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6618 大泉製作所
www.ohizumi-mfg.jp 6618 大泉製作所 久保田 達夫 (クボタ タツオ) 株式会社大泉製作所社長 自動車部品は増収ながらエアコン冷蔵庫は中国経済悪化で減収 ◆2013 年 3 月期業績 欧州債務問題が深刻化し、中国経済が減速する中で尖閣問題が発生したが、最終的に売上高は、昨年 11 月 に立てた修正予算の金額に近いものになった。収益面では、上期に中国工場において生産計画が乱れて労務費 や物流費等が大幅に上昇した。下期には、これらのコスト高を徹底的に改善し、利益レベルを向上させたが、上期 の赤字をカバーするまでに至らなかった。コスト高の主な理由は、当社の工場がある広東省東莞は賃金の上昇が 激しく、その上昇が、労働時間の縮小や若干の生産性向上を打ち消す結果となったことである。これにより、通期 では営業利益が 32 百万円の赤字、経常利益が 1 億 78 百万円の赤字となった。売上高は 107 億 80 百万円で、 前期比および期初予算比で若干の減少になった。自動車部品事業部門は、尖閣問題で日系自動車メーカーの売 上が 9 月から急速に落ち込んだが、北米市場が回復し当社の納品が増えた。エアコン冷蔵庫事業部門は、同様に 尖閣問題が大きく影響し、中国国内で日系メーカーの製品がまったく売れなくなった。また、基本的に中国経済は 停滞していたこともあり、エアコンは期初予算を下回る結果となった。売上原価率は、前期の 78.3%から当期は 81.9%に悪化した。当社は固定比率が高いので、売上の減少はストレートに限界利益の減少につながり、原価率が 高くなる。ただし、この悪化の理由の大半は、年間を通して中国工場の労務費管理が不徹底であったことに起因 する。為替については、当社の場合には、当社から中国工場へ納品している資材や素子と、当社がアセアンや欧 州諸国へ直売している金額、中国生産で日本へ返ってくる製品の金額がかなり近寄っており、事業全体では為替 の影響がうまく相殺される。しかし、営業外収支では、日本の本社が中国子会社に対して約 4 億円相当の債権を 持っており、前半の円高の時期にはこれが円ベースでマイナスになり、後半、特に第 4 四半期の円安ではプラスに 変わり、四半期ごとに業績が変動する要因となった。貸借対照表で売上債権が減少したのは、中国企業との取引 高が減ったことによる。純資産の増加は、主に円安による為替換算調整勘定による。 ◆2014 年 3 月期業績予想 当社の中長期の事業戦略は基本的に変化がなく、そこで説明したかなりの部分は実現されつつある。新規取引 についても、特に自動車関係では欧州の大手自動車メーカーまたは部品メーカーからの受注があり、その内容も、 当社が元々強いカーエアコン関係である。納品は、7 月から順次始まる。他方、日本では弱かったディーゼル車関 連の製品についても、某有力メーカーから、当社に温度センサーの発注があった。また、EV 車の開発で先行して いる欧州メーカーから、それに関連した温度センサーの研究開発用としてさまざまな引き合いが来ている。その他、 中期事業計画で話した新市場、クリーンエネルギーやエコ関連、特に二次電池等についても、各種メーカーから注 文が来ている。 今期については、売上高を 114 億円と見込んでおり、この金額は一昨年の売上とほぼ同額である。一昨年は震 災があり、タイの洪水があり、業界の得意先がかなりの減産体制に入った年であるので、かなり保守的な数字で ある。現実に、4~5 月の動向を見ると、この予算をかなり上回っているので、今期の売上自体は好調に推移する 本著作物の著作権は、公益社団法人 日本証券アナリスト協会®に属します。 と見込んでいる。問題はコストである。過去を振り返ってみると、リーマンショックなど、グローバル市場の中で当社 はさまざまなアップダウンを経験してきた。当社製品は耐久消費財を最終需要とするので、そのような影響を受け やすいビジネスであると考えたとき、多少の市場変動があっても十分に利益が出る体質に転換することが我々の あるべき姿だと考えている。したがって、上場を契機に、今まで本格的に取り組んでこなかった合理化・自動化を 徹底して実行する。そのための施策の 1 つは、中国工場の生産の平準化や 1 人当たりの生産性向上である。労働 集約型の工程を中心とした製造業が中国に進出した時代は、季節工や出稼ぎ工を中心にした生産に依存してき たが、現在これをいかに自動化しつつ労働者の定着を図るかが、各社共通のチャレンジとなっている。タイ工場に ついては、現在建設中であり、9 月から試作運転を始め、遅くともフル稼働は来年の 1 月を計画している。現時点 で、アセアン地域の売上・販売は商社を通しており、その商社マージンがかなり高いが、当社のタイ工場の稼働に 伴い、最終需要メーカーに直接納入し、マージンをかけないという約束が商社とできているので、中国からアセア ン諸国に持ってくるための物流費も含めて相当の効率化が実現すると考えている。