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矢田丘陵の自然観察5 鳥類

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矢田丘陵の自然観察5 鳥類
矢田丘陵の自然観察5 鳥類
自然観察指導資料
ニュウナイスズメ(スズメ科)
大和郡山市千日町
c Copyright by Ryuichi Inoue. No reproduction or republication without written permission
-1-
矢田丘陵の自然観察5 鳥類
PAGE No.
CONTENTS
01
表紙
ニュウナイスズメ
02
はじめに
矢田丘陵の自然を鳥から見直す
03
鳥とはどんな生き物か
「鳥」とはどんな生き物?
・鳥類の体のしくみ・つくりで注目すべき点は?
(1)爬虫類と哺乳類の両方の動物群の特徴を持っている鳥類
(2)飛ぶために適応した体のつくりを持つ鳥類
・鳥類のくらしで注目すべき点は?
04
鳥の体のつくりを見てみ
ましょう
1.鳥の体の部分の呼び名を覚えましょう。
2.鳥の羽の名前を覚えましょう。
3.鳥の大きさに強くなろう。
・どこを測っているか。
・鳥の大きさの基準にしたい鳥を覚えよう。
05
鳥はどんなところを探す
と見つかるか
・1つめのコツは、鳥は耳で探すということ
・2つめのコツは、鳥のいそうな所を予想して見るということ
・こんな所を探してみましょう。
06
鳥を調べてみよう。
・観察コースを決めて定期的に調べる方法
●表1
07
矢田丘陵周辺2.8km観察コースの調査結果
矢田丘陵にはどんな鳥が
・奈良県で確認された鳥は何種?
いるか?
・矢田丘陵で確認された鳥は何種?
●表2
矢田丘陵で確認された鳥たちの記録
・矢田丘陵で1年を通してふつうに見られる鳥(留鳥)
・矢田丘陵で夏によく見られる鳥(夏鳥)
・矢田丘陵で冬によく見られる鳥(冬鳥)
・矢田丘陵に見られた猛禽類
・矢田丘陵に見られた希少な鳥
08
あとがき
鳥と仲良く、生活も豊かに
-2-
矢田丘陵の自然観察5 鳥類
「小鳥」って、とてもかわいいですね。小鳥のふっくらとした羽毛、まん丸な目とつん
としたくちばしからくる愛くるしい表情、そしてきれいな鳴き声、いろんな人に愛されて
きたことでしょう。野山に出かけたとき、または町の中のちょっとした庭でも、鳥の鳴き
声が聞こえてくるとか、鳥の姿があるだけで和むものです。
「鳥はどんな生き物?」というと、空を飛ぶことをまず思い出すでしょう。沖縄のヤン
バルクイナを除けば、日本に生息する鳥のほとんどが飛べます。それだけに飛翔できる=
移動能力はすばらしいものをもっています。移動能力は環境適応能力とも言えます。他の
動物に比べて、自分たちにあった自然環境の選択ができやすい動物とも言えましょう。
そんな鳥も人々のくらしといろんな面で関わってきました。狩猟の対象にもなっていて、
猟銃やかすみ網、罠で自由に捕獲されていたときもあったのです。そして、それは食料と
して利用されたり、ウグイス、ホオジロなどの鳴き声や姿がきれいなものは観賞用に飼育
されたり、その姿がきれいなヤマドリやキジは、剥製にして飾りものにされていました。
このような利用が時にお金儲けの対象になり乱獲されてその個体数が大幅に減少した歴史
を持っています。「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」が制定され、法律によって守られること
でその扱いは大きく変わり、今では『愛鳥』が国民に広く行き渡るようになっています。
最近、その神話が崩されようとする大事件が起こりました。「鳥インフルエンザ」です。
多くのニワトリが感染防止のために生きたまま埋められてしまったシーンを思い出しませ
んか。ニワトリへの感染原因が渡り鳥の水鳥である可能性が高いとか、実際にカラスに感
染していたとかニュースで取り上げられて、野鳥への影響が心配されました。
鳥も私たちと同じ、地球の上で生きている仲間です。世界で9900種も記載され、日
本では542種が確認されています。脊椎動物ではその種数が魚類に次いで豊かな動物群
(綱)なのです。これまでに奈良で確認された鳥類は、236種にもなっています。
自然保護の重点として 環境省も『生物の多様性の維持』をあげていますが、確認される
鳥の種類が多い、繁殖する鳥の種類が多い、そして生態的に高次消費者であるあの勇まし
いワシタカが多いということはそのえさとなる植物、昆虫、小動物などの他の生き物が多
く共存している証拠であり、豊かな自然を表しているのです。
そんな鳥から私たちのすむ大和郡山市の自然が豊かであるかを見てみようと、
「矢田丘陵
の自然5
鳥類」の取り組みが始まりました。2003年から2004年の間に、矢田丘
陵周辺でどんな鳥類がいつどれだけ見られたかを調べました。思ったより大変でしたが、
自由に飛べる鳥だからこそ見えることがあることに気づき、鳥は見応えのある動物だと言
うことを改めて感じることができました。みなさんが鳥を調べようと思ったとき、鳥を見
る上で少しでも役立つことがあれば幸いです。
自然教育研究事業調査研究員
井
-3-
上
龍
一
矢田丘陵の自然観察5 鳥類
「鳥」とはどんな生き物?
