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世界のGTLプロジェクトの最新状況

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世界のGTLプロジェクトの最新状況
JPEC レポート
平成 25 年 5 月 13 日
JJP
PE
EC
C レ
レポ
ポー
ートト
222000111333年
年
度
年度
度 第4回
第4回
世界のGTLプロジェクトの最新状況
天然ガスを原料とする液体燃料製造プロセスは、
GTL(Gas-to-Liquid)プロセスと一般的に呼ばれて
いる。北米での天然ガス価格の低値基調と原油価格
の高値継続により、天然ガスを原料とするGTLプロ
セスへの関心が高まっているが、高額なプラント建
設コストやプロセスの難しさなどから、設備新設の
動きはまだ少ない。
【 内容】
1. 運転中の商業規模 PJ 状況
p.1
2. Sasol の建設・検討 PJ
p.3
3. デモプラント・ステージの PJ 状況
p.6
4. まとめ
p.6
今回は、前回(2011年度第2回JPECレポート)の報告から2年間の世界のGTLプロ
ジェクトの動きについて報告する。
レポートで用いるドルは、特に断らない場合は米国ドルである。
1. 運転中の商業規模GTLプロジェクトの状況
2011年にカタールのPearl GTL プロジェクトが操業を開始し、GTLも大型設備での
運転の時代になった。スケールアップによる技術的な問題は表面化していないが、最終
投資金額が当初計画の数倍に達するなど課題も多いと思われる。最近の商業規模のGTL
プロジェクトの状況を下記にまとめ、設備能力等を表1に示す。
(1) PetroSA Mossel Bay GTL(南アフリカ)
南アフリカ国営石油会社(PetroSA)は、現在、国内の沿海部で生産した天然ガスを
GTLの製造用原料として使用している。2006年以降モザンビークからパイプライン
で輸入している天然ガスは、SasolのSecunda CTL(Coal-to-Liquid)プラントや産業
用燃料として使用されている。
国内の天然ガスの生産は南部沿海部で行われているが、生産量は年々減少してお
り、2年前の調査では一年間で17.6%の減少率で、既存のガス田だけでは2014年まで
に資源不足によりGTL装置の操業停止の可能性も指摘されていた。Mossel Bay GTL
は、南アフリカの液体燃料の5%を供給している。
PetroSAは新たな天然ガス資源の確保のため、2011年4月にProject Ikhwezi(現地
1
JPEC レポート
語で「明けの明星」の意味)を立ち上げ、約10億ドルを投資して南アフリカの南部
沿海部の既存ガス田の近くで新しいガス田の開発に取り組んでいる。生産開始は
2013年後半を予定しており、新規ガス田の開発により6年間はGTL原料を確保できる
計画である。
PetroSAは、ケープタウンの西北部の沿海部で新たなガス田の開発も検討中で、
2016年からの生産開始を考えている。生産井などの増強で、2025年までの原料天然
ガスは維持できる可能性がある。
南アフリカには大量のシェールガスの埋蔵が期待さ
れているが、開発に伴う環境問題への懸念から取り組みは進んでいない状況である。
PetroSAは、GTL装置の将来的な原料確保のため、Mossel Bayに約4億ドルを掛け
て浮体式LNG輸入設備の設置を検討中であり、2012年暮れから事業性評価と基本設
計を実施中である。投資判断は、2013年後半の予定である。
また、PetroSAは国内の軽油需要の伸びを背景に、モザンビークに40,000BPDの
GTLプラントの建設(プロジェクト費用40億ドル)を検討中と報じられている。
参考;
http://www.eia.gov/countries/cab.cfm?fips=SF
(2)Oryx GTL (カタール)
Oryx GTL はQP
(Qatar Petroleum)と南アフリカの Sasol社の合弁事業である。
2011年11月の報道では、確認した最大処理能力は36,860BPD、生産工程の改善によ
り設計能力の10%増の製造が可能と報告している。
Oryx GTLの設計能力は32,400BPDとされているが、Sasolの2012年の各期の報告
では平均稼動はほぼ34,000BPD超で維持している模様である。計画的な定期修理工
事期間を含めた2012年の年間稼働率は、設計能力の概ね80%から90%と報告されて
いる。
将来的には10~13万BPDに能力拡大するという情報が散見されるが、最近の具体
的な動きは把握できていない。
参考;
http://www.fwc.com/publications/tech_papers/files/NS_292_Oryx_GTL_FIN.pdf
