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2009年7月2日 - JBIC 国際協力銀行
平成 21 年 7 月 2 日 国 際 協 力 銀 行 国 際 協 力 銀 行 経 営 責 任 者 定 例 会 見 概 要 平成 21 年 7 月 2 日(木) 13:00~14:00 【サマリー】 0. はじめに 経済環境の現状認識: 昨年末に比べ懸念は減ったが、回復には時間がかかる。特に実体経済の状態に ばらつきが見られる。 1. 国際的な金融秩序混乱へのJBICの対応の現状: ① 「日本企業の海外における貿易・投資活動を資金面で支援」:緊急業務として途上 国向け、先進国向けを合わせ 70 件、8,121 億円承諾(6 月末時点)。 ② 「国際的な金融システムの安定化に向けた支援」:IFC との「途上国銀行資本増強 ファンド」設立、途上国金融機関向け「貿易金融支援策」発表、インドネシア始めア ジア諸国へのサムライ債発行支援など実施。 2. 日本企業の海外での資源開発・取得への支援: LNG プロジェクトとして、ロシア・サハリンⅡ(4 月 LNG 出荷開始)、豪州プルートプ ロジェクトに融資。 鉱物資源確保として、ブラジルの鉄鉱山権益取得、チリ・エスペランサ銅鉱山開発 などに融資、カナダのウラン開発会社に出資。 3. 日本の産業の国際競争力の維持・向上への支援: インドネシアなど日本企業が関わる海外大型電力インフラプロジェクトを支援。 南アフリカ・ダーバン港拡張など日本企業が進出する地域の港湾・鉄道等の物流 インフラ整備事業も支援。 4. 気候変動問題・環境ビジネスへの取組み: 「JBIC アジア・環境ファシリティ(FACE)」に基づき、ベトナムの水力発電プロジェク トに保証を供与し、中国環境・省エネ関連投資ファンドに出資。 「環境投資支援イニシアティブ(LIFE イニシアティブ)」を発表し、クリーンなエネルギ ー開発、省エネ、水、都市交通の 4 分野を優先分野として支援する方針。 5. アフリカ支援推進 今後 5 年間で総額 25 億ドルの JBIC によるアフリカ金融支援を推進。 昨年 7 月には「アフリカ室」を設置し、アフリカ向けの支援体制を強化。 【全文】 世界の金融・経済情勢は、昨年末と比べ多少底を打った、あるいは、二番底に対する大 きな懸念が寄せられなくなったと感じております。他方、回復は V 字型という程ではなく、あ る程度時間がかかりそうです。金融については目途がついた部分もありますが、実体経済 についてはばらつきがあり、先進国は暫く調子の悪い状態が続くであろう中、アジアを中心 とした国々は頑張っておられます。 1 JBIC は、こうした状況に対応するため、国内企業の海外展開をどう支えるか、あるいは、 それを超えてアジアを中心とした国々が潜在的能力を発揮するために資金を必要とする中、 各国政府の財政運営をどれだけサポート出来るか、両面を見ながら、日本政府とも相談し つつ色々な施策を継続してきております。 一方で、従来から JBIC に与えられている使命として、日本にとって重要な資源の海外に おける開発及び取得の促進や、日本の産業の国際競争力の維持及び向上、という分野で の取組みについても、精力的に進めてきております。こうした JBIC の最近の業務の実績や、 今後の取組みについてご紹介させて頂きます。 Ⅰ.世界的な金融危機への対応 昨年後半以降、国際的な金融秩序の混乱に対処するために、JBIC は、日本政府とも緊 密に連携を取りながら、(ⅰ)日本企業の海外における貿易・投資活動を資金面で支援して きました。同時に、途上国政府・国際機関等とも協調しながら、(ⅱ)国際的な金融システム の安定化に向けた支援などの取組みも進めております。 (ⅰ)日本企業の海外における貿易・投資活動を資金面で支援 日本企業の国際競争力を維持するため、昨年 12 月以降、政府により、2010 年 3 月までの 時限的な特例措置として、①途上国向け輸出支援のためのサプライヤーズ・クレジット、② 国内大企業を通じた途上国における事業に対する貸付、そして③日本企業が行う先進国 事業への貸付及び保証、の業務が認められました。これらの緊急業務は、多くの日本企業 に活用頂き、本年 6 月末時点での実績は、途上国向けが 38 件、1,358 億円、先進国向けが 32 件、6,763 億円、合計 70 件、8,121 億円となっています。今後とも、民業補完の原則を踏 まえ、必要な支援を実施してまいる所存です。 中規模企業や準大手企業クラスの海外現地法人に対しても、円滑な資金供給を実現す るべく、本邦金融機関経由による総額 30 億ドル規模のツーステップローンの対象金融機 関を公募しました。総額の配分は三菱東京UFJ銀行向けに 15 億ドル、みずほコーポレート 銀行向けに 8 億ドル、三井住友銀行向けに 7 億ドルに決定し、現在、貸付契約締結に向け 準備中です。 (ⅱ)国際的な金融システムの安定化に向けた支援 途上国における信用収縮に対しては、本年 2 月に IFC と協調で途上国銀行資本増強ファ 2 ンドを設立し、金融システムの安定化に努めております。 一方、こうした信用収縮が、特に途上国における貿易金融の円滑な供給にも影響を与え ており、1,000~3,000 億ドル程度の資金ギャップが生じると見積もられています。日本企業 の取引を含めた貿易取引の円滑化を図るべく、本年 2 月、アジアを中心とした途上国金融 機関向けに、今後 2 年間の措置として 10 億ドルの貿易金融支援策が発表され、同年 4 月 の第 2 回金融サミットでは 15 億ドルへと規模が拡充されました。しばらくは、先進国経済の 回復に時間を要する中、アジアを中心とした新興国が世界経済を支えていく状況になると 思います。そこで、需要はあるが外貨が入手出来ないためモノが買えないという事態になる と、日本とアジアの貿易も上手く機能しないということになりますので、そこを下支え出来な いかということで貿易金融支援を進めている訳です。 また、本年 4 月、JBIC はインドネシア政府との間で、同国政府が発行するサムライ債への JBIC 保証を柱とした、総額最大 15 億ドル相当円の金融支援に関する契約を締結しました。 その後、本年 5 月の ASEAN+3 財務大臣会合の機会に、このインドネシアでの取組みをアジ ア諸国向けに拡充すべく、最大 5,000 億円規模の「サムライ債発行支援ファシリティ(Market Access Support Facility:MASF)」の創設を発表しました。現在、インドネシアに次いで、フィ リピン政府との間で、総額 10 億ドル相当円のサムライ債に対する JBIC の保証供与につい て協議を進めており、早期の支援実現に繋げたいと考えています。また、これら以外の途 上国とも、具体的な協議を進めているところです。 こうしたサムライ債発行支援の意味合いは、世界の資本市場が小さくなっている中、途上 国・新興国が調達しようとするとコストや投資家需要の面で困難に直面するという問題もあ ることから、JBIC の保証を通じた支援を考えているものです。また、アジアでは域内通貨間 の取引の太宗がドル経由となっていますが、円で払うべき債務に対しては直接手当てをで きる点もあげられます。 Ⅱ.日本企業の海外での資源開発・取得への支援 資源の少ない日本にとって、海外における重要資源の開発や長期安定的な確保は重要 な政策課題です。 昨年度は、大型 LNG プロジェクトへの融資として、ロシアのサハリンⅡプロジェクト、豪州 のプルート LNG プロジェクト向け融資も行いました。サハリンⅡについては、ご承知のよう に紆余曲折がありましたが、4 月上旬には第一号LNG船が日本に到着しました。今後、 3 LNG 市場に関心を持つ国が増え、獲得競争が激しくなっていく中で、産ガス国の開発をど のように助けるか、その中で日本への引取りの確保が重要になってくると思いますので、 JBIC としても資金面での協力をさせて頂いております。 サハリン II LNG 事業 本年、ブラジルで鉄鉱山の権益取得向け融資を行いました。本件は、日本の製鉄企業等 が連合を組み、なおかつ、そこに韓国も加わった日韓連合で事業を行うものです。北東アジ ア全体の産業サプライチェーンの一つの姿としても良い案件だと思っております。 また、環境問題への対応から原子力発電へのニーズが高まっていますが、それと関連し て、カナダのウラン開発会社向けに日本国内の2社と共同で出資をしました。この会社は、 カナダ国内のみならず、カザフスタン等でもオペレーションを行っており、JBIC は、日本企業 によるグローバルなウラン鉱区権益の取得を支援しました。 更に、チリでのエスペランサ銅鉱山開発にも融資致しました。チリは銅が豊かな国ですが、 銅価格も 2007~08 年は大分乱高下していましたものの、やはり需要は根強いため徐々に 価格が上がってきており、今後、新興国の需要も増えていくと思われます。従って、ある程 度上流の権益を直接持っていることが安定供給に貢献するということから、銅鉱山開発を 行う日本企業をファイナンス面で支援しました。 昨年夏にかけての石油価格の高騰等に比べて、最近の価格動向は、じわじわと上昇しな がらも割合沈静化していると思います。そうした中、日本企業には、出来れば上流権益を取 りたい、あるいは、なるべく長期の契約を結ぶ形で資源を確保したい、という積極的な意向 はあるものの、ファイナンスが追いつかない状況との落差があります。JBIC としては、そこ を埋められるよう努力しながら、日本のエネルギー資源確保への支援に取り組んで参りた 4 いと思います。 Ⅲ.日本の産業の国際競争力の維持・向上への支援 JBIC の業務分野のひとつである、日本の産業の国際競争力の維持・向上への支援に関連 して、今後の日本企業の海外ビジネスを考えますと、日本企業が高い技術を持つ発電機器や 水の浸透膜など、パーツや部品などモノを売るのみならず、発電事業や造水事業など、全体 として事業をマネージすることにより、ノウハウを蓄積し、世界中で安定的にビジネスに取組 むことも考えられると思います。