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食品医薬品部 - 大阪府立公衆衛生研究所

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食品医薬品部 - 大阪府立公衆衛生研究所
平成 19 年度 研究実施 / 終了報告書
食品添加物等に関する衛生学的研究
食品医薬品部 食品化学課
尾花裕孝、池辺克彦、北川幹也
吉光真人、野村千枝、粟津 薫
■研究目的
1) 通常検査業務については分析法の精度・効率性を高め
ることを目的とし、実験操作を見直し必要な改善を行う。
3) ヒスタミン分析では迅速化を試みるため、酵素による
ヒスタミンの分解を利用した市販キット(酵素法)
、酵
素 免 疫 学 的 方 法 を 利 用 し た 市 販 キ ッ ト(ELISA 法 )、
2) 化学物質による中毒事例など、緊急性を要する業務の
HPLC 法を比較検討した。その結果、いずれの方法も中
迅速・高精度化について検討する。加熱不十分なインゲ
毒量のヒスタミンの定量が可能であり、酵素法でヒスタ
ン豆摂取による中毒事例では、目視によるレクチン活性
ミンを定量後、HPLC 法でピークを確認する方法が中毒
評価(赤血球凝集試験:HA 試験)に代わり酵素免疫学
発生時の迅速分析に有用であることがわかった。
的手法による数量化を試みる。また、ヒスタミン測定で
は市販キット類と HPLC 法を比較検討する。
■研究実施状況
1) 着色料検査での薄層クロマト(TLC)用試験液を HPLC
■誌上発表
1) 野村千枝 , 北川幹也 , 吉田政晴 , 田中之雄:固相抽出お
よび HPLC を用いた食品中のポリソルベートの分析法 ,
食衛誌 , 48, 64-68, (2007)
測定に使用できることを確認し、TLC において明確な
2) 粟津 薫 , 北川幹也 , 尾花裕孝 , 田中之雄:ジアゾ化法
スポット検出が困難な場合や違反の確認など追加的検査
による食品中の亜硝酸根定量法の検討 , 大阪府立公衆衛
の精度や効率を高められるようになった。
生研究所所報 , 45, 47-52, (2007)
2) 平成 18 年 5 月、白インゲンによる健康被害が全国的
■平成 20 年度の研究実施計画
に発生した。原因となるレクチンの残存は、HA 試験に
1) 容器包装の規格検査について、精度・効率性を高める
より確認するが、HA 試験は条件により値が変動する可
ことを目的として、前処理操作の簡便化と高周波プラズ
能性がある。レクチン活性の変化を、HA 試験により測
マ発光分光分析装置(ICP-AES)の導入を進める。
定すると同時に、ウエスタンブロット (WB) 法を用いて
2) 健康危機管理事例に対応するために、食品中の重金属
中毒の主因とされるフィトヘマグルチニン(PHA)の
を網羅的に迅速分析する簡便な分析法を開発する。本研
挙動を調べた。さらに、ELISA 法による PHA の定量に
究の一部は、厚生労働科学研究の一環として行う。
ついて検討した。その結果、PHA の確認には NativePAGE 後 WB 法、定量には ELISA 法が有効であった。
3)HPLC 法によるヒスタミン分析について、低濃度域にお
ける測定が可能で、かつ現行法よりも簡便な精製方法を
検討する。
18
平成 19 年度 研究実施 / 終了報告書
食品中の残留農薬に関する研究
食品医薬品部 食品化学課
住本建夫、村田 弘、高取 聡
北川陽子、柿本幸子、岡本 葉
■研究目的
■誌上発表
食品衛生法の改正により、平成 18 年 5 月から「農薬等
1) 高取 聡 , 岡本 葉 , 北川陽子 , 柿本幸子 , 村田 弘 ,
のポジティブリスト制」が施行され、基準が設定されてい
住本建夫 , 起橋雅浩 , 田中之雄:農産物中の残留農薬に
ない農薬等が一定量以上含まれる食品の流通を禁止される
用いる新規一斉分析法 , 大阪府立公衆衛生研究所所報 ,
ことになった。それに伴い各種の食品について、数多くの
45, 67-75(2007)
農薬の残留検査が要求されることとなった。また、輸入農
2) 北川陽子 , 起橋雅浩 , 尾花裕孝 , 阿久津和彦 , 柿本幸子 ,
作物の多様化に伴い消費者の農薬に対する意識の高まりも
岡本 葉 , 高取 聡 , 小西良昌 , 村田 弘 , 住本建夫 ,
あり、食品中に残留する農薬の安全対策は重要な課題と
堀伸二郎 , 田中之雄:輸入農産物中の残留農薬の調査結
なっている。消費者の安全・安心の要求に応えるため、食
果 ー平成 11 年度〜平成 18 年度ー , 大阪府立公衆衛生
品中の残留農薬の多成分一斉分析法等の検討をさらに進め
研究所所報 , 45, 29-36(2007)
ていく。
■研究実施状況
3) 柿本幸子 , 高取 聡 , 北川幹也 , 吉光真人 , 北川陽子 ,
岡本 葉 , 起橋雅浩 , 小西良昌 , 尾花裕孝 , 福島成彦 ,
厚生労働科学研究費補助金(食品の安心・安全確保推進
村田 弘 , 住本建夫 , 堀伸二郎 , 田中之雄:国産野菜
研究事業)の分担研究として、「農薬等のポジティブリス
および果実中の残留農薬の汚染実態調 ー平成 13 年度
ト化に伴う検査の精度管理に関する研究」を企画し、農薬
