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日時計の計算式 滝 敏美 2007 年 10 月 21 日 1.目的 日時計を製作するために必要な数値を計算する計算式を導く.この計算式では,日時計の面 の向きを自由に選べるようにする. 2.参考資料 [1] Toshimi Taki, “Matrix Method for Coordinates Transformation,” Rev. E, February 29, 2004. (イ ンターネットの Taki’s Homepage(http://www.asahi-net.or.jp/~zs3t-tk/)にある. ) 3.記号の定義 黄道傾角 緯度 太陽の時角 H 太陽の赤緯 方位角 A 高度 h ノーダス G0 の日時計面からの高さ l ノーダス G0 と G1 の距離 d 方向余弦 (L, M, N) 4.太陽の高度と方位の計算 4.1 太陽の位置 ある日ある時刻の太陽の赤緯を ,時角を H とする.赤緯 は± (黄道傾角)の範囲にあ る.この座標を赤道座標系 O-xe’-ye’の方向余弦で表現すると次の式になる. LSe ' cos cos( H ) M Se ' cos sin( H ) N Se ' sin 1 天頂 子午線 Zh 天の赤道(春分・秋分の太陽の通り道) 天の北極 Ze’ Xe’ S (L ’, M ’, N ’) e e e P Z 北 西 H O 南 Xh Yh, Ye’ 東 図1 赤道座標系 この太陽の位置を方位角 A と高度 h で表す.方位角は真南を基点として西に向かって測る. この座標を地表座標系 O-xh-yh の方向余弦で表すと次の式になる. LSh cos h cos( A) M Sh cos h sin( A) N Sh sin h 天頂 子午線 Zh Z 西 北 S (Lh, Mh, Nh) h A 南 O Xh Yh 図2 地表座標系 2 東 太陽の位置を地表座標系の方向余弦に変換するには次の式を使う.日時計の位置の緯度を とする. LSh cos M Sh N Sh 0 sin 2 0 sin 1 0 0 cos 2 LSe ' 2 M Se ' N Se ' 2 天頂 子午線 zh 天の北極 天の赤道(春分・秋分の太陽の通り道) ze xe P Z 北 西 W0 W2 夏至の太陽の通り道 W1 A2 A0 A1 E1 南 E0 E2 xh yh, ye 東 冬至の太陽の通り道 図3 太陽の位置 5.影の位置の計算 5.1 日時計の面とノーダスの位置の定義 日時計の座標系を O-x’’-y’’-z’’とし,日時計の面は O-x’’-y’’面内にあるとする.2つのノーダ ス G0 と G1 を考える.G0 は日時計座標系の z’’軸上の高さ l にある点とする.G1 は G0 から 天の北極に向かう線上にある点とし,G1 と G2 の距離を d とする. 地表座標系と日時計座標系の関係は以下のようになっているとする.まず,地表座標系を Zh 軸まわりに x 回転した座標系を O-x’-y-z’とする.次に y’ 軸まわりに 日時計座標系 O-x’’-y’’-z’’になるとする. 3 y 回転した座標系が 天頂 Zh , z’ 天の北極 Ze’ z’’ z Xe’ P Z G1 西 北 G0 子午線 O y’, y’’ y Xh 南 Yh, Ye’ x’ x’’ 図4 日時計座標系の定義 O-x’-y’-z’座標系の方向余弦を次のように表すと, L' cos ' cos ' M' cos ' sin ' N' sin ' 地上座標系との関係は次の式になる. L' cos M' sin N' 0 z z sin z 0 cos z 0 Mh 0 1 Lh Nh O-x’’-y’’-z’’座標系の方向余弦を次のように表すと, L' ' cos ' ' cos ' ' M '' cos ' ' sin ' ' N '' sin ' ' O-x’’-y’’-z’’座標系と O-x’-y’-z’座標系の関係は次のようになる. L' ' cos M '' N '' 0 sin y 0 sin y 1 0 0 cos y y L' M' N' 4 東 これらの座標変換式を使えば,地表座標系で表した太陽の位置を日時計座標系で表すことが できる.