「鳥」の仲間は、分類学の上では「鳥類」と言っています。背骨を持つセキツイ動物門・
鳥類綱に位置する動物群です。鳥類は、水をためることができる羊膜という不透水膜によ
り保水力のある卵を産むことで陸上での繁殖が可能になり、体表の乾燥を防ぐために鱗で
覆われた体を持って陸上生活に適応した爬虫類から進化しました。
鳥の祖先は、今から1億4700万年前(中生代ジュラ紀後期)頃の化石、「始祖鳥」だ
とされていましたが、始祖鳥はハトくらいの大きさの動物で、羽毛を持った恒温動物とさ
れていて鳥とよく似ていますが、歯があり、翼には指と爪があり、今の鳥とは違います。
しかも飛ぶために使う胸の筋肉がつく胸骨の発達が悪いので飛べたかどうか疑わしいよう
です。最近発見されたよく似た時代の全く飛べない恐竜の化石でも羽毛があるものもいて、
羽毛のある恒温動物=鳥という考えは通用しなくなりました。始祖鳥は、最近のセキツイ
動物の分類では恐竜類とされ、今いる鳥の直系ではないとされています。今の鳥たちとほ
ぼ同じ体のつくりを持つ鳥は、化石によるとそれより3000万年後、今から約1億年前
(中生代白亜紀初期)に現れたようです。
恒温性を得て、さらに断熱効果の高い羽毛に覆われることでその体温をしっかりと守り、
外気の温度にかかわらず活動することができるようになったこと、羽毛のある翼を持ち、
さらに飛ぶために使う胸の筋肉がつく胸骨を発達させて(竜骨突起がある)、飛翔すること
ができるようになったのが鳥類です。そして、鳥類は、恒温性と飛翔力を盾に、極地から
熱帯まで、海洋から乾燥地帯、低地から高山に至るまでの幅広いところの空中という空間
を含めてうまく利用して適応放散していったのです。
・鳥類の体のしくみ・つくりで注目すべき点は?
(1)爬虫類と哺乳類の両方の動物群の特徴を持っている鳥類
爬虫類と共通する体のしくみには、以下のような点があげられます。
①足が鱗で覆われている(体の羽毛は鱗と同じ物と考えられている)
。
②卵生。しかも保水性に優れている羊膜で包まれた卵を産む。これは陸上での産卵を
可能にした。
これらの特徴は、爬虫類である祖竜類から進化して受け継がれています。
哺乳類と共通する体のしくみには以下のような点があげられます。
①恒温性である(卵を温めることができる)。
②2心房2心室の効率の良い心臓を持っている。
(2)飛ぶために適応した体のつくりをもつ鳥類
鳥類は「飛ぶ」という能力を得るために体の軽量化と重心によせる体のつくりを持って
-4-
矢田丘陵の自然観察5 鳥類
います。
①軽い骨
多くの骨は中空になっていて細い柱状のつくりで補強されています。
トライ
骨付きのニワトリの肉を食べたとき、骨をたてに割って見るとどんなつく
りになっていますか。体の軽量化の秘密がかくれていますよ。
②骨の数が少ない
骨が癒合しているところが多く、骨の数が少ないです。このことは軽量化に役立
っています。
③かごのような骨格(図:緑色+黄色)
首以外の背骨はまっすぐのままで自由に動かず、肋骨
とともにかごのようになっていて内臓を守っています。
このおかげで離着陸時の衝撃に耐えられるのです。
④体がたてに短い(図:緑色)
首と尾の方向が短く、翼も足も重心によせることがで
きたので、飛ぶことも歩くこともうまくできます。
⑤胸の筋肉を支える竜骨突起がある(図:黄色)
飛ぶために動かすためにはたくさんの力がいります。そのために胸の筋肉を発達
させましたが、その筋肉がつく部位(竜骨突起)が発達しています。この部位は飛
ばない鳥には発達していません。
⑥歯がないかわりにくちばしがある
鳥は食べ物を鵜呑みして、砂嚢あるいは筋胃で砂粒を使って砕くの
です。このことであごを発達させる必要もなくなり、石灰質で重い歯
もなく、くちばしだけなので頭骨が軽くなります。そのことが結果的
に重心によせることになると思われます。
⑦足がおなかから生えているように見える
鳥は飛ぶために胸の筋肉を発達させたため、胸の筋肉が重くなってしまったので
重心が前によってしまいました。体をしっかり支えて2足で立つためには足が重心
の下に来る必要があります。そのために鳥は一度足を前に伸ばし、膝を体に沿わし
てうんと前に出して足を重心の下に持ってきているのです。飛ぶことと歩くことを
両立させるための技です。
ニワトリはあまり飛びませんが、ブロイラー1羽、約2600g当たりで、飛ぶ
ために使う胸の筋肉は、ムネ肉364gとササミ77gで合計441gにもなりま
す。ちなみにムネ肉は翼を下におろすための筋肉で、ササミが翼を上に持ち上げる
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矢田丘陵の自然観察5 鳥類
筋肉です。ともに食べるとアブラが少ないのに気づくでしょう。運動に力を入れて
いる筋肉なので無駄にアブラをためていないのです。まさしく筋繊維の固まりとい
う感じです。食べると、高タンパク低脂肪なので、あっさりしています。
⑧鳥はよく糞をする
鳥を飼っているとわかるのですが、絶えずえさを食べてすぐ
糞をします。消化器官が短いこともありますが、糞をためない
ですぐに出すことで体の軽量化に大きく役立てています。しか
し、飛ぶためにはたくさんのエネルギーがいります。そこで主
にエネルギーの吸収の良いもの(消化の良い物)を食べるよう
になりました。鳥のほとんどが動物質の物を食べているのはこ
の方がエネルギーの吸収効率がよい(消化しやすいから)です。
もちろん、植物食の鳥もいますが、その場合でも、種子や果実のようなエネルギー
吸収の高い物を食べることが多いです。
⑨鳥はおしっこをしない?