〜平成 18 年度ー , 大阪府立公衆衛生研究所所報 , 45,
検査の信頼性を確保するために、当研究所の他 8 地方衛
37-42(2007)
生研究所の参加協力を得て外部精度管理調査を行った。本
4) 岡本 葉 , 高取 聡 , 起橋雅浩 , 柿本幸子 , 阿久津和彦 ,
年度は、正確な分析値を得るための要因として内部標準物
北川陽子 , 尾花裕孝 , 村田 弘 , 住本建夫 , 田中之雄:
質として安定同位体を添加し、誤差の補正について検討し
1993-2006 年度に実施した柑橘類中における防かび剤
た。また、クライテリア試料を提供し分析機器の良好さに
の残留実態調査 , 大阪府立公衆衛生研究所所報 , 45,
ついて考察した。添加濃度として、一律基準(0.01ppm)
23-28(2007)
程度の微量な農薬添加を行い、正確な分析値を得るための
■平成 20 年度の研究実施計画
要因について、昨年度と同様に検討を行った。分析方法に
平成 18 年 5 月から「農薬等のポジティブリスト制」が
ついては各地研独自の標準作業書に従い行ったが、添加農
施行され、当研究所では従来、76 種類の農薬の一斉分析
薬名を誤認した機関はなく、その濃度も大部分の機関が正
を行っていたが、平成 19 年 2 月からポジティブリスト制
しく報告した。
の対応として、検査農薬の種類を 132 種類に増やして検
昨年 2 月より残留農薬の検査を試料採取量を 10g、抽
査を実施している。これらの検査は野菜や果実等の農作物
出溶媒をアセトニトリル 20ml とサイズダウンし、50ml
について行っているが、中国製の冷凍餃子からメタミドホ
使い捨て遠心管容器内で抽出、脱水、遠心分離を行って分
スやジクロルボス等の農薬混入事件があり、加工食品につ
析時間を短縮した検査方法(QuEChERS 法変法)により
いても残留農薬の検査が望まれている。加工食品類は脂質
実施した。その結果、実試料でも支障なく測定できること
が多いこともあり、
従来の分析法は適用できない。そこで、
が確認された。測定は GC-FPD、GC-MS、LC/MS/MS を
前処理法として固相カラム等を使用した迅速で正確な試験
使用したが、本年度はさらに GC/MS/MS での検討も行っ
法の検討を行い、
加工食品の残留試験法を確立する。また、
ている。今後、加工食品等も含め分析対象農薬数を現在の
現在野菜果実等の農作物の 132 農薬から、さらに分析農
132 農薬から 200 農薬に増やすべく検討を重ねている。
薬数を増やすべく一斉分析法(QuEChERS 法変法)によ
り測定の可否について検討を行う。
19
平成 19 年度 研究実施 / 終了報告書
食品中及び母乳に残留する微量有害物質に関する研究
食品医薬品部 食品化学課
田口修三、小西良昌、起橋雅浩、阿久津和彦
小阪田正和、柿本健作、藤田瑞香 ■ 研究目的
食品中に残留する微量有害物質(有機ハロゲン化合物や
動物用医薬品等)について、分析法の開発・改良並びに実
有機塩素系農薬の測定に S-421 を加えて実施し、その残
留実態を同委員会に報告した。
■誌上発表
態調査等を行い、食品を介した微量有害物質の摂取による
1) Kakimoto. K., Akutsu. K., Konishi. Y., Tanaka. Y.,
府民へのリスクアナリシスを行う。また、大阪府母乳栄養
Evaluation of hexabromocyclododecane in fish and
推進事業に基づく母乳中の環境汚染物質を測定する。これ
sea mammal oil supplements, Food Chemistry, 107,
らの調査研究により、汚染物からのリスクを低下させ、府
1724-1727(2008)
民の健康増進に寄与することを目的とする。
■研究実施状況
(1)食品汚染物質
臭素系難燃剤ポリ臭化ジフェニルエーテル (PBDEs) の
食餌由来の一日摂取量を調査し、成人の 3 ~ 6 臭素化物
2) 藤田瑞香 , 柿本健作 , 田口修三 , 田中之雄:LC/MS/
MS による食品中のテトラサイクリン系抗生物質の分
析法の検討 , 大阪府立公衆衛生研究所研究報告 , 45,
77-81(2007)
3) Okihashi. M., Takatori. S., Kitagawa. Y., Tanaka. Y.,
の一日摂取量は 0.04 ~ 0.6μg 程度と推定された。また、
Simultaneous Analysis of 260 Pesticide Residues in
母乳、食品及びハウスダストの分析結果から、PBDEs の
Agricultural Products by Gas Chromatography/Triple
人体曝露量を推定した。その結果、平均的な成人・乳幼児
Quadrupole Mass Spectrometry, The Journal of
の曝露量はいずれも一日、数十 ng のオーダーであった。
AOAC Int, 90, 1165-1179(2007)
一方、臭素系難燃剤ヘキサブロモシクロドデカン (HBCDs)
4) Okihashi. M., Kitagawa. Y., Obana. H., Tanaka.
