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TripleQuad 6500を用いた 超高感度分析データの紹介

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TripleQuad 6500を用いた 超高感度分析データの紹介
●[特集]TRC第10回医薬ポスターセッション A-2:TripleQuad 6500を用いた超高感度分析データの紹介
[特集]TRC第10回医薬ポスターセッション
A-2:TripleQuad 6500を用いた
超高感度分析データの紹介
薬物動態研究部 畠 幹生
の濃度が検量線範囲を逸脱することが多い。検量線範囲
を逸脱したサンプルについては希釈再分析や定量範囲の
見直しが必要となる。トキシコキネティクス(TK)測
定では、高用量の化合物を投与された動物サンプルにつ
いては検量線上限を逸脱することが多く、希釈再分析が
頻発する。迅速かつ効率的に測定を進める上で、広いダ
イナミックレンジを有した測定法の構築は有用性が高
1.はじめに
い。
今回は、ラット血漿中アトルバスタチンの測定につ
医薬品開発において、ヒトや動物に投与された薬物や
い て、API5000とTripleQuad 6500と で 検 量 線 範 囲 の
その代謝物の体内動態を把握することは重要である。そ
比較実験を行った。API5000では、ダイナミックレン
のため、血漿や血清、尿中の薬物やその代謝物の濃度を
ジ が5桁(0.100~1000 ng/mL) で あ っ た の に 対 し、
正確に定量することが不可欠である。近年においては、
TripleQuad 6500では高感度化により定量下限が10倍低
薬理活性の高い医薬品開発がなされていることから、高
くなり、6桁(0.0100~1000 ng/mL)のダイナミックレ
感度分析に対する要求が高まっており、液体クロマトグ
ンジが得られた。高濃度ポイントの真度は100%に近づ
ラフ質量分析計(LC-MS)は薬物動態分野の研究にお
き、良好な直線性を示していることから定量上限濃度の
いて必須な装置である。また、医薬品開発を効率的に進
引き上げも期待できる(図2、図3)
。
めるため、薬効用量の1/100または100 µgという極低用
量で実施されるマイクロドーズ臨床試験や、時間や資源
の浪費を減少させることを目的とした探索的IND試験が
Area: 413
Intensity: 202
LLOQ: 0.1 ng/mL
API5000
実施され、濃度測定に対する高感度化や迅速性がさらに
要求されることが見込まれる。このようなニーズに応え
るため、弊社では2012年9月にAB SCIEX社の最新機種
TripleQuad 6500を導入した(図1)
。TripleQuad 6500は
従来機種と比較して、高感度化、ダイナミックレンジの
拡大、高速分析、広いマスレンジ、高速Polarity切替な
TripleQuad 6500
どの特長を有している。そこで、従来の低分子化合物に
対する利用価値だけでなく、有用性に期待が寄せられて
Area: 390
Intensity: 247
LLOQ: 0.01 ng/mL
いるDried blood spot(DBS法)や、注目を浴びている
バイオ医薬品の中でも核酸分析に対して弊社で保有して
いるAPI5000との比較実験を行ったので紹介する。
図2 LLOQ 比較
API5000
Accuracy
90.6%
0.1 – 1000 ng/mL
TripleQuad 6500
Accuracy
98.9%
図1 TripleQuad 6500
0.01 – 1000 ng/mL
2.ダイナミックレンジの拡大
早期探索段階の薬物濃度測定では、測定対象化合物の
図3 検量線比較
薬物動態に関する知見が得られていないため、サンプル
・35
東レリサーチセンター The TRC News No.118(Mar.2014)
●[特集]TRC第10回医薬ポスターセッション A-2:TripleQuad 6500を用いた超高感度分析データの紹介
3.DBS法の使用拡大に向けて
4.核酸測定での感度向上
医薬品開発における血中薬物濃度測定法としてDBS法
近年、低分子医薬と作用機序が異なり、副作用が少な
やDPS(Dried plasma spot)法が欧米を中心に用いられ、
い医薬品として核酸医薬が注目されている。合成され
近年、日本国内においても関心が高まっている。本手法
た非天然型の核酸を医薬品として用いるには、未変化体
は、カード上にスポットされた乾燥ろ紙血液を専用工具
だけでなく生体内での代謝物を評価する必要がある。こ
でパンチアウトし(図4)
、測定対象物を有機溶媒で抽出
うした解析はLigand Binding Assay (LBA) やPolymerase
する工程が主である。ろ紙にスポットする血液量は20
Chain Reaction(PCR)で行われているが、修飾された核
μL程度で足りるため、負担の少ない血液サンプルの採
酸の場合には適用ができないため、汎用性が高く、かつ、
取が可能となり、新生児スクリーニング検査でも利用さ
未変化体と代謝物を同時に測定できるLC/MS/MSでの分
れている方法である。また、TK試験で実施される動物
析技術に期待が高まっている。一般的に、逆相分配クロ
実験においては従来よりも採血量が少量化され、実験に
マトグラフィーを利用した場合、核酸は極性が高いため
用いる動物数を減少させることができることから、動物
移動相の有機溶媒濃度が高いと不溶化が起こるため、水
愛護にもつながっている。操作は簡便であるが、20μL
系溶媒比率が高い溶出条件となる。MSを用いた分析で
程度のスポットから更に一部を専用の工具でパンチアウ
は、移動相の水系溶媒比率が高いとイオン化時の脱溶媒
トするため、従来機種では低濃度域の測定において感度
効率が下がり、低濃度サンプルでは充分な感度が得られ
不足となることがあった。しかしながら,TripleQuad
ないことが欠点である。TripleQuad 6500は従来機種と比
6500を用いることにより、極低濃度のサンプルを容易に
較して脱溶媒効率が高いため、より高感度な核酸分析が
定量できること等から、今後、製薬業界においてDBS法
期待できる。そこで今回、API5000とTripleQuad 6500と
のさらなる活用が期待される。
でmiRNA(22mer, MW約7000, 0.9 nmol/L)を測定した
結果、約5倍の感度向上が認められ(図6)
、生体試料中の
核酸をより高感度で定量できることが明らかとなった。
Triple Quad 6500
API5000
Intensity: 42
図4 DBS 法 スポット(左)とパンチアウト(右)
Intensity:220
そ こ で、TripleQuad 6500の 適 用 を 評 価 す る た め、
API5000との感度の比較を行った。バルサルタンを添加
したラット全血をDBSカードにスポットし、乾燥後に打
ち抜いたディスクから測定試料を調製した。同濃度のサ
図6 核酸測定におけるAPI5000 とTriple Quad6500 の感度比較
ンプルを測定した結果、API5000に比べて約20倍の感度
向上が認められた(図5)
。このように低濃度域の定量性
が確保されることによって、今後のDBS法の使用拡大が
5.おわりに
期待される。
今回実施した比較実験の結果から、TripleQuad 6500
API5000
Triple Quad
6500
が低濃度から高濃度まで広く測定できる機種であること
が明らかになった。この利点を活かし、弊社の技術が
DBS法や核酸医薬等、創薬研究の新たな手法を広く一般
的なものにすることを期待したい。今後もお客様のご要
Area
1134
Area
25254
Intensity
385
Intensity
5930
望に応えられるよう、最新機種の導入や技術開発に尽力
していきたい。
■畠 幹生(はた みきお)
薬物動態研究部
専門:LC-MS/MS
趣味:アイスホッケー
図5 DBS 法におけるAPI5000 とTriple Quad6500 の感度
比較
36・東レリサーチセンター The TRC News No.118(Mar.2014)
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