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Title 視覚文化の中での広告の位置づけ : ベネトン

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Title 視覚文化の中での広告の位置づけ : ベネトン
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視覚文化の中での広告の位置づけ : ベネトン広告を事例
に
輿石, まおり
デザイン理論. 45 P.80-P.81
2004-05-30
Text Version publisher
URL
http://hdl.handle.net/11094/53015
DOI
Rights
Osaka University
『デザ イ ン理 論 』45/2004
研 究例 会 発 表要 旨2004.7.24
視 覚文 化 の 中 で の広 告 の位 置 づ け
ベ ネ ト ン広 告 を 事 例 に 一
輿 石 ま お り/京 都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科機能科学専攻
視覚 的表 現 は,ワ ー ル ドワ イ ドな意 思 疎 通
こ との 二 点 を通 して,多 種 多 様 な 視 覚 文 化 の
を 可能 に す る所 謂 共 通 言 語 といわ れ て 久 しい。
中 で の 広 告 の位 置 づ け の一 例 を提 出す る こ と
そ して実 際 には 世 界規 模 で展 開 され た 実 例 が
を 試 み た。
少 な い に もか か わ らず,ワ ー ル ドワ イ ドな 意
思 疎通 を可 能 に す る共 通 言 語 と して理 解 され,
広 告 の 視 覚 的 表 現 は,広
え ば 企 業 理 念,商
発 展 して きた もの が 「広 告 」 で あ る。
と こ ろで 「広 告」 の視 覚 的表 現 は例 え ば絵
明 し,理
告 さ れ る 対 象,例
品価 値 を広 告 を見 る人 に説
解 さ せ,印
象 づ け る もので あ る。 ベ
画 作 品 の よ う に,そ れ 自体 が見 る人 の 目的 と
ネ ト ン広 告 キ ャ ン ペ ー ン の 趣 旨 が,「 す べ て
な る もの で はな い。 そ れ は広 告 す る対 象 を見
の 国 で 同 じ広 告 キ ャ ン ペ ー ン を 持 つ こ と で,
る人 に説 明 し,理 解 させ,印 象 付 け る た め に
首 尾 一 貫 した 世 界 的 イ メ ー ジ を 創 り 出 し,製
あ る。 「広 告 」 が 共 通 言 語 で あ る とは,そ れ
品 の 知 名 度 を 上 げ,地
が 各 視 覚 文 化,所 謂 ロー カ リテ ィー に根 拠 付
関 心 に 応 え る こ と を 可 能 と す る こ と を 目標 に
け られ る枠 組 み:地 域,文 化,時 代 等 の差 異
し た も の 」(UnitedColorsofBenetton
が 見 せ る多 種 多 様 性 を越 え意 思 疎 通 を可 能 に
「GlobalVision」Robundo1993等
す る こ とを 指 す 。 更 に言 え ば,広 告 に先 立 つ
で あ る こ と は よ く知 ら れ て い る が,こ
各 視 覚 文 化 特 有 の表 現 と は各専 門研 究 分 野:
ンペ ー ン企 画 に お い て 注 意 す べ き 点 が 二 点 あ
美 術 史,デ ザ イ ン史,社 会 学,記 号 論,文 化
る。
論,ジ
ェ ンダー 論 等 を通 して 見 出 され て き た
球 的 な規 模 で の人 々 の
を 参 照)。
のキ ャ
第 一 は ベ ネ ト ンが 売 り 込 む も の が 製 品 で は
もので あ る。 そ して 従 来 の 広告 を 対象 に した
な く,ベ
研 究 の ほ と ん ど は,広 告 が 所属 す る視 覚 文 化
二 は ベ ネ ト ンの 提 示 す る 「全 世 界 共 通 の イ メ ー
を特 定 しそ の 中で 広 告 を 位 置 づ け るた め,各
ジ」 が 「地 方 の 独 自 性 を 抹 殺 す る 均 質 化 」 で
視 覚 文 化 の存 在 及 び その 枠 組 み 内 で の意 思 疎
は な く,「 地 方 の 独 自 性 を 保 つ 多 種 多 様 性 の
通 の可 能 性 を明 らか にす る に留 ま って い る と
容 認 」 で あ る と い う こ と だ(広
い って い い。
集 ベ ネ ト ン の す べ て1999・9No.230マ
そ こ で 「広 告 の視 覚 的 表 現 が,各 視 覚文 化
ネ ト ン と い う 企 業 名 で あ る こ と。 第
ドラ 社56-58ペ
告 批 評9:特
ー ジ等 を 参 照)。 つ ま り 一 連
の枠 組 み を越 え意 思 疎 通 を可 能 にす る とい う
の ベ ネ ト ン広 告 の 視 覚 的 表 現 は,「 多 種 多 様
こ とは如 何 な る こ と な のか 」 を 検 討 す る本 研
性 を 容 認 す る 企 業 ベ ネ ト ン」 を 広 告 を 見 る 人
究 で は,第 一 に既 存 の各 専 門 研 究 分野 を包 括
に 説 明 し,理
的 に採 用 す る ヴ ィジ ュ アル ・カル チ ャー ・ス
あ る。
タ デ ィー ズ の立 場 を採 る こ と,第 二 に 検証,
解 さ せ,印
と こ ろ で,広
象 づ け る試 み な の で
告 と は画 像 と文 字 が 構 成 す る