鳥は恒温動物なのに意外に水を飲みません。水をたくさん飲むと体が重くなるの
で飛ぶのに具合が悪くなるからです。だからほとんどの鳥は食べ物から水分を補給
できます。ただ、穀物を食べる鳥は穀物に水分が余り含まれていないので例外です。
飼い鳥には例外になる鳥が多いので良く水を飲むと感じてしまいますね。水をあま
りとらない鳥だからこそ、血液中にできたアンモニアなどの老廃物は私たちの出す
ような水に溶けるおしっこ(尿素)ではなく、水に溶けない尿酸として糞といっし
ょに排泄しているのです。糞の周りに白い部分がありますが、これが鳥のおしっこ
なのです。これは乾燥した陸上に進出できた爬虫類のときに得た仕組みです。
⑩とても軽い羽毛
鳥は、体のほとんどが羽毛で覆われています。
羽毛は細かく枝分かれすることで材料が少な
くても大きなつくりを得て、そのおかげでとて
も軽く、体の軽量化にも役立ち、空気をしっか
りつかむ上でも役立っています。羽毛は、飛ぶ
ために空気をとらえる、空気をためて保温にも
生かされているのです。
羽毛には大きく分けて2種あります。一つは
真羽(フェザー)、もう一つは綿羽(ダウン)です。真羽は飛ぶための板状の羽、綿
羽は保温のための綿状の羽で真羽の下に生えています。
羽毛は、軽くて弱いつくりで壊れやすいので、いつもフワフワに保つためには手
入れが必要になります。水浴び・砂浴びで羽毛の汚れを取り、羽毛を整えるために
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矢田丘陵の自然観察5 鳥類
羽づくろいします。羽づくろいしている時には、おしりの所にある尾脂腺から出る
油をくちばしでとり、羽毛に塗り広げて撥水性を与えます。水鳥などは、水に浮く
ためにしっかり撥水する必要があるので、尾脂腺が発達しています。
・鳥類のくらしで注目すべき点は?
生物の世界には、食べる-食べられる関係があり、そのつながりを食物連鎖と言って
います。食物連鎖の中では、光合成をし、栄養を作り出す緑色植物を「生産者」と言い
ます。生産者である緑色植物を直接食べる動物を「1次消費者」、その動物を食べる動物
を「2次消費者」と言います。このように「消費者」である動物を分けることができま
すが、個体数で言うと生産者が一番多く、栄養の源とも言えます。そして消費者は、1
次、2次、3次・・・高次になるほど個体数が少なくなります。鳥類は、1次消費者よ
りは、2次・3次の消費者が多くて、ワシやタカ、フクロウなど(猛禽類)のように最
高次の消費者もいます。特にこのような最高次の消費者が生きていくためには、くらし
ていけるぐらいに餌となるそれより低次の消費者である動物の多く棲む豊かな自然が必
要となるので、ある程度豊かな自然がないと猛禽類はくらしていけません。だから猛禽
類は「自然の豊かさを示すバロメー
タ」といって、大規模な開発などの時
に、その地に猛禽類が生息しているか
どうかは大きな問題になります。矢田
丘陵にも谷がいくつも盆地に向けて
広がり、丘陵に囲まれた田園地帯には、
オオタカやノスリ、ハイタカ、チョウ
ゲンボウ、ミサゴのような猛禽類が生
息しています。
オオタカの帆翔
一次消費者、二次消費者・・・とい
ろんなものを食べている鳥類。数多く
の鳥類が生息すると言うことは食べ物が豊かであると言うことであり、植物、昆虫・・・
などがたくさんいると言うことです。それだけその自然が豊かだとも言えましょう。猛
禽類を環境指標としてみることはとても重要ですが、多くの種類の鳥類が出てくるかど
うかも、自然の多様性が豊かかどうかを表している点で環境指標性は高いと思われます。
一次消費者
2次消費者
-7-
最高次消費者
矢田丘陵の自然観察5 鳥類
1.鳥の体の部分の呼び名を覚えましょう。
眉斑
頭
目
過眼線
嘴
背
喉
腰
腹
上尾筒
脚
尾
下尾筒
鳥の脚の「かかと」や「ひざ」はどこでしょう?脚の曲がり方は私たちと
一緒ですか。
考えよう
2.鳥の羽の名前を覚えましょう。羽の生えているところを「羽域」と言います。
耳羽
肩羽
小雨覆
中雨覆
三列風切
小翼羽
次列風切
尾羽
大雨覆
初列雨覆
考えよう
初列風切
鳥の体で、羽毛の生えていないのはどことどこでしょう?