の水産油脂食品中濃度を測定した。その結果、深海鮫肝油、
Y., et. al., Rapid Multiresidue Method for the
いわし油等から HBCDs を検出した。PBDEs 、HBCDs に
Determination of more than 300 Pesticide Residues
よる汚染は現時点において府民の健康影響上の問題となる
in Food, Food, 1, 101-110(2007)
レベルではないと推定された。
■平成 20 年度の研究実施計画
(2)残留動物用医薬品
1) 食品汚染物質については引き続き分析方法の改良・開
食品中のサルファ剤の分析について検討した。多段連
発を行い、また臭素系難燃剤を中心にその汚染実態を明
結カラムによる固相抽出法を用いた抽出・精製を検討し、
らかにする。
LC/MS/MS の測定条件を精査して 25 種類のサルファ剤の
同時分析法を確立した。
(3)大阪府母乳栄養推進事業
大阪府母乳栄養推進事業に基づき、母乳中の PCBs 及び
20
2) 残留動物用医薬品については引き続き分析方法の開発
を行う。
3) 大阪府母乳栄養推進事業に基づく環境汚染物質等の分
析を引き続き行う。
平成 19 年度 研究実施 / 終了報告書
母乳中の残留性有機汚染物質(POPs)とその代謝物に関する研究
食品医薬品部 食品化学課
小西良昌、北川幹也、阿久津和彦、柿本健作
■研究目的
3) 母乳中水酸化 PCB は、現在分析中である。
近年、環境汚染物質による内分泌かく乱作用が問題と
4) 母乳中の臭素系難燃剤 HBCD 濃度の経年変化を検証し
なっている。ポリ塩素化ビフェニール (PCB) および難燃剤
た。HBCD は 1988 年より以前の試料では検出されな
として使用されたポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDE)
かったが、それ以降の試料からは検出された。最近の濃
は生体への蓄積性が高い環境汚染物質であるが、これらの
度レベル(2000 年以降)はこれまでに海外で報告され
代謝物である水酸化体は、強い内分泌かく乱作用を有する。
ているものと大きな差はなかった。また、その濃度レベ
本研究の目的は、PCB、PBDE の個々のアイソマー代謝物
ルは、健康影響上直ちに問題となるレベルではないと思
(水酸化体)の母乳中濃度を測定し、汚染状況の推移を明
らかにする。加えて、PBDE の代替品として使用されてい
われる。
■誌上発表
るヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)についても母乳
Kakimoto K.,Akutsu K.,Konishi Y., Time ternd
汚染実態を把握する。
of hexabromocyclododecane in the breast milk of
■研究実施状況
当研究の基礎となる母乳中の POPs 濃度の測定は 1972
年より継続調査しており、その母乳試料(乳脂肪)の一部
Japanese women,Chemosphere,71,1110-1114(2008).
■平成 20 年度の研究実施計画
1) 母乳中水酸化 PCB を測定する。特にサイロキシン様作
を冷凍保存している。
用の疑われる 4-OH-PCB をはじめとする水酸化 PCB の
1) 平成 13-15 年度の科学研究費補助金による研究により、
同族体・異性体組成を分析し、経年的推移を考察する。
母乳中の PCB 同族体・異性体別の濃度を明らかにし、
2) 水酸化 PBDE については、標準品が市販され次第、分
その化合物別の母乳中濃度の経年推移を明らかにした。
その結果、塩素数、塩素置換位置により、生体内蓄積性
が大きく異なり、人体内動態の特徴を見いだした。また、
析法の検討を行う。
3)LC/MS/MS により母乳中 HBCD を異性体別に分析し、
経年的推移を考察する。
母乳中に存在する主な異性体と摂取食事との関係から、
試料である冷凍保存乳脂肪
(1973 年〜 2007 年、
34 年間)
異性体別の吸収および代謝に関する推測を得ることが出
の使用は、インフォームド・コンセントを行い、当所倫理
来た。
審査委員会により条件付(母乳提供者の承諾を受け、上記
2) PBDE については、母乳中同族体・異性体別の濃度を
研究にのみ使用可)承認済である。
測定し、経年推移を明らかにした。
21
平成 19 年度 研究実施 / 終了報告書
遺伝子組換え食品に関する研究
食品医薬品部 食品化学課
吉光真人、北川幹也、野村千枝、粟津 薫
■研究目的
菓子抽出 DNA 溶液を FUJIFILM QuickGene DNA tissue
食品として認可されていない遺伝子組換え食品の流通防
kit S、QuickGene-Mini80 を用いて精製したところ、ト
止、また消費者への食品情報提示の観点から、2001 年 4
ウモロコシ由来遺伝子を検出することができた。通常の
月より遺伝子組換え食品を規制する法律が施行された。当
DNA 抽出法として用いた場合でも、短時間で DNA が抽
研究所でも現在、法律に基づいた遺伝子組換え食品の検査
出可能な有用な方法であった。
を実施している。しかしながら、現在の検査法ではすべて
3) パパイヤ由来遺伝子の検出
の遺伝子組換え食品を検査することは不可能である。そこ
パパイヤ由来遺伝子検出用プライマーを新たに設計し、
で、本研究では遺伝子組換え食品の新たな検査法を開発、
今まで検出が困難であった缶詰パパイヤ抽出 DNA 溶液中
または現在の検査法を改良して測定可能な遺伝子組換え食
のパパイヤ由来遺伝子が検出可能となった。
品を増やし、府民の食の安全に寄与することを目的とする。
■研究実施状況
1) 遺伝子組換え米検出法の検討
■誌上発表
なし
■平成 20 年度の研究実施計画
未承認遺伝子組換え米の流通を防止するため、米加工
1) 定性 PCR 法での増幅産物の簡便な確認法の検討
品からの DNA 抽出法を検討した。通知法記載のニッポ
現在、定性 PCR 法ではゲル電気泳動により増幅産物の
