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淀川水系等の水質調査 - 大阪府立公衆衛生研究所

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淀川水系等の水質調査 - 大阪府立公衆衛生研究所
平成 18 年度 研究実施 / 終了報告書
淀川水系等の水質調査
生活環境部 環境水質課
宮野啓一、田中榮次、土井 均、味村真弓、
小泉義彦
高木総吉、枝川亜希子、安達史恵、渡邊 功
研究目的
3.1 μ g/L、THF は <0.1 ~ 23 μ g/L といずれも低濃度
であった。冬季試料については分析中である。
淀川は、大阪府内の水道水源の 90% を依存している重
誌上発表
要な河川であり、水道水源としての安全性を確保するた
め、規制及び未規制の有害物質に対する調査が必要不可欠
1) 高木総吉、宮野啓一、小泉義彦、安達史恵、渡邊功、
である。本研究では、主として淀川水系を対象に、将来公
織田肇:大阪府内水道水源および淀川水系における 1,4-
衆衛生上問題になる可能性のある、もしくは現時点で問題
ジオキサンレベルの実態調査、環境化学、16、669-676
になっている未規制物質を調査し、水道水源として安全性
を確保するための基礎資料を得る。
研究実施状況
(2006)
2) Sokichi Takagi, Fumie Adachi, Isao Watanabe ,
Kurunthachalam Kannan:Studies on Perfluorinated
Compounds in the Suspended Solid and the
今年度は、難分解性かつ蓄積性を有し新たな環境汚染物
Dissolved Phase in River Water, In: Proceeding of
質と報告されている有機フッ素化合物、近年水環境中での
International Symposium 2006 “Pioneering Studies
存在が報告され生態系への影響が懸念されている医薬品
of Young Scientists on Chemical Pollution and
類、工業原料や溶剤として使用されている水溶性難分解
Environmental Changes” , Matsuyama, Japan,
性の溶剤を対象に、淀川水系 (12 地点 ) 及び大和川水系 (8
Ehime University, 455-458(2007)
地点 ) で実態調査を行った。
1)有機フッ素化合物の主要対象化合物は PFOS と PFOA
3) Fumie Adachi, Sokichi Takagi, Isao Watanabe:
Occurrence of 1,4-Dioxane Contamination
とし、平成 18 年 8 月(夏季)・平成 19 年 2 月(冬季)
in the Water Source and Yodo River Zone in
の 2 回調査を行った。その結果、すべての試料から両
Osaka Prefecture, In:Proceeding of International
化合物とも ng/L レベルで検出された。現在 2 回のデー
Symposium 2006 “Pioneering Studies of Young
タと類縁化合物のデータを含めて、詳細な解析を行って
Scientists on Chemical Pollution and Environmental
いるところである。
Changes” , Matsuyama, Japan, Ehime University,
2)解熱鎮痛剤等 5 種の医薬品の存在実態調査を夏季及び
451-454(2007)
冬季の計 2 回行った。その結果、両水系において対象
平成 19 年度の研究実施計画
とした医薬品が検出され、1 種についてはすべての地点
から、残り 4 種については各々数地点から検出された。
検出濃度はいずれの医薬品も< 0.5 ~ 50ng/L と低濃度
であった。
1)有機フッ素化合物及び医薬品類について、来年度も淀
川水系及び大和川水系の調査を継続して行い、水環境中
の実態把握や挙動を調査する。
3)溶剤として N,N- ジメチルホルムアミド (DMF) とテト
2)かび臭及び 2,4,6- トリクロロアニソール等の臭気物質
ラヒドロフラン (THF) について調査を行った。夏季の
の同時分析の検討、及び淀川及び大和川水系の調査を行
結果は、DMF は淀川及び大和川水系において <0.1 ~
う。
28
平成 18 年度 研究実施 / 終了報告書
水質試験における分析方法の開発等に関する研究
生活環境部 環境水質課
田中榮次、宮野啓一、味村真弓、小泉義彦
高木総吉、安達史恵、渡邊 功
研究目的
察されたので、共存物質の妨害について現在検討中であ
る。
水道水及び水道水源の安全性を確保するには、日常的な
5)固相抽出 -GC/MS 法による水溶性有機溶剤(N , N-
水質監視を行い突発的な汚染事故に対処する一方、規制物
ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン)の分析法
質のみならず未規制有害物質の水環境中のレベルの実態把
を検討し、サロゲートを使用した高精度の分析法を確立
握が重要である。そのためには、規制及び未規制有害物質
した。
の測定を正確に行える分析法の確立が必要不可欠である。
6)文献収集により、環境中の有機臭素系難燃剤ヘキサブ
本研究では、規制物質について高精度で迅速簡便な分析法
ロモシクロドデカン(HBCD)の異性体組成は工業原体
の開発を行うとともに、未規制有害物質による潜在的な水
と大きく異なっており、HBCD 分析法は、異性体分析
質汚染調査を行う上で必要な分析方法の開発や情報収集を
が可能な液体クロマトグラフー質量分析法が適切である
行う。
と認めた。
