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5ch干渉計及び多地点観測に基づく流星軌道法の開発と
特別研究報告
5ch 干渉計及び多地点観測に基づく流星軌道計測法の開発と
KUT 流星電波観測システムの改良
Improvement of the KUT radio meteor observation system and
development of meteor trajectory measurement method based on
5-channels interferometer and multi-site observation
報 告 者
学籍番号:1145080
氏名:
山崎 倫誉
指 導 教 員
山本 真行 准教授
平成24年2月10日
高知工科大学 電子・光システム工学コース
目次
第1章
序論
1-1 背景‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 1
1-2 目的‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 1
第2章
流星電波観測
2-1 ア マ チ ュ ア 無 線 利 用 流 星 電 波 観 測 ( H R O ) ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ 2
2-2 HROFFT‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 2
2-3 HROFFT 出力画像を用いた流星エコー自動計数ソフトウェア‥‥‥‥‥‥‥ 3
2-4 5ch 流星電波干渉計‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 4
第3章
流星飛跡算出
3-1 観測原理‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
7
3-2 多地点設置‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 11
3-3 観測機材‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 14
3-3-1 アンテナ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 14
3-3-2 流星観測受信機‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 15
3-3-3 GPS‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 15
3-3-4 A/D ボード‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 16
3-3-5 観測用 PC‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 16
第4章
ソフトウェア
4-1 流星自動観測システム‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
17
4-2 波形抽出ソフトウェア‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 19
第5章
4-3 軌跡算出ソフトウェア‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
20
4-4 エコーの識別‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
24
結果および検証
5-1 波形抽出ソフトウェア検証‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 27
5-2 ふたご座流星群観測結果と高感度カメラによる比較‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
27
5-3 Web 表示‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 32
第6章
考察‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
34
第7章
結論‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
36
謝辞‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
37
参考文献‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
38
付録:システム運用マニュアル‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 39
第1章 序論
1-1 背景
流星電波観測(HRO)は、天候や昼夜を問わず 24 時間流星の観測が可能である。流星の発光
時には、熱圏下部の高度約 80~120 km に軌跡に沿った電離柱(プラズマ)が形成され電波を反
射する。高知工科大学山本真行研究室では、前方散乱方式を用い福井県からの送信波の反射波
を受信することで流星電波観測を行っている。
同高知工科大学山本真行研究室では、2003 年より 6 方位 HRO を開始、2005 年より 3 チャンネ
ル(3ch)流星電波干渉計システムの基礎開発を行い、位相差から流星電波の到来角を求め、およ
その流星出現位置の算出について約 3 年分のデータを収集してきた(濱口, 2006; 埜口, 2007)。
3ch 電波干渉計では、位相差から求まる到来角の測定誤差が大きく、仰角が低くなるほど測定結
果にズレが生じ精度に限界がある。
2009 年には、3ch 電波干渉計を改良した 5ch 流星電波干渉計を開発し、到来角の測定精度を
向上しつつ安定した自動観測を行ってきた。また、出現高度 90 km を仮定した流星出現位置を求
め準リアルタイムで観測結果を Web に公開する流星自動観測システム(埜口, 2009)の運用を 2009
年以降継続して行っている。5ch 干渉計を用いた自動観測システムで得られる流星のパラメータは、
アンテナから流星までの仰角・方位角 (または高度を 90 km と仮定した出現位置座標)、観測時刻、
および相対受信強度である。今後の流星電波干渉計システムの発展のため、流星の軌跡情報(流
星速度ベクトル)の算出および絶対受信強度の測定と物理パラメータの導出が求められる。
1-2 目的
流星軌跡を求める手法としては、大電力の後方散乱レーダーを用いる手法(Szasz et al, 2011)
や前方散乱でアンテナ(受信局)を6地点以上に配置し、それぞれのアンテナ間の観測時間差か
ら求める方法(寺沢他, 2006)などがある。散乱効率の悪い後方散乱方式のレーダー観測には大
規模な施設が必須であり 24 時間観測を継続するには大量の電力も必要である。前方散乱を利用
しつつアンテナを6地点以上に配置する手法は、配置する場所が多く必要であり、その管理が容
易でない。さらに観測点が広範囲に多く分布するほど全地点での流星エコー同時観測は困難とな
る。
本研究では、5ch 電波干渉計及び GPS 時刻較正付受信機を用いた多地点観測により流星軌跡
情報の算出を行う。さらに 2009 年より Web 公開している流星エコーの情報に加え、流星軌跡情報
を追加し、準リアルタイムで公開可能な流星自動観測システムへの改良と構築を目的とする。
1
第2章 流星電波観測
2-1 アマチュア無線利用流星電波観測 (HRO)
流星は、宇宙から飛来する流星物質が超高層大気に突入する際に、高度 80 km~120 km 付近
で大気分子との相互作用によって発光する現象である。流星の発光時には、放出されるエネルギ
ーにより大気分子や流星物質が正イオンと自由電子に分かれる電離が起こりプラズマを発生する。
発生したプラズマによって軌跡沿った細長い円柱状の電離柱が形成され、中の自由電子が電波を
散乱する性質を持つ。流星電波観測は、その性質を利用し観測を行う(図1)。1998~2002 年のし
