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食品医薬品部 - 大阪府立公衆衛生研究所
平成 17 年度研究実施 / 終了報告書 食品添加物に関する衛生学的研究 食品医薬品部 食品化学課 吉田政晴、池辺克彦、尾花裕孝、北川幹也 柿本幸子、吉光真人、野村千枝 研究目的 示差屈折計) で行った。 本方法による添加回収率はチリソー ス 86%, ドレッシング 99%, ココナッツミルクタピオカ入 食品中のポリソルベート(乳化剤)の定性・定量法の検 り 85%, スナック菓子 93%, コンソメスープ 87%, キムチ 討ならびに食肉の鮮度におよぼす L- アスコルビン酸(鮮 鍋の素 83%, アイスミルク 87% であった。 度保持剤)の影響について 誌上発表 研究実施状況 ポリソルベート類は、わが国では許可されていない指定 外添加物である。現在、分析法については TLC による定 平成 18 年度の研究実施計画 性試験で行っているが、n- ヘキサン / アセトニトリル分配 1) 17 年度に開発したポリソルベート類の分析法について による脱脂操作やアルミナカラムによる脱色操作を行うた は、検査 SOP に組み入れる予定であるが、その際必要 め、操作が煩雑で、かつ食品由来の夾雑物の影響を受ける に応じて追加的な実験を行う。 ことがある。そこで脱脂操作に固相抽出カラム(ISOLUTE 2) 食品添加物などの分析精度を高めるために、物質の化 Multimode)を、脱色操作に固相抽出カラム(中性アル 学構造情報により判定する質量分析計の検査業務への導 ミナ)の検討を実施するとともに、HPLC(C18 カラム) 入を試みる。既存検査項目の GC/MS や LC/MS への適 による定量法の検討を行った。分析操作では 5%- メタノー 用可能性について検討し、検査標準作業書の改訂に結び ル含有酢酸エチルで食品から抽出、濃縮した溶液を少量の つけたい。 酢酸エチルに溶解し、Multimode カラムに充填した。酢 3) 食品の鮮度保持研究については、マグロなどの鮮度を 酸エチルで洗浄しメタノールで溶出することで脱脂を、ま 良く見せるために使用されたことのある一酸化炭素分析 たその溶出液を中性アルミナカラムに充填し、酢酸エチ 法の簡便化を試みる。現在の手法は GC/ メタナイザー ル - メタノール (8:2) 溶出で脱色を行った。定量について 法であるが、一酸化炭素検知管を使ったスクリーニング は、濃縮後、少量のメタノールに溶解し、HPLC(カラム: を検討する。 HIKARISIL C18 カラム、移動相:メタノール、検出器: 19 平成 17 年度研究実施 / 終了報告書 食品中の残留農薬に関する研究 食品医薬品部 食品化学課 住本建夫、村田 弘、起橋雅浩 高取 聡、北川陽子、柿本幸子、岡本 葉 研究目的 MS で平行して行い、現行分析法とほぼ同等の結果が得ら れた。本法は従来法よりも短時間に多くの検体を処理する 輸入農作物の多様化、消費者の農薬に対する意識の高ま ことができ、多くの農薬の一斉分析が可能となることが判 りにともない、食品中の残留農薬分析は重要な課題である。 明した。 食品衛生法の改正により、平成 18 年 5 月より残留農薬の 誌上発表 ポジティブリスト制が施行され、基準が設定されていない 農薬等が一定量以上含まれる食品の流通を禁止することと 1) Okihashi M., Kitagawa Y., Akutsu K., Obana H.and なるため、各種の食品について、数多くの農薬の残留検査 Tanaka Y. : Rapid Method for the Determination が必要となる。また、迅速性も必要となる。そこで、制度 of 180 Pesticide Residues in Foods by Gas に対応できるよう、従来より行ってきた多成分一斉分析法 Chromatography/Mass Spectrometry and Flame 等の検討をさらに進めていく。 Photometric Detection, Journal of Pesticide Science, 研究実施状況 厚生労働科学研究費補助金による「検査機関の信頼性確 30, 368-377 (2005) 平成 18 年度の研究実施計画 保に関する研究」の分担研究として、「農薬等のポジティ 本年 5 月から「農薬等のポジティブリスト制」が施行 ブリスト化に伴う検査の精度管理に関する研究」で参画し、 され、対象となる農薬数は現行の 250 種類から 516 種類 農薬検査の外部精度管理調査を行った。当研究所の他、8 に倍増する。当研究所では現在、76 種類の農薬の一斉分 地方衛生研究所の参加協力を得て、添加農薬の種類と濃度 析を行っているが、ポジティブリスト制の導入により、検 を求める方法により行ったが、添加農薬を誤認したところ 査農薬の種類を増加しなければならない状況になってい はなかった。