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JBIC中国レポート 2010年8月号

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JBIC中国レポート 2010年8月号
株式会社日本政策金融公庫
国際協力銀行(JBIC)
JBIC 中国レポート
2010 年
8
月号
新公布法令情報 .................................................................................................................... 2
主な新公布法令 ................................................................................................................. 2
新公布法令解説1 ............................................................................................................. 5
海峡両岸経済協力枠組合意
新公布法令解説2 ............................................................................................................. 8
集団契約制度を深く推進しレインボープラン(彩紅計画)を実施することに関する
通知
1.
法令の概要 ........................................................................................................... 8
2.
検
3.
法令の背景についての補足 ................................................................................ 11
討
―
2010 年型労働争議.......................................................................... 9
中国智庫- 寄稿(毎号掲載)
富士通総研経済研究所 主席研究員
持続可能な経済成長のカギを握る教育改革のゆくえ
柯
隆.................. 13
JBIC 中国レポート2010年8月号
JBIC 中国レポート
本レポートは、株式会社日本政策金融公庫
国際協力銀行
香港駐在員事務所が、日系
企業の皆様の中国に於けるビジネスの参考になりそうな投資、金融、税制等にかかる生
の情報を集め毎月発行するものです。本レポートに関するご質問・ご要望等ございまし
たら、当事務所までご照会下さい。
また、本レポートはホームページでも御覧頂けます。
(http://www.jbic.go.jp/ja/report/reference/index.html)
株式会社日本政策金融公庫
国際協力銀行
香港首席駐在員
行天 健二
新公布法令情報
主な新公布法令【1】
(直近 3 ヶ月にて公布された新法令のうち、特に重要と思われるものについて会社設立・
M&A、債権管理、労務管理、税関管理、税務・会計、外貨管理、その他の項目別にとりま
とめたもの。また、マークアップされた法令等については解説等を掲載。)
・ 会社設立・M&A
法令名:
外商投資プロジェクト審査認可権限下級委譲に関する関係問題に係る通知
公布部門:
商務部
文書番号:
商資発[2010]209 号
公布日:
2010 年 6 月 10 日
施行日:
―
概要等:
国務院「外資利用業務をよりいっそう適切にすることに関する若干の意見」
【2】
に基づき、商務部の外商投資プロジェクト審査認可権限の下級委譲を定めた規
定【3】。
1
本来、法令の公布は、中央性法規については国務院の、地方性法規については地方人民政府の承認を経
てなされる。本レポートでは、かかる公布手続きを経たことが確認できない法令、規範性文書(法令以外
の文書)についても、便宜上、その発出日を公布日として表記。施行日については、規定により確認可能
であるものについてのみ、表記している(「-」は未確認の意)。また一部法令については、遡及施行され
ている。
例)企業所得税法に基づき制定された税務通達
公布日:2009 年7月 1 日、施行日:2008 年 1 月 1 日(遡及適用)。
国発[2010]9 号、2010 年 4 月 6 日発出。
発展改革委員会の権限委譲については「外商投資プロジェクト審査認可権限下級委譲業務を適切にする
ことに関する通知」(発改外資[2010]914 号)が規定。
2
3
2
JBIC 中国レポート2010年8月号
・ 労務管理
法令名:
集団契約制度を深く推進しレインボープラン(彩紅計画)を実施することに関