し座流星群の活動期に、国内ではアマチュア無線を用いた流星電波観測(HRO = Ham-band
Radio meteor Observation)が確立され、「流星観測ガイドブック」(中村他, 2001)にて紹介されて以
降はアマチュア天文家、無線家を中心に全国に広まった。現在 HRO では、アマチュア無線帯の主
に 53.75 MHz の超短波が送信波として利用されている。この送信波は、福井県鯖江市の福井工業
高等専門学校(前川公男氏: JA9YDB)から出力 50 W で安定的に 24 時間連続送信(CW)されてい
る。周波数 76 MHz~90 MHz のラジオ放送と同様、一般に超短波(VHF: 30 MHz~300 MHz)は見
通し内でしか伝播しないため、送信局から遠方の観測点では受信が不可能であるが、流星発生時
には送信波が上述の電離柱に散乱され、観測点での受信が一般的に可能となる。図 1 に示すよう
に電離柱により前方に散乱される電波エコーを用いるため前方散乱方式と呼ばれる。これに対し
送信局に戻ってくる微弱な散乱成分を用いる方式を後方散乱方式と呼ぶ。一般的に「レーダー」
には後方散乱方式が用いられる。
図1 前方散乱方式
2-2 HROFFT
流星電波観測では、通常のラジオ受信機のように、まずアンテナで流星の反射波を検出し、観
測周波数にチューニングした受信機にて検波し音声信号に変換する。PC 付属のサウンドカード等
を利用すれば観測データを音声信号として取得可能である。現在は、観測周波数を送信周波数よ
2
り 900 Hz ずらし周波数 600 Hz~1200 Hz の音声信号を FFT 表示でき自動観測用ソフトウェア
HROFFT(作成:大川一彦氏)を用い 900 Hz 近傍の反射波を観測する方式が主流であり、全国 100
地点以上で流星エコー(流星飛跡上で反射された電波)が観測されている。
HROFFT は、受信機からの信号を1秒毎に高速フーリエ変換(FFT)し、周波数解析結果を画像
表示する(図 2)。FFT 解析画像は、10 分毎に png 形式画像として記録される。ダイナミックスペクト
ル(スペクトルの時間変化)と受信強度グラフに加工され、流星エコーの受信状況が読み取れる。
図 2 HROFFT 出力画像の例
2-3 HROFFT 出力画像を用いた流星エコー自動計数ソフトウェア
観測用ソフトウェア HROFFT は、「流星電波観測ガイドブック」による紹介後、HRO の一般的ソフト
ウェアとして普及したが、流星の出現数を得るには、同ソフトウェアの出力画像(図 2)データから観
測者が目視計数を行なう必要がある。そのため、多くの時間と労力を要し、かつ計数者による個人
差が生じる可能性も否めない。
流星エコー自動計数ソフトウェア「meteor echo counter」(Noguchi and Yamamoto, 2007)は、
HROFFT 出力画像(png)を読み込み、画像処理により流星エコーの自動計数を行うソフトウェアで
あり、目視による計数と比較しても 95 %以上の一致率が得られる。同ソフトウェアの干渉計用バー
ジョン(埜口, 2009)では、読み込んだ画像から流星エコーの発生時刻、継続時間、強度を調べ、
得られた発生時刻と継続時間を保持しておき、干渉計データの読み込みを行う。発生時刻と継続
時間を元に流星エコーが観測された時間を絞り込み、継続時間の範囲内で位相差を算出し流星
エコー出現位置計算を行う。これらの解析結果は、結果テキスト、計数グラフ、流星エコー出現位
置画像として保存される(図 3)。
3
図 3 「meteor echo counter」干渉計バージョンによる解析結果
2-4 5ch 流星電波干渉計
流星電波干渉計とは、複数のアンテナで検出した電波(流星エコー)の干渉処理により位相差を
求め、その値から電波の到来方向を算出する装置である。本節では、流星電波干渉計の観測原
理について記す。
送信局からの送信波は、流星が発生した位置のプラズマにより反射され、空間上の幾何学的条
件を満たすとき受信局で流星エコーとして受信される(2-1 節を参照)。受信局で、基線長 d 離れた
Ant.A と Ant.B の2つのアンテナで受信するとき、電波は基線長 d に比例した微小な時間差(D/c,
ここで D は行路差、c は光速)をもって両アンテナに到来する。基線長 d の値を観測周波数の波長
λ に対し、適切に選定しアンテナを配置することで、受信した信号同士の干渉処理により位相差が
求まり行路差 D を精密計測できる。さらに行路差 D から信号の到来角 θ が求まる(図 4(左))。
図4(左)において、流星が発生した到来角 θ はアンテナ基線を含む面内に2次元的に示されて
いるが、実際には流星の到来方向を3次元で求める必要があるため、東西方向、南北方向の2つ
の基線を構成するようにアンテナを設置することにより 3 次元的に流星エコーの到来方向を求める
(3ch 電波干渉計:図4(右))。
図 4 干渉計原理(左)と 3ch 電波干渉計(右)
4
5ch 電波干渉計では、アンテナを図 5 のように十字に配置することで 2 通りの位相差が求められる。
(Ant0-Ant1)+(Ant0-Ant3)により基線長 0.5λ の位相差が、(Ant0-Ant1)-(Ant0-Ant3)に
より基線長 2.5λ の位相差が求められる。基線長 0.5λ の場合と 2.5λ の場合の 2 組の位相差と求ま
る到来角θとの関係を図 6 に示す。d=0.5λ では一意に到来角が求まるが、測定誤差に対する到来
角の誤差が特に低仰角側で非常に大きくなることがわかる(3ch 干渉計)。一方、d=2.5λ の場合は
位相が 1 周する 2π の任意性から解が増え曖昧さが生じるが測定誤差に対する到来角の誤差は小
さくなる。そのため、d=0.5λ と d=2.5λ の 2 つの基線長を同時に利用することにより、位相差から求ま
る到来角は 2π の任意性による曖昧性もなく精度良く求めることができる。高知工科大学に設置・運
用されている 5ch 流星電波干渉計の概観を図7に示す。
図 5 5ch 電波干渉計配置図
図 6 測定された位相差と求まる到来角θの関係
5
図 7 アンテナ配置の概観(左:Ant2, 中央:手前より Ant1, Ant0, Ant3, 右:Ant4)
6
第3章 流星飛跡算出
3-1 観測原理
高知工科大学の流星電波観測は、前方散乱方式を用いており、流星の発生時に、形成される
プラズマ柱による反射波を受信することで観測を行う。反射波は、ホイヘンスの原理により反射点
から円錐状に散乱される。この円錐と地上面とがなす交線は双曲線を形成し、双曲線が観測点に
重なったときエコーが観測される。流星の移動とともに双曲線(フットプリント)も移動するため、多地
点観測を行うと同じ流星に起因するエコーが時間差を持って観測される(図 9)。観測点を複数設
置した場合、各観測点での観測時間差は、流星軌跡上を流星速度で移動する反射点が観測され
る反射波の時間差に等しくなる。観測点を 6 点以上設置し、その時間差を解析することで軌跡情報
の算出が可能となる(寺沢 他, 2006)。
図 8 多地点観測(寺沢 他, 2006)
本研究では、観測点の1つに 5ch 干渉計を用いて 1 点の反射点座標を算出することで、3 地点
観測による軌跡情報の算出を提案する。5ch 干渉計を基準とし、基準点から他の 2 つの観測点まで
の距離、方位角及び時間差を得て軌跡の方位角を求める。また求まった方位角から突入角の算
出を行う。即ち、5ch 干渉計により反射点 RIF の座標(X,Y,Z)を決定(ここで高度は 90 km を仮定)
し、数 km 離れた2地点にアンテナ(Ant.A, Ant.B)を設け流星ヘッドエコーの到来時間差を求める
ことで流星飛跡のパラメータを算出することを計画した(図 9)。
7
図 9 干渉計と 2 地点を組み合わせた飛跡観測計画
図 10 に示すように、Ant.IF の位置を基準として Ant.A までの方位角と距離を θ₁と d₁、Ant.B までの
方位角と距離を θ₂と d₂とする。このとき、流星エコーが方位角 A の方向から一定速度で飛来したと
仮定すると、各観測点では位置関係に比例した時間差をもって流星エコーが受信される。Ant.IF の
位置を基準として Ant.A での流星エコー受信時間の遅れを t₁、Ant.B での流星エコー受信時間の遅
れを t₂とすると、以下の式から流星エコーの方位角・突入角・水平移動速度がわかる。