研究実施状況
誌上発表
1)二酸化塩素の自動分析を検討し、高い分析精度、回収
1) 宮野啓一、小泉義彦、高木総吉、安達史恵、渡邊功:
率が得られた。また、共存物質による影響をほとんど受
陰イオン界面活性剤分析法の検討 ( 第 2 報 ),大阪府立
けずに二酸化塩素を分析出来ることを確認した。
公衆衛生研究所研究報告、44、73-79 (2006)
2)水道水中の非イオン及び陰イオン界面活性剤の分析法
の改良法 ( 同時分析法 ) ついて検討した。その結果、両
界面活性剤を固相カラムで同時濃縮し、2 種類の溶媒で
分画する方法により、陰イオン界面活性剤測定時に非イ
オン界面活性剤の妨害を受けず、また両化合物の回収率
も良好な結果が得られた
3)昨年度検討した有機フッ素化合物の LC/MS/MS によ
る水試料分析法について、100 検体以上の環境水試料
2) 渡辺功:臭素系ダイオキシン類概論,マテリアルイン
テグレーション、19(4)、39-58(2006)
平成 19 年度の研究実施計画
1)自動分析装置を用いて残留遊離塩素と二酸化塩素の同
時分離定量について検討を行う。
2)非イオン及び陰イオン界面活性剤の分解物についても
分析可能性を調べる。
を分析し、実試料に十分適用できることを確認した。ま
3)水以外の媒体中の有機フッ素化合物の分析方法の確立
た生体試料中の有機フッ素化合物分析方法も検討中であ
を検討するとともに、サロゲートの適用など既存の方法
る。
の改良も行う。
4)LC/MS/MS を用いて解熱鎮痛剤等の医薬品 5 種につい
て水を対象とした分析方法を検討し、環境水中において
測定を行った。その結果、試料により回収率の変動が観
4)環境水中における医薬品(抗生物質等)の分析方法を、
引き続き検討する。
5)有機臭素系難燃剤等の分析法、物性、環境分布等につ
いて、引き続き、文献情報調査を行う。
29
平成 18 年度 研究実施 / 終了報告書
環境微生物に関する調査研究
1) レジオネラ属菌に対する制御法に関する研究
生活環境部 環境水質課
2) レジオネラ属菌迅速検出法に関する研究
土井 均、肥塚利江、枝川亜希子
3)環境中におけるクリプトスポリジウムの汚染実態に関する研究
研究目的
法を用いることにより、培養法の陰性結果を早期に予測
し得ると考えられた。
近年、レジオネラやクリプトスポリジウム等の水系感染
3)大阪府内の環境水のうち、顕微鏡法でクリプトスポリ
を原因とした集団感染事故が各地で起こり公衆衛生上の問
ジウム陽性のもの及び過去に陽性となったことのある地
題となっている。これら病原微生物による感染事故を防止
点を中心に、18 カ所 27 試料について Nested PCR 法
するためには、感染源及び汚染実態の正確な把握と病原微
を用いてクリプトスポリジウムの遺伝子の検出を試み
生物制御法の確立が必要である。本研究では、これらの病
た。その結果、
11 カ所 16 試料について PCR 陽性となっ
原微生物の正確かつ迅速な検出法を確立し、水環境におけ
た。 現在、陽性となった検体について、その遺伝子型
る汚染実態及び生息条件を把握するとともに制御法につい
同定のためシークエンスを行っている。
て検討する。また、レジオネラ属菌の宿主となる自由生活
誌上発表
性アメーバの汚染実態及び生息条件についても検討する。
研究実施状況
1) Detection and genotyping of Cryptosporidium from
brown rats (Rattus norvegicus ) captured in an urban
1)レジオネラ属菌の塩素消毒に対する抵抗性についてア
area of Japan. Kimura A, Edagawa A, Okada K,
メーバ共存の影響について検討した。その結果、アメー
Takimoto A, Yonesho S, Karanis P., Parasitol Res.
バ(Acanthamoeba ATCC30234 株)は塩素に対して
2007 Feb 21; [Epub ahead of print]
抵抗性を示し、アメーバに寄生して増殖しているレジオ
ネラ属菌(L.pneumophila ATCC33152 株)の塩素抵
抗性を高めることがわかった。
平成 19 年度の研究実施計画 1)レジオネラ属菌に対する制御法に関する研究
2) 循 環 式 浴 槽 水 を 対 象 に、 迅 速 遺 伝 子 検 査 法 で あ る
種々の環境分離株に対する塩素消毒におけるアメーバ共
LAMP 法を用いたレジオネラ属菌検出について検討し
存の影響を検討する。また、オゾンのレジオネラに対する
た。循環式浴槽水 84 試料のうち、培養法で 13 試料、
殺菌効果についても検討する。
LAMP 法で 30 試料が陽性であった。同時に LAMP 法
2)環境水中におけるクリプトスポリジウム汚染実態に関
反応阻害確認試験を行ったところ、4 試料で反応阻害が
する研究
認められた。これらは、薬湯や原水に井戸水を使用して
引き続き水道水源を中心とした環境水中のクリプトスポ
いた試料であった。培養法陽性で LAMP 法陰性の試料
リジウムの汚染状況を調査し、その発生源を明らかにする
はなく、また、LAMP 法陰性の試料はすべて培養法陰
ために、遺伝子型を PCR 法等の手法を用いて検討する。
性であった。したがってレジオネラ属菌検出に LAMP
30
平成 18 年度 研究実施 / 終了報告書
小規模分散型生活排水処理システムに関する研究
1) 生活系汚水の効率的な処理・維持管理方法の検討 2) 地域水環境対
策としての浄化槽整備の評価 3) 効率的な浄化槽面整備事業手法に関
生活環境部 環境水質課
する検討 4) 汚泥再処理センターで発生する余剰汚濁量の削減手法の
山本康次、中野 仁、奥村早代子
検討 5) 紫外線を用いた生活排水処理法の物理化学的処理の検討
研究目的
大阪府の生活系排水対策は、従来、下水道整備により行
