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金融のプロに欠かせないのは 広い視野と深い常識

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金融のプロに欠かせないのは 広い視野と深い常識
金融のプロに欠かせないのは
広い視野と深い常識
日本証券アナリスト協会 専務理事
萩原清人氏
投
Kiyoto Hagiwara
資理論が普及する以前は、経
て、深い常識も不可欠な要素です。
験だけが頼りだった運用の
当協会が実施している証券アナリ
について業種横断的に意見を集約し、
世界。しかしアセットや戦略、手法
スト検定第1次レベルの受講科目
関係機関に要望を提出するなどの活
の多様化・高度化が進む現在では、
は、
「証券分析とポートフォリオマネ
動も行っています。
質の高いリスク管理体制が求めら
ジメント」「財務分析」「経済」の3
「証券」という言葉が付いているた
れ、そこには証券アナリストの見識
科目で構成されています。また、第
め、証券会社のリサーチ・アナリスト
が不可欠です。
2次レベルではこの3科目に加え、
というイメージをもたれがちですが、
(GIPS)といった投資に関わるテーマ
そのうえリーマン・ショックに代
「職業倫理・行為基準」という科目
実際は当協会の会員のうち狭義の証
表される一連の金融危機は、証券ア
も設けています。これらは金融のプ
券関係は3割に過ぎません。さらに
ナリストにも大きな課題を突きつけ
ロとして、広い視野に基づいたスキ
銀行が3割、企業年金基金や一般事
ました。従来の投資理論は正規分布
ルを身につけているか、深い常識を
業法人などの会員も同程度を占め、
を前提としていますが、それは平時
兼ね備えているかを問うためにほか
活躍の場も多岐にわたっています。
における話。金融危機のようなテー
なりません。リーマン・ショックに
広い意味で「金融のプロ」を育成して
ルリスク* をいかに想定するかで、リ
つながる米国のサブプライムローン
いるといっても過言ではありません。
スクの様相も違ってくるはずです。
やモーゲージビジネスにおけるモラ
もちろん米国に比べればまだ層は
ところが、長らく平穏な時代が続
ルハザード問題なども、市場関係者
薄く、証券アナリストを活用する企
いたことで、そうした想定に対する
の間に広い視野と常識など高い倫理
業も限られていますが、今後も広報
認識が薄れたことは否めません。実
観があれば防げたかも知れません。
活動や大学向けの基礎講座といった
際にテールリスクを考慮した投資理
1962年に設立された当協会も、来
教育活動を続けることで、一般社会
論の構築は容易ではないでしょう
年で50周年を迎えます。われわれ
での認知度をさらに高めていきたい
が、現実に起こる問題として受け止
の目的は証券アナリストの育成です
と考えています。 めていくべきでしょう。
が、単に資格の付与だけでなく、資
ますます不確実性の高まる市場と
運用の世界では近年、とかく金融
格取得後の継続教育にも力を入れて
いかに対峙していくか —。今後、証
工学などテクニカルな分野ばかりが
います。また実務家や学識経験者
券アナリスト一人ひとりのさらなる
脚光を浴びています。しかし本来、
で構成される各種専門委員会を運営
活躍が期待されます。しかし同時に、
金融業界のプロフェッショナルに期
しており、国際財務報告基準( I FRS)
それは金融業界の経営層が真剣に取
待されるのは、広い視野です。加え
やグローバル投資パフォーマンス基準
り組むべき課題といえるでしょう。 *テールリスク:一般的には想定外で発生確率は低いが、発生すると巨額の損失につながるリスク
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