考 察 対 象 と して,世 界 規 模 で 展 開 され た トス
視 覚 的 表 現 で あ る 。 ベ ネ ト ン広 告 が 画 像 主 体
カ ー 二(Oliviero=Toscani,1942-)に
で あ る こ と か ら本 発 表 で は,画
ベ ネ トン広 告(1984年
80
一2000年)を
よる
選択す る
り上 げ た が,ベ
像 を 中心 に取
ネ ト ン広 告 の 文 字 情 報 は 簡 略
化 して企 業 名 「ベ ネ トン」 と して認 識 され る
が 単 に ス キ ャ ンダ ラ ス で あ るか らで はな い 。
企 業 ロ ゴマ ー ク
そ れ は,ベ ネ トン広 告 の視 覚 的 表 現 が スキ ャ
Benetton」
「UnitedColorsof
で あ る。 そ れ は 広 告 キ ャ ンペ ー
ン と同 じ く 「多 種 多 様 性 を 容認 す る企 業 ベ ネ
トン」 を示 唆 す る もの で あ る。
ンダ ラ スだ と判 断 され た理 由 の 中 に見 い出 せ
る。
世 界 規 模 で 同 一 の展 開 をす るベ ネ トン広 告
トス カ ー二 が 制 作 した ベ ネ トン広 告 は,広
は 「多 種 多 様 性 を容 認 す る企 業 ベ ネ トン」 を
告 キ ャンペー ンに基 づ き年二 回提 示 され るテ ー
視 覚 的 に表 現 す る方 法 と して,人
マ に対 応 す る,写 真 を 媒 体 と した画 像 中心 の
応 え る社 会 的 で 世界 的 に重 要 なテ ーマ,例 え
広 告 で あ る。 そ の視 覚 的 表 現 の 変遷 を見 る と,
ば人 種 問 題(『 手 錠 』),社 会 問題(各
製 品 を使 用 す る1984年 か ら1991年,転
換期 と
写 真 』)を 採 用 す る。 特 定 の 視 覚 文 化 の枠 組
道 写 真 等 を 使 用 した1992年 か
み に収 ま る こ とに こだ わ らな い,多 種 多 様 性
な る1991年,報
々の 関心 に
『報 道
ら2000年 の三 期 に大 別 出来 る。 そ して そ の視
を提 示 す る こ とに重 点 が置 か れ た ベ ネ トン広
覚 的特 徴,ベ
告 の視 覚 的 表 現 は,広 告 を見 る各 人 が 所属 す
ネ トン広 告 の 独 自性 は,広 告 を
見 る人 に読 み取 られ る ス キ ャン ダ ラス性:不
る視 覚 文 化 圏 で は あ り得 な い対 象 間 の 関 係 性,
快,不 安,反 感,中 傷,憤 慨 等,受 け入 れ難
ま た平 穏 無 事 の 対極 に位 置 す る問 題,所 謂 ス
さ及 び否 定 的 感 覚 を覚 え させ る こ とだ。
キ ャ ンダ ラ スだ と評 さ れ る要 素 が 見 いだ され
ベ ネ トン広 告 は 固定 客 に な らな い相 手,主
る機 会 の 多 い もの とな った の で あ る。 更 に言
に若 者 を最 大 の顧 客 と して 想 定 した もの で あ
え ば,ベ ネ トン広告 が提 示 す る ス キ ャ ンダ ラ
る。 固定 観 念 に 囚 われ て い ない が価 値 観,嗜
ス性 に対 す る認 識 は,多 種 多 様 な 視 覚 文 化 圏
好 も定 ま って い な い人 々 を対 象 とす るた め,
の 中で 一 律 に共 有,ま た一 般 化 され る もの で
広 告 に は ア イ キ ャ ッチ と して最 も効 果 的 に働
は な い。 ベ ネ トン広 告 の ス キ ャ ンダ ラ ス性 に
く視 覚 的表 現,ス
は,各 視 覚文化 の枠 組みを越 えて働 くアイキ ャッ
キ ャ ンダ ラ ス性 を継 続 的 に
展 開 す る方 法 が選 択 され た と いえ る。 しか し
ス キ ャ ンダ ラ スで あ る と い うこ と 自体 は,ベ
ネ トン広 告 の 目的 で は な い。
チ以 外 の役 割 はな い の で あ る。
ベ ネ トン広 告 が 求 め た各 視 覚 文 化 の 枠 組 み
を越 え た意 思 疎 通 の可 能 性 は,ス キ ャ ンダ ラ
確 か に,ベ ネ トンと い う企 業 名 が ベ ネ トン
ス性 に は な い。 そ れ は,多 種 多 様 な画 像 展 開
広告 を通 して世 界 的 に認 知 され る に至 った と
に企 業 ロ ゴマ ー クが所 謂 キ ャプ シ ョ ンと して
い う こ とは,広 告 の ス キ ャ ンダ ラス で あ る視
機 能 す る こ と,つ ま り広 告 を見 る人 々の 間 に
覚 的 表現 が,各 視 覚 文 化 の枠 組 み を 越 え た意
企 業 名 と共 に 「私 た ち が共 有 す る もの は多 種
思疎 通 を可 能 に した と い うこ とだ。 しか しベ
多 様 性 で あ る」 と い う共 通 認 識 を導 き 出す 試
ネ トン広 告 に お い て,ベ ネ トンと スキ ャ ンダ
み に あ った と いえ るだ ろ う。
ラス 性 を 提示 す る視 覚 的表 現 は 同一 の もの と
して は 表現 され て は い な い。 ス キ ャ ンダ ラス
だ と評 され た広 告 の視 覚 的表 現 及 びテ ー マ,
例 え ば人 種 問題,環 境 問題,エ
イ ズ問題 が,
広告 を 見 る人 に ベ ネ トン とい う企 業 名 を 認知,
説 明,そ
して理 解 させ る こ とは で きな い。 ベ
ネ トン広 告 の成 功 の要 因 は,そ の視 覚 的 表現
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