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国は中小企業を救え

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国は中小企業を救え
1P
「外需しかない」
青森の優良企業倒産
◆アンデス電気
2009・01・19 613号 国は中小企業を救え
1月5日、青森県のアンデス電気が東京地裁に民事再生手
続きの申請をしました。事実上の倒産です。一般的にはなじ
みのない企業ですが、八戸に本社を置くアンデス電気は、青
森県にとってかけがえのない存在でした。減税や資金支援な
どで好条件を提示して企業誘致をはかっても、降雪量の多い
青森県内にわざわざ工場を作ってくれる企業はそうあるもの
ではありません。八戸育ちのアンデス電気はハイテク技術で
財部誠一 今週のひとりごと
見事な国際企業となり、地元に900人もの雇用を創出しました。
携帯電話のカラーフィルターでは世界一のシェアを誇り、ノキ
ア、モトローラ、サムスンといった世界のトップメーカーと直接、
取引をしていました。国内市場に拘泥せず、大きな国際市場
つい最近、税理士とそのクライアントを対象とした講演会がありました。
に成長の原動力を求めたそのビジネスモデルは、地方企業
そこで聞いた面白い話があります。税理士の世界ではいま地殻変動が起
の鑑だといっていいでしょう。
こっているそうです。税理士の世界も永田町よろしく2世、3世というケース
が珍しくないそうです。お父さんに世話になった事業会社は、税理士が息
携帯電話だけではありません。自動車部品も手がけ、米国
のビッグスリーとの取引も少なくありませんでした。新幹線の
最新車両に採用されるほど、クオリティの高い空気清浄機を
子の代に代わっても、儀礼上、同じ税理士事務所とのお付き合いを続け
製造していることでもアンデス電気は知られています。
のが一般的。ところが最近、財務戦略の重要性が日増しに高まってくるな
多業種、多企業との取引によって、リスク分散をはかりなが
かで、力のある税理士事務所へ鞍替えする事業会社が増えてきたという
ら、世界を相手にビジネス展開してきたわけです。さらに社長
のです。ただ決算や税務処理をしてもらうだけの存在ではなく、財務のプ
の安田昭夫氏は五臓六腑の多くを切除するという壮絶なガン
ロによる戦略的な経営指導を求める経営者が増えているからです。
ピンチはチャンスとはよく言ったもので、従来の構造が揺らぐと誰もが不
との闘いを制してきた人物で、地元八戸への貢献意欲も強く、
雇用創出のために大葉のハウス栽培にまで乗り出しました。
その意気や良しで、私もぜひ応援したいと思い、昨年夏、ア
安を覚えるものですが、その不安こそがチャンス到来のシグナルだという
ンデス電気を訪問しました。「ミスト農法」と呼ばれる新しい栽
ことでしょう。
培技術を導入し、無農薬で大葉を栽培しているという話でした。
(財部誠一)
さらにハイテク企業ですから、温度管理や湿度管理などハウ
ス内の生育環境もハイテク技術を駆使しているとのこと。「企
※HARVEYROADWEEKLYは転載 ・ 転送はご遠慮いただいております。
業の農業参入は至難の技」という持論を持つにいたった私と
しては、その成否を自分の目で確かめたいという気持ちもあ
って、親しい仲間数人でアンデス電気訪ねたのでした。
資本金:1億2867万円
所在地:八戸市桔梗野工業団地 1-3-1
代表取締役:安田昭夫氏
従業員:912名
1971年(昭和46年)6月創業、73
年(昭和48年)7月に安田精工
(株)に法人改組、78年に現商号
に変更した。設立当初は、大手電
機メーカーなどからの可変コンデ
ンサーやチューナーの組み立てを
受注していたが、92年からは空気
清浄機の製造・販売を開始。
最盛期にはグループ企業17社、24
工場体制に成長した。バブル崩壊
後の96年以降は事業再構築を進め
る一方、2000年に大手電機メーカ
ーとカラーフィルター製造の関連
会社を設立。2002年には、韓国の
大手ブラウン管メーカー、サムス
ンSDIとの間で業務提携、2005年
には香港に100%出資の現地法人
を設立するなど業容を拡大。
近年は青森県内(3ヵ所)、岩手、
福島に工場を、東京、名古屋、大
阪に営業所を構え、大手電機メー
カーを顧客に携帯電話・液晶ディ
スプレイ向けカラーフィルターの
ほか、パソコン等の実装基板や空
気清浄機、マイナスイオン発生器
などの製造・販売、アグリビジネ
スなどを展開していた。
2P
策だと思い込んでいる政治家がどれほど多いことか。
ます。自動車とITという二大産業の底が抜けたら、
いえず、病害虫抑制に苦慮し、採算面でもなかなか
中小企業は一度、倒産してしまえば、その技術もノ
日本の中小企業は大半がとんでもないダメージを
◆アンデス電気 見通しが立たないという苦境に陥っていました。これ
ウハウも雲散霧消してしまいます。その技術的価値
こうむるのだという現実を、政治家は直視すべき
民事再生法申請
はもうプロの手助けなしには活路が見出せぬと思い、
の喪失は日本の国益にボディーブローとなってきい
です。 では具体的にいかなる政策がありえるで
サンデープロジェクトの農業特集や拙著『農業が日
てきます。行き過ぎた市場原理、行き過ぎた公平性
しょうか。
本を救う』のなかで取り上げさせていただいた京都
