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株価と景気の好循環が始まった
1P 1P 増配、復配のオンパレードが意味するもの 米国市場の下落に影響されたのか、それともあまり 2004・3・8 376号 株価と景気の好循環が始まった 財部誠一今週のひとりごと 小泉首相がまたお得意のキャッチーなだけの政策をうちだ しました。独立行政法人や特殊法人などへの「天下り禁止!」 という、まことにけっこうなお話ですが、やはり今度もまた 中身がまったくともなっていません。口先で言っているだけ なのです。天下りの問題はどこにあるかといえば、天下り先 ほしさに、無駄な独立行政法人などを次々とつくっているこ とです。これをとめるためには、役人の数を半減させるくら いの思い切ったことをやるいがいありません。 ところが小泉首相は役所の人事構造を抜本的に変えようと はまるでしません。ここに手をつけない天下り対策はすべて 嘘なのです。 (財部誠一) ※HARVEYROAD WEEKL Yは転載・転送はご遠慮いただいております。 にも急激に値上がりしたことのスピード調整なのか、 今週後半になって日経平均は3日連続で、大きく値下 がりしました。しかし、景気回復が確実になった日本 株ほど割安な投資対象は世界中、どこをみても見当た りません。この数週間、株高をささえてきた外人買い は当分のあいだ続くでしょう。 「日経平均は過熱感を示唆するシグナルがいくつも点 灯している」という声もありますが、個別銘柄の取引 に目をやると、特定の銘柄が突き抜けて値上がりして いるという状況はどこにもなく、日経平均の熱っぽさ とは対照的に、クールな値上がりといった状況が続い ているように思えます。 この一ヶ月ほどの株高の背景にあるのは、やはり上 場企業の業績の急回復です。それが株式市場を下支え していると思います。3月4日の日本経済新聞の報道 によると、上場企業の4社に1社がこの3月末に増配 または復配に転じる予定です。本レポートでもたびた び指摘してきましたが、企業業績は昨年の3月決算で すでにV字型回復をとげており、それから1年を経た いま、もはや誰の目にも疑う余地がないほどに、上場 企業の業績回復が確実になったということです。 増配や復配は、いわば経営者の自信の表れです。リ ストラによる一時的な業績アップで増配や復配を実行 する経営者などいるはずがないではありませんか。 ゴールドマンサックスによれば、この3月期末に、 上場企業の配当金総額は前の年に比べてじつに8% も増加し、そのメリットをもっとも享受するのは、 依然として大量に株式を保有している損害保険各社 だと分析しています。損保上位3社(ミレアホール ディングス、損保ジャパン、三井住友海上)の保有す る株式の配当利回りは、簿価ベースで前期の1.9 %から今期は2.1%になると予測されています。 ◆ 2004年3月期に増・復配を 予定する主な企業 (今期配当。単位は円、カッコ内は前期実績) ● 今期、 上場400社が増復配、 業績拡大、株主を重視 〈利益配分重視型〉 ソトー 200 ( 13 ) ユシロ化学工業 200( 14 ) 東北通信建設 20 ( 7 ) ブルドックソース 20( 12 ) 日東電工 36 ( 24 ) 理研ビタミン 30 ( 20 ) 〈業績好調型〉 JFEホールディングス 30 ( 15 ) オムロン 20 ( 10 ) 商船三井 8 ( 5 ) ヤマハ 15 ( 10 ) 日産自動車 19 ( 14 ) 日立建機 10 ( 7 ) 日本郵船 10 ( 7.5 ) ホンダ 38 ( 32 ) コマツ 7 ( 6 ) 信越化学工業 16 ( 14 ) 東レ 5.5 ( 5 ) 味の素 12 ( 11 ) 花王 32 ( 30 ) 〈リストラ完了型〉 NEC 6 ( 0 ) 全日本空輸 3 ( 0 ) 住友不動産 9 ( 6 ) ナムコ 40 ( 30 ) ※集計対象は新興三市場と金融を除く三 月期決算の上場企業。配当異動は三年間 継続してデータのある千八百二十四社、 配当総額は五年間でデータのとれる千五 百七十八社を対象とした。 【2004/03/04, 日本経済新聞より】 1P 2P この超低金利時代に、これいじょう高い利 回りを期待できる投資対象はありません。 こうなると今後、損害保険会社はこれま で続けてきた保有株の売却ペースを減速さ せることがおおいに予想されます。株式を 保有していることのリスクばかりが強調さ れる時代にようやくピリオドが打たれ、株 式を持っていることのメリットに焦点があ たる時代へとようやくかわってきたのだと いう感想をいだいているのは私だけではな いでしょう。 