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1.0 GTL プロジェクト関連事項調査 1.1 プロジェクト基本事項

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1.0 GTL プロジェクト関連事項調査 1.1 プロジェクト基本事項
<要
1.0
1.1
n
約>
GTL プロジェクト関連事項調査
プロジェクト基本事項
GDP の大半をエネルギー関連産業に依存するカタール国にとって、精油所拡張や石油化学
工業の発展を始めとした付加価値創出産業の育成、及びカタール側発表で 900tcf の埋蔵量
を誇る同国沖合いノースフィールド・ガス田の既発見・未開発ガスの早期商業化は国家政策
上、重要課題となっている。
n
カタール国はノースフィールド・ガス田の早期商業化を目指して、8 万 bpd 以上の GTL 事業
を成立させた企業に対しては、同国上流権益(=DPSA[Development Production Sharing
Agreement]/開発生産分与契約)をパッケージにて賦与するとのプロポーザルを各 GTL 潜
在事業者に対して行い、現在、Ivanhoe 社(GTL 予定生産量:18.5 万 bpd)の他に、(英
蘭)Shell 社(同:14 万 bpd)、(米)ExxonMobil 社(同:10 万 bpd)、(米)Marathon 社(同:
9万
∼13.5 万 bpd)、(米)ConocoPhillips 社(同:12 万 bpd)の各社が GTL 事業の F/S レポート
を作成しカタール国側に提出の上、一部を除いた各社は DPSA の条件交渉に入っている
(2002 年 12 月時点)。又、最も先行している(南ア)Sasol 社の GTL 事業は 33,000bpd の
GTL 製品生産計画でありDPSA の上流権益を含まない合弁形式である。
n
カタール国には石油・ガス開発に関する確固とした法律はなく、個別のPSA 契約が関連各省
庁に認可された後、同国で立法権を有している国家元首の首長令発令に依り当該契約が
夫々法的に有効となる。従而、カタール国の全ての PSA 契約条件はカタール国営石油会社
(QP)と交渉の上で個別に決定され る為、上記GTL 事業推進者の DPSA 契約内容は個別各
社の F/S レポートの内容を反映し、夫々異なる条件になるものと予想される。
1.2
n
プロジェクト計画
本プロジェクトの建設予定地は同国首都・ドーハの北約 80km のラスラファン工業都市内にあ
る。開発対象鉱区は未だ明らかにはなっていないが、ラスラファンから約 50km 沖合いのノー
スフィールド鉱区の一画になると予想される。当該プロジェクトは、海上にガス生産用プラットフ
ォームを 2 基設置し、2 本の海底パイプライン経由原料ガスを陸上まで輸送し、NGL プラント
で LPG として輸出するプロパン(約 2.5 万 bpd)、ブタン(約 1.7 万 bpd)の他、輸出用のコンデ
ンセート(約 8 万 bpd)などを抽出した後、メタンを GTL プラントに輸送し、18.5 万 bpd(GTL
軽油:13.5 万 bpd/GTL ナフサ:
5 万 bpd)の GTL 製品を生産し輸出する事業である。
n
カタール国海上ノースフィールド・
ガス田の可採埋蔵量はカタール国側の最近の公式発表に
依ると約 900tcf(本邦の年間天然ガス総需要量[約 2tcf]の約 450 年分)とされている。カター
ル国側発表以前に第三者機関が見積もった評価でも約 380tcf の天然ガス確認可採埋蔵量
があると推定されている。
n
内、現在開発途中のガス関連プロジェクトの所要ガス量も勘案した所謂”商業可採埋蔵量”(=
確実に商業化出来るガスの埋蔵量)は約 100tcf 前後であると予想され、商業化の目処が立っ
ていない天然ガス確認可採埋蔵量は上記第三者機関の数値を採用しても約 280tcf(380tcf
−100tcf)前後あると考えられる。従而、上記GTL 事業推進者各社の事業期間全体に亘る所
要ガス量は大目に見積もっても一事業に就き約 20tcf 前後と想定され、全事業が立ち上がっ
ても更に 160tcf(280tcf−[20tcf X 6])の既発見・未開発ガスが残ると想定される。
1.3
n
プロジェクトの概念設計