ンジーン GM quicker 2、およびキアゲン QIAamp DNA
有無を確認している。この操作を簡便にするため、Syber
Stool Mini Kit、キアゲン Genomic-tip を用いて 8 種の米
Green 試薬とリアルタイム PCR 装置を用いて PCR 結果
加工品からの DNA 抽出を検討したところ、米由来遺伝子
を解析する方法を検討する。
の検出率に差はみられなかった。検討した米加工品 ( 輸入
2) 食品への亜硫酸処理の影響の確認
品 ) から遺伝子組換え米は検出されなかった。粉砕困難な
実際に食品に対して亜硫酸処理をおこない、食品中の
試料 ( ビーフン、はるさめなど ) については滅菌水で十分
DNA 塩基配列に対する亜硫酸の影響を確認する。
に水を吸わせてから粉砕すると容易に均質化された。
また、
3) 食品からの DNA 抽出法の検討
α - アミラーゼの添加も試料を均質化する点で有効であっ
現段階で DNA 抽出が困難なトウモロコシ、米加工品等
た。
に対し、新規 DNA 抽出法および現 DNA 抽出法の改良な
2)PCR 反応増幅阻害物質を含む DNA 溶液精製法の検討
どの検討をおこなう。対象食品として酒、酢、油等を予定
トウモロコシ由来遺伝子が検出されなかったスナック
している。
22
平成 19 年度 研究実施 / 終了報告書
内分泌かく乱化学物質に関する研究
食品医薬品部 食品化学課
高取 聡、北川陽子、岡本 葉
■研究目的
く、乳児特有のハイハイ等の行動様式によって、ハウス
内分泌系及び神経系の発育または恒常性の維持に悪影響
ダストの曝露量は、大人を上回ることが明らかにされて
を及ぼすことが懸念される化学物質の作用の評価を行うと
いる。このためハウスダストを介した化学物質の曝露が
共に当該化学物質の高精度分析法を開発する。更に生体試
危惧される。現在、ボランティアから採取したハウスダ
料及び食品中等の実試料中の濃度を明らかにし、その汚染
スト中の殺虫剤の分析法の開発を行っている。
実態からヒトに対する曝露量を考察・評価する。
■誌上発表
■研究実施状況
1) Takatori, S., Okamoto, Y., Kitagawa, Y. et al.,
1)フタル酸モノエステル類 (MPEs) について:フタル酸
Simulated neonatal exposure to DEHP and MEHP
ジエステル類は、生活環境中に多用されており、食品や
from PVC enteral nutrition products, Int. J. Pharm,
空気を介して日常的な曝露が危惧される。胎児に対して
352, 139-145 (2008)
毒性を示すことから、母体の曝露状況を調べることは重
2) 高取聡ら:高速液体クロマトグラフィー / タンデム型
要である。そこで尿中 MPEs の高精度分析法を開発し、
質量分析法によるヒト母乳中のフタル酸モノエステル類
妊婦 (n = 51) の尿中 MPEs を分析することにより、フ
の分析 , 分析化学 , 56, 1025-31 (2007)
タル酸ジエステル類の推定一日曝露量を解析した。その
■平成 20 年度の研究実施計画
結果、耐容一日摂取量 (TDI) を超える事例は認められ
フタル酸エステル類、イソフラボン類及び殺虫剤の乳幼
なかった。また、母乳中 MPEs の高精度分析法を開発し、
児への曝露評価について重点的に行う。
母乳中 MPEs を分析することにより、乳児の母乳に由
1) フ タ ル 酸 エ ス テ ル 類 に つ い て: 周 産 期 の 生 体 試
来するフタル酸ジエステル類の推定一日曝露量を解析し
料( 母 体 血、 臍 帯 血、 母 乳、 胎 脂 及 び 尿 ) 中 の
た。当該母乳を摂取することで TDI を超えることが危
当該化学物質の分析を行い、妊娠期間及び乳児期の当該
惧される事例は認められなかった。
化学物質の曝露評価を行う。
2)イソフラボン類について:育児粉乳の一部には、大豆
2)イソフラボン類について:大豆を多用した育児粉乳及
を原材料に含むものがある。大豆中には、女性ホルモン
び離乳食中について分析を行い、乳児食からのイソフラ
様作用を有するイソフラボン類が含まれる。そこで育児
ボン類の曝露評価を行う。
粉乳及び離乳食に含まれるイソフラボン類濃度を測定す
るため、LC/MS/MS を用いた高精度分析法を開発した。
3)殺虫剤について:日常的な曝露が危惧される化学物質
のひとつに殺虫剤があげられる。
本法を用いて市場に流通する大豆を主原料とする育児粉
とりわけ、神経系に作用点を有するものについては、子
乳を分析し、当該製品を摂取した乳児のイソフラボン類
どもの曝露評価が必要である。ハウスダスト、血清 また
の推定一日曝露量を解析している。
は尿中の代謝物を含めた当該化学物質の高精度分析法を開
3)殺虫剤について:乳児の生活域は、大人よりも床に近
発する。
23
平成 19 年度 研究実施 / 終了報告書
加工食品中の特定原材料の分析法開発および実態調査
食品医薬品部 食品化学課
北川幹也、吉光真人、野村千枝、粟津 薫
■研究目的
Profilin の検出を目的として、ELISA 系の開発を検討した。
食品アレルギーの原因である特定原材料 5 品目につい
植物間での種特異性は低くかつ、動物には反応しない抗体
て平成 14 年より表示が義務づけられ、厚生労働省より分
が必要であるため、植物で保存性が高くかつ特異的なアミ
析法が通知されている。しかしこの分析法は通知(食発
ノ酸配列を特定し、
これをもとにペプチド抗体 2 種を設計・
1106001)にもあるように、抽出効率や擬陽性 / 擬陰性
作成した。これらの抗体が果実類の ELISA に適用できる
などについて検討する必要がある。さらに、特定原材料 5
可能性があることを確認した。
品目(そば、小麦、落花生、卵、乳)以外に、大豆や甲殻類、
果実類などもアレルギーをひきおこすことが認められ、食
品中の混入実態を明らかにすることが求められているが、
■誌上発表
なし
■平成 20 年度の研究実施計画
分析法は未だ確立されていない。
1)Profilin の ELISA 系の開発