分析方法ついては各地研独自の標準作業書に る。そこで、従来の分析法を改良し、迅速で正確な試験法 従い検査するように求めたが、添加濃度については若干異 を確立したいと考えている。改良試験法による添加回収実 なる値を報告したところがあった。正確な測定値を出せる 験等を行い、 試験法の妥当性を検討する予定である。また、 要因についてさらに検討を進めるつもりである。地研協議 厚労研究の分担研究課題である「農薬等のポジティブリス 会近畿支部理化学部会の共同研究である「化学物質モデル ト化に伴う検査の精度管理に関する研究」において、本年 における多検体迅速一斉検査の精度管理等の検討」に参加 度は各地研が日常検査していない農薬を食品に添加し、精 し、厚生労働省案の一斉試験法(GC/MS)について検討 度管理試料として配付して外部精度管理事業を遂行する。 した。当研究所は玄米とりんごについて、46 種類の農薬 本年は日常測定していない農薬類を分析するため、各地研 を添加し、その回収率を調べた。分析結果は 2、3 の農薬 (カ では検査方法から検討しなければならず、外部精度管理試 プタホール、キノメチオネート)については良くなかった 料としては難しいものになる。測定の困難な農薬類が判明 が、他は概ね良好であり、日常の検査に使用できるものと することや分析法の問題等多くのデータが得られるので、 考えられた。残留農薬の検査について、この数年、試料採 それらのデータの解析を行い、より正確に測定するための 取量を 10g、抽出溶媒をアセトニトリル 20mL と小規模 要因等について検討を行いたい。地研協議会近畿支部理化 にし、50mL 使い捨て遠心管容器内で抽出、脱水、遠心分 学部会の共同研究である「化学物質モデルにおける多検体 離を行って分析時間を短縮した分析方法を検討してきた。 迅速一斉検査の精度管理等の検討」に参加し、厚生労働省 本年度は使用する固相カラムの条件検討を行い、検討対 案の一斉試験法(GC/MS 分析法)の適正性等を引き続き 象試料と分析対象農薬を増加した。測定は GC-FPD、GC- 評価していく。 20 平成 17 年度研究実施 / 終了報告書 食品に残留する微量有害物質に関する研究 食品医薬品部 食品化学課 吉田精作、桑原克義、田口修三、阿久津和彦 研究目的 食品中に残留する微量有害汚染物質に関して、その分析 成した。 3) 食品中のPBDEの汚染レベルについて調査を進めた。 4) 輸入食品中のカビ毒パツリンの分析方法を検討し、固 方法を開発・改良し、汚染レベルを分析し、汚染源を除去し、 相抽出後HPLCによる定量を行う簡易・迅速な方法を リスクを分散させる方法を提言する等、府民へのリスクを 開発し、GLP対応としSOPを作成した。 低下させる研究を行うことは、当課にとって必要かつ重要 誌上発表 な業務である。本研究においては、家屋用殺虫剤の食品汚 染、PCB・DDT等有機塩素化合物の食品汚染、カビ毒 1) 吉田精作 , 田口修三ら:大阪府下で 1995 年から 2003 による輸入食品汚染や動物用医薬品の残留汚染等の分野に 年に採取した畜水産食品中の残留合成抗剤 , 日本食品化 おいて、分析法の開発並びに実態調査等を行い、食品を介 学学会誌 , 12(1), 46-50(2005) した微量有害物質の府民へのリスクアナリシスを行い、府 民の健康を守る提言を行うことを目的とする。 研究実施状況 1) 殺虫剤成分である S-421 の牛乳中濃度を測定した。 2) 食品中有機塩素系農薬の分析方法を精度の高いGC−M Sを用いた定量法に改良し、GLP対応としSOPを作 平成 18 年度の研究実施計画 1) 動物用医薬品の残留について、分析方法の開発を引き 続き行う。 2) 食事・母乳中の有機塩素剤汚染について、分析を引き 続き行い、 分析結果から府民の健康影響への評価を行い、 汚染の悪影響の低減化を提言する。 21 平成 17 年度研究実施 / 終了報告書 母乳中の残留性有機汚染物質(POPs)に関する研究 食品医薬品部 食品化学課 小西良昌、北川幹也、阿久津和彦 研究目的 測定し、経年的推移を明らかにした。 3) 水酸化 PCB については、市販されている標準品が少な 近年、環境汚染物質による内分泌かく乱作用が問題と く、水酸化 PCB を異性体別に同定することが困難であっ なっている。これら化合物の特徴として、レセプターとの たが、近年徐々に市販標準品も増えてきている。しかし 結合に際し、p- 位にフェノール性水酸基をもつことが極 ながら、抽出等での回収率等に若干の改良点が必要であ めて重要である。ポリ塩素化ビフェニール(PCB)は、高 る。水酸化 PBDE については、市販標準品が無く、未 い毒性をもつ環境汚染物質であり生体への蓄積性が高い。 だ分析に至っていない。 ポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDE)は PCB やダイ 誌上発表 オキシン類と類似した構造をもつ化合物である。