まず、それぞれのパラメータを以下のように定義し、その関係を図 10、図 11 に示す。
t2 : Ant.IF-Ant.A 間の時間差
t1 : Ant.IF-Ant.B 間の時間差
d2 : Ant.IF-Ant.A 間の距離
d1 : Ant.IF-Ant.B 間の距離
θ2 : Ant.IF から見た Ant.A の方位角
θ1 : Ant.IF から見た Ant.B の方位角
θA : Ant.IF から見た RIF(X,Y,Z)の方位角
θE : Ant.IF から見た RIF(X,Y,Z)の仰角
RIF : 流星の反射点
S : RIF から地表面におろした垂線
T : 流星の軌跡を直線としたときの地表面との交点
まず、流星軌跡方位角 AZ の算出方法を以下に示す(図 10 を参照)。
Ant.IF-Ant.A, Ant.IF-Ant.B 間での軌跡の距離・時間・速度の関係から次式を定義
d1 cos A  1   V  t1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
d 2 cos A   2   V  t 2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・( 2)
式(1),式(2)から次式が成り立つ
8
d1
d
cos A  1   2 cos A   2  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
t1
t2
時間と距離から以下のパラメータを決定
s1 
d1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・( 4)
t1
s2 
d2
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・( 5)
t2
を決定し、式(3)に代入すると
s1 cos A  1   s 2 cos A   2  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(6)
ここで三角関数の加法定理から次式が求まる。
s1 cos A cos1  sin A sin 1   s 2 cos A cos 2  sin A sin  2  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・(7)
これを展開していくと、
s1 cos A cos 1  s1 sin A sin 1  s 2 cos A cos 2  s 2 sin A sin  2
s 2 sin A sin  2  s1 sin A sin 1  s 2 cos A cos 2  s1 cos A cos1
sin As 2 sin  2  s1 sin 1   cos As 2 cos 2  s1 cos1 
tan A 
sin A s 2 sin  2  s1 sin 1

cos A s 2 cos  2  s1 cos 1
となり、流星方位角 AZ は以下の式で求まる。
 s sin  2  s1 sin 1 
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・( 8)
AZ  tan 1  2
 s 2 cos  2  s1 cos 1 
次に、流星軌跡突入角 Z の算出方法を以下に示す(図 11 を参照)。
Ant IF RIF  1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(9)
とすると、以下の値が求まる。
9
Ant. IF S  cos  E ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(10)
RIF S  sin  E ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・( 11)
RIF T 
sin  E
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・( 12)
cos Z
ST  sin  E  tan Z ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・(13)
ここで反射条件を満たすとき、 Ant. IF RIF T  90 とすると Ant. IF T
 sin  E 
Ant. IF T  1  

 cos Z 
2
2
は
2
2
となり、 Ant. IF ST     A  A により Ant IF ST に余弦定理を適用でき次式が求まる。
cos   A  AZ  
2
2
Ant.IF S  ST  Ant. IF T
2
2 Ant.IF S  ST
 2  sin  E  2 
cos  E  sin  E  tan Z   1  
 

cos
Z

 

・・・・・・・・・・・(14)
cos   A  AZ  
2 cos  E  sin  E  tan Z
2
2
これを展開していくと、
 cos A  AZ
  cos
 cos A  AZ  
 E  1  sin 2  E sin 2 Z  1 / cos 2 Z
2 cos  E sin  E tan Z
 sin 2  E  sin 2  E
2 cos  E sin  E tan Z
 cos A  AZ   
cos A  AZ  
2
tan  E
tan Z
tan  E
tan Z
10
tan Z 
tan  E
cos A  AZ 
となり、流星突入角 Z は以下の式で求まる。


tan  E
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(15)
Z  tan 1 
 cos A  AZ  
次に軌跡の速度算出法を以下に示す。
方位角 AZ から Ant.IF-Ant.A, Ant.IF-Ant.B 間での水平面軌跡距離を現す Td 1 , Td 2 を決定できる。
A1  1  AZ
A2   2  AZ
Td 1  d1 cos A1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(16)
Td 2  d 2 c o A
s 2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(17)
流星突入角 Z から流星の軌跡の距離 D1 , D2 を求める。
D1 
Td 1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・( 18)
s i nZ
D2 
Td 2
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・( 19)
s i nZ
式(18),式(19)を用いて Ant.IF-Ant.A, Ant.IF-Ant.B 間の観測時間差から流星速度 V が求まる。
D D 
V   1  2  2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・( 20)
t2 
 t1
11
図 10 多地点配置(地表面投影図)
図 11 流星の軌跡の方位角 AZ と突入角 Z の関係
12
3-2 多地点設置
本研究では、高知工科大学内の観測地点(KUT)では 5ch 電波干渉計を用い、他の 2 地点 A 及
び B では 1 台のアンテナ・受信機を用いてデータの収集を行った。 5ch 電波干渉計で流星エコ
ーの到来方向を求めるには、スーパーヘテロダイン受信機での周波数変換(ダウンコンバート)時
に、局部発振をそろえる必要がある。5ch 電波干渉計の観測装置の概要図を図 12 に示す。また複
数台のスーパーヘテロダイン受信機を用いており、5ch 各々の受信機に局部発振 1st, 2ndLO
(Local Oscillator)と BFO(Beat Frequency Oscillator)を入れ、各々の受信機の内部位相を揃えて
I/O ポートから A/D ボードを介し PC に保存される。信号線は端子台の CN10 端子(0 番目)から
CN15 端子(5 番目)まで RX0、RX1、RX2、1PPS、RX3、RX4 の順番で同時入力し、GPS の1PPS