本研究では、これら特定原材料の分析法を開発し、大阪
前年度に作成した抗体を用いて、ELISA 系およびウエ
府下に流通する食品などへの混入実態を明らかにすること
スタンブロッティング系の開発を行う。また、この抗体が
により、大阪府民の食の安全に寄与することを目的とする。
シラカバ花粉の抗原についても認識すると予測されること
■研究実施状況
から、実際にシラカバ花粉と反応するか確認する。
1) 調査品目の追加
2) 調査品目の追加
昨年度まで、そば、小麦、乳、卵についての実態調査を
本年度中に、特定原材料として「えび、かに」が追加さ
行ってきたが、今年度より落花生を追加した。その結果、
れることが決まっている。そこで、これらを調査品目とし
予備実験において 1 品目(アーモンドプードル入りケーキ)
て追加可能かを検討する。
から基準値未満の落花生を検出した。本品について製造者
3) 分析法の改良
に確認したところ、使用実態はなく混入経路を調査中であ
現在、小麦、そばの確認法として定性 PCR 法を用いて
る。
いる。これを SyberGreen を用いたリアルタイム PCR 法
2)Profilin の ELISA 系の開発
果実・ラテックスアレルギーの原因タンパクである
24
(可能であれば FastPCR)とすることにより、分析時間の
迅速化について検討する。
平成 19 年度 研究実施 / 終了報告書
食品の放射線照射に関する研究
食品医薬品部 食品化学課
尾花裕孝 共同:古田雅一 ( 大阪府立大学 )
■研究目的
の検討が必要である。しかし、農薬分析など検査業務で
本研究では放射線照射された食品を、化学分析により検
の LC/MS/MS の使用頻度が高く、現状では 2 ヶ月に 1 週
出することを目指した。
間程度しか利用できず、分析法の改善や多種類の食品での
前半は脂肪を含む食品の放射線照射を、アルキルシクロ
照射検知など LC/MS/MS 測定を頻繁に行うことは困難で
ブタノンを指標にした新規分析法を開発し、調理後、長期
あった。
保存後でも照射履歴を検知することを目標とした。
■結 論
後半は既存の検知法は食品種ごとに手法が大きく異なる
アルキルシクロブタノンを指標にした照射検知では、生
ので、食品に共通して含まれる DNA の照射変性成分(5,6-
の畜肉食品だけでなく加熱調理した畜肉食品や、長期冷凍
ジヒドロチミジン:ジヒドロチミジン)を指標にし、植物
保存した畜肉食品でも実用レベルの照射履歴を検知できる
性と動物性食品の照射履歴を共通の指標で検知する分析法
ことを示した。しかし、脂肪含有量の少ない植物性食品に
の開発を試みた。
ついては適用が困難であった。
■研究実施状況
植物性だけでなく動物性の食品についても適用できる照
前半部のアルキルシクロブタノンを指標にした分析手法
射指標としてジヒドロチミジンの可能性を検討した。照射
は、同指標のヨーロッパ公定法に比べ操作時間がほぼ半減
線量の大きい黒胡椒や DNA 抽出が容易な食肉類などの検
され、分析精度は同等かそれ以上であった。検出感度にお
知は可能と思われる結果が得られたが、研究の発展的な展
いても、米国などで実施されている 1-2kGy 程度の照射を
開は LC/MS/MS の継続使用が困難であり進捗できなかっ
検知できる感度であった。この手法を用いて、照射検知が
た。
照射直後の生の食肉類だけでなく、一年間の冷凍保存後や
ジヒドロチミジンが、幅広い食品を対象にした検知指標
ソーセージや牛丼の具など加熱調理後の原材料でも可能あ
である可能性を示せたことを一定の成果と考え、本研究を
ることを示した。
終了する。
後半はジヒドロチミジンの食品照射検知指標としての可
■成果の活用
能性について検討した。試料から DNA を抽出し、ヌクレ
現在日本では食品照射は基本的には許可されていない。
オシドへ分解、固相精製などを経て LC/MS/MS によりジ
本研究の成果を活用すれば、食肉類については諸外国で照
ヒドロチミジンを測定した。γ線照射線量に応じて、チミ
射された履歴を検出することが可能となった。
ジンからジヒドロチミジンが生成し、照射した黒胡椒、エ
世界で最も多く放射線照射されている食品は胡椒などの
ビ、牛肉など植物性および動物性食品においてジヒドロチ
香辛料である。照射された香辛料の一般的な検出法は、食
ミジンを検出した。黒胡椒の検出感度は諸外国で香辛料に
品に付着する鉱物質が保持する照射エネルギーを加熱発光
適用されている 7-10kGy の照射を検知できる感度であっ
させる方法である。この方法は食品そのものの検査ではな
たが、日本で照射が許可されているジャガイモでは実用レ
いので、発光法において陽性結果が得られた場合他の手法
ベルの照射(0.1-0.5kGy)でのジヒドロチミジンを検出
による確認分析が必要な場合がある。ジヒドロチミジンを
できなかった。
指標にする検知法は、そのような場合の選択肢の一つとし
ジヒドロチミジンの検出感度を上げるにはさらに分析法
て活用が可能と思われる。
25
平成 19 年度 研究実施 / 終了報告書
生薬・漢方製剤の品質評価に関する研究
―固相抽出を用いた生薬・漢方製剤中のセンノシド類の迅速分析法の開発―
食品医薬品部 薬事指導課
山崎勝弘 ■研究目的
タノール / 水 / ギ酸混液(70:30:2)で溶出させ、2 ml
センナ、センナジツ及びダイオウを配合した製剤では指
とした。
標成分であるセンノシド類(センノシドA及びB)の定量
3)HPLC 分析条件
分析が難しいとされている。そこで、種々の生薬・漢方製
検 出 器:PDA 検 出 器 ( 定 量 測 定 波 長 は 380 nm)
,カ
剤について固相抽出法を検討し、HPLC でセンノシドA及
ラ ム:TSKgel 80 TS, 4.6 mm × 15 cm,5 μm, カ ラ ム
びBの両方を定量する迅速分析法を検討する。
温度:40℃,移動相:水 / アセトニトリル / リン酸混液
■研究実施状況
(800:200:1)
,流量:1 ml/min で行った。
1) 試料の調製
4) 今までの結果 一般用医薬品の瀉下薬数品目を購入した。また、ダイオ