われてきたが、迅速な整備や経済性などの観点から近年、
廃熱利用を前提とした熱処理法と好気性消化法の基礎的
検討を行った。熱処理法では 1/2 程度まで、好気性消
化法では 2 割程度まで削減できた。
5) 紫外線照射とオゾンガスを併用したし尿処理水中のエ
合併処理浄化槽の面整備が行われるようになってきた。本
ストロゲンラジカル酸化では、ELISA によるエストロ
研究は、合併処理浄化槽の面整備など小規模分散型生活排
ゲンの測定を行った。
水処理システムに関し、浄化槽の処理技術、維持管理技術、
誌上発表
情報管理方法、浄化槽整備が地域水環境に与える効果、整
備手法などを検討する。また、通常の生物処理では処理で
きない生物難分解性物質の分解に関する研究を行う。
研究実施状況
1) 奥村早代子、山本康次、小林永二、牟田口一徳、
:既設
の中規模浄化槽における窒素・リン除去に向けた施設改
修と運転方法に関する研究、浄化槽研究、18(5)、1-10
(2006)
1)効率的処理・維持管理方法の研究に関しては、コンビ
平成 19 年度の研究実施計画
ニエンスストアの浄化槽 2 施設について昨年度に指導
した機能改善効果の追跡調査を行った。約 8 ヵ月間は
1)効率的処理・維持管理方法の研究に関しては、コンビ
処理水質が大幅に改善されたが、その後、汚泥の蓄積と
ニ浄化槽の機能改善手法の結果をまとめて投稿を行う。
水温低下により処理水質の悪化が認められた。さらなる
また、維持管理方法については、中規模以上の浄化槽に
水質改善には空気量の増加と清掃期間の短縮が必要と考
対しては府営住宅に設置された浄化槽を対象とし、小規
察された。また、維持管理については、府営住宅に設置
模浄化槽に対しては富田林市 PFI 事業を対象として検
された浄化槽について継続的に検討している。
討を行う。
2)面整備された浄化槽群の処理機能や地域水環境に与え
2)生活排水対策として整備される浄化槽群の地域水環境
る影響に関しては、豊能町高山地区で河川調査と浄化槽
への影響評価に関しては、豊能町高山地区、富田林市佐
の機能調査ならびに処理機能が低下している浄化槽につ
備川流域について継続して調査を行う。
いて改善方法を検討した。また、富田林市の浄化槽面整
3)効率的な浄化槽面整備事業手法に関する検討に関して
備事業開始前の佐備川流域水質調査結果を解析し、汚濁
は、府庁環境衛生課とともに大阪府版 PFI 手法による
負荷量の算出や整備後の水質予測を行い、研究集会での
浄化槽整備マニュアルの作成に向けて検討を進める。
発表と雑誌の投稿(査読中)を行った。
3)効率的な浄化槽面整備事業手法に関しては、PFI 手法
導入の有用性、課題などを明らかにし、研究助成先への
報告を 18 年 11 月に行った。
4)汚泥再処理センターの余剰汚泥削減手法に関しては、
4)余剰汚泥の削減方法に関しては、好気性消化法におけ
る SS 負荷量と削減率との関係や固液分離法について検
討する。
5)浄化槽等の生活排水処理水に対し紫外線とオゾン併用
による物理化学的処理を行い、殺菌の高度化やエストロ
ゲンの分解を検討する。
31
平成 18 年度 研究実施 / 終了報告書
環境放射能および環境放射線の測定
生活環境部 環境水質課
肥塚利江、味村真弓、渡邊 功
研究目的
降下物また原子力施設からの漏洩等による人工放射性物質
の新たな環境への放出はなかったことを確認した。なお、
人工放射性降下物及び原子力施設等からの放射性物質漏
北朝鮮核実験時のモニタリング強化においても空間放射線
洩による環境汚染の有無を明らかにすること、また放射能
量率の異常値や人工放射性物質は検出されなかった。
事故時の影響評価や対策等の基礎資料を得る事を目的と
さらにガンマ線核種分析の精度確認のため(財)日本分
し、大阪府内における環境放射線ならびに環境及び食品中
析センターとのクロスチェック(分析確認試料 10 試料)
の放射能レベルを把握する。さらに、天然放射性核種に
を行った結果、ガンマ線核種分析結果の精度は十分確保さ
よる環境問題に資するため、大阪府内の天然放射性核種の
れていることを確認した。
バックグラウンドレベルを把握する。
研究実施状況
誌上発表
1) 肥塚利江、安達史恵、渡邊功:大阪府における環境及
昨年度に引き続き、文部科学省委託による放射能調査を
び食品中放射能調査(平成 17 年度報告)
、大阪府立公
主に、大阪府内の環境及び食品試料中の放射能及び空間放
衆衛生研究所研究報告、44、31-39(2006)
射線量率調査を実施した。降水の全ベータ放射能測定 78
2) 肥塚利江、安達史恵、渡邊功:大阪府における放射
件、環境及び食品中のガンマ線核種分析 40 件、空間放射
能調査、第 48 回環境放射能調査研究成果論文抄録集、
線量率測定 395 件を行った。また、2006 年 10 月 9 日の
217-220(2006)
北朝鮮地下核実験実施の発表を受け、当日から 10 月 24
日までモニタリングの強化として、連日モニタリングポス
平成 19 年度の研究実施計画
トの値の確認、降下物及び大気浮遊塵のガンマ線核種分析
引き続き、大阪府内における環境放射線ならびに環境及
を行った。
び食品中の放射能レベルを把握するために、来年度も文部
平成 18 年度における環境及び各種食品中の放射能及び
科学省の委託調査を中心に研究を進める。
放射線のレベルは、昨年度と同様、すべて平常値であり、
1)全ベータ放射能測定:降水について、低放射能測定装
人工放射性物質の環境への新たな放出はないことを確認し
置を用いて測定。
た。本年度も上水原水(淀川河川水)に医学利用によると
2)ガンマ線核種分析:大気浮遊塵、降下物、上水、土壌、
思われる極微量のヨウ素 131 を検出したが、その濃度は
海水、海底土、米、牛乳、野菜、日常食等について、ゲ
約 1mBq/L であり、飲食物の摂取制限に関する指標値か
ルマニウム半導体検出器を用いて測定。