する通知
公布部門:
人力資源及び社会保障部、
文書番号:
人社部発[2010]32 号
実施期間:
―
中華全国総工会 外
公布日:
2010 年 5 月 5 日
概要等:
労働集団契約、集団協議の普及と実効性向上のための取組みの計画を通知する
政策的文書。
→ 新公布法令解説2参照
・ 税関管理
法令名:
原産地をエチオピア等 32 ヶ国の最貧国とする一部商品につきゼロ関税を実施
することに係る通知
公布部門:
国務院関税税則委員会
文書番号:
国税委[2010]11 号
公布日:
2010 年 6 月 1 日
実施期間:
―
概要等:
原産地をエチオピア等 32 ヶ国の最貧国とする一部の商品につきゼロ関税を実
施することを規定。対象となる国は、アフリカ諸国(エチオピア、ベニン、ジ
プチ等)を中心に、一部南アジアの国(バングラディシュ等)も含む。対象国
及び商品は、リストにより特定されている。かかる税制優遇は、中国による一
連の対アフリカ支援策の一つとして考えられる。
・ 外貨管理
法令名:
クロスボーダー貿易人民幣決済試行拡大に関する関係問題に係る通知
公布部門:
中国人民銀行
文書番号:
公布日:
2010 年 6 月 17 日
施行日:
概要等:
2009 年 7 月以降、
「クロスボーダー貿易人民幣決済試行管理弁法」【4】に基づ
銀発[2010]186 号
―
き、上海市及び広東省 4 都市のパイロット企業と、香港、マカオ、アセアンの
企業との間のクロスボーダー貿易取引について人民元決済が試験的に認められ
ていた。本通知により、中国国内試行都市が拡大され、貿易相手企業所在国の
制限が撤廃された。また、物品貿易のみならず、サービス貿易についても人民
元決済が可能であることが明文で規定された。こうした人民元国際化を急ぐ当
局意向の背景の一つに、当局の今後の人民元切上げ方針が隠れているとする見
方もある。
・ 税務・会計
法令名:
一部商品の輸出税還付を取消すことに関する通知
公布部門:
財政部、国家税務総局
4
文書番号:
財税[2010]57 号
中国銀行業監督管理委員会公告[2009]第 10 号、2009 年 7 月 1 日発出。
3
JBIC 中国レポート2010年8月号
公布日:
2010 年 6 月 22 日
概要等:
一部の鋼材、一部の非鉄金属加工材、銀粉、アルコール及びコーンスターチ、
施行日:
2010 年 7 月 15 日
一部の農薬、医薬及び化学工業製品、一部のプラスチック及びその製品、ゴム
及びその製品並びにガラス及びその製品について、輸出税還付が取消された。
なお、対象商品は、当該通知添付のリストに列挙されている。
法令名:
「非居住者租税協定待遇享受管理弁法(試行)
」関係問題に関する補充通知
公布部門:
国家税務総局
文書番号:
国税函[2010]280 号
公布日:
2010 年 6 月 21 日
施行日:
―
概要等:
非居住者による租税条約に基づく特典の享受につき事前の届出又は審査認可を
要求する「非居住者の租税協定待遇享受に係る管理弁法(試行)」の規定を補充
する通知。届出/認可申請書書式の一部変更も。
・ その他
法令名:
海峡両岸経済協力枠組合意
公布部門:
海峡両岸関係協会 外
文書番号:
―
公布日:
2010 年 6 月 29 日
施行日:
―
概要等:
中国と台湾との間の経済協力枠組合意。i)関税率の引き下げ乃至ゼロ税率の適
用、ii)知的財産権保護、金融、貿易促進、電子商取引に係る協力、iii) アーリ
ーハーベスト等について規定する。
→ 新公布法令解説1
法令名:
海峡両岸知的財産権保護協力合意
公布部門:
海峡両岸関係協会 外
文書番号:
―
公布日:
2010 年 6 月 29 日
施行日:
―
概要等:
中国と台湾との間の知的財産権保護に係る協力事項に関する合意。知的財産権
保護に係る協力目標、出願と優先権、認証サービス、協力事務処理、業務交流、
紛争の解決等に関し規定する。
法令名:
ネットワーク商品取引及び関係サービス行為管理暫定施行弁法
公布部門:
国家工商行政管理総局
文書番号:
工商行政管理総局令 49 号
公布日:
2010 年 5 月 31 日
施行日:
2010 年 7 月 1 日
概要等:
電子商取引への従事に関する管理規定。
法令名:
特殊作業人員安全技術養成考査管理規定
公布部門:
国家安全生産監督管理総局
文書番号:
安全生産監督管理総局令 30 号
公布日:
2010 年 5 月 24 日
施行日:
2010 年 7 月 1 日
概要等:
事故が発生し易く、取扱者本人や他者の安全や健康、設備や施設の安全に重大
な危害を及ぼす可能性のある作業を「特殊作業」と定め、特殊作業従事者は専
門の研修を受け試験に合格すること、作業従事には当該資格が必要であること
等を定める。
「特殊作業」の内容は、規程添付の目録により特定される。
4
JBIC 中国レポート2010年8月号
新公布法令解説1
海峡両岸経済協力枠組合意
「海峡両岸経済協力枠組合意」(「ECFA」)は、中国と台湾との間で締結された、自由