-8-
矢田丘陵の自然観察5 鳥類
3.鳥の大きさに強くなろう。
・どこを測っているか。
鳥の大きさを見るときにどこの長さを測っているでしょう。ふつう図鑑には、全長(L)、
翼開長(W)が書かれていますが、下の図のようにして測っています。
全長の測り方
翼開長の測り方
・鳥の大きさの基準にしたい鳥(ものさし鳥)を覚えよう。
※
ものさし鳥とその全長(cm)を示しました。
スズメ大
14.5cm
モズ大 20cm
ムクドリ大 24cm
ハシボソガラス大 50cm
注意しよう
キジバト大 33cm
マガモ大
59cm
同じ鳥でも距離がちがうと見え方が変わります。ものさし鳥もいろん
な距離で見てみてください。そのときに、いつも鳥を見るあの田んぼま
で何メートルとか知っておく必要がありますね。事前に測って鳥を見て
みましょう。
-9-
矢田丘陵の自然観察5 鳥類
鳥を見ることを「バードウオッチング」と言いますが、鳥見のベテランの人と一緒に歩
くと、次々と鳥を見つけていくのにびっくりしたことはありませんか。見つける能力と視
力がすばらしい人だと思いたくなりますね。でも、これにはコツがあります。
・1つめのコツは、鳥は耳で探すということ
鳥の存在は、鳥の鳴き声で感じることが結構多いです。さえずりは、一番わかりやすい
ですが、地鳴きでもなれてくれば、どの方向から聞こえてくるかわかるようになります。
鳴き声が聞こえたら、立ち止まって辺りをうかがってみましょう。鳴き声で鳥の種がわか
れば、どこにいるか予想できる場合も多いです。
・2つめのコツは、鳥のいそうな所を予想して見るということ
鳥は飛ぶことができますから、すぐに飛び立ってえさの昆
虫を捕らえやすく、敵が来たらすぐに飛んで逃げることがで
きるところを選びます。すぐにパッと翼を広げて飛べる見通
しの良い少し高めの水平に近い木の枝が、そんな止まり木と
して最適です。都市部では、木の枝の代わりとして電線やテ
レビアンテナなどを止まり木にしている鳥もいます。
トライ
電線や電信柱、TVアンテナによくとまっている鳥はどんな鳥でしょう。調
べてみましょう。
また、鳥それぞれに好きな場所があります。春、高い木の梢でさえずっているのはホオ
ジロ、シジュウカラ、オオルリがいますし、冬の水田の残り穂の中やヨシ原、ススキ原、
セイタカアワダチソウなどの少し高い枯れ草の林立するところで群れをなしているのはカ
シラダカやアオジです。森林(ドングリ)の中の暗い池では、オシドリが羽を休めている
こともあります。土の土手のある池や川では、カワセミが行き来していますし、水路があ
るところではセキレイの仲間をよく見かけます。冬に森林の林の下の落ち葉のところでガ
サガサしているのはシロハラです。ポイントとして整理するとしたら、
① えさ場・・・鳥の食べ物を考えてみてください。木の実があるところ、花の咲いて
いるところによく集まっています。
② 水辺
・・・鳥は水浴びをします。飲み水も必要です。
③ 隠れ家・・・鳥は自分の姿をかくせるところが好き。警戒心が強いです。
④ 見晴台・・・高くて見晴らしの良いところ、広くて見晴らしの良いところがすき。
これも警戒心が強いからとも言えましょう。
⑤
巣
・・・巣をかけられるところ、巣材の調達できるところも繁殖期に良いポイ
ントになります。
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矢田丘陵の自然観察5 鳥類
・こんな所を探してみましょう。
良い止まり木ポイント…とにかくほぼ水平で止まりやすい所。
木の水平の枝
電線上
TVアンテナ
えさ場ポイント…花、木の実、水生生物、木の皮の下の昆虫などのえさがある所。
水辺の泥の上
木の幹
水をはり始めた水田
一斉に咲く木の花
川の堰堤
草むらのへり
隠れ家ポイント・・・鳥が安心できる所。
池のへり
ヨシ原の中
林の下
見張り台ポイント・・・周りより高くてよく見通しのきく所。
木の梢
飛び出た枯れ草
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電信柱の上
矢田丘陵の自然観察5 鳥類
・
観察コースを決めて定期的に調べる方法(ライン・センサス)
鳥の調べたことが、自然環境をみるためにも役立つようにするには、いつ、どこで、
どんな鳥が、何をしていたか、そして、鳥の数を記録することです。数えてみてはじめ
て鳥がどれだけいるか実感できますし、季節的なちがいも見えてきます。
こんな記録を鳥と会うたびにとるのもいいでしょう。でも、もっと詳しく調べようと
思う人は、以下のような観察コース(ライン)を決めて定期的に調べる方法を奨めます。
①1kmほどの観察コースを決める
家の近所で鳥を見る約1kmのコースを作る。コースには住宅地、田園地帯、森
林のあるところ、池や川を入れることができたらいいですね。1kmぐらいがいい
と思います。あまり長いと続きません。
②定期的に観察する
鳥を見る日をだいたい決めておきます。最低2ヶ月に一回(例えば第二土曜日)
はやりたいです。観察の時間帯はできるだけ同じようにします(午前中の方が観察
しやすいです)。自分のできる範囲で定期的にするとよいでしょう。すると鳥による
季節感が見えてきます。
③鳥の種類と数を地図上に記録
例えば 100mおきとか区間
を決めて1kmを区間に分け
て、道の両側25m幅で、どん
な鳥がどれだけいたかをどん
どん記録していきます。鳴いて
いたらS(さえずり)だけ書い
ておきましょう。
④結果を集計する
区間ごとの集計と全体の種
ごとの羽数を観察毎にまとめ
ていきます。毎回の調査の羽数
の多さベスト10と出てきた
種数を見てみましょう。いつも
見られる鳥とたまに見られる
鳥に気づくでしょう。鳥の種類
が豊かであればいいですね。
これは私のコース(2.8km) 2005.1.30.のデータ
- 12 -
矢田丘陵の自然観察5 鳥類
表1.少年自然の家から矢田丘陵周辺 2.8km の観察コースを4月から1月まで月1回、日
中の最も気温の高い時間帯(午前12時~午後4時)に調査した結果
No.