ら判断して、府民への健康影響には全く問題のないレベル
3)空間放射線量率:当所中庭、大阪城公園等において、
であった。従って、今年度も、大阪府において人工放射性
シンチレーション式サーベイメータを用いて測定。当所
屋上において、モニタリングポストを用いて連続測定。
32
平成 18 年度 研究実施 / 終了報告書
有害作業のある小規模事業所における労働衛生管理の
推進に関する研究
生活環境部 生活衛生課
熊谷信二、小坂 博、宮島啓子、吉田 仁、冨岡公子
研究目的
できないかを検討している。
5)血中カドミウム濃度のフレームレス原子吸光光度計に
大阪府には多数の小規模事業所がある。これらの中には
よる測定法を確立した。また、生体試料の変異原性試験
化学物質の取扱いなど有害作業を行っている所、あるいは
(umu 試験)に使用する新菌株として NM3009 株が適
重量物取扱いなど負担作業を行っている所があり、これら
切であることがわかった。
の作業従事者が化学物質による中毒や腰痛等の筋骨格系障
誌上発表
害に罹患することがある。本研究の目的は、これらの事業
所における作業の実態と従事者の健康状態を把握し、必要
1) Yoshida J, et al.:Association between serum dioxin
な場合には改善対策指導を行うことである。今年度は、医
level and urinary estrogen metabolites in municipal
療機関での内視鏡スコープの消毒時における消毒剤曝露と
waste incinerator workers, Arch Environ Occup
健康影響、医療機関での抗癌剤取り扱い時の抗癌剤曝露と
Health, 60, 215-222(2005)
健康影響、高齢者介護施設での介護作業と従事者の健康影
2) Yoshida J, Kosaka H, Tomioka K, Kumagai S:
響に関する調査を行う。 石綿工場周辺における過去の環
Genotoxic risks to nurses from contamination of
境中石綿濃度を推定する。 生体試料中の有害物濃度を測
the work environment with antineoplastic drugs in
定する方法を確立する。
研究実施状況
1)16 医療機関において、洗浄従事者の自覚症状調査と内
視鏡洗浄室のオルトフタルアルデヒド濃度の測定を行っ
た。洗浄従事者 125 名中、洗浄作業時に 22.4%、消毒
液交換時に 33.3%のものに症状が見られた。オルトフ
タルアルデヒド濃度は、用手洗浄よりも自動洗浄の方が
低かった。
2)大阪府内の病院における注射用抗癌剤の混合調製作業
の現状を把握するため、質問紙調査を実施した。その
Japan, J Occup Health, 48,517-522(2006)
3) Tomioka K, Kumagai S, Kameda M, Kataoka
Y: A case of occupational asthma induced by
Falcata wood (Albizia falcataria) J Occup Health,
48,392-395(2006)
4) 宮島啓子 他:大阪府内の医療機関における内視鏡消毒
作業の現状 , 産衛誌 , 48, 169-175(2006)
5) 冨岡公子、熊谷信二、樋口由美、辻村裕次、新井康友、
吉田仁:個別ケアに取り組む高齢者介護施設における入
浴助時の腰部負担および介護職員と利用者の満足度 , 産
衛誌 , ( 印刷中 )
結果、以下のことがわかった。100 床以上の病院の約 8
平成 19 年度の研究実施計画
割で同作業を行っており、責任者は抗癌剤の職業性曝露
の危険性を認識していた。多くの病院では、個人保護具
の着用が行われていたが、小規模病院は安全キャビネッ
トやガイドラインの設置などの安全対策が遅れていた。
3)介護機器使用による腰部負担の軽減に関する調査を行
い、使用は負担軽減に効果的であるが、適切な使用方法
や作業姿勢の指導、作業環境の整備も重要であることが
わかった。また、介護福祉士専門学校の卒業生を対象に
1)内視鏡洗浄作業の調査を継続するとともに、これまで
得られた結果を報告する。
2)注射用抗癌剤の混合作業を行っている病院において、
従事者の曝露状況を把握するために、職場環境中の抗癌
剤濃度および尿中抗癌剤代謝物濃度を測定する。
3)介護労働者を対象とした筋骨格系障害と職業性ストレ
スに関するアンケート調査を実施する。
質問紙調査を行い、就労中の 80%以上の人が介護の仕
4)泉南地域の寺院の線香灰中の石綿濃度を分散染色法を
事を続けたいと考えているが、「給料が低い」などの理
用いて測定する。また、同地域の気象条件により工場か
由でやめたいと思うこともあることがわかった。
ら飛散した石綿がどのように拡散するかをシミュレート
4)泉南地域において過去に石綿工場があった地点を当時
の住宅地図により確認した。また、過去の環境中石綿濃
度を推定する試料として、同地域の寺院の線香灰が使用
する。
5) フレームレス原子吸光法による尿中カドミウム濃度お
よび血中水銀濃度の測定法を確立する。
33
平成 18 年度 研究実施 / 終了報告書
住居環境中の有害化学物質への曝露実態と
その評価方法に関する研究
生活環境部 生活衛生課
吉田俊明、松永一朗
研究目的
誌上発表
近年、住宅等の室内環境の汚染がその発症の原因の一つ
1) Yoshida T, Matsunaga I, Tomioka K, Kumagai S:
とされる「シックハウス症候群」や「化学物質過敏症」が
Interior air pollution in automotive cabins by volatile
社会的に問題となっている。本研究では、化学物質による
organic compounds diffusing from interior materials.
