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事務局 開設 記載欄 年度 科目名(メディア) 2015年度 = 科目 区分 導入科目 科目 ヨーロッパの歴史Ⅰ 履修 制限 1118170 コード (’15)= 無 単位 数 2 (TV) -ヨーロッパ史の視点と方法- = 〔 History of Europe Ⅰ ('15): Perspectives and Methods 〕 英文名 〔主任講師(現職名): 草光 俊雄 (放送大学教授) 〕 〔主任講師(現職名): 甚野 尚志 (早稲田大学教授) 〕 【本学担当専任教員: 】 講義概要 ヨーロッパ史の古代から近代までのそれぞれの時代をめぐり、これまで歴史家の間で議論されてきた論争などを中 心に整理しながら、歴史認識の変遷とその方法を概観し、歴史像がいかにして形成されてきたかを考える。 授業の目標 歴史を考える枠組みについての知識を歴史学の発展とともに歴史学がおかれていた時代のなかで歴史について の見方がどのように変わったきたのか理解し、現代の課題は何かを学ぶ。 履修上の留意点 「歴史と人間」「南北アメリカの歴史」「ヨーロッパの歴史Ⅱ」等が関連科目である。 回 テ ー マ 1 イントロダクション 内 容 ヨーロッパとは何か、またヨーロッパ史における時代区分と は? これまでなじみ深かったヨーロッパ史の前提を再考 し、新しいヨーロッパ像を模索する。 【キーワード】 パラダイム、アナール派、オリエンタリズム、ヨーロッパ中心 史観、時代区分 執 筆 担 当放 送 担 当 講 師 名講 師 名 (所属・職名) (所属・職名) 草光 俊雄 (放送大学教 授) 甚野 尚志 (早稲田大学 教授) 草光 俊雄 (放送大学教 授) 甚野 尚志 (早稲田大学 教授) 20世紀最後の20年間、古代地中海世界とローマ帝国の地 中海世界支配に関するそれまでの定説(M. I. フィンレーの プリミティヴ経済論、M. ゲルツァーのクリエンテーラ論など) に対する強い異論が示され、新しい古代地中海世界像、 新しい古代地中海世 ローマ帝国像が模索され始めた。従来、古代地中海世界と 島田 誠 島田 誠 2 界像とローマ帝国像 ローマ帝国の基本的な性格はどのように考えられていたの (学習院大学 (学習院大学 か、そして新しい古代地中海世界像・ローマ帝国像ではど 教授) を求めて 教授) のような歴史像が示されるのかを考えたい。 【キーワード】 古代地中海世界、ローマ帝国、プリミティヴ経済論、クリエン テーラ論 西欧中世の世界は、フランク王国が勢力を拡大し、教皇権 と協力しながら西の帝国を復興させることで成立した。教皇 によるフランク王カールの皇帝戴冠はその決定的な瞬間で 西欧中世世界の成立 ある。ここでは西欧世界において、ビザンツ帝国の影響を 甚野 尚志 甚野 尚志 3 ~古代から中世への 脱した独自のキリスト教帝国が形成された過程を考える。 (早稲田大学 (早稲田大学 転換~ 教授) 教授) 【キーワード】 キリスト教、教皇権、フランク王国、カール大帝、ビザンツ帝 国 回 テ ー マ 内 容 執 筆 担 当放 送 担 当 講 師 名講 師 名 (所属・職名) (所属・職名) カロリング時代に司教座や修道院の教会組織は整備され たが、キリスト教が民衆のなかに浸透するのは容易ではな かった。ここでは、ローマ・カトリック教会がゲルマンの異教 世界をキリスト教化し、さらにはレコンキスタなどの運動を通 甚野 尚志 甚野 尚志 キリスト教の浸透と辺 じて、ローマ・カトリック世界を辺境地域に拡大していった過 (早稲田大学 (早稲田大学 4 境地域 程を考える。 教授) 教授) 【キーワード】 キリスト教化、教皇権、教会改革、レコンキスタ、十字軍、聖 戦 初期中世には、カロリング時代の教会改革とともに聖書やラ テン語古典の写本の文化が開花し、13世紀の大学成立の 時期になると、書物には頁や索引が付され、より合理的な 知識の検索ツールとなる。そのような書物の発展が活版印 甚野 尚志 写本から印刷術へ 甚野 尚志 5 ~書物の文化の発展 刷の発明を導き、書物の大量生産の時代を到来させた。そ (早稲田大学 (早稲田大学 の過程を考える。 ~ 教授) 教授) 【キーワード】 写本、カロリング・ルネサンス、12世紀ルネサンス、大学、活 版印刷 中世の民衆の間で、いかに俗語の文字文化を発展して いったかを中世後期まで辿る。とくに、都市の実務文書と俗 語文字文化との関係や、「往生術」、「死の舞踏」といった宗 甚野 尚志 甚野 尚志 中世の民衆と文字文 教的な木版印刷が俗語文字文化の発展にどのようにかか (早稲田大学 (早稲田大学 6 化 わったかを考察する。 教授) 教授) 【キーワード】 ラテン語、俗語、実務文書、異端運動、ベギン、木版印刷 「神の国家」から「人 7 の国家」へ(Ⅰ) 「神の国家」から「人 8 の国家」へ(Ⅱ) カトリック教会に支配されていた中世人の国家観と、その教 会によって「世界支配の付託」を受けたとされる中世神聖 ローマ帝国の実態の間にある「溝」を読み解きながら、中世 皆川 卓 人が「神の国家」観を現実の変化にすり合わせるための「工 皆川 卓 (山梨大学准 (山梨大学准 夫」を行う足跡とその結末をたどる。 