本研究の 目的は、PCB、PBDE の個々のアイソマー代謝産物の母乳 中濃度を測定し、汚染状況の推移を明らかにする。 研究実施状況 1) Konishi et. al.:Surveillance of polychlorinated diphenyl congeneric patterns in human breast milk from 1973 to 2000 in Osaka, Japan, Environmental. Health and Preventive Medicine, 11, 38-44 (2006) 当研究の基礎となる、母乳中の POPs 濃度の測定は、 平成 18 年度の研究実施計画 1972 年より継続調査しており、その母乳試料(乳脂肪) の一部を冷凍保存している。 1) 母乳中水酸化 PCB を測定するため、開発した分析法の 1) 平成 13-15 年度の科学研究費補助金による研究により、 改良を行い、4-OH-PCB をはじめとする水酸化 PCB の 母乳中の PCB 同族体・異性体別の濃度を明らかにし、 同族体・異性体組成をより正確に定量する分析法を確立 その化合物別の母乳中濃度の経年推移を明らかにした。 する。 その結果、塩素数、塩素置換位置により、生体内蓄積性 が大きく異なり、人体内動態の特徴を見いだした。また、 母乳中に存在する主な異性体と摂取食事との関係から、 2) 水酸化 PBDE については、標準品が市販され次第、分 析法の検討を行う。 試料である冷凍保存乳脂肪(1973 年〜 2005 年)の 異性体別の吸収および代謝に関する推測を得ることが出 使用は、インフォームド・コンセントを行い、当所倫理 来た。これらの研究成果は下記の英論文および学会発表 審査委員会により条件付(母乳提供者の承諾を受け、上 にて明らかにした。 記研究にのみ使用可)承認済である。 2) PBDE についても、母乳中同族体・異性体別の濃度を 22 平成 17 年度研究実施 / 終了報告書 遺伝子組換え食品に関する研究 食品医薬品部 食品化学課 吉光真人、北川幹也、野村千枝 研究目的 Maxi Kit を用いた抽出時にα - アミラーゼ処理をおこなっ たところ、どちらも効果がみられた。 食品として認可されていない遺伝子組換え食品の流通防 と う も ろ こ し 試 料 に 対 し、CTAB 法、Qiagen Plant 止、また消費者への食品情報提示の観点から、2001 年 4 Mini Kit、Promega Wizard Kit の 3 つの DNA 抽出法を 月より遺伝子組換え食品を規制する法律が施行された。当 用いて DNA を抽出し、定量 PCR をおこない、組換えと 研究所でも現在、法律に基づいた遺伝子組換え食品の検査 うもろこし混入率に与える抽出法の影響を検討した。そ を実施している。しかしながら、現在の検査法ではすべて の結果、CTAB 法は他の 2 法よりも組換えとうもろこし の遺伝子組換え食品を検査することは不可能である。そこ 混入率が高くなった。抽出される DNA の種類、分子量が で、本研究では遺伝子組換え食品の新たな検査法を開発、 CTAB 法と他の 2 法で異なるためと考えられた。 または現在の検査法を改良して測定可能な遺伝子組換え食 誌上発表 品を増やし、府民の食の安全に寄与することを目的とする。 研究実施状況 DNA の抽出が困難な食品に対して酵素処理を検討した。 平成 18 年度の研究実施計画 コーンスターチに対し、CTAB 法抽出時にα - アミラーゼ、 今年度に引き続き、現段階で DNA 抽出が困難な大豆、 Proteinase K 処理をおこなったところ、Proteinase K 処 とうもろこし、じゃがいも加工品に対し、新規 DNA 抽出 理は効果があり、α - アミラーゼ処理は効果がない結果と 法および現 DNA 抽出法の改良などの検討をおこなう。今 なった。スイートコーンに対し、CTAB 法抽出時にα - ア 年度は発酵食品、油などについて検討する予定である。 ミラーゼ処理をおこなったところ、効果がない結果となっ また、将来的に遺伝子組換え食品が開発されると予想さ た。Qiagen Genomic-tip を用いた抽出時にα - アミラー れるコメ、小麦、大麦などの作物について、引き続き情報 ゼ処理をおこなったところ、それほど効果がみられなかっ 収集をおこなう。 た。じゃがいもでんぷんに対し、CTAB 法、Qiagen Plant 23 平成 17 年度研究実施 / 終了報告書 内分泌かく乱化学物質に関する研究 食品医薬品部 食品化学課 松本比佐志、北川陽子、高取 聡 研究目的 内分泌かく乱作用が疑われる化学物質の作用の評価を行 酸モノブチル(0.65 ppb)および MEHP(< 1.0 ppb) が検出された。本法は、フタル酸ジエステル類の曝露評 価に活用できる。 うと共に当該化学物質の高精度分析法を開発し、生体試料 2) 酵母 two-hybrid 法および CoA-BAP 法による大豆等に および食品中等の実試料中の濃度を明らかにする。