(Pulse Per Second)パルスを用いて高精度な時刻管理を行っている。観測用 PC ではソフトウェア処
理をさせて、観測結果は無線 LAN を通して web にアップロードしている。本研究では、A/D ボード
からのサンプリングデータを 2 系統に分け、流星出現位置の測定ソフトウェアと並列に、3 地点観測
用の波形抽出ソフトウェアを新たに動作させる。開発したソフトウェアについては次章で説明する。
地点 A 及び B では、アンテナから受信機を介し A/D ボードからサンプリングデータと GPS の
1PPS 信号を同時入力している(図 13)。入力されたデータは、波形抽出ソフトウェアで処理させて
無線 LAN を通してサーバ PC に送られる。
それぞれの観測装置は、高知工科大学(高知県香美市:地点 KUT)、高知県安芸市(地点 A)、
高知県大豊町(地点 B)の3地点に設置され(図 14)、このとき Ant.IF-Ant.A(KUT-A)間の方位角と
距離は 127.9°、22.1 km、Ant.IF-Ant.B(KUT-B)間の方位角と距離は 14.4°、16 km となった。
図 12 5ch 電波干渉計の観測装置ブロック図
13
図 13 地点 A、B に設置した観測装置のブロック図
図 14 3 地点の設置状況
14
3-3 観測機材
3-3-1 アンテナ
観測用電波は円偏波で送信されているため、受信アンテナにはクロス八木アンテナを用いて観
測を行う。53.750 MHz 用のクロス八木アンテナは市販されていないため、アンテナメーカ「Radix」
に KIT-53Y2/X を発注した(堀内, 2005; 埜口, 2009)。アンテナケーブルは 5DFB 同軸線 30 m を
使用した。5ch 電波干渉計と同様の構成である。
図 15 アンテナ(KIT-53Y2/X)
表 1 KIT-53Y2/X アンテナ仕様(Radix 社提供)
型式
2 エレ・クロス八木
周波数
53.75 MHz
インピーダンス
50 Ω
利得
6.3 dBi
FB 比
10dB 以上
VSWR
1.5 以下
最大入力
300 W
コネクター
M-J
ブーム長
1.200mm
適合マスト
φ25~φ60mm
耐風速
瞬間最大風速 40 m/s
重量
2.5 kg
15
3-3-2 流星観測受信機
流星電波観測用の受信機(ITEC 製 HRO-RX605a を一部改造)は、一般的なスーパーヘ
テロダイン方式を用いており HRO の観測周波数である 53.75 MHz の信号は、周波数変換さ
れ 900 kHz の信号として出力される。
5ch 電波干渉計では、局部発振部分と BFO 部分を別にし、各々の受信機に入力させて動
作させている。
図 16 受信機の外観(左:5ch 電波干渉計
右:地点 A、B)
3-3-3 GPS
高い時刻精度で 3 地点での同期を得るために GARMIN 社のサターン 16tmx 型 GPS 受信機
を用いた。PC の時刻同期ソフトは「Satk」を用いて 5 秒間隔で PC との同期を得る設定で動作させ
た。本システムでは、高精度な時刻補正が必要なために A/D ボードに対し受信機等の信号と一緒
に 1PPS のパルス信号を入れている(なお GPS からのグランドラインを I/O ポート(A/D ボード端子
台)に繋ぐと 1PPS が拾えない状況が生じるため対策としてグランドは共有していない)。GPS の概
観を図 17 に示す。この 1PPS 信号を用いて流星出現位置の測定ソフトウェア側では従来の 5ch 干
渉計データ処理と同様に 0.1 秒の時刻分解を行なっている。また 3 地点観測用の波形抽出ソフトウ
ェアでは、時間差を精度よく求めるため、0.001 秒までの時刻分解能を得る仕様とした。
図 17 GPS の概観
16
3-3-4 A/D ボード
A/D ボードは「SAYA」型 ADXⅡ85X-1M-PCIEX を用いた。同社に PC 付きで発注し、データ取
得ソフトウェアは同社の ADXⅡ85-1M-PCIEX(サンプリング周波数1 MHz、アナログ 16ch 入力)
を、A/D ボード制御ソフトウェアには同社提供の TrigBufferEX(入力チャンネルのデータファイルを
一定間隔でバイナリファイルに出力)を使用した。5ch 電波干渉計の信号線は端子台番号 CN10 の
0 番目から同 CN15 の 5 番目まで、RX0、RX1、RX2、1PPS、RX3、RX4 の順番で入力し、他の2
地点は同 CN10 の 0 番目に RX0、同 CN10 の 4 番目に 1PPS を入力した。
図 18 I/O ポート(端子台)
3-3-5 観測用 PC
5ch 電波干渉計用観測 PC の性能(スペック)を表2に示す。2008 年当時から使われている PC
でありメモリの一部を一時データ保存用 RAM ディスク(メモリドライブ)に用いて高速安定動作を実
現している。他の2地点 A, B 用には、表 3 に示すスペックの PC を新たに用意した。なお、従来のソ
フトウェア及び今回開発のソフトウェアは Windows7 の環境でも動作することが確認できた。
表 2 5ch 干渉計用 PC スペック
OS
Microsoft Windows XP Home Edition Version2002 Service Pack 3
CPU
Intel(R) Core(TM)2 Duo CPU E7300 @2.66GHz 2.67GHz
メモリ
2GB(但し 256MB をメモリドライブとして使用)
表 3 地点 A、B 用 PC スペック
OS
Microsoft Windows 7 Home Premium Version2009
CPU
Intel(R) Core(TM) i3 CPU @3.07GHz 3.07GHz
メモリ
4GB(但し 512MB をメモリドライブとして使用)
17
第4章 ソフトウェア
4-1 流星自動観測システム
ソフトウェアの開発言語には、IDL(The Interactive Data Language)を使用した。本シス
テムでは、5ch 電波干渉計用 PC 上で、サンプリングデータの保存の段階から2系統に分け、既存
の流星出現位置測定ソフトウェアに加え本研究で軌跡算出用に改良した波形抽出ソフトウェア(ス
ペクトルピーク自動解析付)を並列動作させる。その後サーバ PC に解析データを移し軌跡解析を
行い Web にアップロードしている。システム全体の流れを図 19 に、Web 表示までのタイムテーブル
を表 4 に示しつつ以下に説明する。
5ch 電波干渉計では、受信機からの信号は A/D ボードを介し一定間隔でバイナリ形式のサンプリ
ングファイル(bak ファイル)に出力される。ここでサンプリング周波数は「TrigBufferEX(SAYA 製オ
ーダーメイド AD 入力ソフトウェア)」により設定・制御される。サンプリングファイルは、メモリドライブ
上の特定のフォルダ内に約 15.2 秒間隔(約 20 kbytes)で出力される。ソフトウェア「Get_saya3」 ※ に
よってサンプリングファイルに番号を付け2系統に保存する。2系統の内1つ目の処理は、ソフトウェ
ア「HRO_IF_V2(作製:岡本, 2005, 改良:埜口, 2009)」によって、5ch 干渉計用のサンプリングデ
ータに対し 0.1 秒毎に FFT 解析しピーク周波数に追随した受信強度データを得つつ時系列の波
形データを 10 分毎に sav 形式ファイルで出力する。同データには、GPS の 1PPS 信号を用いること
で時間分解能 0.1 秒にて JST に正確に同期した時刻を与えている。次に流星エコー自動計数ソフ
トウェア「meteor_echo_counter」で、観測結果の sav ファイルと HROFFT 出力画像を読み込み、流
星エコーの自動解析を行い、並列して処理される 5ch 干渉計による位相解析で得られた流星出現
位置測定結果の txt ファイル、流星の個数情報をグラフ化した png ファイル、解析結果を地図上に
プロットした png ファイルを作成し、これらを「DT-FTP」を使いサーバ PC に自動送信している。サー
バ側には「WarFTPDaemon」を使用し FTP サーバを置いている。
2系統の内もう一つの処理では、干渉計データの基準となるセンターのアンテナのサンプリングデ
ータを用いスペクトルピーク自動解析付波形抽出ソフトウェア(4-2 節 参照)によって、0.001 秒毎
