Comments
Description
Transcript
CTL、BTL の開発状況(2008/1~3)
PEC 海外石油情報(ミニレポート) 平成 20 年 4 月 24 日 PISAP ミニレポート 2008-002 GTL、CTL、BTL の開発状況(2008/1~3) <GTL> 石油代替燃料を製造するため、天然ガスを原料とする GTL(Gas-to-Liquid)プロセス、石炭 を 原 料 と す る CTL(Coal-to-Liquid) プ ロ セ ス お よ び バ イ オ マ ス を 原 料 と す る BTL(Biomass-to-Liquid)プロセスが開発されている。これらについて 2008 年 1 月から 3 月までの開発状況を、インターネット情報等をもとに紹介する。 1. GTL の開発状況 (1) カタール カタール国営石油会社(Qatar Petroleum)が 51%、Sasol が 49%を出資している合弁会社 ORYX GTL の Oryx GTL プラント(GTL 燃料生産能力:3.4 万 BPD)は、2 月にシャットダウンす ると伝えられたが、その期間は明らかにされていない。同プラントは 1 年前に運転を開始 したが、製品に微粒子が混入するトラブル(詳細不明)のため 2007 年の稼働率は 30%程度 であった。 その後の改善で最近では2系列あるGTLトレインのうちの1系列の稼働率が90% に達したこともあるという。本年 7 月に微粒子をろ過する設備を追加する予定とのことで ある。(資料 1) Qatar Petroleum と Royal Dutch Shell の共同事業で後者が建設費用の全額を負担する Pearl GTL プラント(GTL 燃料生産能力:14 万 BPD)の建設は順調に進んでおり、第 1 系列は 2010 年中に運転を開始する予定である。世界最大級で、Royal Dutch Shell にとって最大 の投資といわれている同 GTL プラントは、 建設コストが当初の 50 億ドルから 180 億ドルに 上昇している。(資料 2、3) (補足)このプラントは 1 系列 7 万 BPD の GTL トレイン 2 系列で構成されている。 航空機で GTL ジェット燃料を使用する場合の環境への影響を評価するため、カタール GTL コンソーシアムのプロジェクトの一環として、Airbus の大型旅客機 A380 による試験飛行 が行なわれた。2007 年 11 月に結成された同コンソーシアムには国営カタール航空会社 (Qatar Airways)のほか Rolls Royce、Qatar Petroleum、Royal Dutch Shell、Airbus, Qatar Science & Technology Park および Qatar Fuel が参加している。英国のフィルトンからフ PEC 海外石油情報(ミニレポート) ランスのトゥールーズまでの 3 時間の民間航空機の飛行で世界で初めて GTL 燃料が使用さ れた。4 基のエンジンのうちのひとつに GTL ジェット燃料を混合したジェット燃料を、他 の 3 つには通常のジェット燃料を用いた。GTL ジェット燃料は Shell International Petroleum が供給した。試験に使用した A380 は、世界で最もクリーンな高推力エンジンと いわれる Rolls Royce の Trent 900 エンジンを搭載している。(資料 4、5、6) (補足)Qatar Science & Technology Park は、カタールの首都ドーハに 2005 年に設立され た。「研究と商業の国際的な拠点となることを目指し、オフィスや研究所のほかに研究開発 のための様々なサービスを提供」(日本投資銀行ホームページ)している。Qatar Fuel は国 営石油会社 Qatar Petroleum が製造した石油製品等の販売会社。Shell International Petroleum は Royal Dutch Shell の子会社で、Pearl GTL プラントを建設している。 Qatar Airways は GTL ジェット燃料を使用する世界初の航空会社になることを目指してお り、研究および要員の訓練を Qatar Science & Technology Park で実施する計画である。 同社は、2009 年から GTL ジェット燃料を使用したいとしているが、Pearl GTL プラントが 完成するまでの間は 50%の混合になるだろうとしている。(資料 5、7) (2) ナイジェリア Chevron が 75%、ナイジェリア国営石油会社が 25%を出資している Escravos GTL プラン ト(GTL 燃料生産能力:3.4 万 BPD)の建設が開始されている。Chevron の水素化処理技術と Sasol の Slurry Phase Distillate 技術を採用しており、2010 年の稼動を目指している。 Chevron は 2005 年に、日揮、Kellog, Brown and Roots (KBR)、および当時 Eni の子会社 だった Snamprogretti で構成される合弁企業 JKS に設計・調達・建設を発注しているが、 現在、建設コストの見直しを進めている。同プラントの運転員(ナイジェリア人)は南アフ リカにある Sasol のプラントで訓練を受けている。(資料 8、9) (3) ドイツ 自動車会社Audiが、 本年1月にスイスのダボスで開催された世界経済フォーラムの会議に、 Royal Dutch Shell の GTL 燃料を使用する直噴ターボディーゼル(TDI)エンジンを搭載した ディーゼル車約 80 台を送迎用として提供した。同社は、TDI エンジンと GTL 燃料の組み合 わせにより、CO2 排出量が 13%減少、燃費が 10%向上、CO の排出量が 93%減少するとし ている。同社の TDI エンジンを搭載したレーシング・カーは 2006 年および 2007 年のルマ ン 24 時間耐久レースで優勝しているが、GTL 燃料を主体とした混合ディーゼル燃料を使用 していたとのことである。(資料 10) 2. CTL の開発状況 PEC 海外石油情報(ミニレポート) (1) 米国 モンタナ州のマルムストローム空軍基地の地域交流会で、同空軍基地内の使用されていな い土地を民間企業にリースして、CTL 燃料プラントを建設させる計画の説明があった。現 在、具体的な場所を選定中で、プラントに必要な年間約 1,000 万ガロンの水はミズーリ川 から取水する計画である。モンタナ州は米国最大の石炭埋蔵地である。(資料 11) (2) 中国 中国企業 Golden Nest International が出資して、山西省の宝鶏市郊外のアンモニア工場 内に建設されていた 5 基の反応塔からなる CTL パイロットプラントが 3 月に運転を開始す ると報じられた。南アフリカの Witwatersrand 大学の Centre of Material and Process Synthesis で開発されたフィッシャートロプシュの改良技術が用いられている。