じつは損保だけではありません。 「今期は大量に保有する自動車株の増配が 大きく貢献しているが、今後は自動車株と 並んで大量保有する銀行株の増配も期待で きる。配当利回りは長期的に見てさらに高 くなってゆくことが予想される。それは株 式を売却するインセンティブが薄れること を意味し、さらにそのこと自体が株価の上 昇に寄与するだろう」(証券会社幹部) 株を大量に保有していることが株高の原 因になるのは損保だけではなく、その構図 は自動車業界、さらにはメガバンクにもそ のままあてはまるというのです。 メガバンクは本業部分(貸出業務)の拡 大に加えて、保有株式へのプラス方向への 見方が広がるにつれ、自らの株価が上昇を 開始しました。日本企業は過去10年間、 負債を減らし、持ち合い株を減らすことに 邁進してきました。 その意味では株を大量に保有している企 業の株が高くなっているという現状は、こ れまでの行動とはまったく正反対の行動が 正当化されるということを意味します。バ ブルの再来を期待するのは大間違いだが、 「株=悪」というイメージから「株=プラ ス要因」というように、パラダイムが劇的 に転換を始めたことはまちがいありません。 株式保有のメリットが株価に反映 日本企業の内部構造の変化と同時に、機 関投資家や大手証券会社の市場見通しもず いぶんと変わってきました。日興シティグ ループでは、これまでは「米国は今年中に 利上げに踏み切る」と予想してきましたが、 その予想を撤回しました。 「米国の経済成長は堅調さを維持しているが、 先週末に発表された2月の雇用統計で、月 平均の雇用創出が6万人前後という低調な レベルにとどまっていることが確認された。 このために今年中の利上げの公算はほぼな くなったと判断している。これによって米 国の長期金利もこれまでの膠着状態を抜け 出して、3.5%から3.625%のレン ジに移行するとみている」(日興証券) 年内の利上げはなくなったといっても、 米国の景気が力強い拡大を続けるとの見方 は変えていません。雇用増加ペースは鈍い ものの、これは生産性の伸びで説明できます。 しかも労働時間を加味した労働投入量で見 れば着実に回復しているといってまちがい ありません。そして最終的な結論として「短 期的に見れば、維持可能な成長率が4−5 %に達する可能性まである」とさえいって います。 それを反映するかのように、日興シティ グループ内における北米からの日本株投資 の買売比率は、3月第1週で3.85倍の 大幅な買い越しを記録しました。買注文が 売注文の3.85倍もあったということです。 たしかに米国経済は今年も堅調に推移す ると思いますが、なんといっても日本株の 割安感はグローバルな投資家なら誰もが認 識しているところです。企業業績がV字型 に回復し、増配、復配のオンパレードだと なれば、ただでさえ割安だった日本株に投 資が集中するのはきわめて自然なことです。 おそらく外人買いの流れは当分、続くと思 われます。したがって、為替の先行きを考 えると、このまま円安の流れが長期間にわ たって続いていくとは考えにくい。外人投 資家の日本株投資は、必然的にドル売り円 買いを誘発します。円安の流れがどこかで 修正され、再び、円高方向に振れると考え るのが、現実的ではないでしょうか。 それにしても、この1ヶ月ほどで、この 数年間、語られてきたことと正反対の現象 がマーケットのあちこちで起こってきました。 わが国では土地や株式など、過去に積み 上げてきた内部留保が多い企業は「資本効 率の悪い」と切り捨てられてきましたが、 外人投資家は内部留保の多い企業に目をつ けて買収を仕掛けだしました。買収の方法 にはいくつもありますが、公開市場買い付 け(TOB)といって、一般の株主に市場 価格よりも少し高い値段を示して買い取り ますよというオファーする方法もあります。 買収を仕掛けられる側は大変ですが、一 般の株主にとっては大きなメリットがあり ます。こうした敵対的な買収への対抗策と して、配当を大幅に引き上げて、TOBに 応じないようにするケースもあります。 いずれにしても、資産としての株式の見 直しが世の中の空気になってくれば、さら にまた株価全体が上がり、株価の上昇が景 気をさらに上向かせるという好循環にはい ってきたと、私はうけとめています。 (財部誠一) 編集・発行 ハーベイロード・ジャパン 〒107−0062 港区南青山1−15−2 南青山スタジオフラット201 Te l 03−3479−2376 Fax 03−5770−3137 無断転載はお断りいたします