の原理を修正し、守るべき価値のある中小企業は地
オートローン減税です。
府福知山のスーパーマーケットNISIYAMAの西山進
域の判断で超法規的措置で救済するべきです。
住宅ローン減税のように、オートローンを組んで
社長と生鮮食品流通における最高のマーケッターで
これから先、八戸に900人の雇用を生み出すハイテ
新車を購入した人に対して思い切った所得控除す
ある古山勇起さんのお二人に大葉栽培の助っ人を
ク企業が簡単に生まれるとは思えません。ましてや
ることで、車の買い替え需要を創出するのです。
お願いしたこともありました。お二人の尽力で、厳し
名経営者と呼ばれ、地元八戸に対する強い貢献意
極論をいえば5年のオートローンを組んだら、毎年、
いながらもアンデス電気の大葉事業黒字化のため
識をもつ安田さんのDNAを体現するアンデス電気の
購入金額の5分の1ずつを所得から控除します。
同社の2008年4月期決算は、売
上高204億円だったが、資材価
格の高騰、受注単価の下落など
により、純損益が約2億8千万の
赤字、経常損益は約2億9千万円
の赤字に陥っていた。円高や携
帯電話の需要減以外に、車の部
品関係でも、米ビッグ3の製造
が半分以下になった影響をまと
の具体的な取り組みも動き出したところでした。
ような企業の誕生などこれまた至難の業といわざる
現実的には購入代金全額を所得控除するという
そんな矢先の民事再生法適用申請だったもので
をえません。
考え方は行き過ぎかもしれませんが、日本の危機
結論から言えば、この大葉栽培はけっして順調とは
すから、じつのところ、私自身も大きなショックを受け
ています。当然のことながら、県も応援していました。
自動車産業に財政出動を!
的状況を思えば、そのくらい思い切った景気対策
もに受けた。
1月5日に東京地裁へ民事再生
法の適用を申請し、同日保全命
令を受けた。
があってしかるべしと、考えます。
アンデス電気の債務、190億円のうち3分の1近くは
もちろん全国一律の救済メニューもないわけではあ
クルマの購入代金が5年で全額控除となったら、
県の融資です。
りません。それどころか、いますぐやらなければなら
誰だってクルマを買い換えたくなります。中小零細
しかし昨年、アンデス電気の売上高はビジネスの
ない中小企業対策があります。それは自動車の買い
の部品メーカー存続のためにも、そしてマスコミが
常識をはるかに超えた異常な落ち込みをみせました。
替え需要を税制によって創り出すことです。
大好きな「派遣切り」対策としても、これほど有効
「年商13億円の企業は、売上が3億円減少し10億
じつはいま広島でこの原稿を書いています。
な対策はありません。自動車産業の底抜け防止
円になってもなんとかやっていかれる。しかし13億円
地元商工関係者によれば「県が公用車としてマツ
に的を絞った財政政策が欠かせないのです。
の売上げ3億円になってしまったらそれはもう手のう
ダ車100台を新規購入する」という記事が地元紙に掲
米国ビッグスリーの経営危機はいまや誰もが知
ちようがない」 載されていたようです。県の予算ですからたかがしれ
るところとなりましたが、ビッグスリーが生産するク
アンデス電気の幹部社員はそんな比喩で08年後
ていますが、政策のあり方として、これほど正しい考
ルマの部品の多くがメード・イン・ジャパンであるこ
半、業績がまっさかさまに転落したさまを語っていま
え方はありません。
とはあまり知られていません。つまり日本の部品メ
す。最終的にアンデス電気は民事再生の道を模索
日本経済にとって喫緊の課題はまずは自動車の需
ーカーは日米自動車メーカーの凋落の影響をもろ
することになりましたが、いま国がやるべき仕事は、
要を創り出すことにつきます。自動車産業の裾野の
にこうむっているということです。
地方経済を支えてきた地域の優良企業の存続に惜
広さは、いまさら言及する話ではありませんが、日本
極端な自動車不況は最低でも09年いっぱい続
しみない支援をすることでしょう。
の製造業者は大なり小なり、どこかで自動車製造に
く可能性が高い。
政府の景気対策や雇用対策をみていてつくづく思
関わっているといってもいいほどです。いまや日本車
日本の製造業を破綻の淵から救い出すという視
うことは、霞ヶ関が全国一律のメニューを示すことの
はIT技術の集積です。エンジンの噴射からブレーキ
点こそ、いま求められているのです。
限界です。いったい何がいま必要なのか。地域によ
のコントロールに至るまで、走る、止まる、曲がるとい
ってその答えはまったく異なるのに、資金繰り支援
う自動車の基本性能のすべてにIT技術が駆使され
(財部誠一)
のために銀行に指導をすることだけが中小企業対
ており、IT業界は自動車業界の影響をもろにこうむり
編集・発行
ハーベイロード・ジャパン
〒105-0001
港区虎ノ門5-11-1
オランダヒルズ森タワー805
Tel. 03-5472-2088
Fax. 03-5472-7225
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無断転載はお断りいたします
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福田康夫という政治家
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