室内空気汚染の実態を明らかにするとともに、健康影響評
I. Survey of 101 types of Japanese domestically
価および動物実験等を行い、これらの疾病に主眼をおいて
produced cars for private use: Indoor Built Environ
健康に及ぼす化学物質の影響を解析する。
研究実施状況
2006; 15: 425-444.
2) Yoshida T, Matsunaga I, Tomioka K, Kumagai S:
Interior air pollution in automotive cabins by volatile
1)これまでの調査により高濃度の化学物質による空気汚
organic compounds diffusing from interior materials.
染が明らかとなった乗用車室内において、運転中のドラ
II. Influence of manufacturer, specifications and
イバーおよび乗員への化学物質の吸収量を推定するため
usage status on air pollution, and estimation of air
動物実験を行った。.....18 年度開発研究採択課題「乗用
pollution levels in initial phases of delivery as a new
車内装品等から放散される有害化学物質の乗員曝露とそ
の経気道吸収量の推定」の研究終了報告書に記載。
2)近年、子供たちに急増しているアレルギー疾患の原因
car: Indoor Built Environ 2006; 15: 445-462.
3) Miyake Y, Sasaki S, Ohya Y, Miyamoto S, Matsunaga
I, Yoshida T, Hirota Y, Oda H, the Osaka Maternal
を解明するため、大阪市立大学、福岡大学等と共同して、
and Child Health Study Group. Dietary intake of
生活環境の要因とアレルギー疾患発症との関連を探る長
seaweed and minerals and prevalence of allergic
期的な研究を進めている。大阪府内の妊婦約 1000 人を
rhinitis in Japanese pregnant females: baseline data
対象に妊娠中から、生まれた子供が 3 歳 6 ヶ月になる
from the Osaka Maternal and Child Health Study.
まで追跡する調査で、住居内の空気汚染や母親の食事習
Ann Epidemiol 2006; 16: 614-621.
慣など総合的に調べている。現在、母親のアレルギー既
往と環境要因との間の関連について解析を進めている。
平成 19 年度の研究実施計画
今年度は、二酸化窒素曝露濃度とアレルギー疾患有病率
1)化学物質過敏症患者は微量の化学物質により症状を呈
との間の関連について解析を行ったところ、明らかな関
するため、化学物質臭の強い店舗 ( ホームセンター、ド
連は見られなかった。また、冬季の屋内排気型暖房器具
ラッグストアなど ) や公共交通機関 ( 他人の使用する整
の使用、炊事の時のガス器具使用とアレルギー疾患有病
髪料や化粧品に反応 ) を利用できない。外出が制限され
率との間にも明らかな関連は認められなかった。
ている人達がいるにもかかわらず対策が講じられていな
い。
これら店舗における室内空気汚染の実態を調査する。
(19 年度文部科学省科学研究費補助金に申請 )
2)母親のアレルギー既往と環境要因との間の関連につい
て、さらに解析を進めていく。
34
平成 18 年度 研究実施 / 終了報告書
家庭用品に関する衛生学的研究
生活環境部 生活衛生課
中島晴信、宮野直子、松永一朗
研究目的
誌上発表
家庭用品の試験・検査・研究業務の遂行のため、公定分
1) 中島晴信、大嶋智子、栗山孝雄、荒川泰昭:無機系抗
析法の検討や開発を行う。また、未規制物質の中で健康被
菌剤の安全性評価(1)-市販抗菌加工製品に使用さ
害を引き起こす可能性のある物質を検索し、その分析法の
れている無機系抗菌剤の分析- , Biomed. Res. Trace
開発、分析調査、毒性評価を行って健康被害の未然防止を
Elements, 17(4), 427-430(2006).
計っていく。抗菌製品については、抗菌評価を行い安全性
2) 中 島 晴 信、 宮 野 直 子、 高 塚 正、 他: 無 機 系 抗 菌 剤
を評価する。さらに、家庭用品による健康被害の原因究明・
の安全性評価(2)-人工汗・唾液による無機系抗菌
再発防止のための情報伝達システムの構築と方策の提言を
剤及び加工布からの金属溶出- , Biomed. Res. Trace
行う。以上の研究により、府民の健康の保護に資する
Elements, 17(4), 431-434(2006).
研究実施状況
3) 中島晴信、高塚 正、栗山孝雄、荒川泰昭:無機系抗
菌剤の安全性評価(3)-無機系抗菌剤が皮膚常在菌に
1)厚生労働省家庭用品安全対策事業(家庭用品規制基準
及ぼす影響- , Biomed. Res. Trace Elements, 17(4),
設定、分析法策定)
435-438(2006).
2,2,4-Trimetyl-1,3-pentanediol monoisobutyrate な
4) 中島晴信、宮野直子、松永一郎、中島ナオミ、鹿庭正昭:
ど水性塗料中の VOC の GC-FID および GC-MS 分析法の
大阪府下における抗菌製品の市販実態調査- 1991 年か
開発を行い、市販製品の VOC 対策実態等の分析調査を行っ
ら 2004 年- , 大阪公衛研所報 , 44, 85-116(2006).
た。その結果、室内用塗料の成分はより高沸点で低毒性の
物質に代替されていることがわかった。
抗菌剤ナフテン酸亜鉛の HPLC 分析法の開発を行った。
5) Ken-ichi TOMIYAMA, Takao KURIYAMA, Harunobu
NAKASHIMA and Yasuaki ARAKAWA et al.:
Relation of Excessive Accumulation of Calcium
2) 抗菌加工剤の安全性評価に関する研究
and Endonuclease Activation in the Organotin-
抗菌製品の市販実態及び抗菌剤の使用実態を継続調査し
Exposed Olfactory System, Trace Nutrients Research
た。
23,35-41(2006).
