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保有現金の価値評価: リーマンショック前後と日米欧比較
企業の現金保有政策 保有現金の価値評価: リーマンショック前後と日米欧比較 中 井 誠 司 CMA 神 山 直 樹 CMA 目 1.はじめに 2.先行研究 3.分析方法 次 4.データ 5.分析結果 6.結論と今後の課題 投資家の主要企業の保有現金への評価は米国(現金1円当たり2.8) 、欧州(同2.4) 、日本(同1.5)の順に高い。 1円を超える評価は、現金が営業資産になるとの投資家の期待を示唆する。また地域のみならず企業特性により 保有現金の評価が異なることで、投資家の情報の非対称性への価格付けであることを確認した。リーマンショッ ク前後を比較した結果によれば、どの地域でも増大した非対称性は以前の水準に戻っていない。 う。このような評価は、財務諸表に示されるよう 1.はじめに な特性(例えばROA、負債比率、設備投資)に 株式投資家は、 企業の現金保有を評価する際に、 基づく部分と、マクロ環境の変化(あるいはショ 企業の商品提供力や積極的な経営判断などへの評 ック)により変化する部分とにより構成されよう。 価を通じて収益性、成長性とリスクを考慮するだ 一方企業は、日々の営業のために現金を保有す ろう。また、その企業が直面する財務困難度や資 る。現金が原材料の支払い準備のために一定額預 金調達リスクに応じて現金保有の価値を評価しよ 金に滞留する場合、特に現金を取り出して評価の 中井 誠司(なかい せいじ) 事業創造大学院大学講師。1993年早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了。日興アセ ットマネジメントにて企業調査・株式運用業務に従事。2012年4月より現職。博士(経 営学、筑波大学)。 神山 直樹(かみやま なおき) メリルリンチ日本証券日本株チーフストラテジスト。1985年日興證券入社、日興アセッ トマネジメント、ゴールドマンサックス証券、モルガンスタンレー証券、ドイツ証券を経 て2012年9月から現職。85年一橋大学経済学部、90年ニューヨーク大学経営大学院 (MBA)、98年シティ大学(ロンドン)経営大学院(Ph. D) 。 ©日本証券アナリスト協会 2013 17