上記 DPSA の締結は各社共に遅れており、Ivanhoe 社の当該契約締結も本 F/S 期間中に
実現出来なかった為、同社 F/S レポートの開示はなされなかった(DPSA 又は其れに準ずる
HOA を締結次第、F/S レポートを開示するとの同社との事前合意あり)。従而、Ivanhoe 社
GTL 事業自体の詳細調査は実施出来なかったが、同社が採用するGTL 技術のライセンサ
ーである(米)Syntroleum 社とは非常に条件の厳しい守秘義務契約を締結の上、同社 GTL
根幹技術の詳細評価を弊社独自で実施することに成功した。
n
結果、今後の詳細設計(=Front-End Engineering Design[FEED])段階で解決すべく問題
点は多少残るものの、其れは今後のエンジニアリング作業の如何に依り解決可能と判断され、
技術的には特に大きな問題はないとの結論を得られた。同社の GTL 製造プロセスは (1)合成
ガス製造、(2)Fischer Trops(GTL の原料であるワックス状の製品を製造する装置)、(3)水素
化分解の 3 つに大きく分けられるが、同社技術の特徴は(1)の合成ガス製造時に空気を用い
ることであり、酸素を用いる他社の技術に比べて高価な酸素製造装置が不要な分だけ開発費
用が削減出来、且つ、操業上の安全性が高いとの利点がある。
1.4
n
プロジェクトの実施スケジュール
Ivanhoe 社は上記 DPSA の HOA(DPSA の重要諸条件を含む法的拘束力のある契約書)
を締結次第、プロジェクトの FEED(詳細設計作業)を開始する方針であり、同社の発表した
スケジュールでは 2003 年第二四半期には FEED を実行し、2004 年第四四半期にプラント
の建設に着手し、2008∼09 年頃からGTL の生産を開始する計画。
1.5
n
プロジェクトのコスト積算・収益性
Ivanhoe 社の公表数値に基づいた同社プロジェクトの開発単価は US$19,560/bbl となって
おり、GTL の収益性が見込めるとされるコスト分岐点である US$20,000/bbl を切っている。
n
一方、一般的な GTL プロジェクト全体で言えることは原料ガス代金が与えるコスト・インパクト
が大きいということであり、原料ガス代金が US$1.00/mmbtu の場合、GTL 製品コストに反映
される単価は約 US$9∼10/bbl 程度となり、ガス田開発コストが高い(US$1.00/mmbtu∼
US$1.5/mmbtu)東南アジア等での GTL プロジェクトの成立を困難としている。
n
一方、カタール国のDPSA は上流開発からGTL プラント迄の事業全体を一つの契約でカバ
ーする内容(原料ガス購入価格は理論上無し)となっており原料ガス価格が DPSA のメカニズ
ムの中に吸収される他、上流ガス田開発コストが比較的安価な為、上記検討中の GTL プロジ
ェクトの商業化が見込める可能性は高いと予想される。
n
又、ノースフィールド・ガス田のガスは Wet Gas であり、単体の開発費用が比較的安価な
LPG とコンデンセートが同時に生産される為、更なる事業経済性向上が期待出来る。
n
GTL プロジェクトの開発費用は過去 20 年で約 3 分の 1 に下がっており、今後の技術改善で
更なるコストの低下が期待出来る。又、GTL 操業費用の大半は触媒費用であり、同触媒費用
のコスト削減は今後に残された課題の一つである。
1.6
一般的な上流開発に関する契約条件の概要(ご参考・省略)
1.7
プロジェクトの環境面への効果・影響
n
Syntroleum の GTL プロジェクトは発電用途の使用が見込めるTail Gas や蒸気などの副産
物が多く発生し、同副産物を有効利用した場合のCO2 削減マイナス・クレジットが得られれば、
他の石油・ガス関連産業と比べて最もCO2 排出の低い事業となる可能性あり。
2.0
2.1
n
GTL 製品及び NGL の市場性調査
GTL 軽油
GTL 軽油の特徴はゼロ・硫黄分、ゼロ・アロマ(芳香族)分、高セタン価、低比重、であることが
挙げられ、ゼロ・硫黄分の齎すエンジン摩擦時の潤滑性への影響、ゼロ・アロマ分の齎す自
動車ゴム系部品への影響などが懸念されたが、日本も含めた世界的な軽油・燃料規制は超
低硫黄、低アロマの方向に向かっており、GTL の本格商業生産が始まる 2010 年頃には上記
事項は殆ど問題とならず、日本、欧州、米国で今後導入されるであろうディーゼル車両の超
