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新規高効率合成ガス製造プロセス
JGC AR05/J25~28_0829 05.9.13 4:34 PM ページ 24 24 技術紹介 日揮株式会社 アニュアルレポート 2005 新規高効率合成ガス製造プロセス ∼ 天 然 ガ ス の 有 効 利 用 と G T L の 普 及 を目 指 し て ∼ パイロットプラント概要 建設地:大阪ガス(株) 旧酉島製造所 合成ガス製造能力:2,000Nm3/時 (65バーレル/日GTL相当) (写真:JOGMEC殿ご提供) <GTLの普及を目指して> 原油価格の高騰と環境保護への関 この様な背景から、現在メジャーオ と大きく3つの工程から構成され、な 心が高まる中で、天然ガスを原料に イルや産ガス国が中心となって、いく かでも①合成ガス製造工程は、これ 合成される 「GTL(Gas to Liquids)軽油」 つものGTLプロジェクトが進行または ら3つのプロセス工程の設計・建設 が、将来の自動車用燃料として、世界 計画されています。しかしGTL製品の 費用のうち50%近くを占めています。 中の注目を集めています。 製造には複雑で大規模なプラントが 従 い G T L 製 品 を 安 価 に 生 産 するた 燃費が良く環境に優しいとして軽油 必要とされ、その設計・建設には多額 めには、この合成ガス製造工程をい を燃料とするディーゼル車のシェアが の設備投資を必要とする事が、GTL かに安価に設計・建設できるかにか 伸びてきている欧米では、従来の軽 プロジェクト実現の大きな障害の一つ かっていると言っても過言ではあり 油に比べセタン価(軽油の着火し易さ となっています。GTLプラントは、 ません。 を示す指標)が高く、硫黄を全く含ま ① 合成ガス製造(天然ガスから水素 ないクリーンな合成燃料であるこの と一酸化炭素の混合ガスを製造) GTL軽油が、これからの自動車燃料と ② 合成ガス転換(GTL合成) して大きな期待が寄せられています。 ③ 製品精製(分解・蒸留) JGC AR05/J25~28_0829 05.9.13 4:34 PM ページ 25 25 合 成ガス製 造プロセスの 比 較 (従来型) 天然ガス 脱硫(ppmレベル) 水蒸気改質器 自己熱改質器 合成ガス (GTL合成部門へ) (A-ATG) 天然ガス 脱硫(ppbレベル) A-ATG反応器 合成ガス (GTL合成部門へ) <日揮 の取り組み ∼A-ATG プロセスの開発∼> GTLプロジェクトの将来にもかかわ り、まさに規模の経済性が求められる る技術を取り入れ、改質触媒の劣化 るこの課題に対し、日揮は、大阪ガス GTLプラントに最適な合成ガス製造 を抑えているので運転期間の長期化 技術と言えます。 が可能となります。 (株) と共同で (独)石油天然ガス・金属 鉱物資源機構(JOGMEC)の支援を受 心臓部となるA-ATG反応器には、 け、新しい合成ガス製造プロセス「A- 大阪ガス(株)が開発した高性能触媒 日揮と大阪ガス(株)は、2002年か ATGプロセス (Advanced-Auto Thermal が充填され、高効率な合成ガス製造 らベンチ装置(実験室レベルの装置) Gasification Process) 」の開発を行って が実現できることから、機器類の小型 による基本的な運転条件の探索を開 います。 化と機器の設置面積の削減が可能と 始し、2003年からは、パイロットプラ なり、設計・建設費用のコストダウン ント (大型実験装置)による4年間の実 造法は、バーナー燃焼と触媒の組み を図ることが可能となります。さらに、 証試験計画を開始しました。そして本 合わせにより酸化・改質を行っていま プロセスが簡素化されるため、プラン 年4月には、パイロットプラントが完成 すが、このA-ATGプロセスは、特殊な トの運転操作も容易となります。また、 し、現在試運転を行っています。試運 触 媒 を 充 填した 反 応 器 を 用 い て 酸 合成ガス製造の前処理として、原料の 転後、実証試験を通じて本技術を確 化・改質を行う 「触媒接触式部分酸化 天然ガス中に含まれる硫黄分を、従 立、また具体的な立地を定めて経済 現在主流となっている合成ガス製 法」という新しいコンセプトに基づく 来の百万分の一(ppm) レベルから十 性を精査し、2009年をターゲットとし プロセスです。バーナーを使用してい 億分の一(ppb) レベルという、これま た商業用プラントの基本計画策定を ないため、スケールアップが容易であ でに無いレベルにまで高度に脱硫す 目指して邁進しています。 天然ガスのオールランドプレーヤー 優しいGTL製品を通じて環境保護に も大きく貢献できるものと考えてい である日揮は、このA-ATGプロセス 貢献し、同時に天然ガスの高度・高 ます。 を早期に完成させ、GTLプロジェクト 付加価値利用を通じて、資源に乏し の促進に寄与するとともに、環境に い日本のエネルギーセキュリティーに <将来の展望> JGC AR05/J25~28_0829 05.9.14 10:53 AM ページ 26 26 バ イオ マス エ タノー ル ∼その普及に向 けて∼ 地球温暖化防止のため、バイオマ 要量が増加するに伴い、原料となる スを利用した様々な取り組みが世界 サトウキビやトウモロコシを増産する 中で行われています。その一例として、 必要がありますが、現在トウモロコシ ブラジル、米国をはじめとする諸外国 からエタノールを製造する場合、トウ では、ガソリンの使用量を削減して二 モロコシの実だけを利用しエタノール 酸化炭素の排出量を抑えるために、 を製造しているため、実以外の葉、茎 サトウキビやトウモロコシを原料とし や芯の部分は未利用のまま廃棄など た「バイオマスエタノール」をガソリン されています。従い、農作物を増産す に混合した「エタノール混合ガソリン」 る場合、農耕地の確保や廃棄物の増 を自動車燃料として既に利用し始めて 加が、新たな課題となってしまいます。 当社が建設したパイロットプラント 料とするエタノール製造技術の開発に います。我が国でも、2003年8月にエ タノールを3%混合したガソリンが販 そこで日揮は、これまで廃棄されて 取り組んでいます。この技術は、濃硫 売できるよう、法制度が改正され、利 いたトウモロコシをはじめとする農作 酸を利用して残渣中の繊維質を化学 用へ向けた準備が進んでいます。 物の茎や芯などの残渣、そして廃材な 的に分解し、糖を高効率で製造、そ このようにバイオマスエタノールの需 どの木質系残渣に着目し、これらを原 の糖を発酵させエタノールを製造する ものです。この技術を活用することに よって、これまで廃棄していた残渣を 有効活用することができ、食糧とエネ バイオマスエタノール製造例のブロックフロー ルギーの同時生産が、従来と同じ耕 作面積で可能になります。 農林産系 バイオマス 収穫 食糧 日揮は、2002年3月に鹿児島県出水 市のNEDO出水アルコール工場内に、 (独)新エネルギー・産業技術総合開 発機構(NEDO)の委託事業としてパ イロットプラント (実験装置) を建設し、 残渣 日 揮 開 発 プ ロ セ ス 酸分解 現在このプロセスの実証実験を行っ ています。そして、 (独)産業技術総合 研究所が主体となって、このパイロッ 糖液 トプラントで製造されたエタノールを 3%混合したガソリン(E3ガソリン) を 発酵 エタノール 燃料とする自動車の走行テストが、つ くば市の自動車テストコースで行われ ており、実用化への準備が進められて います。