1
2
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68
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121
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138
140
141
145
146
149
150
151
156
157
167
168
174
176
178
180
182
187
192
193
195
199
200
203
205
209
212
217
225
227
228
230
232
234
235
種名
年計
カイツブリ
カワウ
ヨシゴイ
アマサギ
ダイサギ
チュウサギ
コサギ
アオサギ
マガモ
カルガモ
コガモ
キンクロハジロ
ミサゴ
オオタカ
ノスリ
チョウゲンボウ
コジュケイ
キジ
イソシギ
キジバト
ホトトギス
カワセミ
アオゲラ
アカゲラ
コゲラ
ツバメ
コシアカツバメ
キセキレイ
ハクセキレイ
セグロセキレイ
ヒヨドリ
モズ
ルリビタキ
ジョウビタキ
トラツグミ
シロハラ
ツグミ
ウグイス
オオヨシキリ
セッカ
エゾヒタキ
コサメビタキ
エナガ
ヤマガラ
シジュウカラ
メジロ
ホオジロ
カシラダカ
アオジ
カワラヒワ
イカル
ニュウナイスズメ
スズメ
ムクドリ
カケス
ハシボソガラス
ハシブトガラス
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1
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19
6
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1
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30
123
4
18
20
33
456
37
9
19
1
24
118
129
7
2
2
1
37
5
30
219
96
316
63
17
11
20
1333
31
2
195
55
合計
出現種数
3753
58 種
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10 月
11 月
12 月
1月
2月
3月
4/18
5/29
6/28
7/29
8/29
9/26
10/18
11/29
12/31
1/30
2/27
3/27
5
1
5
2
3
3
1
8
1
5
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3
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1
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2
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8
6
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2
2
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43
10
21
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1
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1
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4
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5
13
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8
10
5
17
1
1
27
1
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2
10
10
3
2
10
12
1
15
6
27
9
1
19
2
74
2
16
80
14
92
14
5
8
21
103
24
9
16
4
20
10
2
1
10
5
74
21
101
1
57
124
438
149
234
3
24
15
76
1
6
2
20
1
10
2
12
4
4
4
4
6
8
8
9
6
18
66
14
2
16
3
22
5
227
26 種
236
21 種
229
24 種
270
20 種
556
17 種
274
19 種
385
18 種
183
25 種
292
22 種
519
30 種
375
30 種
207
27 種
27
26
8
この結果を見ると、いろんなことがわかります。
コースで見られた鳥は58種で、そのうち夏鳥が8種、冬鳥が14種、漂鳥が1種、旅鳥が1種、残り
が留鳥で33種でした。日中見ている鳥は、ほとんどが留鳥でした。
たくさんの個体数が見られた鳥は、1位スズメ1333羽、2位ヒヨドリ456羽、3位カシラダカ(冬)
316羽、4位メジロ219羽、5位ハシボソガラス195羽、6位ウグイス129羽、7位ツバメ(夏)
123羽、8位ツグミ(冬)118羽、9位ホオジロ96羽、10位キジバト94羽、でした。矢田丘陵
周辺の代表的な鳥がこの10種とも言えましょう。渡り鳥に注目すると、夏鳥は4月~10月、冬鳥は1
0月~4月に見られることがわかります。4月と10月は両方の渡り鳥が楽しめる時期だといえます。
また、4月~1月までで最も鳥の羽数が多かったのが8月の556羽(ただし17種での総羽数)で、
鳥の種数が一番多かったのが1・2月の30種でした。1・2月は、観察の好期かもしれません。
- 13 -
矢田丘陵の自然観察5 鳥類
・ 奈良県で確認された鳥は何種?
日本野鳥の会奈良支部によりますと、これまでに奈良県で確認された鳥の数は18目
52科(4亜科)236種(4 亜種)になるそうです(2004年5月12日改訂)。
奈良県は、北部には奈良盆地の沖積低地、周囲の低山帯、大和高原があり、吉野川を
越えて南部は亜高山帯を含む吉野山地が広がっています。また、奈良盆地は降水量が少
なく(1500mm以下)、ため池がたくさんありますし、吉野山地の大台ヶ原では日本
有数の多雨地帯で知られています。
このような低地から亜高山帯に至る高度差、豊かな水環境など幅広い自然環境によっ
て多様な鳥がくらしていると言えましょう。
・矢田丘陵で確認された鳥は何種?
矢田丘陵周辺ではどうでしょう。矢田丘陵は300m内外の低山であり、クヌギコ
ナラ林を中心とした薪林が覆っています。そして裾野には田園地帯が広がり、丘陵か
ら流れ出る小川で潤されています。中には湿地だったところもあり、ヨシ原もまだ残
っています。また、田園地帯の用水のために谷をせき止めて作ったすり鉢式のため池
もいくつか見られます。開けた谷も多く自然環境としては申し分のない環境が残され
ています。
さて、こんな矢田丘陵周辺では、どれぐらい鳥の種類が確認されているのでしょう
か。1984年3月に少年自然の家から出された「とりのかんさつ」
(橋田俊彦著)で
は橋田俊彦さんによって98種が記録されています。
矢田丘陵周辺エリア
今回、2003~2004
年の調査では(日中の調査の
み)86種確認できました。
このうち22種は1984年
から新たに記録されたもので
す。したがって、これまで矢
田丘陵で確認された鳥は12
0種にもなりました。これは
奈良県でこれまでに確認され
た鳥の50.8%にもなりま
す。低地、低山で普通に見ら
れる鳥の多くが確認できまし
た。
- 14 -
矢田丘陵の自然観察5 鳥類
表2.矢田丘陵で確認された鳥たちの記録
(奈良県下の NARA No.は日本野鳥の会奈良支部の一覧に付された No.です。)
NARA
科名
種名
渡り
No.