貿易協定である。ECFA により、貨物貿易に対する関税率の引き下げ乃至ゼロ税率の適
用、サービス分野の開放、投資、経済協力((1)知的財産権の保護及びその協力、(2)金融
協力、(3)貿易の促進及び貿易の利便化、(4)税関協力、(5)電子商取引協力、(6)産業協力、
(7)中小企業協力、(8)経済貿易社団の事務取扱機構の相互設置)、アーリーハーベスト、
等について、中台間で、合意がなされた。
中台間で対象物品の製造・販売をする日系企業にとっては、関税分、価格競争力で優
位性が生じる。しかしながら、今後の協議によって将来的に中国側が関税の引き下げ乃
至ゼロ税率の適用の対象とする物品が拡大され、中国市場で日本製品と競合関係にある
高度技術を要する台湾製品にも対象が拡大するようであれば、当該中国市場向け日本製
品の価格競争力に影響を及ぼしかねない。場合によっては、長期的な生産地戦略の再検
討を求められるケースも発生しうると考えられる。
・ 本合意の位置づけと概要
「海峡両岸経済協力枠組合意」
(「ECFA」)は、中国と台湾との間の自由貿易協定である。
ECFA は、中国側窓口機関である海峡両岸関係協会と、台湾側の窓口機関である海峡交流
基金会による協議を経て、2010 年 6 月 29 日、重慶にて締結された。中国側、台湾側それ
ぞれの承認手続きを経て半年以内のできるだけ早い時期に発効する見通し【5】。
ECFA は、中台間における経済、貿易及び投資協力の強化増進、貨物貿易・サービス貿
易の更なる自由化促進、公平・透明かつ便利な投資及びその保障メカニズムの段階的確立、
経済協力分野の拡大と協力メカニズムの確立を目的として、締結されたものであり(1 条)、
中台の経済交流及び協力を強化するために、
(1) 双方の間における実質上のすべての貨物貿易に係る関税及び非関税障害を段階的に
減少させ、又は除去する。
(2) 双方の間における、相当な範囲の分野を対象とするサービス貿易の制限的措置を段階
的に減少させ、又は除去する。
(3) 投資保護を提供し、双方向投資を促進する。
(4) 貿易投資の便利化並びに産業交流及び協力を促進する。
5
2010 年 8 月 18 日、台湾立法院は ECFA に関する法案を可決(各種報道)。
5
JBIC 中国レポート2010年8月号
といった措置を講じることが規定されている(2 条)。
具体的には、貨物貿易に対する関税率の引き下げ乃至ゼロ税率の適用、サービス分野の
開放、投資、経済協力((1)知的財産権の保護及び協力、(2)金融協力、(3)貿易の促進及び貿
易の利便化、(4)税関協力、(5)電子商取引協力、(6)産業協力、(7)中小企業協力、(8)経済貿
易社団の事務取扱機構の相互設置)、アーリーハーベスト(関税の先行引下げ)、等につい
て合意がなされた。
アーリーハーベスト計画は、2011 年 1 月 1 日から開始されるとの報道もなされている。
物品貿易については、中国側は、農産品、化工製品、機械製品、電子製品等 10 類 539 項目
の、原産地を台湾とする物品に対し、関税引き下げを実施し、台湾側は、石化製品、機械
製品、紡績製品等 4 類 267 項目の、原産地を中国側とする物品に対し、関税引き下げを実
施する。中台共に、アーリーハーベスト実施後 2 年間で、対象製品について、段階的に、
ゼロ関税を実施する。
サービス貿易については、中国大陸側は、コンピュータ及び関係サービス、研究開発、
会議、専業設計、病院、銀行、証券、保険等 11 のサービス業の解放を拡大し、台湾側は、
研究発展、会議、展覧、特製品設計、銀行等 9 のサービス業を更に解放することが合意さ
れた。
今後の ECFA 関連事項の処理、合意履行の監督は、中台両者により設立された「両岸経
済協力委員会」によりなされる(11 条)。
また、ECFA 合意文書には、
「貨物貿易のアーリーハーベストに係る製品リスト及び税引き下げ手配」(付属書1)、
「貨物貿易のアーリーハーベストに係る製品に適用する臨時原産地規則」(付属書2)、
「貨物貿易のアーリーハーベスト製品に適用するバイラテラル・セーフガード」
(付属書3)、
「サービス貿易のアーリーハーベストに係る分野及び開放措置」(付属書4)、
「サービス貿易のアーリーハーベストに係る分野及び開放措置に適用するサービス提供者
の定義」(付属書5)
が付されている。国務院台湾事務弁公室ウェブサイト【6】よりダウンロードが可能。
6
国務院台湾事務弁公室:
http://www.gwytb.gov.cn/
6
JBIC 中国レポート2010年8月号
中国側の貨物貿易のアーリーハーベストに係る対象物品リスト
(代表的な物品を付属書1より抜粋)
2009 年
HS コード
2009 年
物品名称
輸入税率(%)
1
03019999
その他活魚
10.5
22
27101911
航空燃料
81
39053000
127
40119200
185
55121100
漂白又は未漂白に係る純ポリエステル布
16.9
243
61124100
合成繊維製女性用ニットスイムウエア