日時計座標系で表した太陽の位置を(Lsh’’, Msh’’, Nsh’’)とする. 5.2 ノーダス G1 の日時計座標の求め方 赤道座標系の Ze’軸のベクトルは,赤道座標系で表すと (0, 0, 1) である.このベクトルをし たに示すように地表座標系から日時計座標系まで変換していく. LNh cos M Nh N Nh sin LN ' cos MN ' sin NN ' 0 LN ' ' cos M N '' N N '' 0 sin 0 sin 2 0 1 z z 0 0 cos 2 z 0 cos z 0 M Nh LNh 1 y 0 sin y 1 0 0 cos N Nh y y 0 1 2 sin 0 0 2 LN ' MN ' N N' ノーダス G1 の日時計座標系での位置は次のように計算できる. xG1 ' ' 0 LN ' ' y G1 ' ' 0 d M N '' z G1 ' ' l N N '' 5.3 ノーダスの影の計算式 ノーダスの影の位置は,図5を参照して次のように計算できる. ノーダス G0 の影の日時計座標系における位置は, xGS 0 ' ' 0 y GS 0 ' ' 0 z GS 0 ' ' l LS ' ' l M S '' NS '' N S '' ノーダス G1 の影の日時計座標系における位置は, 5 xGS1 ' ' 0 y GS1 ' ' 0 z GS1 ' ' N G1 ' ' LS ' ' N G1 ' ' M S '' NS '' N S '' 当然のことながら,zGS0’’と zGS1’’はゼロである. z’’ 太陽方向の単位ベクトル 長さd l G0 G1 Y ノーダスG0 の影,GS0 ノーダスG1 の影,GS1 y’’, X x’’ 図5 ノーダスの影の位置 最後に,日時計座標計の向きを図5の O-X-Y 座標系に変換する. X GS 0 YGS 0 y GS 0 ' ' xGS 0 ' ' Z GS 0 z GS 0 ' ' X GS1 y GS1 ' ' YGS1 Z GS1 xGS1 ' ' z GS 1 ' ' 6 6.計算例 前項で説明した計算式を使って日時計の目盛位置を計算する MS-Excel のワークシートを作 成した.緯度と日時計の面を定義するパラメータを入力すれば,日時計の目盛(時刻線,春分・・ 夏至・秋分・冬至の影の経路)を計算し,図示する.このワークシートを使って計算した例を 以下に示す. 6.1 名古屋の垂直日時計 名古屋の緯度は 35 度 10 分である.真南に向いた垂直日時計を図6に示す. 冬至の線 ノモン(長さ1) 1 0 -6 -5 -4 -3 -2 -1 7h 0 1 2 3 4 春分・秋分の線 -2 -3 16h -4 9h 10h 11h 12h 13h -5 -6 夏至の線 図6 名古屋の垂直日時計 7 6 17h -1 8h 5 14h 15h 6.3 名古屋の水平日時計 名古屋用の水平日時計を図7に示す. 北 4 冬至の線 3 15h 9h 14h 16h 13h 212h 11h 10h 8h 春分・秋分の線 1 17h 7h 0 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 -1 ノモン(長さ1) 夏至の線 -2 南 図7 名古屋の水平日時計 8 2 3 4 5 6.3 トリニタ・デイ・モンティ教会の日時計 ローマのスペイン広場を見下ろす場所にあるトリ ニタ・デイ・モンティ教会(図8)の正面壁面には 日時計がある.ローマの緯度は 41 度 54 分である. 日時計は真南から 75 度西を向いている.この条件で 垂直日時計を作図したのが,図9である.日時計の 実物の写真を比較のために図中に示した.なお,実 物の日時計の横の目盛線は,日没を基点(0h)とし た時刻を示すものである. 図8 トリニタ・デイ・モンティ教会 ノモン(長さ1) 春分・秋分の線 冬至の線 1 0 -4 -3 -2 -1 0 1 2 18h 17h 16h -1 15h 14h -2 12h -3 13h -4 図9 トリニタ・デイ・モンティ教会の日時計 9 3 夏至の線 4