さらには、生産技術上はかな りのチャレンジを伴うが、本格的な自動化・合理化を徹底していく。円安もあり、中国生産、タイ生産と日本国内生 産が変動費ベースでかなり近いものになってくるので、国内顧客に納品する製品は、今後日本で生産することを 真剣に検討しており、顧客とも協議している。これにより、生産計画が非常に立てやすくなり、物流費も大幅に削減 できる。今期の寄与としては、おそらく 10 月以降だと考えている。日本国内に生産の一部を戻せば、現在の間接 部門は非常に合理化しやすくなり、人員の再配置が実質可能となるので、ここでもネットでのコスト削減が期待で きる。いずれにしても、今期は日本、中国、タイという 3 つの拠点において最も効率的な生産工程を、外注先も含め て、作り上げていくための年であると考えている。売上が前期比 7 億円増なのに利益を 3 億~4 億円と見込んでい る理由は、増収に伴う限界利益の増加と上記のようなコスト削減が前提となっている。新規事業については、国内 や欧州その他の企業の研究開発についていくことが今後の成長の非常に重要であると考えている。これについて は当初の計画通りに着実に進んでいる。 ◆質 疑 応 答◆ 足元は好調ということだが、円安が売上のかさ上げにつながっているのか。 当社の売上の約 3.5~4 割は、ドルやユーロなどであり、円建てではない。当社の予算は 94 円で作っているので、 4~5 月の円安で売上が増えているのは確かである。しかし、数量ベースでも当初予算を上回っているので、増加 分の半分は実需と見ている。 自動車とエアコンでは何か特徴的な受注傾向があるか。 自動車とエアコンはともに増加するが、自動車の方はメーカーが生産計画を持っており、それに応じて四半期ご とに確定発注があるので、手堅い数字が当初の予算以上に来ている。エアコン関係も、4~5 月は当初の予算を大 きく上回っているが、その内容は中国市場が大きく、その次がアセアンである。中国市場については、国内経済が 去年に比べて改善しており、かなりの在庫調整を終えて注文が来ているが、今までの経験からすれば、このまま 1 年間続くとは言い切れない。当社の場合、売上の約 25~30%がエアコン関係なので、年間を通じて多少の変動の リスクはあると考えている。 省人化投資によって、設備投資と減価償却はどうなるか。 いま設備投資をしたいとリストアップしているものだけで 10 億円近くある。しかし、当社の貸借対照表から考えれ ば、プライオリティを付けて実施しなければならない。減価償却 4 億円前後なので、今期はできれば設備投資を 6 本著作物の著作権は、公益社団法人 日本証券アナリスト協会®に属します。 億円まで持っていきたい。残りの 4 億円については、今期の業績次第でさらに積極的な投資ができるかどうかが決 まる。 サーミスタのコモディティ化が進んで単価が下がり、一方で労働集約的な部分でコストが上がるのでマージンが 上がりにくいと思われる。新製品との入れ替えはうまくいくのか。 自動車部品メーカーは、たとえユニークな製品でもマージンおよび加工費も含めたコストは取引先から厳しくコン トロールされる。ただし、この中には一部、素子素体という焼き物の分野があり、これは元々原材料費が数パーセ ントで、製品力が最期まで残る分野である。当社はその素子素体に強みを持っているので、ある程度利益は確保 できると考えている。最近、新製品として当社に注文が来て開発している太陽光関係製品は、マージンが非常に 高い。しかし、マージンが高くて数量がたくさん出るというのが理想だが、この製品の開発と量産化の段階ではそ れほど多い数量ではない。 当期の設備投資はいくらだったか。 当期実績は 3.2 億円である。今期については、タイ工場の設備投資が 2 億円と推定して、後は通常ベースの減 価償却内で収めるようにしたい。 タイ工場の生産能力はどれくらいか。 アセアン地域の売上がすでにあり、それが中国から第 1 期のタイ工場の生産へ移ることになる。金額として、月 に 30 百万~40 百万円程度が第 1 期となる。これは順次拡大していく。エアコンだけでなく、自動車産業が基盤とし てタイに広がっており、当社が進出するのと同じ工場区域に当社の取引先がすでにかなり大きな工場で稼働して いる。したがって、タイで生産したものを彼らに納品していきたいが、自動車メーカーの場合には、どの部品をどの メーカーのどの工場から買うかを社内で検討して決めるので、それがいつ実現するかは今後の折衝次第であろ う。 600~1,000 度のような高温のサーミスタの開発は具体化しているか。 基本的な開発は終えた。常時 700 度を持つサーミスタで、今後、短期間で 1,000 度までの開発でできるものと考 えている。サーミスタのコーティング材のことで時間がかかったが、今は客先の調査の段階である。想定されてい る用途は、ディーゼル車の排ガス関係の触媒である。 (平成 25 年 6 月 5 日・東京) *当日の説明会資料は以下の HP アドレスから見ることができます。 www.ohizumi-mfg.jp 本著作物の著作権は、公益社団法人 日本証券アナリスト協会®に属します。