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Title 王宮建築の機能と形態 : 中央アフリカ,カメルーンの事例 Author(s
Title Author(s) Citation Issue Date 王宮建築の機能と形態 : 中央アフリカ,カメルーンの事例 下休場, 千秋 デザイン理論. 50 P.168-P.169 2007-05-31 Text Version publisher URL http://hdl.handle.net/11094/52953 DOI Rights Osaka University 『デ ザ イ ン理 論 』50/2007 大 会 発 表 要 旨2006.11.19 王 宮 建 築 の 機 能 と形 態 中 央 ア フ リ カ,カ メ ル ー ンの 事 例 下 休 場 千 秋/大 阪芸術大学 1は じめ に が いな い。 ヒ トと 自然 の 関 係 を 再考 す るた め に は,地 ⑤ 家 長 の 父 親 を世 襲 した息 子 夫 婦 は両 親 の 球 上 の 多 様 な 自然 環境 と,そ こに暮 らす 異 な 屋 敷 に居 住 す る。 結 婚 し独 立 した そ の他 の る文 化 を もつ 人 間 と に よ っ て 描 き 出 さ れ る 子 供 は 別 に新 しい屋 敷 を構 え る。 「風 土 景 観 」 を 理 解 す る こ とが 有 用 で あ る。 ⑥ 同一 家 屋 に思春 期 以 上 の男 女 が住 む こ と 筆 者 は風 土 景 観 の 一事 例 と して,中 央 ア フ リ はな い。 一 夫 多妻 の場 合,夫 カ,カ そ れ ぞ れ 別 々 の家 屋 に居 住 す る た め,屋 敷 メ ル ー ン共 和 国 北 西 州,標 高1,000m と複 数 の妻 は 前 後 の 高 原 地 帯 に居住 す る農 耕 民 テ ィカ ール に は家 族 構成 に合 わせ て複 数 の家 屋 が 庭 を (Tikar)の 囲 む か た ち で建 て られ る。 王 宮 建 築 の機 能 と形 態 につ い て, これ まで の 現 地調 査 で得 た情 報 を基 に考 察 す ⑦ 男 性 と女性 の生 活 空 間が 分 離 して い る。 る。 テ ィ カー ル の 人 び とは,北 西 州 を 中心 に 男 性 は祖 霊 や精 霊 の信 仰 に 関す る儀 礼 祭 祀 200以 上 の 王 制 社 会 組 織 を もつ 首 長 国群 を 形 を 行 う こ とか ら,男 性 の空 間 に は儀 礼 の 場 成 して い る。 が 存 在 す る。 一 方,女 性 の空 間 は料 理 や 子 育 て 等 の 日常 的 な生 活 機 能 を主 と して 有 し 2テ ィカ ー ル の伝 統 的民 家 王 宮建 築 は 一般 的 な民 家 の建 築 様 式 を 基 本 と して,規 模 が よ り大 き く,空 間 の機 能 と構 造が 複雑 化 して い る。 その ため,ま ず テ ィカー ル の民 家 の特 徴 に つ い て考 察 す る。 テ ィカ ー ル の伝 統 的民 家 の特 徴 は以 下 の よ て お り,そ こで は家 族 に病 気 や 事 故 な ど の 災 難 が あ った場 合,「 双 子 の壺 」 の儀 礼 が 行 わ れ る。 雨季 と乾 季 が 明確 な草 原地 域 に居住 す るテ ィ カ ー ル の人 び とは,自 生 す る ラ フ ィ ア ヤ シを 建 築部 材 とす る 自然 環 境 に適 応 した 伝 統 的 民 うに ま とめ る こ とが で き る。 家 を建 築 して き た。 しか し,彼 らの 現 在 の 民 ① 家 に は,建 築 材 料,構 法,間 取 り,意 匠 な ど 屋 敷 林 や屋 敷 畑 を周 囲 に お き,複 数 の 家 屋 が庭 を 囲 む よ うな形 に配 置 され た 多棟 型 、 に変 化 が見 られ る。 王 宮 建 築 も例 外 で はな く, 民 家 形 態 で あ り,屋 敷 は塀 で 囲 まれ る こ と 現 在 で は 日干 し レ ンガ壁 と トタ ン屋 根 の 建 築 が な い。 様 式 が一 般 的 で あ る。 伝 統 的民 家 の家 屋 形 態 は,ラ フ ィア ヤ シ ま た,第 一 次 世 界 大 戦 以 前 の ドイ ツ植 民 地 の葉 柄 を壁 や屋 根 の 部 材 と して 用 い た 泥 の 時代 に ドイ ツ人 に よ って 建 て られ た 王 宮 建 築 塗 壁,草 葺 き,無 窓,一 部 屋,土 間構 造 で が現 存 して お り,そ れ らは文 化 遺 産 と して 観 あ る。 光 資 源 の価 値 を有 し始 め て い る。 ② ③ トウ モ ロ コ シ等 の 収 穫 した農 作物 用 の穀 倉 を も たず,天 井 裏 に貯 蔵 す る。 ④ 3王 宮 建 築 の 機 能 と形 態 家 屋 の新改 築,修 復 は家 族 や共 同体 の人 々 王 宮 は現 在 も王 とそ の 家族 が居 住 す る場 で の 相 互 扶 助 に よ り行 わ れ,専 業 の建 築 職 人 あ る と 同時 に,複 雑 な 王 制 社 会組 織 の機 能 を 168 発揮 す る拠 点 と しての 役 割 を果 た して い る。 王 宮建 築 の形 態 を説 明 す る に は,王 制 社 会 態 は,彼 らの王 制 社 会 組織 の特 徴 を 明確 に示 して い る とい え る。 組織 の特 徴 につ い て理 解 して お く必 要 が あ る。 そ もそ も王 とは,宗 教 的 権 威 を もち神聖 王 と して 人 び とか ら尊 敬 され る存 在 で あ り,毎 年, 4お わ りに 近 代 化 に よ り自然 や 土地 の風 土 特 性 を無 視 王 宮 で は様 々 な年 中行 事 が 繰 り広 げ られ る。 した画 一 的 な生 活 空 間 が 増大 しつ つ あ る 日本 また,王 制社 会 に お い て後 継 王 を決 定 す る よ の現 状 に対 して,豊 か な イ メ ー ジ と意 味 を も うな 有 力 な長 老 組 織 は秘 密 結 社 と して理 解 さ つ空 聞 が現 存 す る カ メル ー ンの王 制 社 会 と王 れ て い る。祖 霊 崇 拝 と アニ ミズ ムを 基本 とす 宮 建 築 か らは多 くの学 ぶ べ き点 が あ る。 自然 る土 着宗 教観 に支 え られ た それ らの 秘 密結 社 と共 生 して き た多 様 な 民 族文 化 に お け る価 値 の活 動 も王 宮 を 中心 に行 わ れ る。 そ の た め, 観 や 自然 観 を再 評 価 す る必 要 性 が あ るの で は 王 宮 内 に は秘 密結 社 が儀 礼 祭 祀 を行 うた め の な い だ ろ うか。 筆 者 が カメ ル ー ンで これ ま で 多 くの建 物 や 中庭 が存 在 す る。 王 宮 にお け る 調 査 して きた テ ィカー ル の 人 び との神 聖 王 を これ らの 空 間 構造 と機 能 を考 察 す る こ とが, 中心 とす る王 国文 化 は,人 間 の 自然観 を理 解 王 制 社 会 組 織 の理 解 に もつ な が ると いえ る。 す るた め の 適例 で あ る。 王 宮 建 築 の 機 能 と形 態 の特 徴 は,次 の よ う 風 土 景 観 を 把握 す る ため には,対 象地 域 の に ま と め る こ とが で き る。 現地 調 査 を行 い,自 然環 境 や集落 ・建 築 とい っ ① た 生 活 空 間 の 機能 と形 態 の 特 徴 を 明 らか に し, 最 高 の宗 教 的 権威 者 と して位 置 づ け られ る王 の 居 住 場 所 は,「 聖 な る森 」 を 背 後 に そ こで 繰 り広 げ られ る 日常 生 活,儀 礼 祭祀, した奥 ま っ た空 間 に あ る。 王 宮 は歴 代 王 の あ る い は民 族 芸術 に 関す る民 族 学 的 な 調査 分 墓 所 で もあ り,毎 年,王 析 を 行 う こ とが 重要 で あ る。 さ らに,ジ オ ラ と秘 密結 社 員 は墓 所 に お い て祖 霊 供 養 を 行 う。 ② 王 権 を支 え る秘 密 結 社 の空 間 は王 の居 住 場 所 と森 の双 方 に隣 接 した と ころ に あ る。 王 家 の男 性 は こ の空 間 に立 ち入 る こ とが で き な い。 ③ 王 及 び男 性 王 族 と秘 密 結 社 員 が 共 に儀 礼 祭 祀 を 行 う空 間 が① と② の間 に あ る。 ④ 王 の 妻 子 が生 活す る女 性 と子 供 の空 間 は, マ(diorama)な どの 景 観模 型 を 製作 す る こ と に よ り,現 地 の景 観 を再 現 す る こ と も有 効 で あ る。 ヒ トが 自然 に何 らか の手 を加 え る こ とを 前 提 とす る環 境 デザ イ ンに お いて,自 然 生 態 系, 民 族 文 化,民 族 芸 術 に 関す る フ ィール ドワー クや景 観 模 型 の製 作 は,新 た な 「エ コ ロ ジー 思 想 」 に 関す る知 見 を得 る た め に意 義 の あ る 王 宮 の 入 口に近 い とこ ろ に あ る。 調 査 研 究 手 法 で あ る とい え る。 カ メル ー ンの テ ィカ ー ル の人 び とが伝 承 して きた 王 宮 建 王 宮 建 築 に 関す る本研 究 は,そ の よ うな 一 例 築 の 特 徴 は,伝 統 的民 家形 式 を基 本 と して, で あ る。 王 制 社 会 組 織 が もつ 多様 な機 能 に対 応 す るた め に,多 数 の家 屋 と塀 で 区画 さ れ た複 雑 な 空 間 構 造 が 形 成 され て い る と ころ に あ る。 土 着 宗 教 に基 づ く神 聖 王 を 中心 とす る信 仰 は,現 在 も根 強 く残 って お り,テ ィカ ール の 多 くの王 宮 建 築 に共 通 す る これ らの機 能 と形 169