その汚 含まれるイソフラボン類と汚染化学物質であるアルキル 染実態からヒトに対する曝露量を考察・評価する。とりわ フェノール誘導体についてエストロゲン様作用の評価を け、日常的な曝露が懸念されるフタル酸ジエステル類およ 行った。イソフラボン類は、hER βに対する反応性が びイソフラボン類に重点を置き、下記の研究項目を遂行す hER αに対する反応性に比べて高い傾向にあった。ま る。 た、CoA-BAP 法は酵母に対して毒性を示すような化学 1) フタル酸ジエステル類の曝露評価 物質に関しても内分泌かく乱作用の評価が可能であり、 2) 大豆イソフラボン類の内分泌かく乱作用の多面的評価 スクリーニング法として有用であることが示唆された。 および摂取量の解析 研究実施状況 1-1) フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)の代謝物である フタル酸モノエチルヘキシル(MEHP)は、動物実験に 誌上発表 1) 松 本 比 佐 志 , 足 立 伸 一 , 鈴 木 定 彦: 紫 外 線 吸 収 剤 およびその関連化合物によるエストロゲン様作用 , YAKUGAKU ZASSHI, 125(8), 643-652(2005) おいて精巣毒性を有することが示されている。健康な日 平成 18 年度の研究実施計画 本人男性(45 名)について DEHP および MEHP の血 清中の濃度と精液の 臨床所見との相関を調べた。全て 1) 周産期において採取された生体試料(母体血 , 臍帯血 の検体から MEHP が検出され、その中央値は 1.6 ppb および母乳)中のフタル酸モノエステル類を測定し、新 であった。また、DEHP については 45 検体中 15 検体 生児および乳児のフタル酸ジエステル類の曝露評価を行 から検出され、その中央値は 2-3 ppb であった。血清 中の MEHP および DEHP の濃度と精液の臨床所見との 間に有意な相関は認められなかった。 う。 2) CoA-BAP 法と酵母 two-hybrid 法における結果の作用 強度の差異について、要因を検討する。 1-2) フタル酸モノエステル類をフタル酸ジエステル類の 調製粉末大豆乳や豆乳等に含まれるイソフラボン類の高 曝露評価のバイオマーカーとして、血清中の当該化学物 精度分析法を開発し、乳幼児に対するイソフラボン類の 質群の高精度分析法を開発した。本法を用いてヒト血清 曝露量について考察する。 を分析したところ、グルクロン酸抱合体を含めてフタル 24 平成 17 年度研究実施 / 終了報告書 食品の放射線照射に関する研究 食品医薬品部 食品化学課 尾花裕孝 研究目的 が下がり確実な判定が困難になった。一方、牛肉や豚肉で は 1 年間の冷凍保存後も照射検知が可能であった。 放射線照射は、食品を非加熱的に殺菌できる確実な手法 本法は操作が簡単で、約 30 分で結果が判明するなど簡易 であり、欧米では、香辛料や食肉などに照射が許可されて 法として優れた点を持つが、適用できる試料範囲が限定的 いる。日本ではジャガイモの発芽防止のみに照射が認めら であった。 れている。 本研究は食品に照射された放射線を、化学分析により高 誌上発表 感度かつ迅速に検知する分析法開発を目的とする。本年度 1) Obana H., Furuta M., Tanaka Y.:Analysis of は 2- アルキルシクロブタノン(シクロブタノン)に関し 2-alkylcyclobutanones with accelerated solvent ては、照射済み食品を材料とした加工食品を長期保存した extraction to detect irradiated meat and fish, J. 場合の検知可能性について検討した。また、香辛料などの Agric. Food Chem, 53(17),6603-6608(2005) 照射検知指標として、照射によって生成する一酸化炭素ガ スの簡易分析法について検討した。 研究実施状況 平成 18 年度の研究実施計画 保存試料中のシクロブタノンの安定性については、脱酸 素剤を加えた条件下で照射ラット餌を保存中であり、一定 放射線照射された鶏卵や鶏肉を材料にしたホットケーキ 期間後のシクロブタノン濃度を比較することにより、酸素 や空揚げを 1 年間冷凍保存すると、シクロブタノンは約 による分解の可能性を明らかにしたい。 30 〜 50% 減少したが検知は可能であった。室温保存モデ 今年度検討した一酸化炭素は検知指標としての有用性が ルとして、ラット固形餌に照射し室温と冷凍保存を比較し 限定的であったので、18 年度はさらに新規指標を検討し、 たところ、室温では 9 ヶ月保存で検出下限までシクロブ 植物試料を含めた照射検知法の開発を試みる。 タノン濃度が減少し、冷凍保存も減少速度は遅いが似た傾 食品照射の標的は、微生物類の DNA であるが、同時に 向を示した。シクロブタノンの分解には、空気中の酸素が 食品の DNA も一部変性する。