http://www.sasol.com/sasol_internet/downloads/CFO_Letter_December2012_135
4512398539.pdf
(3)Pearl GTLプロジェクト(カタール)
Pearl GTLプロジェクト(Pearl)はQatar Petroleum(QP) と Royal Dutch Shell
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(Shell) の合弁事業で、投資金額は当初計画の50億ドルから最終的には180-190億ド
ルまで膨れ上がった。ドーハの北90kmにあるラスラファン工業市にプラントがあ
り、Qatar Shellがプロジェクトのオペレーターを務めている。
Pearl Phase1は、約3ヶ月のスタートアップ期間を経て2011年6月から製品軽油の
出荷を開始し、Pearl Phase2は2011年11月に運転を開始した。当初の計画ではフル
操業に到達するのは2012年中頃とされていたが、2012年9月下旬にフル操業条件に
到達したと報告している。製造能力は2系列合計で、GTL油 14万BPD、コンデンセ
ートおよびLPGが石油換算で12万BPD、合計26万BPDである。
2012年秋の報道によれば、フル操業で軽油価格が70ドル/bblのケースでは年間の
フリーキャッシュフローが40億ドルになる。
2013年1月、Qatar Airways がドーハからロンドンまでのフライト(Airbus
A340-600)の燃料として在来油とPearl-GTLケロシンの50/50ブレンドのジェット燃
料の使用を開始した。採用の理由として、二酸化炭素排出量の削減効果は無いが、亜
硫酸ガスと排ガス中の粒子状物質の削減により大規模空港周辺の大気汚染防止に大
きく寄与すると報告している。また、ジェット燃料の調達先の拡大により、安定調達
に寄与するとしている。
表1. 現在運転中の商業規模GTLプロジェクト
国/場所
参加企業
プロジェクト
名称
計画年/
運転開始
GTL
能力
BPD
工場
能力
BPD
GTL技術
サプライヤ
1980’s
1993
14,700
Shell MDS
Oryx
2003
2007
32,400
Sasol/
Chevron
(Sasol SPD)
Mossel
Bay
---1992
36,000
45,000
Sasol
Pearl
Phase1
2003
2011.03
70,000
130,000
Shell MDS
Pearl
Phase2
2003
2011.11
70,000
130,000
Shell MDS
マレーシア
Shell Oil
Bintulu
カタール
Ras Laffan
Qatar
Petroleum
Sasol,
Chevron
南アフリカ
Mossel Bay
PetroSA
カタール
Ras Laffan
QP
Shell Oil
2. Sasolの建設中および検討中のプロジェクトの状況
SasolはOryxプロジェクトが順調なこともあり、世界各地でGTLプラント建設を積極
的に検討中である。前回の報告以降、新たに米国でのプロジェクトもスタートしている。
3
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(1) ナイジェリア Escravos GTLプロジェクト
Chevron の子会社 Chevron Nigeria Limited(CNL) は、ナイジェリア国営石油公
社(NNPC)およびSasolとの合弁(出資比率:CNL 75%、NNPC 15%、Sasol 10%)で
ある。ナイジェリア南部海岸地帯の Escravos(首都ラゴスの南東100km)にSasol
の技術でカタールのOryx GTLと同規模のGTLプラント(33,000BPD)を建設中で、完
成時期は当初計画の2008年末から大幅に遅れ2013年内に完成予定としている。最新
の情報では、プラントのコミッショニングとスタートアップ作業を実施しており、
2013年内には出荷開始を計画しているとの報告もある。
2011年2月の報道では、プロジェクト総費用の見込みは84億ドルで、当初計画の約
5倍となっている。
(2)ウズベキスタン Oltin Yo’l GTL プロジェクト
Sasolは、ウズベキスタンの国営石油ガス会社のUzbekneftegaz(出資比率:44.5%)
およびマレーシアのPetronas(出資比率:11%)と組んでウズベキスタン南部の
Karshi近郊に38,000BPDのGTLプラント建設を目標としており、2009年11月に合弁
会社を立ち上げて事業性評価を開始していた。
2011年9月にはウズベキスタン政府と Investment Agreement を締結したと報じ
られており、2011年10月から基本設計をスタートしている。2013年の後半にはプロ