そうした意味で、日本がプライマリー・コントラクター、あるい はオペレーターというポジションが取れるような支援が出来ないか、考えております。 今、日本企業がグローバルに見て相対的に競争力があると思われる分野に、環境・省エネ 関連ビジネスがあります。これを上手く活用できるということは、日本産業の下支えのみなら ず、これからのグローバルな環境問題対応にも大きく貢献できることと思います。ODA ベー スで供与されるものは JICA 等で対応すると思いますが、ビジネスベースの案件は、実現に 向けて、JBIC としても支援していきたいと思います。 民活インフラ案件への日本企業の参画を支援する例としては、昨年 8 月にカタールの天 然ガス焚き複合火力発電・淡水化事業に対し、加えて 12 月にインドネシアの石炭火力発電 所拡張事業に対し、プロジェクトファインスを供与しました。また、昨年 9 月には、シンガポー ル最大の電力会社セノコ・パワー・リミテッド向けに日本企業と共同で出資も行いました。 インドネシア・発電所拡張事業 海外で事業を展開する日本企業にとって必須の基幹インフラ、特に港湾・鉄道等の物流 インフラの整備にも取組みました。昨年 12 月には、中南米における重要なインフラであり、 海運ビジネスの要衝であるパナマ運河の拡張プロジェクトや、ブラジル鉄鋼石搬出等に欠 5 かせない同国南部の貨物鉄道網の拡張・近代化プロジェクトに対して、融資等を行いまし た。また、本年 3 月には、自動車、化学はじめ日系メーカー等が欧州向け輸出拠点として多 数進出する、南アフリカのダーバン港湾の拡張プロジェクトへの融資等を行いました。 パナマ運河拡張事業 このように、国際金融危機により経済活動全体の低迷が危惧される中にあっても、インフ ラ事業を引続き支援することは、当該国の経済活動促進及び進出日本企業の事業環境整 備の観点から重要であり、JBIC としても、日本企業の海外展開に役立つ基盤整備支援を 続けていく所存です。 Ⅳ.気候変動問題・環境ビジネスへの取組み 日本政府が掲げた「クールアース・パートナーシップ」に基づく具体的な資金供給メカニズ ムの一つとして、JBIC は昨年 4 月に「JBIC アジア・環境ファシリティ(略称 FACE)」を創設し、 JBIC の出資・保証機能を活用して、民間資金を動員しながら、気候変動緩和対策案件等 の取組みを進めています。具体的なプロジェクトの例としては、日本企業が CDM 事業として 排出権(京都メカニズムに基づくクレジット)の獲得を予定する、ベトナムの水力発電プロジ ェクトへの民間銀行融資に対する保証や、中国環境・省エネ関連投資ファンドへの出資を 実施しました。 現在、米国はじめ主要国は、現下の経済危機の克服と、中期的な課題である気候変動問 題への対応という 2 つの課題に直面しています。こうした中、環境投資の促進を通じて景気 刺激を行い、経済回復を図る、という 2 つの問題を同時に解決しようという動きは、米国の グリーン・ニューディールをはじめ世界的に広がっています。こうした環境投資等の資金ニ 6 ーズは膨大なものであり、JBIC だけで全てカバーできるというものではありませんが、JBIC に関しても、こうした背景のもと、本年 3 月に、2 年間 50 億ドルの環境投資支援イニシアティ ブ、通称 LIFE イニシアティブを発表しました。本イニシアティブを通じたメッセージは、第一 に国際金融機関や民間金融機関との協調であり、第二に優先分野を明示することです。 今後、気候変動対策に要する膨大な資金を考えれば、民間資金の果たす役割は極めて 重要です。JBIC としては限られた資金を民間資金のモビライゼーションに有効活用するこ とで、触媒的な役割を果たしたいと思います。LIFEでは優先分野として、クリーンなエネル ギー開発、省エネ、水、都市交通の 4 分野が例示されており、こうした案件については、なる べくファスト・トラックで処理をしたいと考えております。対象国は限定しておりませんが、主 眼はアジアということで、アジア各国で JBIC の駐在員事務所等を通じて話をしておりますし、 私自身も 4 月以降、アジア各国を訪問する中で、現地政府とこうした問題について協議させ て頂いています。 “LIFE”のイメージ Ⅴ.アフリカ向け支援の推進 昨年は、アフリカ向け支援は環境と並び最大の世界的な課題でした。JBIC もアフリカ支援 について引続き努力をする所存です。昨年 5 月に横浜で開催された第 4 回アフリカ開発会 議(TICAD IV)において発表された、今後 5 年間で総額 25 億ドルの JBIC によるアフリカ金 融支援を推進したいと考えています。平成 20 年度のアフリカ向け承諾実績は 1,135 億円と なりました。なお、昨年 7 月にはアフリカ室を設置し、アフリカ向けの支援体制を強化してお ります。 以 上 7