その中で照射特異的な化学 関与している可能性が考えられ、現在検証中である。 構造変化を見いだせれば、照射指標として活用できる可能 食品を放射線照射した時に生じるガス類の中で、一酸化 性が高い。DNA 構成成分中のチミジンは放射線照射によ 炭素は比較的長期間試料中に残り、照射指標として有用で り水素化され、5,6- ジヒドロチミジンが生成することが知 あることが共同研究者の古田らにより報告されている。そ られている。5,6- ジヒドロチミジン抗体を用いた ELISA こで密閉されたビニール袋中に照射試料を入れ、一定量の 法により測定する方法が報告されているが、精度など信頼 水を加えた後に電子レンジで瞬間的に加熱し試料に残存す 性に問題がある。そこで LC/MS を用いて 5,6- ジヒドロチ る一酸化炭素を追い出し、一酸化炭素検知管により測定す ミジンを測定し、照射検知を試みたい。DNA 成分を指標 る簡易検知法を考案した。 にできれば、全食品をターゲットにした分析法として開発 本法の目的は植物性の照射食品検知であるが、全粒胡椒 できる可能性が高い。試料からの DNA 抽出までは GMO や山椒の実などでは照射後 6 週間までの室温保存では照 検査の技術を生かすことができ、新規ではあるが比較的取 射検知が可能であったが、10 週間になると残留ガス濃度 り組みやすい分野であると思われる。 25 平成 17 年度研究実施 / 終了報告書 加工食品中の特定原材料の分析法開発および実態調査 食品医薬品部 食品化学課 北川幹也、吉光真人、野村千枝 研究目的 素)を加えることにより、 これらの鑑別が可能となった。 2) 通知法の変更について 食品アレルギーの原因である特定原材料 5 品目につい 平成 17 年 10 月に通知法が変更となった(食安発 て平成 14 年より表示が義務づけられ、厚生労働省より分 1011002) 。従来法の併用も可能となっているため、従 析法が通知されている。しかし、この分析法は通知(食発 来法と改良法についての比較を行った。その結果、卵に 1106001)にも示しているように、抽出効率や擬陽性 / 擬 ついて従来法で検出限界値以下であった食品において、 陰性などについて検討する必要がある。さらに、特定原材 改良法では明らかな陽性となることが判明した。 料 5 品目(そば、小麦、落花生、卵、乳)以外でも、大 豆や甲殻類、果実類などもアレルギーをひきおこすことが 誌上発表 認められ、食品中の混入実態を明らかにすることが求めら れているが、分析法は未だ確立されていない。 本研究では、これら特定原材料の分析法を開発し、大阪 府下に流通する食品などへの混入実態を明らかにすること により、大阪府民の食の安全に寄与することを目的とする。 研究実施状況 1) 乳の鑑別について 平成 18 年度の研究実施計画 1) 通知法の変更(食安発 1011002)による行政検査の結 果への影響について検討を行う。追加分析法において、 従来法より感度あるいは分析精度の低下が予測されるも の( 「そば」で考えられる)について詳細に検討し、適 確な結果が得られる方法について検討する。 食品衛生法では、乳については牛乳にのみ表示義務が 2) アレルギー患者の多い「大豆」 、花粉症やラテックスア あるが、現在の通知法では義務のない羊乳や山羊乳が擬 レルギーとの相関が疑われる「果実 (Profilin) 」の検出 陽性となる。そこで、通知法の確認検査であるウエスタ を目的とした ELISA 系の構築について検討する。 ンブロッティング法にレンネット処理(カゼイン分解酵 26 平成 17 年度研究実施 / 終了報告書 研究終了 器具・容器包装に関する衛生化学的研究 食品医薬品部 食品化学課 池辺克彦、柿本幸子 研究目的 する傾向にあった。 以上の結果から、PET 容器のように硬質な製品として 一部の化学物質が極微量で内分泌かく乱作用を引き起こ 成型されると、材質中に Sb 及び Ge が含有されていても、 し、人の健康に影響を与える恐れがあるとの指摘がある。 それらの元素は溶出されにくいことがわかった。 食品用プラスチックの器具、容器包装の一部にも添加剤、 結 論 加工助剤としてそれらの化学物質が使用されている可能性 があるが、食品への移行などについては、未だ不明な点が 公定法による PET 容器中の Sb、Ge の溶出試験は操作 多い。 方法に長時間を要し、また人体に有害な四塩化炭素を使用 一方、四塩化炭素等の人体にとって有害な試薬が現在も している。従って迅速、安全でしかも高精度な試験法への 分析法の一部に使用されている。これらのことから、有害 改正が必要であった。 試薬を使用しない微量分析法の開発、省力化に向け検討す 今回、フレームレス原子吸光法、ICP-MS を用いた新分 る。 析法の開発を行った。本法は、簡単、迅速で安全な分析法 研究実施状況 であると考えられる。この新分析法を用いて、PET 製品、 原材料のペレット等の溶出試験を行い、Sb、Ge の溶出量 アンチモン (Sb)、ゲルマニウム (Ge) の新分析法を用い を測定し新知見を得た。 