この固相抽出法によって、従来から分析の妨害となるほ
ウを配合処方した漢方製剤を得るため、防風通聖散などの
とんどの夾雑物質が除去できた。さらに検出波長を 380
ダイオウ配合漢方エキスとそれらの処方からダイオウだけ
nm とすることで、各製剤中のセンノシドA及びB付近の
を除いた漢方ブランクエキスを調製した。
夾雑ピークが消滅し、良好な定量分析が可能となった。
2) 固相抽出の操作法
試料粉末 1 g をメタノール /0.1% 炭酸水素ナトリウム
混液(7:3)に溶かし 50 ml とし、この液 2 ml を Oasis
■誌上発表
なし
■平成 20 年度の研究実施計画
MAX(強陰イオン交換と逆相系の性質を持つ)に負荷させ、
今回検討した分析方法について、
上記の操作手法もとに、
カートリッジを 1% 酢酸含有メタノール 5 ml、次いで水
各製剤ごとで分析法の真度と精度を検証する。
/ メタノール / ギ酸混液(75:25:2)2 ml で洗浄し、メ
26
平成 19 年度 研究実施 / 終了報告書
生体試料中の薬物の迅速定量法に関する研究
– バルビツール酸系薬物を対象として –
食品医薬品部 薬事指導課
岡村俊男 ■研究目的
いるアモバルビタール、ペントバルビタール、バルビター
1999 年、日本中毒学会の「分析のあり方検討委員会(現
ル、フェノバルビタールなどを対象薬物とした。前処理は
分析委員会)」は薬物と毒物分析の指針に関する国への提
ポリマー充填剤を充填した Oasis MCX を用いた固相抽出
言(中毒研究 ,12,437-447,1999.)の中で①死亡例の多い
法により行った。HPLC の分析条件として、逆相系のカラ
中毒、②分析が治療に直結する中毒、③臨床医からの分析
ムを用い、移動相としてギ酸・アセトニトリル混液を使用
依頼が多い中毒起因物質、それらの観点から分析が有用と
した。検出器はフォトダイオードアレイを用いることによ
される中毒起因物質 15 品目を掲げている。これらの中に
り、多波長で分析を行った。市販の人血清を用いた添加実
は、催眠薬として用いられるバルビツール酸系薬物があり、
験により、アモバルビタール、ペントバルビタール、バル
主な中毒症状としては血圧低下、ショック、呼吸抑制、
昏睡、
ビタール、フェノバルビタールナトリウムにおいて、良好
体温低下などがある。健康危機管理において中毒起因物質
な回収率が得られた。
となった成分を迅速に分析することは、健康被害拡大防止
を図るうえで重要である。そこで、医療機関等に一刻でも
速く中毒原因物質に関する情報を提供できるように、迅速
■誌上発表
なし
■来年度の研究実施計画
定量法を開発する。
今回開発したバルビツール酸系薬物と他の中毒起因物質
■研究実施状況
(アセトアミノフェン、ジアゼパムなど)について一斉分
日本中毒学会が提案した治療に直結するため分析すべき
析法を開発していく予定である。
15 物質を対象に研究を行った。催眠薬として用いられて
27
平成 19 年度 研究実施 / 終了報告書
無承認無許可医薬品のスクリーニング検査法の開発
食品医薬品部 薬事指導課
沢辺善之 ■研究目的
の特徴を見い出した。
健康食品等に含まれる化学物質が、
健康食品等に含まれる違法薬物を検索する分析法を開発
この特徴を示した場合、標準物質を測定しなくても同系
する。
の薬物であることを推定することができる。
1)GC-MS を用いた同時多成分のスクリーニング法を検討
し、医薬品のマススペクトルのライブラリーを作成する。
2) 違法薬物のうち生理活性の強いフェネチルアミン系薬
物のスクリーニング法を開発する。
■研究実施状況
1) 薬物 63 成分につき原体と TMS 誘導体を GC-MS で測
また、フェネチルアミン系薬物を蛍光ラベル化し
HPLC により分析することにより、同系の薬物の存在を
推定することが可能であることがわかった。
■誌上発表
なし
■平成 20 年度の研究実施計画
定し、そのうち 57 成分のマススペクトルをライブラリー
1)GC-MS のマススペクトルのライブラリーを整備する。
化した。ライブラリーを整備することで標準物質を測定
2) 化学構造の系統を推定できる分析法を検討する。
(例え
しなくても健康食品等に含まれる薬物の推定が可能とな
ば、ED 治療薬であるシルデナフィルは摘発逃れのため
る。
に構造を一部変化させた複数の化合物が発見されてい
2)GC-MS を用い、エフェドリン等の数種のフェネチルア
ミン系薬物を題材に同系薬物に共通するマススペクトル
28
る。
)
平成 19 年度 研究実施 / 終了報告書
香粧品に配合されるドナー型防腐剤から遊離する
ホルムアルデヒドに関する研究
食品医薬品部 薬事指導課
梶村計志、田上貴臣
■研究目的
製し、60℃の水浴中に 90 分間放置したとき、FA 濃度は
香粧品に配合される防腐剤の中に、分解等によりホルム
約 50ppm に達した。
アルデヒド(FA)を遊離するものの存在が知られており、
3)pH による影響
通称、ドナー型防腐剤と呼ばれている。FA は近年、社会
ブロノポールの分解により遊離する FA 含量は、溶解液
的に大きな問題となっているシックハウス症候群を引きお
の pH の影響を大きく受けた。溶解液の pH がアルカリ性
こす原因物質のひとつとして注目をあつめており、一度感
になるほど遊離する FA 量は顕著に増加した。
作すると低濃度の暴露により、自律神経系を中心とした多
4)長期保存試験
彩な症状を呈することが報告されている。さらに、接触性
0.1% 溶液を調製し 25℃で保存したとき、pH8 の溶解
皮膚炎を引きおこすことや、発癌性があることも明らかと
液では、3 日後に FA 含量が約 35ppm に達した。これと
なっている。
比較して、pH2 の溶解液では、50 日間保存後も FA はほ
我が国では現在、イミダゾリジニルウレア及び DMDM
とんど遊離しなかった。
ヒダントイン以外のドナー型防腐剤の香粧品への配合は、
禁止されている。しかし、欧米では当該防腐剤が一般的に
■誌上発表
1)K. kajimura , T.Tagami,T.Yamamoto
and
S.