の FFT 解析により周波数ピークに追随した受信信号の時系列の波形データを 10 分毎に sav ファ
イル(約 2.3 Mbyte)で出力する。その sav ファイルを流星出現位置測定結果の txt ファイル及び 2
枚の png ファイルと同タイミングでサーバ PC に送信している。
他の2地点では、1ch のアンテナを使用し A/D ボードからのサンプリングデータを用いスペクトル
ピーク自動解析付波形抽出ソフトウェアによって 0.001 秒毎の FFT 解析により周波数ピークに追随
した受信信号の時系列の波形データを 10 分毎に sav ファイル(約 2.3 Mbyte)で出力し、「DT-FTP」
を使いサーバ PC に送信している。
サーバ PC 側では、送られてきた txt ファイル及び png ファイルは、xampp(Web アップロード用ソ
フトウェア)内のフォルダに保存され Web 表示される。さらに本研究にて開発した軌跡算出ソフトウ
ェア「HRO_TRA」(4-3 節 参照)によって、送信されてきた 3 地点の sav ファイルと txt ファイルを読
18
み込み軌跡の方位角・突入角・水平移動速度の解析を行う。その後、流星出現位置測定結果に
軌跡のパラメータを結合した txt ファイル、及び軌跡情報を地図上に矢印でプロットした png ファイ
ルが作成され、両者が Web 表示される。Web サイトは従来の流星出現位置測定結果用の Web サ
イトと並列に軌跡情報結果用の Web サイトを置き、処理を2系統に分割した。Web 表示の詳細につ
いては、5-3 節を参照されたい。
※ 「Get_saya3」は、2005 年に岡本氏が開発した「get_saya_data」(「Trig Buffer EX」が出力するサンプリングファイ
ル(bak ファイル)に番号を付け、一時ファイルとして特定のフォルダに保存するソフトウェア)を改良したもので
ある(改良点:並列する別フォルダに同じファイルコピーを保存、2系統処理に対応)。
図 19 流星電波観測システムの処理フロー
19
表4
Web 表示までのタイムテーブル
4-2 波形抽出ソフトウェア
本研究は、観測点相互のエコー計測時刻の差から軌跡の情報を測定するため高い時刻精度で
同期したデータ間での波形比較が要求される。流星の対地速度は平均で約 40 km/s にもなるため、
各地点間の距離を 20 km とると仮定しても A/D ボードのサンプリングデータを 0.001 秒毎に解析す
る必要がある。5ch 電波干渉計で動作している波形抽出ソフトウェア「HRO_IF_V2」は、GPS の
1PPS から時間分解能 0.1 秒にて JST に同期して時刻決定しているが、軌跡算出用には、0.001 秒
の高い時刻精度で分割しスペクトル解析されたデータの取得が必要である。
開発仕様はサンプリング周波数 43.4 kHz、量子化ビット数 16 bit、標本数 4096、入力周波数 900
Hz 前後である。A/D ボードからのデータは、約 15.2 秒毎に切り分けバイナリデータとして bak 形式
で 保 存 さ れ る 。 軌 跡 算 出 用 波 形 抽 出 ソ フ ト ウ ェ ア は 、 5ch 電 波 干 渉 計 で 動 作 し て い る
「HRO_IF_V2」をベースに改良を行った。
20
その動作手順は、A/D ボードからのサンプリングデータを逐次読み込み、標本数 4096 で最初の
0.001 秒間の FFT を行い周波数 900 Hz 前後の値で最も値の強いものを保存する。HRO では、観
測・変換された音声信号の周波数はドップラーシフト等により微妙に変動していることからピーク周
波数に追随した受信強度データを得るために必要な FFT 処理である。次に FFT 解析の窓を 0.001
秒ずらし同様に FFT を行う。これを繰り返し 10 分毎の観測結果 sav ファイルとして出力する。
IDL 言語は、データを sav 形式で保存した場合に変数の共有が可能である。したがって、軌跡算
出ソフトウェアで観測結果を読み込む際の変数の混同を防ぐために波形抽出ソフトウェアは、
「HRO_IF_KUT」、「HRO_IF_A」、「HRO_IF_B」の 3 種類作製した。それぞれの処理内容はまった
く同じである。
図 20 軌跡算出用波形抽出ソフトウェア出力結果の拡大図(横軸 10 s)
4-3 軌跡算出ソフトウェア
軌跡算出ソフトウェアとして、「HRO_TRA」を開発した。「HRO_TRA」はサーバ PC に置かれ、パラ
メータや各種設定を変更するための GUI(Graphical User Interface)を備えている(図 21)。流星エ
コーには、アンダーデンスエコーとオーバーデンスエコーの2種類があり軌跡算出には、発光寿命
が短く流星ヘッドエコーとしてデータが得られるアンダーデンスエコーのみを対象として行う。その
ためノイズを除去しアンダーデンスエコーのみを自動検出するための閾値を設けた(4-4 節 参照)。
閾値は GUI 画面で設定の変更が可能である。また GUI 画面に各観測点の座標を設定することで
観測点間の距離と方位角を自動計算できる。図 22 に同ソフトウェア内の処理内容をフローチャート
として示し、以下①~⑥の順に説明する。
21
図 21 軌跡算出ソフトウェア「HRO_TRA」の GUI 画面
22
図 22 軌跡算出ソフトウェアフローチャート
23
①
GUI 画面で開始ボタンを押すと、読み込みフォルダと保存先フォルダの設定画面が現れる。
読み込みフォルダは、DT-FTP によって送られて来る各観測点の 10 分間のスペクトル解析に
よる波形抽出結果と 5ch 電波干渉計によって作成された結果テキストのあるフォルダをそれぞ
れ指定する。保存先フォルダの設定は 2 種類あり、Web アップ用フォルダと過去データ保存用
フォルダである。保存されるファイルの種類は 32 種類あり、各ファイル名、保存先、ファイルの
内容を表 5 に示す。
表 5 「HRO_TRA」の出力結果ファイル
②
保存先フォルダの指定が終わると GUI で設定した各パラメータが読み込まれる。観測点
KUT(5ch 電波干渉計)を基準に KUT-A 間の距離と方位角、KUT-B 間の距離と方位角が
GUI 画面に算出される。
③
3地点の波形データがそろうと、200 秒間待機処理を行う。DT-FTP で送信されるファイルが
サーバ PC で認識されてデータの転送が完了するまでに1分弱かかるための時間調整である。
待機処理を行わない場合のデータの取りこぼし及びシステムエラーの防止につながる。
④
3地点の同時観測の判断は、10 分間のスペクトルピーク追随受信強度波形抽出結果から観
測点 KUT を基準とし、観測されたエコーのピーク時刻から前後に任意の時間(GUI 画面で設
定)範囲において A、B 地点でのエコーの有無を確認する。同時観測がある場合は、GUI 画面
で設定した閾値を用いて当該エコーがノイズまたはオーバーデンスエコーでないことをまず確
認する。観測エコーがアンダーデンスエコーだった場合のみ、各観測点のエコーのピークから
±1秒の範囲を切り取って相互相関解析を行う。その結果から各観測点でのエコーの観測時
間差を求め、方位角の算出を行う(3-1 節 参照)。算出された方位角は、第 1 象限と第 3 象限、
また第 2 象限と第 4 象限で解が同じになってしまう。そのため、3 地点で流星エコーが観測され
た順番から条件を与え、象限の問題を解決した。以上の処理を 10 分毎のスペクトルピーク追
随受信強度波形抽出結果について、繰り返す。
⑤
10 分間に観測された流星方位角が算出されると、5ch 電波干渉計によって自動生成された
24
流星パラメータ観測の「結果テキスト」を読み込む。流星方位角の算出結果と、ほぼ同時刻に
観測された同テキスト内の流星パラメータ観測結果を参照し、流星の出現位置情報(観測点
KUT における流星エコーの到来した方位角と仰角)を抜き出す。その値から流星突入角と速
度の算出を行う(3-1 節参照)。算出された結果は、5ch 電波干渉計による元の「結果テキスト」と
結合する。さらに 10 分前までのその日 1 日分(00:00~)の解析結果と結合し「tra.txt」として
「Web アップ用フォルダ」に上書き保存する(図 23)。また「h.txt」も同様に 10 分前までの解析結