17.5
268
70031900
鋳造、圧出に係るその他非網目ガラス板、ガラス片
17.5
358
84191900
その他非電熱に係る瞬間、貯水式湯沸かし器
35
538
96062100
プラスチック製ボタン、紡績材料を使用しない袋物
21
9
初級形のポリビニール・アルコール(加水分解してい
ない酢酸エステルを含むか否かに拘らない)
農業又は林業車輌及び機器用のヘンリー・ボーン形又
はこれに類似する凹凸を有さない新空気ゴムタイヤ
14
25
中国側アーリーハーベスト実施計画
2009 年輸入税率(X%)
協議税率
実施 1 年目
実施 2 年目
実施 3 年目
1
0<X≦5
0
-
-
2
5<X≦15
5
0
-
3
X>15
10
5
0
ECFA によって、中台間で対象物品の製造・販売をする日系企業にとっては、関税分だ
け価格競争力で優位性が生じる。しかしながら、今後の協議によって将来的に中国側が関
税の引き下げ乃至ゼロ税率の適用の対象とする物品が拡大され、中国市場で日本製品と競
合関係にある高度技術を要する台湾製品にも対象が拡大するようであれば、当該中国市場
向け日本製品の価格競争力に影響を及ぼしかねない。場合によっては、長期的な生産地戦
略の再検討を求められるケースも発生しうると考えられる。
7
JBIC 中国レポート2010年8月号
新公布法令解説2
集団契約制度を深く推進しレインボープラン(彩紅計画)を実施することに関
する通知
本通知は、労働集団協議、集団契約の普及と実効性向上のための取組みである「レイ
ンボープラン」の更なる推進に関し、数値目標を掲げて規定するとともに、目標を達成
成するための具体的措置を規定する。
今年に入り、中国では外資企業における労働争議が頻発している。それらは、過去の
労働争議と比較し、長期化する傾向にあり、完全解決に至らず、そして“社会の安定”
のために政府が力で介入することもない、といった点が異なる。
本通知は、こうした特徴を有する 2010 年型労働争議を解決するための方向性として、
労働組合の設置、並びに集団協議及び集団契約【7】制度の普及、及びその実効性向上を
図ることを定める。中央政府として、これらの方法を通じて安定した労使関係の構築を
目指す意図が読み取れる。
1.
法令の概要
本通知は、労働集団協議、集団契約の普及と実効性向上のための取組みである「レイン
ボープラン」の更なる推進(中国語:彩紅計画)を通知する政策的文書である。
レインボープランとは、2009 年、国家レベル、地方レベルの「労働関係協調三者」
(人力
資源及び社会保障部、全国総労働組合、中国企業聨合会/中国企業家協会)が全国で実施
した集団契約制度に係る計画である。安定的かつ調和のとれた労使関係を構築し、企業に
おける賃金集団協議制度の確立を推進し、賃金調整を協議によって行うことを目的として
いる【8】。
本通知は、レインボープランの更なる推進のミッションとして、既に労働組合を設立し
ている企業については、2010 年の集団契約制度のカバー率を 60%以上、2011 年の集団契
約制度のカバー率を 80%以上とする、との数値目標を規定している点に特徴がある。一方、
労働組合を設立していない小企業については、地域性及び業界性の集団契約の締結を通じ
7
集団契約は、企業従業員全体と企業との間で、労働報酬、労働時間、休息・休暇、労働安全衛生及び保
険福利等の事項について取り決める契約。日本の労働協約に相当。
8 「レインボー」プランは労働者に如何なる恩恵をもたらすか―解読「集団契約制度を深く推進しレイン
ボープラン(彩紅計画)を実施することに関する通知」
2010 年 6 月 9 日科学技術日報参照(中文のみ)。
http://www.stdaily.com/kjrb/content/2010-06/09/content_196456.htm
8
JBIC 中国レポート2010年8月号
てカバー率を高めるべく努めるよう規定するが、具体的な数値目標は掲げていない。以上
の目標を達成するために、本通知では、以下の措置を講ずることを規定する。
① 集団契約に係る法令の宣伝の更なる強化
② 集団協議の指向性及び実効性の更なる強化
企業と従業員が賃金水準及び労働ノルマ等の労働報酬に係る事項について集団協議
を展開し、専門項目の集団契約を締結することを促進する。
③ 集団協議及び集団契約制度のカバー率の更なる拡大
④ 集団協議の「申込行動」の更なる広範な展開
特に、労働組合による集団協議申込を支持し、企業内労働組合組織による協議申込
が困難な場合には、上級の労働組合が企業内労働組合に代わって協議申込みをする
等、規定されている。
⑤ 集団協議手続の更なる規範化
⑥ 集団協議の主体の能力の構築強化
特に従業員代表に対する集団協議に関する訓練を強化し、協議代表の集団協議能力
及び水準をさらに向上させる旨、規定されている。
⑦ 集団協議事務に対する指導及びサービスの更なる強化
⑧ 集団契約の審査認可管理及び履行監督の更なる強化
⑨ 集団契約に係る立法事務の更なる強化
2.