使用されており、香粧品に配合される防腐剤全体の中で、
Iwagami, The release of formaldehyde upon
占める割合もかなり高い。近年、インターネット等の普及
2-bromo-2-nitropropan-1,3-diol(Bronopol)
により欧米から個人輸入される香粧品の数が飛躍的に増加
decomposition, J. Health Sci., submitted to
しているが、その中にはドナー型防腐剤が配合されたもの
■平成 20 年度の研究実施計画
も多数含まれている。香粧品は、ほぼ毎日使用され且つ人
我が国で化粧品への使用が認められているイミダゾリジ
体に直接接触することから、安全性に関して多大なる配慮
ニルウレアを対象として検討を行う。
が必要である。本研究では、ドナー型防腐剤から遊離する
1)分析法の検討
FA の挙動を明らかにし、そのリスク評価を行うことを目
ホルムアルデヒド(FA)の分析法として、アセチルア
的とする。
セトン法、2,4-DNP 法、アセト酢酸エチル法等が報告さ
■研究実施状況
れているが、イミダゾリジニルウレアの分解により遊離す
欧米で化粧品の防腐剤として使用される頻度が高いブロ
る FA を分析するために最適な方法を検討する。
ノポールを対象として検討を行った。
2)FA の遊離に影響を及ぼす基礎的条件の検討
1) 分析法の検討
イミダゾリジニルウレアの試験溶液を作製し、FA の遊
種々の分析法を比較し、迅速性及び特異性に優れていた
離に影響を及ぼす基礎的条件(pH、光、温度、塩濃度等)
HPLC を用いた 2,4-DNP 誘導体化法を分析法として選択
について検討する。
した。
3)長期保存試験
2) 温度による影響
イミダゾリジニルウレアの試験溶液を作製し、50 日間
ブロノポールの分解により遊離するホルムアルデヒド
にわたり、経時的に遊離してくる FA 含量の測定を行う。
(FA)は温度による影響を大きく受けた。0.1% 溶液を調
なお、保存条件は、上記(基礎的条件)検討結果をふまえ、
設定する。
29
平成 19 年度 研究実施 / 終了報告書
蛍光染色法を用いた化粧品中の微生物検出に関する研究
食品医薬品部 薬事指導課
皐月由香 ■研究目的
各条にも収載されており、超ろ過、イオン交換、蒸留又は
消費者の安全に対する配慮から、防腐剤の使用量を低減
それらの組み合わせにより精製した水とある。そこで、精
した化粧品が市場に出回っている。化粧品の製造において、
製水の範疇であるイオン交換水、逆浸透膜とイオン交換の
化粧品基準の範囲内であれば様々な原料を用いることがで
組み合わせによる水及び常水を用いて化粧品を作成し、マ
きるため、防腐効果を十分に確認しないで新規原料を使用
イクロコロニー法によりぞれぞれの微生物数の比較をおこ
したり、防腐剤の使用量を低減することによって、製品の
なった。また、防腐剤の影響を検討するため、防腐剤を配
品質への影響が懸念される。そこで、化粧品の微生物汚染
合していない化粧品と防腐剤を配合した化粧品について、
について、蛍光染色法を用いて調査する。また、医薬品の
一定期間保存後の微生物数の比較をおこなった。しかし、
製造用水において、微生物の存在が報告されているため、
現在のところ明確な差は認められていない。
化粧品を製造する際の製造用水の品質により、防腐剤の使
用量に影響するかどうか検討する。
■研究実施状況
■誌上発表
なし
■平成 20 年度の研究実施計画
化粧品を製造する際に使用される水として、「精製水」
化粧品中の自家蛍光物質の影響を減らすため、前処理方
が多いと考えられる。この精製水は、日本薬局方の医薬品
法の検討をおこない、防腐剤を低減することによる製品へ
の影響調査に取り組む。
30
平成 19 年度 研究実施 / 終了報告書
研究終了
生薬の残留農薬による汚染の実態に関する研究
食品医薬品部 薬事指導課
梶村計志、田上貴臣、皐月由香、中村暁彦
■研究目的
生薬は、各種疾患の予防および治療に繁用されているが、
長期間にわたり連用される可能性が高いことから、安全性
実態調査を行い、特定の生薬から有機リン系あるいはピレ
スロイド系農薬が検出されることを見出した。
■結 論
に関して多大なる配慮が必要であると考えられる。
しかし、
1990 年代半ばまでの実態調査では、高濃度の有機塩素
生薬中に残留する農薬の実態に関しては不明な部分が数多
系農薬に汚染された試料も多数認められた。しかし、その
く残されており、1997 年まで、我が国はもとより、諸外
汚染レベルは経年的に低下し、90 年代後半以後の調査で
国においても残留基準が設定されていなかった。我が国で
は、高濃度の塩素系農薬に汚染された試料は確認されなく
は現在でもわずか 2 種類の農薬について残留基準が定め
なった。近年の調査では、有機リン系あるいはピレスロイ
られているだけである。大阪府において医薬品産業は地場
ド系農薬の残留が認められる試料も散見される様になって
産業としての位置付けをなされているが、なかでも生薬は
きている。
全国取り引き量の約 80%が道修町を中心とする大阪市場
■成果の活用
で取り引きされている。従って、本府の薬務行政において
本研究における成果は、1997 年 に公布された第 13 改
も、生薬の安全性、品質に関する問題は重要である。本研
正日本薬局方第一追補において、ニンジン及びセンナに
究では、生薬中に残留する農薬の実態を明らかにし、薬務
BHC, DDT の残留基準値を設定するための基礎データー
監視行政の基礎資料とすることを目的とする。
となった。また、我が国最大の生薬取引市場をかかえる本
■研究実施状況
1) 有機塩素系農薬を対象とした分析法の開発
有機塩素系農薬(10 種類)を対象とし、GC-ECD およ
府の薬務行政を側面から支える有益な資料となった。
1) 梶村ら , センナ中に残留する有機塩素系農薬の実態調
査 -1991 〜 2005 年における経年変化に び GC-MS による一斉分析法を開発した。
ついて -, 医薬品研究、37, 671(2006).