果と結合し「過去データ保存用フォルダ」に上書き保存する。
流星方位角のデータは、地図上にプロットし 10 分前までのその日 1 日分のプロットデータと
結合し「24.png」とし、「Web アップ用フォルダ」に上書き保存する(図 22)。プロット結果では、
流星軌跡の方位角を 16 段階に分け、流星エコー電波の到来した方位角と仰角情報から高度
90 kmを仮定して得られる出現位置に矢印でプロットしている。
⑥
現在取り扱う解析データが X 時 00 分からのデータに至ると、その時点から 1 時間前までの流
星方位角のプロット結果として、「X.png」(X は 0~23)を主要流星群の 1 時間毎の変化モニタ
リングの目的で「Web アップ用フォルダ」に保存する(煩雑となるため現在 Web 公開の設定はし
ていない)。
⑦
現在取り扱う解析データが 24 時(翌日の 0 時)のデータになると、これまで結合保存していた
「tra.txt」と「h.txt」のデータを、記録用としてファイル名に日付情報を入れ、過去データ保存用
フォルダに新規保存する(「ztra_dayYYMMDD.txt」、「zh_dayYYMMDD.txt」:ここで YY は年、
MM は月、DD は日を示す)。また流星方位角のプロット結果については、「24.png」を前日の
結果として保存するため、そのファイル名「1day.png」として「Web アップ用フォルダ」に保存し同
様に「2day.png」、「3day.png」それぞれを入れ替えることで、過去3日間のプロット結果を残す
仕様とした。その後「tra.txt」、「h.txt」、「24.png」のデータは、クリアされ 00:00 からの解析結果を
保存していく流れである。
25
図 23 軌跡算出ソフトウェア出力結果 (左:「tra.txt」, 右:「24.png」)
4-4 エコーの識別
流星エコーには、オーバーデンスエコーとアンダーデンスエコーの 2 種類がある。オーバーデン
スエコーは、比較的電子密度が高くエコーの寿命も長くなるため電離柱が継続可能な時間が長い。
電離柱の継続時間が長いほど、上空 90 km 付近の大気の風の影響などで電離柱の形が時々
刻々と変化する結果、多くの反射点が同時に現れエコーが継続して観測される。即ち流星のヘッド
エコーが取れない場合でも変形後の電離柱による散乱のみが寿命の長いエコーとなることがある。
アンダーデンスエコーは、電子密度が比較的低いため発光寿命が短くヘッドエコーのみが観測さ
れる。そのため本システムの軌跡算出は、アンダーデンスエコーのみを対象として行い、ソフトウェ
アによる自動識別によりオーバーデンスエコー及びノイズの除去を行った。オーバーデンスエコー
とアンダーデンスエコーの観測例を図 24 に示す。
オーバーデンスエコーの特徴は、電離柱の形の変化に伴う幾何学条件の変化により受信信号
も変化するため振幅の変動が激しく継続時間が長い(図 24(上))。また一般にヘッドエコーが取得
できておらず、立ち上がりが緩やかであることが多い。一方アンダーデンスエコーは、図 24(下)の
ように立ち上がりが急であり、継続時間も短い。
26
図 24 流星エコーの強度変化
(上:オーバーデンスエコー, 下:アンダーデンスエコー:横軸は 10 s)
両タイプのエコー判別のため、以下に説明する 5 種類の閾値 V1~V5 を設けた(図 25、図 26 参
照)。
V1(※1)は、10 分間のデータに平均処理をし、平均に対する任意倍数の値を設定する。各地
点毎に V1 を超えるものをエコーと判断する。V2(※2)は、1 秒間のデータの内エコーが V1 の閾値
を超えた時間の割合を設定し、V2 以上のエコーはオーバーデンスエコーとして判断し除外する。
V3(※3)は、1 秒間にエコーが閾値を何回越えたかを見ることでエコー振幅の上下変動の振る舞
いを確認している。V3 が大きく振幅の動きが激しいものは、オーバーデンスエコーとして判断し除
外する。V4(※4)は、エコーが閾値を超えてから何秒でピークに達したかを確認し V4 の大きいも
のをアンダーデンスエコー、立ち上がりの傾きが弱いものをオーバーデンスエコーとして判断し除
外する。V5(※5)は、観測されたエコーが各観測点間でどれだけの時間差を持っているかを確認
し、V5 を超える場合は、別のエコーとして判断し除外する。
27
図 25 軌跡算出ソフトウェア設定画面
図 26 エコー判別の閾値(横軸 10 s)
28
第5章 結果および検証
5-1 波形抽出ソフトウェア検証
波形抽出ソフトウェアの検証として 5ch 電波干渉計のソフトウェアとの比較を行った。図 27 に両者
の比較を行った同時刻の流星エコーの強度波形を示す。比較の結果ほぼ同じタイミングに流星エ
コーによる強度変化が確認できた。軌跡算出用の波形抽出ソフトウェアでの時間分解を 0.001 秒と
し立ち上がりが詳細に確認できるようになった結果、高精度なエコー強度の変化が得られている。
図 27 同時刻観測流星エコーの受信強度波形
(上:5ch 電波干渉計, 下:軌跡算出用, :横軸 2.5 s)
5-2 ふたご座流星群の観測結果と高感度カメラによる比較
2011 年 12 月 13 日から 16 日の4日間ふたご座流星群を対象とした流星電波観測を行った。この
観測では、A/D ボードからのデータを、そのまま収集し後日解析を行った。3地点同時観測による
軌跡算出結果を 5ch 電波干渉計で得られた流星情報と結合したものを表 6 に示す。また、13 日の
19:00 から 14 日の 4:00 までの軌跡方位角の情報を 2 時間ごとに地図上にプロットしたものを図 28
~図 32 にそれぞれ示す。
29
表 6 ふたご座流星群の観測結果
30
図 28 2011 年 12 月 13 日 18:00~19:59
図 29 2011 年 12 月 13 日 20:00~21:59
図 30 2011 年 12 月 13 日 22:00~23:59
図 31 2011 年 12 月 14 日 00:00~1:59
図 32 2011 年 12 月 14 日 2:00~3:59
31
ふたご座流星群の期間、高感度カメラ(Watec)2台による光学・電波同時観測を試みた。光学観
測で観測された流星は、約 70 例あったが、3 地点電波観測での同時観測で、尚且つカメラとの同
時観測が成功した流星は 12 月 15 日 4:23 の1例しか得られなかった(図 33)。 カメラ画像からの
解析方法は、流星軌跡上にある 2 点の星を選定しその星までの方位角と仰角から流星の方位角を
算出する。この観測例では、軌跡が途中でカメラの視野角から外れてしまうため、2 点の星の選定
が困難である。そのため、軌跡を平行にずらし 2 点の星を選定した。星の座標情報は、ステラナビ
ゲータと呼ばれる天文シミュレーションソフトウェアを用いた。以下に解析結果を示す。
 1 :星1のまでの方位角(37.894°)、  1 :星 1 までの仰角(60.369°)
 2 :星 2 のまでの方位角:(27.203°)、  2 :星 2 までの仰角(79.298°)
1  sin 1  cos  1 ,  2  sin  2  cos  2
, 2  sin  2  sin  2
1  sin 1  sin 1
 D  ( 1   2 )
D  (1  2 )
 D
 D
  tan 1 



上述の式により求められた流星の方位角は、155.7°で、同時刻の電波観測による観測結果は
158.7°であり、ほぼ整合する結果が得られた。
図 33 高感度カメラ「Watec」同時観測例
32
またふたご座流星群の輻射点情報から、ふたご座流星群に起因すると思われる流星 33 例(表 6
の☆印)の内、突入角と速度が得られた 18 例について平均速度の比較を行った。ふたご座流星群
対地速度として知られる平均 35 km/s に対し本電波観測で得られた平均速度は約 31 km/s となっ
た。
観測期間に得られた流星に対する速度の分布を図 34 に示す。
図 34 観測された流星の速度分布
5-3 Web 表示
自動観測システムの動作検証として高知工科大学敷地内で 5ch 電波干渉計を含む3地点にアン
テナを設置し、システムの動作確認を行った。約 1 日間の検証を行った結果ソフトウェアの連携で
は正常な動作を確認し Web への観測結果アップロードも正常に行われた。しかし 5ch 電波干渉計