(亜科名)
(亜種名)
奈良県
1984
2003
2004
繁殖
生息状況
2
カイツブリ科
カイツブリ
留鳥
○
○
○
3
平地の川、池、湖沼の水面
8
ウ科
カワウ
留鳥
●
○
3
平地の水面、水辺
10
ヨシゴイ
夏鳥
△
△
○
2
平地の水辺、ヨシ原、湿草地
12
ゴイサギ
留鳥
○
・
○
4
平地の水辺
14
アマサギ
夏鳥
◎
◎
○
4
平地の草地
ダイサギ
留鳥
△
△
○
2
平地の水辺
16
チュウサギ
夏鳥
17
コサギ
留鳥
○
○
○
4
18
アオサギ
留鳥
△
○
○
4
27
オシドリ
冬鳥
28
マガモ
冬鳥
29
カルガモ
留鳥
コガモ
冬鳥
◎
4
34
ヒドリガモ
冬鳥
▲
3
38
ハシビロガモ
冬鳥
◎
3
41
キンクロハジロ
冬鳥
●
2
47
ミサゴ
漂行
▲
0
川、池、湖沼の水面上空
49
トビ
留鳥
オオタカ
55
15
30
サギ科
ガンカモ科
矢田丘陵
奈良県
生息環境
●
1
●
2
△
○
4
△
○
○
平地の水辺
川、池、湖沼の水面、山林内の渓流
4
川、池、湖沼の水面
△
○
3
山地、平地、水辺
留鳥
●
○
2
平地、山地の森林
ハイタカ
留鳥
▲
△
2
56
ノスリ
冬鳥
△
○
57
サシバ
夏鳥
○
○
チョウゲンボウ
冬鳥
△
△
2
平地、草原、耕地
ウズラ
冬鳥
▲
0
平地の草原
コジュケイ
留鳥
◎
○
○
3
低山林、平地、草原
67
ヤマドリ
留鳥
△
・
○
2
低山、山地の森林
68
キジ
留鳥
○
○
○
3
低山林、平地、草原
69
クイナ
冬鳥
△
・
ヒクイナ
夏鳥
○
△
○
1
バン
留鳥
○
○
○
3
52
○
ワシタカ科
64
ハヤブサ科
65
66
2
○
低山林、平地
3
キジ科
1
平地の水辺、ヨシ原、湿草地
70
72
クイナ科
- 15 -
池、湖沼、湿地の水面、湿草地
矢田丘陵の自然観察5 鳥類
75
タマシギ科
タマシギ
留鳥
▲
○
2
水辺、水田、湿地、湿草地
コチドリ
夏鳥
○
○
○
2
川原、耕地、造成地
シロチドリ
留鳥
○
・
△
2
川原、水田、湿地
81
ケリ
留鳥
○
◎
○
5
82
タゲリ
冬鳥
△
△
○
2
87
ハマシギ
旅鳥・冬鳥
○
・
2
94
クサシギ
旅鳥・冬鳥
▲
2
95
タカブシギ
旅鳥・冬鳥
○
・
2
キアシシギ
旅鳥
○
・
1
97
イソシギ
留鳥
●
2
川、池沼の水辺、湿地
101
ヤマシギ
冬鳥
▲
1
平地、低山の林
102
タシギ
△
3
▲
0
76
78
チドリ科
水田、湿草地、水辺
湿地、湿田、水辺
96
シギ科
冬鳥・旅鳥
△
湿地、湿田、蓮田、湿草地
104
セイタカシギ科
セイタカシギ
旅鳥
ユリカモメ
冬鳥
○
・
3
川、池沼の水面、水面の上空
コアジサシ
夏鳥
○
・
2
川、池沼の水面上空
キジバト
留鳥
◎
◎
○
5
平地、低山の疎林、農耕地
117
アオバト
留鳥
○
△
○
3
低山、山地の広葉樹林
119
カッコウ
夏鳥
△
・
△
2
山地の草原、低木林
ツツドリ
夏鳥
○
・
○
2
山地の森林
121
ホトトギス
夏鳥
○
◎
○
3
平地、山地の林
122
トラフズク
冬鳥
▲
0
平地、山地の森林、草地
コミミズク
冬鳥
△
・
2
湿草地、草原、耕地
126
アオバズク
夏鳥
○
・
○
3
平地、低山の林
127
フクロウ
留鳥
○
○
○
2
平地、山地の森林
○
・
○
2
平地、山地の疎林耕地
●
△
2
山地、亜高山の岩崖
○
2
池沼、川
1
平地、低山の疎林
108
カモメ科
115
116
ハト科
120
ホトトギス科
123
フクロウ科
128
ヨタカ科
ヨタカ
夏鳥
131
アマツバメ科
アマツバメ
夏鳥
134
カワセミ科
カワセミ
留鳥
○
○
アリスイ
冬鳥
△
・
アオゲラ
留鳥
○
○
○
3
平地、低山の森林
139
アカゲラ
留鳥
○
○
○
2
低山、山地の森林
141
コゲラ
留鳥
◎
◎
○
4
平地、低山、山地の林
○
5
平地の耕地、草地
1
平地、山地の上空
137
138
キツツキ科
143
ヒバリ科
ヒバリ
留鳥
◎
◎
144
ツバメ科
ショウドウツバメ
通過
○
○
145
ツバメ
夏鳥
◎
◎
○
4
平地の市街、耕地
146
コシアカツバメ
夏鳥
◎
○
○
3
平地、低山の村落、耕地
- 16 -
矢田丘陵の自然観察5 鳥類
147
イワツバメ
夏鳥・留鳥
○
・
○
2
山地の岩崖、コンクリート構造物に営巣
149
キセキレイ
留鳥
○
○
○
3
平地、山地の水辺