同技術は 未反応ガスをリサイクルしないことが特徴で、装置の運転が容易で、設備が簡素化されて コストダウンできるとしている。原料はアンモニア工場で製造される合成ガスを用いる。 宝鶏市には 100 億トンの石炭が埋蔵されており、年間 1,500 万トンが生産されている。(資 料 12) (3) インド インドを代表する複合企業Tata Group とSasol が共同で計画しているインド初のCTL プロ ジェクトについて、 3 月 17 日にインドの経済紙 Financial Express が関係者の話として「中 央政府の次官級会議でプロジェクトが了承された」と伝えた。 年間 3,000 万トンの石炭を用 いて年産 300 万バレルの燃料の生産と 150 万 kW の発電を行なうもので 80 億ドルを投じる 計画である。Tata Group は、Orissa, Chhattisgarh, Jharkhand, Andhra Pradesh にある 炭鉱の石炭を使用することを検討中である。 このほかインドではReliance Industriesが、 インド国営石炭会社 Coal India と共同で、8 万 BPD の CTL 燃料を生産するプロジェクトを 計画しており、Sasol および米国企業 Headwaters CTL の技術を採用する計画である。(資 料 13) (補足)4 月になって、「インドの全ての資源の利用の可否を判断する連邦政府の計画委員会 で、Tata Group と Sasol のプロジェクトの実施を認めるか否かで意見が分かれている」(4 月 4 日、Financial Express)と報じられ、また「次官級会議でも異論が出ていることから、 同プロジェクトの実施が難しくなっている」(4 月20 日Economic Times)と報道されている。 3.BTL の開発状況 (1) ドイツ ガス化技術会社 CHOREN Industries がザクセン州のフライベルグに建設中の BTL の実証プ ラント(製造能力 300 BPD、ベータプラントと呼ばれている)は 2008 年中の運転開始を予定 PEC 海外石油情報(ミニレポート) していると報じられた。同プラントは、同社が開発したバイオマスから 3 段階ガス化工程 により合成ガスを製造する「Carbo-V プロセス」を採用している。CHOREN は、シグマプラン トと呼ばれる製造能力4,000 BPD の商業プラントをドイツ国内の10~15 カ所に建設する計 画で、その 1 番目のプラントの設置場所としてブランデンブルク州のシュヴェットにある 石油化学プラントの隣接地が選定された。年間 100 万トンのバイオマスを使用する同プラ ントは、2011 年までに完成、2012 年に生産を開始する計画である。同プラントの建設費は 11.8 億ドルで、CHOREN は政府の財政支援を期待している。このプロジェクトは、ドイツ政 府の環境政策に寄与すると期待され、2020 年までに建設されるプラントの稼動により CO2 の排出量は年間 300 万トン以上削減できるとされている。(資料 14、15、16) (補足)ベータプラントは、4 月 17 日にドイツの Merkel 首相および関係する会社のトップ を迎えて盛大に竣工式が行なわれた。CHOREN の少数株主であり同プラントに技術供与して いる Royal Dutch Shell はこの日、BTL の生産開始は 8~12 カ月後になると発表しており、 計画が遅れているようである。 (TT、YY) (参考資料) 1.http://www.worldfuels.com/TRIAL/MARKETING/Gasification_News/gn_VolXI_Issue1__2 0080109_Print.html のなかの「Sasol's Qatar Oryx GTL Plant to Shut in February」 2. http://uk.reuters.com/article/allBreakingNews/idUKL0492911920080304?rpc=401& 3.http://downstreamtoday.com/News/Articles/200803/Shell_To_Boost_Refining_Downst ream_GTL__9402.aspx 4.http://www.cleanedge.com/story.php?nID=5153 5.http://tvnz.co.nz/view/page/425829/1569247 6.http://www.atwonline.com/news/story.html?storyID=11612 7.http://allafrica.com/stories/200801141353.html 8.http://www.highbeam.com/doc/1P3-1421495211.html 9.http://www.worldfuels.com/TRIAL/MARKETING/Gasification_News/gn_VolXI_Issue1__2 0080109_Print.html のなかの「Sasol Renegotiates Contract for Nigerian GTL Project」 10.http://www.nzherald.co.nz/section/9/story.cfm?c_id=9&objectid=10489017 11.http://www.malmstrom.af.mil/news/story.asp?id=123085019 12. http://www.miningweekly.co.za/article.php?a_id=127981 13. http://www.fin24.com/articles/default/display_article.aspx?ArticleId=1518-24_228 PEC 海外石油情報(ミニレポート) 9742 14. http://www.choren.com/en/biomass_to_energy/carbo-v_technology/ 15.http://www.highbeam.com/doc/1P3-1421495291.html 16.http://www.worldfuels.com/TRIAL/MARKETING/Gasification_News/gn_VolXI_Issue1__ 20080109_Print.html のなかの「Germany's Choren Picks ‘Sigma’ BTL Production Site」 本資料は、 (財)石油産業活性化センター石油情報プラザの情報探査で得られた情報を、整理、分 析したものです。無断転載、複製を禁止します。本資料に関するお問い合わせは [email protected] までお願いします。 Copyright 2008 Petroleum Energy Center all rights reserved