て、ポリエチレンテレフタレート (PET) の溶出実態調査 以上、本研究は当初の主目的をほぼ達成し、役割を終え を行ってきた。市販の PET 容器を用いた場合、4% 酢酸 たと判断できることから終了とする。 溶液を入れて 60℃、30 分間、さらに厳しい条件である 成果の活用 95℃、30 分間の溶出試験を行い ICP-MS で測定を行った 結果、Sb、Ge いずれの試料からも検出されなかった。 1) 柿本幸子、池辺克彦、堀 伸二郎:ICP-MS を用いたポ そこで、今回は PET の原材料となるペレット3試料、 リエチレンテレフタレート (PET) 容器におけるアンチ パウダー 1 試料、ネット1試料を4%酢酸溶液に浸し モン、ゲルマニウムの溶出試験法の検討 , 食衛誌 , 45, 60℃、30 分間の溶出試験を行い ICP-MS で測定した。Sb 264-269(2004) についてはペレットの2試料でそれぞれ 11.6 〜 21.6ng/ 2) 池辺克彦、 柿本幸子:ポリエチレンテレフタレート (PET) mL が溶出された。また、ネット試料では 1273.2ng/mL 容器中におけるアンチモン、ゲルマニウム溶出試験法の 溶出された。Ge はいずれも溶出されなかった。また、 ペレッ 電気加熱原子吸光光度法を用いた高感度分析 , 大阪府立 ト 1 試料とパウダー試料からは 2.5ng/mL、43.6ng/mL 公衛研所報 , 42, 25-29 (2004) の Ge が溶出されたが、Sb は溶出されなかった。さらに、 本研究の成果は、人体に有害な試薬を使用しないで分析で 95℃、30 分間の溶出試験を行った場合、Sb 及び Ge とも きる試験法の開発と、時間の省力化を達成することが出 溶出されやすい傾向にあった。また、容器、ペレット、パ 来たことがあげられる。 ウダーへと、溶出溶媒に接触する面積が大きく、ネットの ように柔らかい繊維になると、材質から溶出する量も増加 27 平成 17 年度研究実施 / 終了報告書 生薬・漢方製剤の品質評価に関する研究 - ニンジンサポニン及びサイコサポニンの分析法の開発 - 食品医薬品部 薬事指導課 山崎勝弘 研究目的 溶出させる方法を検討した。その結果、① ギンセノシ ド Rb1 および Rg1 の同時分析には無理があり、個別に 現在、製剤中のニンジンサポニン(ギンセノシド)類は 定量条件を設定する必要があった。 ② 妨害成分の除去、 定量試験が実施されておらず、また、サイコサポニン類に すなわちクリーンアップには従来の Sep-Pak NH2 と ついては良好な分析法が無い。しかし、生薬のニンジン及 C18 のジョイントカートリッジよりも、Oasis MAX の びサイコについては、日本薬局方に成分含量の測定法が収 方がはるかに優れた効果が得られることが判明した(昨 載される予定であり、今後、製剤においても定量が必要と 年の日本生薬学会及び生薬分析シンポジウムで発表)。 なる。そのため、簡便な前処理の後、高速液体クロマトグ 2) サイコサポニン ラフィーを用いて分析する効率的で精度の高い分析法を設 サイコサポニン a,d は紫外部吸収がほとんど無いた 定する必要がある。 め、加水分解によりそれぞれ b1,b2 に変換して定量す 研究実施状況 1) ニンジンサポニン る必要があるが、d から b2 への変換率が 100%である のに対して a から b1 への変換率は標準品で 70 〜 90% と問題点があった。ただ、加水分解によって非常に定量 ニンジンを配合した生薬製剤・漢方製剤において、ギ 感度が良くなった。一方、指標成分を b2 に限定して分 ンセノシド類の定量は製剤中での含量が非常に少ないこ 析法を検討した場合、小柴胡湯では b2 のピークが分離 とと、また HPLC 分析において測定波長が 203nm と短 したが、配合生薬が非常に多い製剤ではさらに妨害ピー いため妨害成分の影響を受けやすいなど問題がある。前 クの影響があるため、Sep-Pak NH2 等で前処理を行っ 回、漢方製剤中のギンセノシド Rb1 及び Rg1 を、Sep- たが、完全なクリーンアップには至らなかった。 Pak NH2 と C18 のジョイントカートリッジでクリーン アップ後、HPLC で分析した。しかし、これらの方法 誌上発表 では小柴胡湯、人参湯などで辛うじて分析できる程度 で、非常に多くの生薬を配合した漢方製剤の分析は困難 であった。そこで、新たに保持力の強い固相抽出法と 平成 18 年度の研究実施計画 HPLC の分析条件を検討した。固相にマルチモードの ニンジンサポニン及びサイコサポニンの定量法につい Oasis MAX (Waters、逆相モードと強陰イオン交換樹 て、最近市販されるようになった性能の良い固相抽出キッ 脂の性質をもつ ) を用いた。試料溶液はアンモニアアル トを用いて、より簡便・迅速に、また高回収率を得られる カリ性にしイオン化して、酸性物質を樹脂にトラップし、 抽出法を検討していく予定である。 