無機系抗菌剤が、皮膚常在菌へ及ぼす影響に関する研
平成 19 年度の研究実施計画
究を継続して行った。人工汗・唾液中に各濃度の金属
(Ag,Cu,Zn,Cr)を溶解し、真菌と細菌を 1 種ずつ混在さ
1)厚生労働省家庭用品安全対策事業(家庭用品規制基準
せ、金属濃度による最小殺菌濃度 (MBC) の違いを測定し
設定、分析法策定)を継続して行う。ゴムの加硫促進剤
た。2 種の皮膚常在細菌(表皮ブドウ球菌、アクネ菌)と
Zinc dibenzyldithiocarbamate の分析法の開発を行う。
3 種の真菌(カンジダ、白癬菌、黒カビ)を用いた。その
抗菌剤 2-Mercaptopyridine-N-oxide sodium の分析法
結果、菌種及び金属種・溶液によって各々違いはあるもの
の開発を行う。その他未規制の2物質の分析法を検討す
の、総じて真菌類の方が高濃度の金属溶液中で生存してい
る。
た。つまり、細菌が死滅する金属濃度でも真菌は生存し、
2)抗菌防臭加工剤の安全性評価に関する研究を進める。
皮膚常在菌のバランスが崩れて真菌症が発現する可能性が
抗菌製品の市販実態及び抗菌剤の使用実態調査を継続調
示唆された。
査する。無機系抗菌剤の安全性評価については、金属の
E.coli , K.pneumoniae , S.aureus 及び皮膚常在菌を用
濃度が皮膚常在菌へ及ぼす影響をさらに詳細に調べ、真
いて 13 種の界面活性剤(陰イオン系 7、陽イオン系 6)
菌症との関係を明らかにしていく。皮膚常在菌を含む
の最小発育阻止濃度 (MIC) 測定を行った。
7 種の菌を用いて市販の陰イオン界面活性剤の MBC と
MIC を測定する。
35
平成 18 年度 研究実施 / 終了報告書
大気汚染および室内空気汚染による健康影響に関する研究
生活環境部 生活衛生課
中島孝江、東恵美子、大山正幸、野上浩志
研究目的
誌上発表
大気汚染や室内空気汚染の健康影響への関与を、疫学的
1) N.Takenaka, M.Hiroi, H.Koteishi, Y.Sadanaga,
調査、動物曝露実験、試験管内実験、受動喫煙調査研究な
M.Ohyama,H.Bandow, Secondary Generation
どで明らかにする。大気汚染物質の健康影響では、特に
of Gaseous HONO and Effect on Our Health.
ディーゼル排気粒子や大気中の浮遊粒子状物質や亜硝酸と
Proceedings of the 6th Environmental Science &
喘息などのアレルギー疾患や多種化学物質過敏症との関係
Technology for Sustainbility of Asia, Kumamoto,
を明らかにする。また室内汚染の主要なタバコ煙や建材な
どに含まれる化学物質についてもその影響や実態の調査研
Japan 96-100, 2006
2) M.Ohyama, T.Otake, S.Adachi, T.Kobayashi,
究を行う。これら健康影響に関する研究の成果をもって、
K.Morinaga, A Comparison of the Production
府民の健康増進対策に資する。
of Reactive Oxygen Species by Suspended
研究実施状況
1)多種化学物質過敏症とアレルギー疾患との関連や発症
要因を調べるため、A 市 3 歳 6 か月児健康診査受診者
とその母親を対象に、平成 18 年 1 月より 2 年間の予
定で調査票による調査を実施中で、2 月までの回収率
Particulate Matter and Diesel Exhaust Particles with
Macrophages.Proceedings of 10th InterNational
Inhalation Symposium, Hannover, Germany 2006(
in press)
平成 19 年度の研究実施計画
は 50.4%であった。12 月までの 1 年間の調査票回答者
1)化学物質過敏症とアレルギー疾患の調査を継続すると
1,102 人の有症率は 3 歳 6 か月児とその母親で、アトピー
ともに、1 年間の調査票回答者から対象者を選出して症
性皮膚炎 9.9%と 7.5%、花粉症 0.7%と 7.5%、気管支
例 - 対照研究を行う。環境要因については、二酸化窒素、
喘息 2.9%と 2.2%であった。母親について、これらの
ホルムアルデヒド、ダニ抗原、尿中コチニンを測定し、
有症者と関連疾患のない無症者を対象とした追加健康調
これらが発症要因となる可能性を検討する。また、スギ
査を準備中である。また、調査地域でのスギ・ヒノキ花
花粉症状とスギ花粉の飛散量や大気汚染物質濃度との関
粉飛散量を 3 地点で測定した。山側は海側より数倍多
係からスギ花粉症における大気汚染の役割を検討する。
く花粉が飛散していたが、各地域の花粉症有症率には差
2)尿中ニコチン代謝物のニコチェック簡易測定法につい
が認められなかった。
2)多数の事務室における尿中コチニン量と浮遊粉塵量の
関連性を検討し、正の相関があることがわかった。尿中
コチニンのエライザーキットによる測定法と液クロ測定
法の比較検討をしたが、このエライザー法は精度的に十
分ではなく実用的でないと思われた。尿中ニコチン代謝
物の測定について、民間が開発したニコチェック簡易測
定法と当所で開発した液クロ測定法とのクロスチェック
の検討を進めている。
36
て液クロ測定法とのクロスチェックの検討と精度評価、
及び呼気中CO値との相関性についての検討を受託研究
として行う。
3)亜硝酸のマウス曝露実験を行い、肺の組織学的検索に
より生体影響を調べる。