教授) 教授) 【キーワード】 カトリック、帝権移転論、神の付託、パドヴァのマルシリウス、 フィレンツェ共和主義、帝国改造 マキャヴェリからプーフェンドルフを経てヴォルテールに至 る神聖ローマ帝国論を水先案内人として、権威を介さず自 ら「神」を求めようとする近世人が、いつしか「神の国家」を 皆川 卓 経験的に探究する=科学するようになり、その中で近代の 皆川 卓 (山梨大学准 (山梨大学准 国家像、主権観が生成する過程を明らかにする。 教授) 教授) 【キーワード】 マキャヴェリ、宗派化、主権、ホッブズ、社会契約説、プー フェンドルフ、ヴォルテール 人類学の視座、解釈枠組みを吸収することで生まれてきた 「歴史人類学」について、その成立に至る背景と成果をたど 儀礼と表象、感性か り、この半世紀の間に、歴史学の視点が大きく変化してきた 長谷川 まゆ 長谷川 まゆ こと、人間の過去を理解する新しい可能性が切り拓かれて 帆 らみる歴史 帆 9 ~歴史人類学の挑戦 きたことを考える。 (東京大学教 (東京大学教 〜 授) 授) 【キーワード】 異端審問、妖術師、ベナンダンティ、シャリヴァリ、モラル・エ コノミ、儀礼、象徴、暴力、表象、感性、身体技法 回 テ ー マ 内 容 執 筆 担 当放 送 担 当 講 師 名講 師 名 (所属・職名) (所属・職名) 印刷や書物の歴史はいまや人類学の視座や隣接諸科学 の方法を積極的に吸収しながら、人間のエクリすなわち「書 かれたもの」との関わり、読み、書き、話す、ロゴスをもつ人 オーラルとエクリの間 間の歴史そのものを再検討しつつある。ここではこうした新 長谷川 まゆ 長谷川 まゆ (あわい) 帆 帆 10 〜近世期の「個人の しい歴史学の一端を垣間見ながら、近世期の「個人の語り」 (東京大学教 (東京大学教 とその変容について考える。 語り」について〜 授) 授) 【キーワード】 印刷術、オーラル、エクリ、メノッキオ、読書、書物、公共空 間、セヴィニエ夫人、書簡小説、コミュニケーション回路 11 作法と教養 長い十八世紀はひとびとの暮らしぶりが大きく変化していっ た時代である。商業社会・消費社会は現世的な価値観を変 革し、生きることの意味、生活のスタイルの変化をもたらし 草光 俊雄 た。作法、教養といった近代社会固有の価値観が生まれた 草光 俊雄 (放送大学教 (放送大学教 背景を探る。 授) 授) 【キーワード】 消費社会、顕示的消費、奢侈論争、徳、作法、教養、マン デヴィル、公共圏、シヴィック・ヒューマニズム、模倣理論 十九世紀は歴史の時代であった。過去への関心が変貌し ていく現代との対比で語られ、古代、中世、ルネサンスなど の文化を復興させようとする試みが活発に行われた。当時 草光 俊雄 草光 俊雄 近代イギリスにおける のひとびとが何故過去を求めようとしたのか、同時代の社会 (放送大学教 (放送大学教 12 「古代」と「中世」 の諸問題を考えながら検討する。 授) 授) 【キーワード】 歴史主義、中世主義、新古典派、ロマン派、グランド・ツ アー、伝統の創造 13 産業革命をどう捉え るか 産業革命、工業化は物質的な豊かさとともに社会の構造的 な転換をももたらした。しかし産業革命とは何だったのか。 時代によって解釈が変化してきた産業革命論を概観し、あ 草光 俊雄 る歴史的な現象が研究者の直面している時代によってどの 草光 俊雄 (放送大学教 (放送大学教 ようにその解釈が変わってきたのかを考えてみる。 授) 授) 【キーワード】 産業革命、工業化、悲観論、楽観論、連続説、断絶説、経 済(景気)循環、技術革新、経済成長、離陸 現代のわれわれは電車が時刻通り到着することが当たり前 だと思っている。しかしこうした時間についての考え方は近 代の産物である。近代にとって時間とはどのようなものに なっていったのか、なぜわれわれは時間を守ることが大切と 草光 俊雄 草光 俊雄 近代人の時間の観念 思うようになったのか、仕事と余暇とは我々にとってどのよう (放送大学教 (放送大学教 14 : 仕事と余暇 な意味を持つのかなどについて考えてみる。 授) 授) 【キーワード】 時は金なり、パースタイム、労働規律、出来高賃金、時間賃 金、余暇、仕事志向、労働時間短縮、長期的持続 ヨーロッパ史への招 15 待 主任講師たちが研究を始めてからの歴史学の潮流を辿り つつ、自らの研究と大きな歴史学の流れについて論じなが ら、今後の歴史研究の展望について考えるよすがを示唆す 草光 俊雄 (放送大学教 る。 授) 甚野 尚志 【キーワード】 (早稲田大学 ポスト・モダニズム、社会史、アナール派、ミクロストリア、 ヨーロッパの「ヨーロッパ化」、東西の相互交流、中世と近世 教授) の連続、ヨーロッパ中心主義、グローバル・ヒストリー、庶民 の歴史、オーラル・ヒストリー 草光 俊雄 (放送大学教 授) 甚野 尚志 (早稲田大学 教授) 長谷川 まゆ 帆 (東京大学教 授)