150
ハクセキレイ
冬鳥・留鳥
○
○
○
2
平地の水辺、耕地
セグロセキレイ
留鳥
○
○
○
3
川原、水辺、耕地、市街
152
ビンズイ
留鳥
○
○
○
2
亜高山で繁殖し、冬は平地の林に
154
タヒバリ
冬鳥
○
・
2
耕地、草地、川原
151
セキレイ科
155
サンショウクイ科
サンショウクイ
夏鳥
○
・
○
2
156
ヒヨドリ科
ヒヨドリ
留鳥
◎
◎
○
5
157
モズ科
モズ
留鳥
◎
◎
○
3
キレンジャク
冬鳥
△
・
1
159
ヒレンジャク
冬鳥
△
・
1
167
ルリビタキ
留鳥
○
○
168
ジョウビタキ
冬鳥
○
169
ノビタキ
通過
トラツグミ
174
クロツグミ
175
アカハラ
夏鳥・留鳥
176
シロハラ
冬鳥
○
178
ツグミ
冬鳥
179
ヤブサメ
180
182
平地、低山の林
158
レンジャク科
平地、低山の林、耕地、草地
平地の林
2
亜高山で繁殖し、冬は平地の林に
◎
2
平地、低山の疎林
○
○
1
渡りの途中、草原を通っている
留鳥
○
△
○
2
夏鳥
○
・
△
2
▲
○
1
平地、低山の疎林・亜高山帯で繁殖
◎
3
平地、低山の疎林
◎
◎
5
耕地、平地の疎林
夏鳥
○
○
○
2
耕地、平地の疎林
ウグイス
留鳥
◎
◎
○
4
平地から山地の疎林
オオヨシキリ
夏鳥
○
○
○
3
ヨシ原
メボソムシクイ
夏鳥
○
・
○
2
亜高山帯針葉樹
184
エゾムシクイ
夏鳥
○
・
○
2
山地帯上部の森林
185
センダイムシクイ
夏鳥
○
△
○
2
山地の森林
186
キクイタダキ
冬鳥
○
・
1
山地の針葉樹林
187
セッカ
夏鳥・留鳥
○
○
○
3
平地、低山の草地
188
キビタキ
夏鳥
○
○
○
1
山地の森林
190
オオルリ
夏鳥
○
○
○
3
低山、山地の渓流添の林
サメビタキ
夏鳥
△
・
△
1
亜高山の森林
192
エゾビタキ
旅鳥
▲
2
渡りの途中、山地の森林を通る
193
コサメビタキ
夏鳥
▲
○
2
低山、山地の広葉樹林
▲
○
2
低山の広葉樹林
173
○
ツグミ科
183
低山、山地の森林
ウグイス科
191
ヒタキ科
194
カササギヒタキ科
サンコウチョウ
夏鳥
195
エナガ科
エナガ
留鳥
◎
◎
○
4
平地、山地の林
199
シジュウカラ科
ヤマガラ
留鳥
○
○
○
3
低山、山地の森林
- 17 -
矢田丘陵の自然観察5 鳥類
200
シジュウカラ
留鳥
◎
◎
○
4
平地から山地の林
メジロ
留鳥
◎
◎
○
4
平地から山地の森林
ホオジロ
留鳥
◎
◎
○
5
平地から山地の草原、疎林、耕地
カシラダカ
冬鳥
○
◎
5
平地から低山の疎林、耕地
210
ミヤマホオジロ
冬鳥
○
△
1
平地から山地の疎林
212
アオジ
冬鳥・留鳥
○
◎
3
亜高山で繁殖し、冬は平地に下る
213
クロジ
冬鳥
△
・
1
平地低山の森林
216
アトリ
冬鳥
○
○
2
平地、低山の疎林、耕地
217
カワラヒワ
留鳥
○
◎
4
平地、低山の林
ベニマシコ
冬鳥
○
○
1
223
ウソ
冬鳥
○
・
1
225
イカル
留鳥
○
○
226
シメ
冬鳥
○
ニュウナイスズメ
冬鳥
スズメ
203
メジロ科
205
209
ホオジロ科
222
△
○
平地、低山の疎林
アトリ科
3
平地、低山の林
○
2
平地、低山の疎林
○
◎
2
平地の疎林、耕地
留鳥
◎
◎
5
市街、村落、耕地
コムクドリ
通過
○
・
1
渡りの途中、耕地、疎林を通る
230
ムクドリ
留鳥
◎
○
○
5
耕地、疎林
231
カケス
留鳥
○
○
○
3
低山、平地の森林
ハシボソガラス
留鳥
◎
◎
○
4
ハシブトガラス
留鳥
○
○
○
5
227
○
ハタオリドリ科
228
229
○
ムクドリ科
234
カラス科
市街、耕地、水辺、林
235
(◎…多く見られる
○…普通に見られる
△見られるが大変少ない
・未確認
赤は2003~200
4年の調査で初記録のものを表している。)
鳥の嘴(くちばし)と食べ物
イカル
スズメ
木の実+草の種子
昆虫+種子
バン
水草の根+葉(+昆虫)
チュウサギ
カエル+トカゲ+魚類+昆虫
ジョウビタキ
昆虫+木草の実
セイタカシギ
魚類+甲殻類+昆虫の幼虫
- 18 -
t
ツグミ
ミミズ+昆虫+木の実
t
オナガガモ
水底の植物の種子+水草
モズ
昆虫(+カエル+ミミズ+魚類)
オオタカ
鳥(+ネズミ+ウサギ)
矢田丘陵の自然観察5 鳥類
・矢田丘陵で1年を通してふつうに見られる鳥(留鳥)