4)マウスに抗原とツイン 80 を同時に吸わせ、吸入によ
る特異的抗体産生の亢進について調べる。
平成 18 年度 研究実施 / 終了報告書
研究終了
ストレス関連性疾患の予防に関する免疫学的検討
生活環境部 生活衛生課
中野ユミ子、吉田 仁
研究目的
ることが判明した。
2)微量の環境有害化学物質の反復塗布で、ブラジキニン
近年種々のアレルギー疾患が増加している。その原因と
の産生を介して、皮膚反応の増大とともに、全身的な皮
して、環境中の有害化学物質(化学ストレス)や精神スト
膚過敏症が誘導され、ストレスにより増幅されることが
レスの増加が考えられる。そのため、ストレスを個別的あ
判明した。
るいは複合的に実験動物に作用させ、動物、細胞、蛋白質
3)NSF は樹枝状細胞の抗原提示能を抑制するが、プロテ
および遺伝子レベルでアレルギー疾患との関連性を明らか
オーム解析により、MAP シグナル伝達系を制御する脱
にし、治療および予防に寄与する知見を提供する。
リン酸化酵素 dual specific phosphatase 14 (DUSP14)/
研究実施状況
1)単独隔離ストレス(精神ストレス)を負荷し、皮膚に
MAP-kinase phophatase-6 (MKP6) と一致した。遺伝
子組換え DUSP14 は NSF と共通の種々の性質を示し、
塗布や生体内投与で接触皮膚炎の発現を阻止した。
慢性的なストレス影響がみられるモデルマウスの作成を
4)介護労働、交替制勤務や不況による減収など種々の仕
試み、接触皮膚炎に与える影響を免疫学的に解析した。
事のストレスで、免疫機能が顕著に抑制されることを見
2)ストレス負荷下に微量の環境有害化学物質をマウスに
出した。また、個々人の持つ不健康な生活習慣の数を合
反復塗布し、皮膚反応をモニターすることで多物質過敏
症様のモデルマウス作成を試みた。そして遺伝子発現変
化や神経行動学的検討を行い、反応のベースとなるメカ
ニズムを解析した。
計したリスクファクター指数が PHA 反応と逆相関した。
成果の活用
1)単独隔離飼育マウスはストレスの作用機構の解明に有
3)感作性物質をマウスに与えると、マクロファージ系の
用な手がかりを提供する。
細胞から分子量約 45kDa の非特異的抑制因子 NSF が放
2)化学物質過敏症を誘導する可能性のある化学物質は、
出されることを見出し、その性質の検討と遺伝子構造の
マウスへの反復塗布とストレスの負荷で時間依存的な皮
解明を行った。
膚炎の増大を誘導する。そのため、このシステムは環境
4)種々の職種の労働者および高齢者を対象に、アンケー
トによるストレスを含むライフスタイル調査と、末梢血
白血球の PHA 反応による免疫機能検査を行った。
結 論
1)慢性的精神ストレス(単独隔離飼育)で、接触皮膚炎
が増悪され、皮膚の免疫防御能力やバリア機能が低下す
有害化学物質の評価法として利用可能である。
3)NSF/DUSP14 の研究は、脱リン酸化酵素による免疫
反応の制御というあらたな研究分野を開くとともに、遺
伝子組換え DUSP14 はアトピー性皮膚炎などの抗炎症
剤となる可能性がある。
4)PHA 反応による免疫機能測定は、中高年の総合的健康
度評価法として利用できる。
37
平成 18 年度 研究実施 / 終了報告書
開発研究
研究終了
動物曝露実験による亜硝酸ガスの生体影響の検討
生活環境部 生活衛生課
大山正幸 研究目的
り、現時点では亜硝酸ガス濃度の 3 週間の安定性は確認
できていない。このため、
曝露実験はまだ実施していない。
近年、一般大気中の亜硝酸濃度を測定することが可能と
19 年度に通常研究などにより、本研究を継続して実施す
なり、最大約 0.02ppm の濃度で亜硝酸が大気中に存在す
る。
ることがわかってきた。亜硝酸は、二酸化窒素と同様に物
結 論
質が燃焼するときに発生する。また、太陽光線で分解され
OH ラジカルを生成するように、化学的反応性が高い。
今年度中に亜硝酸曝露実験はできなかったが、亜硝酸が
今回は、亜硝酸ガスの直接的な生体影響を調べることを
喘息影響を持つ可能性が論文発表により示されたため、で
目的としてマウス亜急性曝露実験を行う。亜硝酸の生体影
きるだけ早い時期に亜硝酸曝露実験ができるように努力す
響において重要な課題としては、喘息発作との関連や発ガ
る。
ン性の有無が考えられるが、亜硝酸の動物曝露実験の報告
亜硝酸ガス発生装置の課題は、一酸化窒素と二酸化窒素
はまだ無いことから、先ず、基本的な生体影響を把握する
のコンタミが 5%程度あることと、
亜硝酸ナトリウム槽(塩
ため、安定したガス濃度による亜急性曝露実験を行い肺の
化水素ガスを亜硝酸ガスに変える槽)の作用持続期間であ
組織学的検索をすることとした。
る。高濃度塩化水素ガスの連続供給装置は既に完成した。
研究実施状況
5%のコンタミ濃度レベルであれば二酸化窒素などの生体
影響は無視できるため、現在の亜硝酸ガス発生条件で曝露
一昨年、「これまで、大気汚染物質である二酸化窒素に
実験を行っても研究目的は果たせると考えている。
より起きるとされていた喘息は、亜硝酸が原因であった。
」
但し、亜硝酸ナトリウム槽の作用持続時間がまだ十分で
とする英国の疫学論文が発表された。二酸化窒素は大気汚
はないため、安定した濃度の亜硝酸ガスを 3 週間連続発
染物質としてすでに規制されているが、大気中の亜硝酸は
生できるように改良した後、できるだけ早い時期に亜硝酸
まだ行政対応がとられていない。日本で最初に二酸化窒素
曝露実験を開始することを目標とする。
の動物曝露実験を行った当部署は、二酸化窒素の動物曝露
施設を有している。従って、亜硝酸ガス発生装置を作製す
成果の活用
れば亜硝酸の動物曝露実験が可能であり、先の疫学論文の