かつ適切なメタノール濃度で中性物質及び塩基性物質を 28 平成 17 年度研究実施 / 終了報告書 生体試料中の薬物の迅速定量法に関する研究 - バルビツール酸を対象として - 食品医薬品部 薬事指導課 岡村俊男 研究目的 タール、バルビタール、フェノバルビタールナトリウムな どを対象薬物とした。前処理としてポリマー充填剤である 1999 年、日本中毒学会の「分析のあり方検討委員会(現 Oasis MCX を用いた固相抽出法を用いた。HPLC の分析 分析委員会)」は薬物と毒物分析の指針に関する国への提 条件として、逆相系のカラムを用い、移動相としてリン酸・ 言(中毒研究 ,12,437-447,1999.)の中で ①死亡例の多 メタノール混液を使用した。検出器はフォトダイオードア い中毒、②分析が治療に直結する中毒、③臨床医からの分 レイを用いることにより、多波長で分析を行った。基礎的 析依頼が多い中毒起因物質、それらの観点から分析が有用 な実験により、アモバルビタール、バルビタール、フェノ とされる中毒起因物質 15 品目を掲げている。これらの中 バルビタールナトリウムにおいて、良好な回収率が得られ には、催眠薬として用いられるバルビツール酸系薬物があ た。 り、主な中毒症状としては血圧低下、ショック、呼吸抑 誌上発表 制、昏睡、体温低下などがある。健康危機管理において中 毒起因物質となった成分を迅速に分析することは、健康被 害拡大防止を図るうえで重要である。そこで、医療機関等 に一刻でも速く中毒原因物質に関する情報を提供できるよ うに、迅速定量法を開発する。 研究実施状況 平成 18 年度の研究実施計画 人血清を用いた添加実験などを行い、 回収率を検討する。 他のバルビツール酸系薬物についても、分析法を開発して いく予定である。 日本中毒学会が提言した治療に直結するため分析すべき 15 物質のうち、催眠薬として用いられているアモバルビ 29 平成 17 年度研究実施 / 終了報告書 生薬の残留農薬による汚染の実態に関する研究 食品医薬品部 薬事指導課 梶村計志、田上貴臣、皐月由香、中村暁彦 研究目的 3) 実態調査(ピレスロイド系農薬、対象:ソヨウ、チンピ、 タイソウ、サンシュユ、ビワヨウ等) 生薬は、各種疾患の予防および治療に繁用されているが、 タイソウから高い確立でシペルメトリン、フェンバレ 長期間にわたり連用される可能性が高いことから、安全性 レートが検出された。ソヨウ、チンピ、サンシュユ、ビ に関して多大なる配慮が必要であると考えられる。 しかし、 ワヨウにもシペルメトリン、フェンバレレートの残留が 生薬中に残留する農薬の実態に関しては不明な部分が数多 確認された。 く残されており、1997 年まで、我が国はもとより、諸外 4) 分析法の開発 国においても分析法や残留基準すら設定されていなかっ GC-MS(イオン化法:NCl)を用いたピレスロイド系 た。我が国では現在でもわずか 2 種類(Total BHC, Total 農薬の分析法について検討した。NCl は生薬中のピレ DDT)について残留基準が定められているだけである。 スロイド系農薬を、高感度に検出でき、かつ選択性にも 大阪府において医薬品産業は地場産業としての位置付け 非常に優れていた。 をなされているが、なかでも生薬は全国取り引き量の約 誌上発表 80%が道修町を中心とする大阪市場で取り引きされてい る。従って、本府の薬務行政においても、生薬の安全性、 品質に関する問題は重要である。本研究では、生薬中に残 留する農薬の実態を明らかにし、薬事監視行政の基礎資料 とすることを目的とする。 研究実施状況 1) 実態調査(有機塩素系農薬 :BHC,DDT、対象:人参、 センナ) 平成 18 年度の研究実施計画 1) 実態調査(有機塩素系農薬) 1990 年から継続的に実施している人参、センナを対象 とする有機塩素系農薬の実態調査を今年度も行う。 2) 実態調査(有機リン系農薬およびピレスロイド系農薬) ソヨウ、チンピ、タイソウなど有機リン系およびピレス 今年度調査を行った試料から、BHC,DDT は検出されな ロイド系農薬が残留している可能性が高い生薬を対象と かった。当所では、1990 年から継続的に検査を実態し し、今年度も実態調査を行う。 ているが、調査を行ったすべての試料に、BHC,DDT の 残留が認められなかったのは初めてである。 3) 分析法の開発 GC-MS(イオン化法:NCl)を用いたピレスロイド系 2) 実態調査(有機リン系農薬、対象:ソヨウ、チンピ、 農薬を対象とする分析法を開発する。回収率、直線性、 キジツ、タイソウ、サンシュユ等) 精度(測定値のバラツキ)等について検討する。 ソヨウ 5 試料中 5 試料にパラチオンメチル、クロロピ 4) 煎剤、浸剤への移行率の検討 リホスの残留が確認された。チンピからは、複数の有機 農薬が残留している生薬を原料とし、煎剤、浸剤を調製 リン系農薬が検出され、特にメチダチオンは、すべての したときの移行率、 生薬への残存率等について調査する。 