低排出ガス規制に最も合致する理想的な燃料になると期待される
n
上記低比重に依り GTL はリッター当たりの燃費が通常軽油に比べて低下(5%)するが、本
F/S 調査期間中に実施した一連の試験結果に依り、重量当たりの燃費は通常軽油に比べて
良く、其の特性は燃料効率性を高め、同時に CO2 の削減(対通常軽油 3∼5%)に繋がること
が確認出来た。
n
GTL は本 F/S 期間中に実施した一連の排出ガス測定試験の結果、硫黄分 23ppm の JIS
軽油に比べ PM、NOx を夫々最高値で約 40%、約 20%削減した。
n
又、GTL の高セタン価を最大限に生かす目的で本 F/S 調査期間中にディーゼル・エンジン
着火点のチューニング・テストを実施した結果、GTL の燃費が約 2%改善され、PM の排出を
更に 10%削減することに成功した。今後の個別自動車メーカーに依る本格的な技術開発で
GTL の燃料効率性を最大限に生かす GTL 対応エンジンの開発が期待される。
n
又、上記実験の結果、GTL は都心などでの渋滞時の低速走行時の PM 排出量・削減比率
(対 JIS 通常軽油比)が最も大きく、慢性的な渋滞に悩む各国・首都の大気汚染問題解決に
大きな効果を発揮すると期待出来る。又、GTL から排出されるPM の成分分析を行った結果、
発癌などの人体に影響を与えると指摘される有害物質が最も多く削減されていた。
n
本 F/S 調査期間中に面談した本邦大手トラック会社、大手バス会社、関連各地方公共団体の
意見を総括すると、GTL に対する関心度は非常に高く、又、大手エンド・ユーザーからは
GTL が価格的に競争力があれば購入を前向きに検討していきたいとの意見が多く寄せられ
た。
n
2010 年頃の世界的な軽油需給バランスは、欧州の旺盛なディーゼル車需要、中国の急速な
経済成長などを反映し、32 万 bpd∼60 万 bpd のショートになると予想され、当該 GTL プロ
ジェクトから産出されるGTL 軽油が市場性は高いと判断出来る。
n
又、今後の京都議定書の採択を睨んだ CO2 削減の取り組みが本邦でも本格化し、ディーゼ
ル車両の対ガソリン車両比のCO2 削減量(約 30%)がCO2 クレジットとして正式に承認されれ
ば、「GTL の超排出ガス+ディーゼル車両に依るCO2 削減」効果が、更に本邦ディーゼル車
需要が再び喚起に繋がると可能性が大きいと考える。
2.2
n
GTL ナフサ
水素成分を多く含む GTL ナフサは将来の燃料電池用車両用途として有望な燃料であるが、
現実的には 2010 年頃の GTL ナフサ需要の大半はオレフィン・プラント用途となる見込みであ
り、世界的にオレフィン・プラントの容量は拡張されておりGTL ナフサの市場性は充分に見込
めると予想される。
2.3
n
GTL 基油
GTL プラントからはエンジン・オイルや産業用潤滑油の原料となるGTL 基油の生産も可能で
あるが、GTL 基油のエンジン・オイルとしての性能は非常に高く、エンジン・オイルの寿命を長
らえる効果や排ガスを更に削減する効果が期待出来る。
2.4
n
NGL(コンデンセート・LPG)市場調査
コンデンセートは中東・アジア域内を中心に取り引きされているが、イラン、サウジアラビア、カ
タールでのコンデンセート生産が 2010 年頃に大きく伸びると予想される。これらの供給増は
中国を中心としたアジア地域の対コンデンセート需要増、米国、及び英領・ノルウェー領北海
での原油生産が同時期には減退すると予想さることから、コンデンセートは充分吸収可能であ
ると考えられる。
3.0
n
カタール GTL プロジェクトのプロジェクト・ファイナンスの組成可能性
弊社もQatargas LNG プロジェクトのプロファイを組成した経験あり、DPSA などの諸条件の
カタール国側との交渉結果にも依るがプロファイを組成する基本的な要素は整っており、カタ
ール国側もプロファイの契約関係の煩雑さや、銀行団から要求される条件の厳しさ、及びそれ
に係わる時間(融資交渉開始から諸契約締結まで 1∼2 年程度)などに就いても熟知している。
然し乍ら、GTL 事業のプロファイを実現する上で最も重要なポイントは GTL プラントの完工保
証の問題であり、GTL 技術の更なる確証を得ることが望まれる。
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