検
討
―
2010 年型労働争議
(1)集団協議、集団契約の普及と「調和社会」
集団契約は、企業従業員全体と企業との間で、労働報酬、労働時間、休息・休暇、労働
安全衛生及び保険福利等の事項について取り決める契約であり、日本の労働協約に相当す
る。集団契約の締結は、労働組合が従業員側を代表して行い、労働組合を設置していない
企業については、上級の労働組合の指導により労働者の推薦する代表が従業員側を代表し
て企業との間で行う(「労働契約法」
【9】51 条)。
集団契約の締結は任意であって、法令上強制されていないということもあり、その普及
は進んでいない。本通知は、そうした集団契約制度の確立を推進すべく、発出されたもの
である。
政府は、集団契約制度について、従業員の適法な権利保護に資するとともに、労使関係
の協調を強化し、企業管理を完全化させ、各企業における労働組合の設立に積極的に作用
2007 年 6 月 29 日第 10 期全国人民代表大会常務委員会第 28 回会議により採択、同日公布、2008 年 1
月 1 日施行。
9
9
JBIC 中国レポート2010年8月号
すると捉えている。しかしながら、実際にはその普及の程度には各地でばらつきがあり、
集団協議のメカニズムは不完全で、実効力のあるものとは必ずしもいえないと考えられる。
政府としては、現実の集団協議、集団契約制度に係るこうした問題点と、今年に入り中国
で労働争議が頻発している事実とを踏まえ、集団協議、集団契約制度を確立し、普及させ
ることにより、これを労使関係協調のメカニズムとして機能させ、安定した労使関係の構
築を目指している【10】。
(2)
政府のスト“静観”と企業内労働組合を通じたコントロールへの転換
今年に入ってから外資企業で頻発している労働争議は、長期化する傾向にあること、完
全解決に至らないこと、そして“社会の安定”のために政府が力で介入【11】することもな
いこと、といった点において、過去のそれとは異なる側面を持つものであることを指摘す
ることができる。
労働争議の長期化による生産ラインの停止は企業経営に大きなインパクトを与え、さら
に大幅な賃上げ要求を受け入れざるを得ない結果となった場合は、そのまま企業にコスト
負担となってのしかかる。しかし「2010 年型労働争議」の場面では、政府は、過去そうし
てきたようにストやデモといった争議行動を力で制圧する、という行動に出ず、争議行動
が工場区外に発展しない限り、静観する姿勢を貫く。
政府が静観の姿勢をとる理由の一つとして、労働争議に対するコントロールを、これま
での力まかせのやり方から、労働組合を通じたコミュニケーション強化による労働争議コ
ントロールへと転換しようとしていることが挙げられる。労働組合を通じた労働争議のコ
ントロールとは、企業内における労働組合の設置を図り、企業内労働組合を通じて上級労
働組合及び中国共産党が情報収集を行い、収集された情報に基づいて上級労働組合が労働
争議手続きに積極的に関与するものとの考えられる。
半官半民の組織である「中華全国総労働組合」は、地方に、市レベル、区レベルでも組
織を有し、企業レベルにまでそのネットワークを有している。各企業内部において労働組
合を組織化することにより、企業内労働組合内部から上級労働組合に正確な情報が寄せら
れる仕組みを構築し、上級労働組合は企業内労働組合から寄せられる正確な情報に基づき、
争議権行使の是非を各論レベルで検討し判断することを想定していると考えられる。
今後は、法の容認する場面で、法の容認する期間、法の容認する方法でのみ争議活動が
認められる方向で各種法整備が進むことが予想される。この場合、労働争議の手続に上級
の労働組合が積極的に関与してくることとなろう。
10
11
前傾 2010 年 6 月 9 日科学技術日報参照。
1980 年代・1990 年代の労働争議では、政府が労働争議へ介入するケースが確認される。
10
JBIC 中国レポート2010年8月号
もっとも、企業内における労働組合の設置はさほど進んでおらず、労働組合が設置され
ていたとしても組合員代表大会は行っていない等、いわゆる労働組合としては十分に機能
していない場合も多いと考えられる。今後は、労働組合の活動強化について当局からの指
導がなされる機会が増加するとともに、労働組合を設置していない企業に対しては、労働
組合設置のプレッシャーが増加することも予想される。
この際、企業側の利益代表を労働組合幹部に就任させてはならないこととする、といっ
た措置により、御用組合は組織の変更を余儀なくされよう。
3.
Q
法令の背景についての補足
中国における争議権の法的根拠は?
労働者の争議権は、日本においては、
「憲法」28 条により団体行動権の一内容として保障
されている権利であるが、中国において、法令上、争議権を明文で保障する規定はない。
日本の「憲法」が保障する労働三権とは、即ち、労働組合の結成・運営することを保障
することを中心とする団結権【12】、労働者が使用者と団体交渉を行うことを保障する団体
交渉権【13】、争議権と組合活動権から構成される団体行動権【14】であるところ、中国にお
いては、団体行動権のうち、争議権が保障されていない状況にある。
また、中国において争議権は、法令上明文で保障されていないことから、労働争議が何
らかの犯罪を構成する場合であっても、労働争議であることをもって刑事免責を受けるも
のではなく、同時に民事責任を免れるものでもない。
Q
今後の中国政府の対応見通しについて
-外資企業で勃発する労働争議に対して政府はこのまま静観の姿勢をとりつづけるのか?