の観測 PC でソフトウェアの処理が微小に遅れていくトラブルが発生した。
2012 年 2 月現在定常観測点が得られておらず、本システムの運用がされていないため、Web に
は 2011 年のふたご座流星群の観測結果が表示されている(図 35)。システムの運用が開始される
と、軌跡情報と流星出現位置情報を結合した txt ファイル及び軌跡情報を地図上にプロットした png
ファイルが Web 表示される。Web 表示は、処理方法と処理時間の関係上、常に現在時刻の 20 分
前の状況が最新の順リアルタイム表示となる。Web サイトは表示結果の見やすさ及び運用上の利
33
便性を考慮し、流星出現位置測定結果用の Web サイトと、軌跡情報結果用の Web サイトの2つに
分割した。尚、5ch 電波干渉計は従来どおり運用を行っている。それぞれの URL は以下の通りであ
る。
・5ch 電波干渉計 Web サイト:URL:http://obs.ele.kochi-tech.ac.jp/IF/index.php
・軌跡算出結果 Web サイト:URL:http://obs.ele.kochi-tech.ac.jp/IFtrajectory/index.html
図 35 軌跡算出結果 Webサイト
34
第6章 考察
波形抽出ソフトウェアは、従来のものに比べ時間分解能が上がり、受信強度波形による流星エコ
ーの強度変化が確認しやすくなったものの、FFT 処理を 1 秒間のデータに対し 1000 回おこなうた
め処理に時間がかかってしまう。自動観測システムの検証時に起こった 5ch 電波干渉計の観測 PC
でのソフトウェア処理の微小な遅延は、これが原因と考える。この遅延は、少しずつ蓄積され 6 時間
の運用で約 10 分間遅延が生じる。短期的なシステム運用には大きな問題は発生しないが、長期
的な運用になると、サーバでの軌跡解析のタイミングが遅れ Web 表示までに時間がかかってしまう。
その結果を受け、観測点 A で使用していた観測用 PC 上で 5ch 電波干渉計を模擬し、同様のソフ
トウェアでの運用実験をおこなった。観測点 A で使用していた観測用 PC は、5ch 電波干渉計の観
測 PC に比べ新しくスペックも高い。運用実験では、ソフトウェア処理の遅延もなく正常な運用が確
認できたため、年度内の干渉計用 PC の更新を予定している。
ふたご座流星群の観測実験では、得られたデータの解析をする中で B 地点の観測時刻に 1 秒の
ズレがあることが分かった。調査の結果、GPS の 1PPS パルス立ち上がりは秒タイミングに同期して
いるが GPS 時刻がちょうど 1 秒遅れて PC に認識されていた。2011 年 7 月に行われた日米共同ロ
ケット実験でも、同じ GPS を使用し時刻管理を行ったが同様に 1 秒のズレを確認している。これは、
この GPS と「Satk」の組み合わせが 1 秒遅延の特性を持ってしまっている可能性が高いと考える。
そのため、軌跡解析用ソフトウェアで GPS のズレの設定を出来るように改良を行った。
ふたご座流星群を対象とした高感度カメラ(Watec)2台による試験観測では、光学観測の観測結
果約 70 例に対し、光学観測と電波観測(アンダーデンスエコーのみ)の同時観測は1台のカメラに
よる 1 例しか得られなかった。これは、天候不良と月明によってカメラによる2点同時観測が困難だ
ったことと、ふたご座流星群のエコーの割合が、アンダーデンスエコーよりオーバーデンスエコーの
方が多くオーバーデンスエコーが干渉計解析データの約8割を占めていたことが原因と考える。
また、3 地点電波観測の同時観測結果では、15%ほどの割合でオーバーデンスエコーがアンダ
ーデンスエコーとして誤認されてしまった。誤認されたオーバーデンスエコーの例を図 36 に示す。
さらに、10%弱の割合で特殊なノイズをエコーとして認識してしまった。このノイズが観測された観
測点の近くには大型の通信アンテナがあったため、その通信機器によるノイズ干渉が原因であると
推測する。ノイズの観測例を図 37 に示す。現状では、これらの有効的な対策がされていない。閾
値を高くすることでオーバーデンスエコーは除外できるが、同時にアンダーデンスエコーも何割か
取りこぼしてしまう。これらの対策として、有効な閾値の設定が新たに必要と考える。例えば、各観
測点で流星エコーの絶対受信強度(受信電力)が把握できれば、強度の比較からノイズ等の除去
ができると推測する。
また図 28~図 32 に示した結果画像では、流星エコー軌跡方位角の 2 時間毎の分布が確認でき
る。2011 年 12 月 13 日の 19:00 から 14 日の 4:00 までのふたご座流星群の輻射点は天球上表7
のように移動して行く。輻射点の移動に対し流星の方位角の変化が大まかではあるが見て取れる。
35
今回の 3 地点同時電波観測でふたご座流星群に起因するエコーが観測できたものと考える。
速度解析を行った結果、想定される流星の速度範囲(11 km/s~72 km/s)外の値が数例算出さ
れた。またふたご座流星群速度は平均速度 35 km/s に対し電波観測で得られた平均速度が約 31
km/s となった。これらは、本干渉計システムで継続時間が短い流星エコーに対しては位相差が 0.1
秒間隔に数点しか得られず、これを平均しても正確な到来方位角・仰角の算出が難しい場合があ
ること、さらに速度解析を空間上の反射点間ではなく地上の観測地点間の距離によって求め、誤
差の大きい突入角より変換していることが原因と考える。今後の長期的な観測における誤差評価が
必要である。
図 36 誤認されたオーバーデンスエコー
図 37 誤認されたノイズ
表 7 ふたご座流星群の輻射点位置情報
36
第7章 結論
本研究では、5ch 電波干渉計を主体とした多地点観測による流星自動観測システムの改良を行
い、ふたご座流星群を対象とした 4 日間の試験観測により、約 65 例の 3 地点同時観測に成功した。
光学・電波同時観測のエコーについて解析を行った結果、光学観測と電波観測で方位角の誤差
が約3度となり、十分な誤差範囲内で一致した。軌跡算出法の検証には観測例が不十分であるも
のの、この結果から光学・電波同時観測よる比較が可能であることが分かった。十分信頼できる検
証には、今後の長期観測及び主要流星群における統計的比較が必要である。システム長時間稼
動検証としては、5ch 電波干渉計 PC のスペックの問題で観測結果データ出力に微小な遅れが見
られたが、それ以外のソフトウェアの連携では正常動作が確認され実用化の目処が得られた。干
渉計用 PC 更新によりシステムの正常動作が実現すると JST-20 分の準リアルタイムにて流星軌跡パ
ラメータを含む観測結果が Web に表示される。本研究は、HRO に新たな1ページを拓く開発成果
と考える。
今後の展望としては、流星エコーの絶対受信強度(受信電力)の測定をすることにより流星の規
模の物理パラメータ推定が可能となる。現状では、流星エコーの受信強度を相対値として観測して
いるが、そのデータは 13 段階で表され解が荒い。また受信環境のノイズフロアやアンテナの利得、
受信機やサウンドボードのボリューム設定等によって値は変動するため、絶対強度の測定が求めら
れる。その測定結果を KUT 流星電波観測システムに組み込めば、より高性能な前方散乱方式流
星レーダーへの発展が期待できる。
37
謝辞
本研究に際して、高知工科大学電子・光システム工学科山本真行准教授にはいつもあたたかく
ご指導ご鞭撻を賜り、心から感謝すると共に深く御礼申し上げます。本論文の副査である岩下克
教授、植田和憲講師をはじめとする電子・光システム工学科の先生方には様々な場面でお世話に
なりましたことを深く御礼申し上げます。多くの助言を頂いた日本流星研究会の皆様ほか流星観測
者の方々に御礼申し上げます。また、観測場所を提供していただいた山荘梶ヶ森(天文台)の山中
美穂様及び従業員の方々ならびに両親には大変お世話になりました。流星観測の際に手伝いを
引き受けてくださり、そして多くのご指摘を下さいました山本真行研究室の卒業生、後輩、同期の
皆様に感謝いたします。
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参考文献
[1] 埜口和弥, “5ch 電波干渉計による流星出現位置の測定と自動観測システムの開発”, 平成 21
年度高知工科大学大学院特別研究報告, 2009.