亜硝酸ガスの亜急性動物曝露実験を実施できるようにな
検証を過去報告のない動物曝露実験により行うこととし
れば、世界で始めてのこととなり、様々な生体影響指標を
た。
調べることで、多くの新知見が得られる。特に、二酸化窒
そこで、亜硝酸動物曝露実験を実施するため、18 年度
素は大気汚染物質として規制されているが、その影響と考
は当所開発研究費の助成を受け、亜硝酸ガス発生装置を作
えられていたものの真の原因が亜硝酸なら、行政としても
製した。但し、初期の計画の動物曝露期間は 3 週間であ
本研究の成果は重要なものとなる。
38
平成 18 年度 研究実施 / 終了報告書
開発研究
研究終了
乗用車内装品等から放散される有害化学物質の
乗員曝露とその経気道吸収量の推定
生活環境部 生活衛生課
吉田俊明 研究目的
が示唆された。閉鎖空間からの各物質濃度の減少割合はい
ずれも低濃度において高く、酵素的反応の関与する推移を
近年、シックハウス症候群や化学物質過敏症が社会的な
示した。得られたデータから各物質の体内動態を薬物動力
問題となっているが、室内空気中の化学物質がその発症原
学的に解析し、実際の車室内環境での乗員における各物質
因の一つとされている。新車として購入直後の乗用車室内
の経気道吸収量の算出を現在進めている。
には特異臭があり、当所への府民からの相談や苦情がこれ
結 論
までに多数あった。これに対し、我々は車内の内装材から
放散される化学物質による車室内空気汚染の実態を調査し
乗用車室内において内装材から放散される多種の化学物
てきた。新車購入直後や室温の上昇する夏季では、室内空
質のうち、車室内空気中濃度が高く、比較的蒸気圧の高い
気は高濃度の化学物質により著しく汚染されていることが
非水溶性の有機化合物 14 種について、
運転中のドライバー
明らかとなり、乗員への健康影響が懸念された。
および乗員におけるそれらの経気道吸収量を推定するた
本研究では、この調査結果と既存の化学物質毒性データ
め、ラットを用いた曝露実験を行った。曝露濃度が同じで
から乗用車室内において衛生上問題となる化学物質を選定
も物質により体内吸収量に差があり、長時間曝露による経
し、運転中のドライバーおよび乗員におけるそれら化学物
気道吸収量は各物質の代謝速度に関与することが示唆され
質の経気道吸収量を動物実験により推定し、乗用車室内で
た。
の化学物質曝露によるリスクを評価するための基礎的資料
成果の活用
を得る。
研究実施状況
本研究成果は、平成 19 年度、関連学会にて発表すると
ともに論文としてまとめ学術雑誌に投稿する。成果の発表
これまでに国産車 101 車種を対象として車室内空気中
により自動車および内装部品の各製造会社を啓発し、有害
化学物質を分析したところ、275 種の物質が同定された。
化学物質の放散の少ない製品の開発に繋がることが期待さ
これらの中から、各物質の車内濃度レベルと既存毒性デー
れる。また、研究成果は有害化学物質への経気道曝露によ
タより、車内において衛生上問題となる化学物質約 30 種
るリスクを評価するための基礎的な資料と成り得る。
を選定した。一方、閉鎖空間内に入れた動物 ( ラット ) に
( 関連発表論文 )
化学物質を曝露させ、動物への経気道吸収により減少する
1) Yoshida T, Matsunaga I, Tomioka K, Kumagai S:
空間内化学物質を経時的に自動測定するシステム ( 閉鎖系
Interior air pollution in automotive cabins by volatile
曝露装置 ) を作成した。動物を入れない閉鎖系曝露装置に
organic compounds diffusing from interior materials.
選定された各化学物質を注入し、空間内化学物質濃度の推
I. Survey of 101 types of Japanese domestically
移を予備的に調べたところ、蒸気圧が低い (1 mmHg 以下 )
produced cars for private use: Indoor Built Environ
物質や水への溶解度の高い物質は実験に適さないことが明
2006; 15: 425-444.
らかとなり、14 物質 (2- メチルペンタン、メチルシクロ
2) Yoshida T, Matsunaga I, Tomioka K, Kumagai S:
ペンタン、n- ヘキサン、n- ヘプタン、2,4- ジメチルヘプ
Interior air pollution in automotive cabins by volatile
タン、n- ノナン、n- デカン、トルエン、エチルベンゼン、
organic compounds diffusing from interior materials.
o- キシレン、m- キシレン、p- キシレン、スチレン、1,2,4-
II. Influence of manufacturer, specifications and
トリメチルベンゼン ) について本試験を行った。各化学物
usage status on air pollution, and estimation of air
質の閉鎖空間からの減少速度には差が見られ、同じ濃度の
pollution levels in initial phases of delivery as a new
曝露環境においても物質により体内吸収量に差があること
car: Indoor Built Environ 2006; 15: 445-462.
39
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