今後も労働争議は拡大するのか?企業側は大幅な賃上げを容認せざるをえないのか?-
労働争議は、80 年代、90 年代にも中資系・外資系問わず発生していた。企業の経営不振
に起因して労働者の待遇が悪化すると労働争議が勃発しており、時として政府が“社会の
安定”のために力で介入し制御した。しかしながら、今年に入り頻発している外資系企業
の労働争議に対し、政府は過去の対応と異なり、静観する姿勢を貫く。
12
13
14
菅野和夫『労働法』第 9 版、弘文堂、22 頁。
前掲書 24 頁。
前掲書 26 頁。
11
JBIC 中国レポート2010年8月号
これまでの労働争議への中国政府への対応等を勘案すると、中国政府として、労働争議
に労働者の社会に対する不満の“ガス抜き”機能を期待していたとする意見がある。ガス
抜きを怠ると、労働者の不満の矛先は国家に向かうため、政府は外資企業において発生す
る争議行動に対し静観の姿勢をとっているという指摘である。
その真意は別にして、2011 年以降は、こうした政府の労働争議への対応に変化が発生す
ると予想される。具体的には、企業内における労働組合の設置を徹底し、企業内労働組合
を通じた上級労働組合との密接なコミュニケーションにより、上級労働組合及び中国共産
党が情報収集を実施し、収集した情報から個別の労働争議の是非を判断し、法令が認める
範囲でのみ労働争議を認めることになると考えられる。
こうした変化の背景には、早ければ 2010 年内にも公布される「賃金条例」の施行と 2011
年 3 月に発表される第 12 次 5 ヵ年計画に盛り込まれる“所得倍増計画”が関係していると
考えられる。
「賃金条例」が施行されれば、最低賃金を遵守しない場合の厳罰化や、手当・補助、残
業手当の計算基数、“同一労働同一報酬”の原則適用等が予想される。「賃金条例」の施行
以降は、労働者からの要求が厳しくなることが見込まれ、その結果としての賃金上昇が予
想される。
2011 年 3 月の第 12 次 5 ヵ年計画には、
“所得倍増計画”が盛り込まれる見込である。2005
年以降の人民元切り上げによる影響があるにせよ、中国の GDP は 2000 年当時と比べ 4 倍
に拡大している一方、最低賃金は主要都市(北京・上海・天津・広州・深圳)において 2
倍~2.5 倍程度(最低賃金の推移)の伸びにとどまっており、社会の富が労働者に行き渡っ
ていない、という不満が労働者側にある。
以上の政策の動向に鑑みれば、①今後の労働争議は、労働組合を通じたコントロールの
下、より組織化され抑制されていくと予想されるものの、②賃金は上昇傾向にあると考え
られる。この点、外資系企業、中資系企業に拘らず、労働者の賃金は上昇すると考えざる
をえない状況にある。
また、こうした方向性は、技術的な競争力が十分でない中資系企業に対しても与える影
響が大きいと言える。長期的に、賃金上昇には耐えられない中資系企業には、一連の“走
出去(対外投資)”政策に則り、アフリカ、南アジアの国々へ進出していく企業が増加する
ことが予想される。
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JBIC 中国レポート2010年8月号
富士通総研経済研究所 主席研究員
柯
隆
持続可能な経済成長のカギを握る教育改革のゆくえ
これまでの 30 年間、中国で起きた変革と経済の発展は世界にさまざまな示唆を示すもの
である。おそらく当事者としての中国人の多くも自らの経済がここまで成長するとは当初
夢にも思わなかったかもしれない。何よりも、
「改革・開放」とよばれる鄧小平の実験は徐々
に経済自由化を進めるやり方だった。
いかなる改革についてもいえることだが、重要なのは突破口である。現在となって、こ
れまでの 30 年間を振り返れば、種々の反省点があるが、30 年前の時点に立って、明確な制
度設計もできないまま、市場を開放し、人々の経済活動に徐々に自由を与えるやり方は、
大きな政治的リスクが伴うものだった。30 年間に亘る「改革・開放」政策を総括するには、
そのスタート時点の突破口を明らかにしなければならない。
ここで、「改革・開放」の着手について重要な突破口の一つが人材育成の教育改革である
ことを指摘しておきたい。すなわち、鄧小平の実験はいきなり経済のコアの部分を改革す
るのではなく、教育制度を改革することで社会の変革を図った。拙稿は、「改革・開放」の
スタートだった教育改革を振り返り、その後の経済発展に与えた影響を明らかにすること
にする。
1.文革で教育システムは荒廃
毛沢東の時代において中国社会がもっともダメージを受けたのは 10 年間も続いた文化大
革命(1966-1976 年)だった。文化大革命はその名の通り中国人が自らの文化を根こそぎ
に切ってしまう暴挙だった。そもそも文化大革命は共産党トップの人事をめぐる毛沢東と
劉少奇との権力争いから始まったものだった。問題はこうした権力闘争がたちまち全国民
を巻き込んだことにある。結果的に、自らの古典文化が否定され、人材を育成する教育シ
ステムも完全に壊されてしまった。
教育は百年の計である。しかし、文化大革命に突入してから、学校の教員の多くがブル