[2] 埜口和弥, “HROFFT 出力画像における流星エコー自動計数プログラムの開発”, 平成 18 年
度高知工科大学卒業研究報告, 2007.
[3] 濱口美子, “流星電波干渉計の較正実験と流星位置表示ツールの開発”, 平成 17 年度高知
工科大学卒業論文, 2006.
[4] 堀内洋孝, “流星電波観測における干渉計システムの基礎開発①”, 平成 16 年度高知工科大
学卒業研究報告, 2005.
[5] 岡本悟郎, “流星電波観測における干渉計システムの基礎開発②”, 平成 16 年度高知工科大
学卒業研究報告, 2005.
[6] 寺沢敏夫, 吉川一郎, 吉田英人, “流星エコーの GPS 利用高時間精度多地点観測の現状”,
生存圏波動分科会 WAVE10-04, 2006.
[7] 田平 誠, “マイクロバロムスの連続観測装置”, 昭和 59 年愛知大学研究報告, 34 (自然科学
編), pp. 143~153, February, 1985
[8] 小川宏, “流星電波観測のさらなる有用性を目指して(Season2)”, 第 48 回流星会議, 2007.
[9] W. Jack Baggaley, “Advanced Meteor Orbit Radar observations of interstellar meteoroids”, J.
Geophys. Res., 105(A5), 10,353-10,361, 1999.
[10] Szasz et al, Monthly MU radar head echo observation programme for sporadic and shower
meteors: 2009 June to 2010 December, Japan Geoscience Union Meeting, PEM032-P30, 2011.
Web サイト
[11] 小川宏, “流星電波観測国際プロジェクト”, http://www.amro-net.jp/hro_index.htm, (2011/8/1
参照).
[12] 小川宏ほか, “日本流星研究会”, http://www.nms.gr.jp/, (2011/8/1 参照).
[13] 瀬戸口貴司, “GPS 利用 PC 内部時計校正ソフト「Satk(さとくん)」”,
http://uchukan.satsumasendai.jp/data/occult/gpsradio/satk.html, (2011/08/01 参照).
[14] fmemo-IDL-参考サイト, http://www28.atwiki.jp/fmemo/pages/43.html, (2011/8/01 参照)
[15] Szasz 他 , “ 京 都 大 学 生 存 圏 研 究 所 ”, http://www.rish.kyoto-u.ac.jp/mu/index.html,
(2011/12/01)
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付録
システム運用マニュアル
5ch 電波干渉計、起動の手順
① PC 起動後 C:ドライブの「Y」フォルダの中身全てを、Y:ドライブにコピー。
② ネットワーク HDD(L:ドライブ)のフォルダを一度開いてパスを通しておく。
③ デスクトップの GPS 同期用のソフト「satk」を起動。「接続」を押し動作しているか確認。
④ Y:ドライブの「HROFFT1ch」フォルダの HROFFT1ch.exe を起動。10 分間隔 1 枚で観測開始。
⑤デスクトップの TrigBufferEX.exe を起動。「開始」を押す。約 15.2 秒間隔で一時ファイルにデータ
保存開始。
⑥C:¥sinpro¥KUT¥の Get_saya3.sav を起動。読込ファイルに Y:ドライブの DaqLog.bak を指定。保
存 先 フォルダに Y:¥data¥と Y:¥data2¥ を指 定 。 5ch 電 波 干渉 計のみ を動作 させ る 場合 は、
get_saya_data.sav を起動。保存先フォルダに Y:¥data¥を指定。
⑦C:¥sinpro¥HRO_IF_V2¥の HRO_IF_V2.sav を起動。「開始」ボタンを押し、読込フォルダに
Y:¥data¥を指定。保存先フォルダに Y:¥SAV¥を指定。干渉計 10 分間隔 1 ファイルで観測開始。
!注意:ここまでの処理で HROFFT 出力 png ファイルと SAV ファイルの数を揃えなければプログラ
ムの処理上バグが発生する。基準としてはバッチファイルやソフトでの読み書きが行われない3分
~9 分の間にここまでの起動手順をおこなうと良い。
⑧C:¥meteor_echo_counter¥にある meteor_echo_counter.sav を起動。自動的にファイルが指定され
るので「OK」をクリック。GUI 上の「設定読み込み」をクリック。初期設定が読み込まれるので確認後、
カウントスタートをクリック。
⑨C:¥sinpro¥KUT¥の HRO_IF_KUT.sav を起動。読込ファイルに Y:¥data2¥を指定保存先フォルダ
に Y:¥gazou¥kekka¥を指定。(軌跡算出用ソフトのため 5ch 電波干渉計のみの運用の場合この手
順は必要ない)
⑩DT-FTP.exe を起動。フォルダ指定などの設定内容は過去のままでよい。転送フォルダは
Y:¥gazou¥kekka¥である。転送後は削除するようになっている。
多地点観測用 PC(A 及び B)地点の起動手順
① PC 起動後 C:ドライブの「Y」フォルダの中身全てを、E:ドライブにコピー
② デスクトップの GPS 同期用のソフト「satk」を起動。このとき、アイコンを右クリックし管理者権限で
ソフトを起動する。(PC との時刻較正のため)「接続」を押し動作しているか確認。
③ デスクトップの TrigBufferEX.exe を起動。「開始」を押す。約 15.2 秒間隔で一時ファイルにデー
タ保存開始。
④ C:¥sinpro¥ get_saya_data ¥ の get_saya_data.sav を 起 動 。 読 込 ファ イル に E : ドラ イブ の
DaqLog.bak を指定。保存先フォルダに Y:¥data¥を指定。
⑤ デスクトップの波形抽出解析ソフトウェアがあるフォルダを開き起動する(A 地点→A フォルダ
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¥HRO_IF_A、B 地点→B フォルダ¥HRO_IF_B)。「開始」ボタンを押し、読込フォルダに
Y:¥data¥を指定。保存先フォルダに E:¥proSAV¥
⑥ DT-FTP.exe を起動。フォルダ指定などの設定内容は過去のままでよいが観測点が変われば
IP アドレスが変わってしまうため、その都度設定の変更の必要がある(サーバ側でも同様)。転
送フォルダは E:¥proSAV ¥である。転送後は削除するようになっている。
サーバ PC での軌跡算出ソフトウェア起動手順
① サーバ PC 側では、FTP サーバソフト(WarFTPDaemon)とウェブアップロード用ソフト(xampp)
が常に起動されている状態にしておく必要がある。
② C:ドライブの「TRA」フォルダの HRO_TRA.sav を起動し、読み込みフォルダに各観測点からの
データの保存場所を設定(KUT→C:¥xampp¥htdocs¥IF、A→C:¥TRA¥A、B→C:¥TRA¥B)。
次 に 5ch 電 波 干 渉 計 で 作 成 さ れ た c.txt の あ る 場 所 を 読 み 込 み フ ォ ル ダ に 指 定
(C:¥xampp¥htdocs¥IF)。保存先フォルダ1には、txt の Web アップロード用フォルダを指定
(C:¥xampp¥htdocs¥IFtrajectory)。保存先フォルダ2には、png の Web アップロード用フォルダ
を指定(C:¥xampp¥htdocs¥IFtrajectory)。保存先フォルダ3には、過去データを保存するフォ
ルダをしてい(h.txt ファイルを作っておけばどこでもかまわない)。
以上の設定をするとタイムテーブルに従い運用が開始される。
タイムテーブル処理の流れ
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