ジェクト・ファイナンスの評価も含めて終わる計画で、最終的な投資判断が行われる
予定である。
2012年7月からGTL建設予定地の整備が始まっており、それに合わせてプロジェク
ト名が 「golden road」を意味する「Oltin Yo’l」に決められた。
(3)カナダ
SasolとカナダのTalisman Energy Inc.(本社:アルバータ州 Calgary)は、カナ
ダ西部にOryx GTLと同規模のGTLプラントを建設する事業性評価を実施していた
が、Talismanは社内事情で2012年6月にプロジェクトから撤退した。Talismanは、
Sasolとの上流側での共同事業には何等の影響は無いと表明しており、今後の投資を
天然ガスが主に産出するMontney formationから油分が多く産出するテキサス州の
Eagle Ford Shaleおよびアルバータ州のDuvernay Shaleに絞るためとしている。
Sasolは2012年に事業性評価は成功裏に完了したとしているが、投資判断は米国の
エチレン装置とGTLプロジェクトの投資判断の後になる計画で、基本設計に進む判
断も先延ばしの予定である。計画は、能力48,000BPDで、総費用80億ドルとの情報
もある。
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(4)米国 Lake Charles GTL プロジェクト
Sasolは2011年9月、米国でのGTLプラントの建設候補地として天然ガス資源の豊
富なルイジアナ州南西部のカルカシュー郡(Calcasieu Parish)を選定し事業性評価
を行っていたが、2012年12月、既に計画を発表していたエチレン製造装置およびそ
の下流側設備の建設と合わせ、96,000BPDのGTLプラントの基本設計を開始すると
発表した。
GTLプロジェクトの総コストは110億ドルから140億ドルで、1系列48,000BPD
の2系列構成で考えている。最終の投資判断までには18から24ヶ月掛かる予定で、
エチレンの投資判断の後になる。第1系列の運転開始は2018年、第2系列は2019年の
計画である。
Sasolが2013年1月に発表したGTL技術資料によると、合成技術の進歩により1系
列当りの能力は50%増が可能になり、触媒コストや効率向上により工場プロットは
10%減少しプラントの経済性も向上していると報告している。
Sasolは2010年12月、カルカシュー郡にある SasolのLake Charles Chemical
Complex内に、世界初のエチレン四量体(1-オクテン等、低密度ポリエチレンの原料
となる)製造プラント(年産10万トン)の建設計画を発表している。また、2011年
初頭からはエチレン製造装置の建設の事業性評価(年産130万トンまたは150万トン)
も実施中で、2013年には投資判断を行うとしていた。エチレンプロジェクトは、2017
年に製造開始を予定し、投資金額は50億ドルから70億ドルと報じられている。
参考:
http://www.sasollouisianaprojects.com/
http://www.businesswire.com/news/home/20101202006271/en/Sasol-builds-world
%E2%80%99s-Ethylene-Tetramerization-Unit-Lake
http://www.sasol.com/sasol_internet/downloads/Recent_Advances_in_Sasol_GTL
_Technology_1361092188494.pdf
http://www.sasol.com/sasol_internet/downloads/SD_Report_launch_breakfast_13
21514332047.pdf
http://www.sasol.com/sasol_internet/downloads/GTL_a_real_gas_commercialisati
on_option_1349722800093.pdf
http://www.sasol.com/sasol_internet/downloads/Paving_the_way_for_GTL_produ
cts_in_international_markets_1361092067730.pdf
http://www.sasol.com/sasol_internet/downloads/The_Future_of_GTL_in_a_fast_c
hanging_gas_market_1361092280118.pdf
http://www.sasol.com/sasol_internet/frontend/navigation.jsp?navid=22500002&ro
otid=3