ジョアとして批判され、教鞭をとるどころか、街中を連れまわされ、打倒された。同時に、
大学の入試も廃止され、代わりに導入されたのは共産党幹部による推薦制である。
大学の進学について若者が推薦される基準はその学力ではなく、その家族の出身および
共産党への忠誠心の有無だった。結果的に、学力のほとんどない農民や労働者の子供の多
くが大学に進学した。大学は象牙の塔でなくなった。有能で学力のある若者はその出身が
13
JBIC 中国レポート2010年8月号
「悪い」ため、大学への進学ができず、希望を完全に失ってしまった。
1976 年、毛沢東の死去をきっかけに文化大革命は終焉を迎えた。しかし、中国経済も破
たん寸前にまで陥った。それは長年の権力闘争の結果であり、同時に、経済を支える人材
育成の教育システムが壊されたこともその一因である。したがって、鄧小平が復権した後、
まず着手したのは大学入試の復活を軸とする教育改革だった。
2.若者を勉強机に戻させる教育改革
毛沢東の時代、経済が大きく停滞したため、都市部での雇用機会はほとんどなくなった。
やむを得ず、毛沢東は若者を農村に「下放」した。「下放」とは若者を農村に移住させるこ
とであり、建前では、農民に農作業などを教わることで再教育を受けるのが目的だった。
しかし、都市部の若者が農村に移住しても、農作業の経験はほとんどなく、農民にとって
も労働力にならず、却って迷惑だったといわれている。
図1
大学入学者数と卒業者数の推移(1978-2009 年)
700
600
500
大学入学者数
400
300
200
大学卒業者数
100
万人
1978
1980
1985
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
0
資料:中国国家統計局
無論、農村に「下放」された若者は安心して農村に定住するはずもなく、70 年代に入っ
てから若者はあの手この手を使って都市部に戻ろうとした。また、「下放」された若者を都
市部に戻さずそのままにしていては、中国社会が再び大きな混乱に陥る可能性が出てきた。
14
JBIC 中国レポート2010年8月号
中国の近代史にとり大きな転換点となったのは毛沢東の死去であり、それをきっかけに打
倒されていた鄧小平は奇跡的に復権を果たした。そこで、鄧小平が教育システムの改革に
着手し、それは「改革・開放」の本当の始まりだった。
繰り返しになるが、鄧小平の教育改革はそれまでの推薦制を廃止し、大学の進学は若者
の出身ではなく、大学入試の点数が示す学力を人材選抜基準にした。教育改革によって確
かに中国社会は大きく変貌した。若者にとって大学進学という明確な目標ができたからだ。
ここで、鄧小平が進めた「改革・開放」の特徴について指摘しておきたい。
「改革・開放」
に関する鄧小平の基本理念は一部の者が先に豊かになってもいいという「先富論」だった。
同じように、教育改革の軸足もエリート教育の強化にある。したがって、鄧小平が推し進
めた教育改革は基礎教育の強化ではなく、大学教育を強化することだった。具体的には、
国中の教育資源のほとんどを大学に集約させ、世界一流の人材を育成することに改革の重
点が置かれた。
図 1 に示したのは大学進学者と卒業者の推移である。
「改革・開放」政策以降、地方政府
の投資により新しい大学が多数設立され(図 2 参照)、大学の進学率も大きく上昇した。改
革当初、大学の進学率は高校卒業生の 4%程度だったが、現在は 15%にまで上昇している。
それに対して、小中学校への資源配分は相対的に少なく、また、民間資本による民営学
校の設立も自由化されていない。この点は鄧小平の教育改革の限界性といえる。すなわち、
教育改革により一握りのエリートが誕生するようになったが、基礎教育が十分に強化され
なかったため、教育のすそ野が広がらなかった。
図2
「改革・開放」以降の大学数の推移(1978-09 年)
2,500
2,000
1,500
1,000
500
校
1978
1980
1985
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
0
資料:中国国家統計局
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JBIC 中国レポート2010年8月号
3.満員電車に乗り込むような教育競争の激化
80 年代初期の中国では、高校を卒業した大学進学希望者のうち、実際に大学に進学でき
るのは全体の 4%程度だった。その後、地方政府を中心に新規の大学の設立が増えたが、名
門または一流の大学への進学希望者が多く、進学競争は激化する一方である。
そもそも、中国では、大学は重点大学と非重点大学に分けられている。その名前のとお
り、重点大学の場合、国からの教育補助金が多く支給され、教授陣の質も高く、重点大学
に進学した学生にとっては将来がほぼ保障されたようなものである。
都市部のミドルクラス以上
の家庭にとり、どんな代償を払
っても子供を重点大学に進学
させたい。そのために、家庭教
師を雇ったり、子供が通う中学
校・高校の先生に特別に指導し
てもらうために、多額な謝礼を
払ったりするなどあらゆる手
を尽くす保護者が少なくない。
