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クレジット運用の課題 - 日本証券アナリスト協会
金融危機とクレジット市場 クレジット運用の課題 ―インフォメーションレシオに見合ったリスク配分の必要性― 春 日 謙 一 (日本証券アナリスト協会検定会員 〈CMA〉) 目 はじめに 1.クレジット市場の現状と社債の位置付け 2.債券運用におけるリスク管理 次 3.クレジットとインフォメーションレシオ 4.戦略間のリスク配分とクレジット運用の役割 終わりに クレジット運用は、一般に債券運用の一環として位置付けられている。債券運用では通常国債主体のベンチマ ークが採用されるため、アセットアロケーションにおいて国内債券は準安全資産として扱われ、クレジット運用 に期待できる高いインフォメーションレシオに見合ったリスクバジェット(許容度)が与えられることが少ない。 クレジット運用の機会をフルに活用するには、運用者がインフォメーションレシオ向上に努め、委託者が必要十 分なリスクバジェットを配分することが肝要である。 明らかなクレジット超過収益機会が放置されてし はじめに まいがちな原因を整理し、クレジット商品に内在 昨年来のクレジット市場の混乱は、CDSの発展 する有利な収益機会を獲得するために必要なリス 後では最初のストレス状況をもたらした。店頭に ク配分プロセスを考察したい。 おける債券価格は公表データ以上に変動し、例え ば、あるA格の銘柄は3ノッチ以上の格下げを想 定し、さらにその格付けの実績デフォルト率の 10倍を織り込んだディスカウント価格でオファ 1. クレジット市場の現状と社債の位 置付け ーされてもビッドされないなど、合理的に説明し クレジット投資対象の特徴 にくい事象が散見された。本稿では、このように クレジットリスクにエクスポージャーを持つ投 春日 謙一(かすが けんいち) DIAMアセットマネジメント 債券運用グループ チーフ・ポートフォリオマネジャー。 1991年東京大学工学部卒業、2000年青山学院大学大学院国際政治経済学研究科修士課程 修了。91年日本興業銀行入行、2000年ロンバー・オディエ・アセットマネジメント、02 年新生銀行、05年大和住銀投信投資顧問を経て、08年1月より現職。 ©日本証券アナリスト協会 2009 71