試料中から検出された。 30 平成 17 年度研究実施 / 終了報告書 研究終了 ラット好塩基球白血病細胞(RBL-2H3 細胞)を用いた 生薬の抗アレルギー作用と有効成分の検討 - 日本薬局方生薬ビンロウジにおける検討 - 食品医薬品部 薬事指導課 片岡正博 研究目的 ウジの水抽出エキスを SephadexG-15 ゲル濾過法により 分画後、分子量約 350 画分にβ -Hexosaminidase の遊離 現代病とされている花粉症やアトピー性皮膚炎等のアレ 抑制が観察された。その画分の各種確認試験から糖の可能 ルギー性疾患は社会的に関心が高く、これらの疾病の予防 性が推測された。示差屈折計を検出器とする HPLC 分析 や健康維持のために副作用が少ないと考えられている生薬 から有効成分を分取後、NMR 分析からその成分は蔗糖で が注目されている。 あると構造決定した。しかし、試薬蔗糖を用いた遊離抑 日本薬局方収載生薬の抗アレルギー作用の探索を実施し 制検討からβ -Hexosaminidase の遊離抑制が観察されな てきた結果、駆虫薬として用いられているビンロウジにそ かった。 の作用が強く観察されたので、その生薬から有効成分を単 離精製することを目的とした。 研究実施状況 結 論 生薬ビンロウジの抗アレルギー作用としての β -Hexosaminidase の遊離抑制成分を探索中に北海道大 RBL-2H3 細胞は肥満細胞と同様な機能があり、抗体で 学により、この生薬のβ -Hexosaminidase 遊離抑制成分 感作後、抗原で刺激されるとヒスタミン等のケミカルメ としてポリフェノールの一種であるプロシアニジンを探索 ディエーターが遊離する。 して報告されてしまった。よって、生薬ビンロウジからの 抗 体 と し て 抗 DNP-IgE 抗 体 で 細 胞 を 感 作 後、DNP- 抗アレルギー作用のある有効成分の探索の意義があると考 BSA を 用 い て 抗 原 刺 激 さ せ る。 そ の 後、 脱 顆 粒 に よ えられないので研究を終了します。 り遊離してくるケミカルメディエーターの指標として β -Hexosaminidase の遊離を観察し、その遊離抑制作用 を抗アレルギー作用とした。 成果の活用 顕著な知見は見出せなかった。 β -Hexosaminidase の遊離を強く抑制した生薬ビンロ 31 平成 17 年度研究実施 / 終了報告書 研究終了 健康食品に添加された医薬品成分(乾燥甲状腺)の 迅速分析法の開発 食品医薬品部 薬事指導課 田上貴臣、梶村計志、皐月由香 研究目的 良好な結果が得られた。 3) 乾燥甲状腺を添加したダイエット用健康食品の分析を 近年、医薬品成分が違法に添加された健康食品による健 行ったところ、 得られた値は検出限界よりも十分に高く、 康被害が頻発している。有害な健康食品による健康被害を チログロブリンを検出することが可能であった。 未然に防ぐためには、市場に流通している多数の健康食品 結 論 を検査することが不可欠であり、迅速、簡便かつ安価な検 査法の開発が求められている。 今回確立した検査法は、高い特異性を持ち、良好な直線 痩身目的の健康食品に添加された事例のある医薬品成分 性を有するものであった。また、ダイエット用健康食品に のうち、乾燥甲状腺の検査は、高額機器が必要であること、 対するチログロブリンの添加回収実験では、良好な結果が 前処理に長時間を要すること等が課題となっており、これ 得られた。更に、乾燥甲状腺を添加したダイエット用健康 らを解決する検査法の開発が求められている。違法な健康 食品からチログロブリンを検出することが可能であった。 食品による健康被害の発生を未然に防ぐために迅速、簡便 これらのことから、今回確立した検査法は、健康食品に違 かつ安価な検査法の確立を目指し、免疫学的測定法を用い 法に添加された乾燥甲状腺を検出することが可能であると た測定法の開発を行う。 考えられた。 研究実施状況 成果の活用 健康食品に添加された乾燥甲状腺由来成分(チログロブ 今回確立した検査法は、迅速、簡便かつ安価であり、市 リン)の免疫学的測定法による検査法を確立するため、以 場に流通するダイエット用健康食品の検査に活用できるも 下の検討を行った。 のと考えている。 1) チ ロ グ ロ ブ リ ン の 検 量 線 を 作 成 し た と こ ろ、0 〜 1) Tagami,T.,Kajimura,K.,Satsuki,Y.,Kawai,T.:Rapid 1500ng / mL の範囲で良好な直線性を示した。 2) ダイエット用健康食品に対してチログロブリンの添加 回収実験を行ったところ、回収率は 91 〜 111%となり、 32 analysis of an additive medicinal ingredient (dried thyroid) in dietary supplement.J.Health.Sci., 51,614-616(2005)