生産地の様子
下/熟したコーヒー豆
((株)ヒロコーヒー ホーム
ページより)
搬入し、モミガライトの製造とそれを使ってのバーベ
周りの土地のこ
キューで実用性をデモいただきました。
とも考えながら、
さ ら に 2014
そ し て、 何 よ り
年 9 月には「も
おいしくできた
み殻を原料とし
コ ー ヒ ー 豆 を。
た固形燃料製造
社長自ら農園に
装置の普及・実
お も む き、 現 場
証事業(タンザ
をみて購入を決
ニア)
」 を JICA
定、 鮮 度 を 守 り
と 締 結。 現 地
つ つ 輸 送、 焙 煎
の生活に適った
さ れ、 関 西 中 心
新たな燃料とし
の 18 か所の店舗
て、森林保護や
で提供されてい
地球温暖化抑制
ま す。 サ ス テ イ
に貢献する事業
ナブルコーヒー
として注目を集
研修訪問時の写真
めています。
(国際交流部 浅沼)
上/タンザニアの精米所から溢れるもみ殻 下/ JICA 関西にグラインドミル(実機)を
持ち込みデモ
という言葉は聞
きなれない方も、
まずは味わってみてください。コーヒーを通じたおも
てなし、ほ~っとできる味が体感できます。
(国際交流部 関野)
No.228 November 2014 PREX NOW
7
アフリカ南東部マラウイの食事情
「The warm heart of Africa
せ、粉にし、その粉をお湯で練っ
(アフリカのあたたかい心)
」とい
て団子状にしたものです。おかず
う愛称で呼ばれている、マラウイ
は、豆や青菜を炒めた玉ねぎとト
という国をご存知ですか?タンザ
マトのソースと混ぜたものが主流
ニアの下に位置するアフリカ南東
です。
部の小さな内陸国です。私は 2010
お客さんが来たときは「ローカ
年から 2012 年の 2 年間、青年海外
協力隊、村落開発普及員としてマ
ラウイで活動していました。
「ご飯食べていきなさ
い」といって脱穀から
始めるおばちゃん
ルチキン(=地鶏)」でもてなし
マラウイの主食「シマ」
白トウモロコシを粉に
して、お湯で練った団
子のようなもの
ます。まずは放し飼いにしているニワトリを捕まえる
ことから始めます。ローカルチキンは逃げ足が速く 5、
マラウイも本紙 2 頁で紹介したタンザニアと同様、
6 人で必死になって捕まえます。捕まえたら、屠殺。
国民の大多数が農業に従事している農業国です。主食
現地の包丁はキレ味が悪く、ご近所さんはいつも私の
のトウモロコシをはじめ、豆、米、キャッサバ、タバコ、
日本製の包丁を借りに来ていました。
グランドナッツなども作っています。
その他にも、田んぼにい
マラウイの平均電化率は一桁で、特に地方に行けば
るねずみを塩茹でや炙りで
未電化の家がほとんどです。私も 50 ワットのソーラー
食 べ た り、 雨 季 に 大 発 生
発電で生活をしていました。炊事は薪か炭を使うの
す る 巨 大羽 あ り の 羽を む
で、火おこしから。
しってそのまま食べたり、
さて、マラウイの人たち
フライにしたり、湖に大量
は普段何を食べているので
発生するレイクフライ(蚊
しょうか。今回はマラウイ
のようなもの)を団子状にして食べたりします。これ
の食事情をご紹介したいと
らは貴重な動物性タンパク質の食材です。味は予想通
思います。主食は「シマ」。
りの味でした。
白いトウモロコシを乾燥さ
お米は高級ですが、特別な日に食
べます
(国際交流部 坂口)
人の動き
浜口好康
浜橋 元
(国際交流部担当部長 2014 年 9 月 30 日付
サントリーホールディングス㈱に帰任)
(国際交流部担当部長 2014 年 10 月 1 日付
サントリーホールディングス㈱より出向)
2011 年 4 月より PREX に出向し、地域
サントリーでは、広報や宣伝など企業
振興や貿易振興などの開発途上国研修、
のコミュニケーションに関わる仕事と、
グローバル人材育成の分野での活動などを通じて、数
飲食業・外食産業に携わってきました。また、直近で
多くの海外の研修員、企業幹部の皆様、大学・自治体
は、同じ大阪の公益財団法人、サントリー文化財団で
の方々とも懇意にさせていただきました。それまでの
事務局長をやっておりました。10 月から PREX の仕
会社での業務とは全く異なる分野で多くの物事に接
事を始めましたが、様々な国の方々と出会える喜びと
し、わくわくできる仕事の機会を与えていただいたこ
ともに、日本の知識、技術基盤の厚みと底力に改めて
とに感謝申し上げます。
驚いています。人と人、知恵と知恵を結ぶ PREX の仕
今後ともこれらのネットワークは大切にしていきた
事に、今までの経験が少しでもお役に立てばと思って
いと考えております。皆様、ありがとうございました。
います。
PREX の研修実績
(1990 〜)
研修
研修員
受入研修
623 コース 143 カ国・地域 15,809 名 5,644 名
海外研修
10,165 名
2014 年 11 月現在
PREX NOW 第 228 号
2014 年 11 月発行
8
編集・発行 : 公益財団法人 太平洋人材交流センター 専務理事 北村耕一
〒 543-0001 大阪市天王寺区上本町 8-2-6 大阪国際交流センター 2 階 TEL:06-6779-2850 FAX:06-6779-2840
ホームページ :http://www.prex-hrd.or.jp/ E-mail:[email protected]
PREX NOW No.228 November 2014
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