2) 生薬中に残留する有機塩素系農薬
2)T.Tagami et al., Simultaneous Analysis of 10
生薬中に残留する有機塩素系農薬について実態調査を行
い、BHC が多くの種類の生薬から検出されることを見出
した。DDT 系農薬は、BHC と比較し、その汚染レベルが
低かった。
3) ニンジン、センナを対象とした有機塩素系農薬の経年
的な実態調査
Pyrethroid Pesticides in Natural Medicines by GC/MS with Negative Chemical Ionization,
YAKUGAKU ZASSHI, 126, 991 (2006).
3) 梶村ら , 1990 〜 2005 年に実施した人参・紅参に対す
る有機塩素系農薬の実態調査 ,
大阪府立公衛研所報 , 44, 61(2006).
1990 年代当初において、有機塩素系農薬による汚染が
4) 梶村ら , 人参・紅参中に残留する有機塩素系農薬の実態
特に著しかったニンジン、センナを対象とし、経年的に実
調査 -1990 〜 1999 年における残留値の推移について -,
態調査を行い、その汚染レベルが経年的に低下してきてい
医薬品研究 , 32, 567(2001).
ることを確認した。
4) 有機リン系およびピレスロイド系農薬を対象とした分
析法の開発
有機リン系農薬(12 種類)を対象とし、GC-MS(EI)
による一斉分析法を開発した。また、ピレスロイド系農薬
(10 種類)を対象とし、GC-MS(NCl)による一斉分析法
を開発した。
5) 有機リン系およびピレスロイド系農薬を対象とした実
態調査
有機リン系農薬およびピレスロイド系農薬を対象とした
5) 梶村ら , 生薬中の化学的異物 ( 有機塩素系残留農薬 ) の
分析法と現状 , 防菌防黴 , 24, 609(1996).
6) 梶村ら , 薬用人参中に残留する有機塩素系農薬の GCMS を用いた分析について ,
大阪府立公衛研所報 , 29, 21(1995).
7) 梶村ら , 精油含有生薬中に残留する有機塩素系農薬の
分析法 , 大阪府立公衛研所報 , 28,63(1994)
8) 梶村ら , 生薬中に残留する有機塩素系農薬の分析法に
ついて(第1報), 大阪府立公衛研所報 , 27, 21(1993).
他 2 編
31
平成 19 年度 研究実施 / 終了報告書
開発研究
研究終了
生薬に残留する農薬の一斉分析法の開発
及びその実態調査
食品医薬品部 薬事指導課
田上貴臣、梶村計志
■研究目的
2)直線性の検討
漢方薬(生薬を原料として製造される)は、各種疾患の
56 種類の農薬について、検量線を作成したところ 50
予防及び治療に使用されており、長期にわたり連用される
- 500ppb の範囲において良好な直線性を示した。
可能性が高いことから、食品と同様、その安全性に関して
3)添加回収試験
配慮が必要である。近年、輸入食品から検出される残留農
輸入量の多い生薬のうちダイオウ、カッコン、ケツメイ
薬が、食に対する安全性の問題として取り上げられている
シを対象として添加回収試験を行ったところ、回収率は
が、我が国で使用されている生薬も大部分が輸入品である。
70 - 111%であり、良好な結果が得られた。
現在、わが国においては、ポジティブリスト制の導入によ
4)特異性の検討
り、農産物には約 800 種類の農薬についての残留基準が
ダイオウ、カッコン、ケツメイシにおいては、56 種類
定められているにもかかわらず、医薬品原料である生薬は、
の農薬のピークの付近に夾雑ピークが認められなかった。
食品衛生法による残留農薬の規制を受けず、日本薬局方の
■結 論
規定により、一部の生薬(13 種類)について、わずか 2
今回確立した分析法は、良好な直線性を有するもので
種類の農薬(Total BHC,Total DDT)の残留基準が定め
あった。また、生薬に対する添加回収試験では、良好な結
られているに過ぎない。また、生薬中の残留農薬の分析法
果が得られた。加えて、迅速性に優れることから、今回確
及びその実態調査についての報告は、農産物に比べて極め
立した分析法は、生薬中の残留農薬の分析に有用であると
て少なく、生薬中の残留農薬の実態には不明な部分が多い。
考えられた。
漢方薬の安全性を確保するために、生薬中の残留農薬の実
■成果の活用
態を解明することを目的として、生薬中の残留農薬の一斉
今回確立した分析法は、56 種類の農薬を同時に分析す
分析法を開発し、実態調査を行う。
ることができ、市場に流通する生薬中の残留農薬の分析に
■研究実施状況
生薬中の 56 種類の残留農薬(有機塩素系農薬 17 種類、
活用できるものと考えられる。
1)Tagami T, Kajimura K, Satsuki Y, Nakamura A,
有機リン系農薬 30 種類、ピレスロイド系農薬 9 種類)の
Okihashi M, Takatori S, Kakimoto K, Obana H,
一斉分析法を確立するために、以下の検討を行った。
Kitagawa M: Rapid analysis of 56 pesticide residues
1)昇温条件の検討
in natural medicines by GC/MS with negative
GC/MS の昇温条件を検討し、56 種類の農薬が分析可能
chemical ionization.J Nat Med,62,126-129(2008)
な昇温条件を設定した。
32
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