「改革・開放」が始まった当初、
教育改革は経済改革を推し進
める突破口だったが、それから
多くの中国の若者にとって、重点大学への入学は狭き門。
30 年が経過してから、教育の
(写真:上海市 復旦大学、写真と本文とは関係ありません)
現場をみると、その実態は世相を表す縮図のようになっている。日本でもよく指摘されて
いることだが、社会の所得格差は結局教育格差をもたらし、最終的にそれによって格差が
固定化してしまう。
現在の中国においても、教育格差が年を追うごとに拡大している。所得格差はその原因
であると同時に、さらなる所得格差の拡大をもたらす原因でもある。現行の教育システム
について本源的な問題はどこにあるのだろうか。結論的にいえば、それは平準化した基礎
教育が担保されていないからである。温家宝首相は毎年の全人代の記者会見で所得格差が
拡大していることを率直に認め、それを縮小するように取り組む決心を示している。しか
し、社会階層間における教育資源配分の平準化を行わなければ、社会全体の所得の平準化
は実現されない。
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JBIC 中国レポート2010年8月号
4.サステナブルな経済発展と新たな教育システムの構築
図 3 は国家財政支出と教育関連の財政支出の推移を示している。90 年代以降、教育関連
の財政補助金の財政支出全体との割合は一貫して 15~20%で推移している。国の教育事業
費は決して低くないが、前述したように、民間資本の教育事業への出資は制度上自由化さ
れておらず、許認可制になっている。教育事業の資金調達をいかに実現するかは課題の一
つとしてあげておきたい。
基礎教育の格差を縮小することは依然として重要な課題である。都市部では、小中学校
の設立と整備が進んでいるが、農村部では、校舎などが老朽化している小学校が少なくな
く、山間部では小学校のない地域も多い。すそ野の広い教育システムを構築するには、基
礎教育を大きくボトムアップする必要がある。
さらに、大学入試の改革も必要である。30 年も続いてきた大学入試制度では、社会構造
の変化によりさまざまな問題が浮上している。若者にとり、大学進学の入試は若者の学力
を客観的に評価し、優秀な人材を適切に選抜するものでなければならない。しかし、現状
において大学入試は難問怪問が多く、若者を選抜するために役に立っているとは必ずしも
いえない。
図3
国家財政支出と教育関連の財政支出の推移(1992-2008 年)
25
70,000
教育関連の財政支出(A)
60,000
国家財政支出(B)
20
A/B(右目盛り)
50,000
15
40,000
30,000
10
20,000
5
10,000
資料:中国国家統計局
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2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
億元
0
1992
0
%
JBIC 中国レポート2010年8月号
現行の教育システムの問題を総括すれば、優秀な人材を育成する制度から大きく逸脱し
ているように思われる。近年、大学入試のストレスに耐えきれず自殺してしまう若者が増
えている。また、せっかく大学に進学した学生でも卒業したあと、就職できない学生が増
えている。言い換えれば、人材育成に十分に寄与しない教育システムの欠陥をいかにして
改革するかが問われている。
本来ならば、教育システムは大学院、大学、専門学校、高校と多様化した人材を育成す
る体制でなければならない。中国社会の現状を考察すれば、世界一流の人材が存在する一
方、読み書きができない非識字者が 1 億人いるといわれている。企業経営の現場をみると、
中国にとってもっとも必要とされている人材は技術者と技術労働者であるが、学校教育の
中でこうした人材の育成が必ずしも十分ではない。要するに、鄧小平が推し進めたのはエ
リート教育だが、現在の中国社会にとり必要不可欠なのは技術者とある程度の専門知識を
有する技術労働者である。
現在、大学生のほとんどは一人っ子政策の産物である。家ではとことんまで大事にされ
てきた世代だが、社会に入ると、適応性が弱いのはその弱点である。教育システムが、こ
れらの「小皇帝」とよばれる一人っ子を一人前の人材に育てていくのは決して簡単なこと
ではない。
何よりも、人材に対する需要の多様化に応える形で、教育システムは多様な人材を育成
するために、より厚みのある仕組を構築する必要がある。それを実現するには、民間資本
の参入を自由化し、教育事業に関する規制緩和を推し進める必要がある。
筆者紹介:
1963 年中国南京市生まれ。1994 年名古屋大学大学院経済学修士課程修了。1998 年よ
り、富士通総研経済研究所 主任研究員を経て現職。専門は開発金融、中国経済論。
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JBIC 中国レポート2010年8月号
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