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JPEC レポート
3.デモプラント・ステージのGTLプロジェクトの状況
(1)ブラジル
①Petrobras CompactGTL pilot plant
英国のCompactGTL(CGTL)社は、海上石油掘削時の同伴ガスを処理することを
目的に、ブラジルの石油会社Petrobras (Petróleo Brasileiro S. A.)から20BPDの
GTLプラントの製作・建設を2006年に受注し、2012年1月にPetrobrasの受け入れ
試験とプロセス認証が完了したと報告している。
この装置は将来的にはFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)に設置
される計画であるが、受け入れ試験はリオデジャネイロのCENPES研究開発センタ
ーで行ったと報告されており、CompactGTL社のホームページで写真も確認できる。
参考;
http://compactgtl.com/about/petrobras-commercial-demonstration-plant/
②Petrobras Velocys GTL pilot plant
Petrobrasは、前述のCompactGTL社との取り組みと並行し、日本の東洋エンジ
ニアリング(TEC) および三井海洋開発(MODEC) と共同で2007年11月から中小規
模GTL開発に取り組んでいた。英国のOxford Catalysts Group(Oxford)の米国子会
社Velocys Inc. (Velocys)の6BPDのGTL実証設備を建設し2011年夏には稼動予定
であったが、Oxfordのレポートでは2012年設置となっている。大幅に設置が遅れた
原因は不明で、今後は実証運転の結果報告に注意が必要である。
参考;
http://www.oxfordcatalysts.com/press/ppt/Oilbarrel_presentation_120719a.pdf
http://www.oxfordcatalysts.com/press/ppt/Velocys_World-XTL-Summit_2012a.p
df
4. まとめ
米国でのシェールガス革命により、北米では天然ガス価格の低迷と原油価格の高止ま
り状態が続き、北米ではGTLの採算に最も有利な状況といえる。しかし、カタールで立
ち上がったSasolとShellのプロセス、今年立ち上がりが期待されるナイジェリアの
Sasolのプロセスのいずれもが、当初の投資計画を大幅に超えるプロジェクト費用にな
っており、新たな投資判断に不安を抱かせる材料になっている。
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JPEC レポート
天然ガスの生産・販売サイドから考える場合は、GTLプロセスを含む製油所建設コ
ストとLNG製造プラントを建設し出荷するコストの比較状況により、どちらが有利か
の判断でGTLの投資判断が影響を受ける。更に、パイプライン輸送や周辺のマーケット
状況も重要な判断材料になる。
ガス価格は地域によって異なる状況にあり、中長期的な天然ガス価格および石油価格
の見通しと、GTLプラントで使用できる天然ガスの長期確保が非常に重要である。北米
のようにカナダ、米国およびメキシコの各国を広範囲につなぐパイプラインネットワー
クが出来ている場合は原料確保は容易に出来る可能性はあるが、天然ガス田の生産能力
や規模によってはPetroSAのように将来的な原料確保が大きな課題になる可能性があ
る。
GTL技術は、大規模設備での製造技術がカタールで実証されたが、SasolとShellの技
術以外ではリスクが大きいため、新たな投資検討に関しては慎重な状況が続く可能性が
ある。Shellは米国のルイジアナ州とテキサス州のメキシコ湾岸地域で70,000BPD超の
新たなGTLプロジェクトを検討中と報じられており、今後の動向に注意が必要である。
参考;
http://www.arlis.org/docs/vol1/AlaskaGas/Present/Present_DOE_2012_Gas-to-Liqui
dTech.pdf
以上
本資料は、一般財団法人 石油エネルギー技術センターの情報探査で得られた情報を、整理、
分析したものです。無断転載、複製を禁止します。本資料に関するお問い合わせは
[email protected]までお願いします。
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次回の JPEC レポート(2013 年度 第 5 回)は
「欧州における二酸化炭素回収・貯留技術(CCS)に関する最新動向」
を予定しています。
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