留鳥とは・・・同じ地域に一年中生息し、季節移動しない鳥
1位:スズメ(1280 羽)
2位:ヒヨドリ(378 羽)
4位:ハシボソガラス(195 羽)
5位:ウグイス(129 羽)
7位:キジバト(94 羽)
9位:エナガ(37 羽)
13位:コゲラ(30 羽)
8位:ハシブトガラス(55 羽)
11位:セグロセキレイ(33 羽)
13位:シジュウカラ(30 羽)
- 19 -
3位:メジロ(219 羽)
6位:ホオジロ(96 羽)
9位:モズ(37 羽)
12位:ムクドリ(31 羽)
15位:チュウサギ(19 羽)
矢田丘陵の自然観察5 鳥類
・矢田丘陵で夏によく見られる鳥(夏鳥)
夏鳥とは・・・春に南方の越冬地から渡ってきて繁殖し、秋に南方へ渡る鳥
1位:ツバメ(123 羽)
※ノビタキ
2位:アマサギ(12 羽)
※コチドリ
4位:オオヨシキリ(7 羽)
※ヒクイナ
・矢田丘陵で冬によく見られる鳥(冬鳥)
冬鳥とは・・・秋になると北方の繁殖地から渡ってきて春になると北方の繁殖地に渡る鳥
1位:カシラダカ(316 羽)
3位:アオジ♀
4位:シロハラ(24 羽)
2位:ツグミ(118 羽)
5位:ニュウナイスズメ
5位:ハクセキレイ(20 羽)
- 20 -
3位:アオジ
♂(63 羽)
左♂・右♀(20 羽)
8位:マガモ(15 羽)
矢田丘陵の自然観察5 鳥類
7位:ジョウビタキ
左♂・右♀(19 羽)
9位:コガモ(7 羽)
・矢田丘陵で見られた猛禽類
1位:オオタカ(7 羽)
(国内希少野生動植物種)
3位:チョウゲンボウ(2 羽)
2位:ノスリ(2 羽)
4位:ミサゴ(1 羽)
・大和郡山市、矢田丘陵周辺で見られた希少な鳥
★クロエリセイタカシギ(在来種でなく外来種でした。)
★ヤマシギ(京都府の絶滅危惧種)
* 一番前の数字と( )の羽数は、2004 年 4 月~2005 年 3 月までに行った矢田丘陵周辺の野鳥ラインセンサス調
査での確認個体数の順位と確認総羽数です。写真に撮れたものだけ紹介しています。
- 21 -
矢田丘陵の自然観察5 鳥類
少年自然の家のある矢田丘陵の周辺には、丘陵の森林、谷間の水の豊かな湿地、田園地帯、
ヨシ原、林に囲まれたため池など多様な自然の姿があります。
2003年~2004年の2年間、どんな鳥がいるか(定性調査)を調べた結果、矢田丘
陵周辺で確認できた鳥の種数は、1984年・橋田俊彦氏の結果に新しく22種を加えて、
120種にもなりました。これは奈良県でこれまでに確認された野鳥236種の半数以上に
あたります。しかも、新たに記録された鳥の中には、オオタカ(国内希少野生動植物種)、
ヤマシギ(京都府の絶滅危惧種)のように個体数が少なく希少なものも含まれていました。
この結果からも大和郡山市の矢田丘陵周辺の自然は豊かだということが明らかになりま
した。ここには少年自然の家があり、民俗公園、遊びの森など自然を生かした公共の設備も
充実しています。たくさんの鳥が行き来する場所であり、生態系の最高次消費者であるオオ
タカ、ノスリ、ミサゴなどの猛禽が新たに3種プラスされたことは、まさしくここの自然度
の高さを表しているのでしょう。
また、2004年に行ったどの鳥がどれだけいるか(定量調査)を調べた結果、4月~1
月の10ヶ月で、58種、3753羽の鳥を記録することができました。日中の一番暑い時
(正午前後から4時ごろまで)、毎月一回、双眼鏡とフィールドスコープを持って2.8k
mの観察コース(ライン)を歩いて鳥をカウントし続けたのです。夏の暑いときには熱中症
になりかけたりして大変だったことを思い出しますが、一番暑いとき、鳥はどうなのかが少
し見えたような気がします。そして、この結果から、季節による自然環境の変化に応じて、
見ることのできる鳥の種数、個体数が変わってくることを確かめることができました。
鳥は飛ぶことができ、自由に移動できます。そんな鳥だからこそ、本当に自分たちが生き
ていく上で必要な自然をかぎ分けて動くことができます。今の自然の豊かさが壊れてくると
きっと鳥たちもその環境を選ばなくなるでしょう。そういう点で鳥は、自然環境の変化を読
み取ることができる柔軟性の高いバロメータとなると思います。
みなさんも矢田丘陵周辺に観察コースを決めて月に1回鳥と対話しませんか。フィールド
ノートを片手に双眼鏡を首にぶら下げて出かけてみてください。鳥の種数や羽数から自然の
豊かさを感じることがきっとできると思います。
私たち人間にとって自然環境は、生活環境です。自然界の一員として、鳥と仲良くくらし
て自然環境の動きを絶えず知りながら、私たちの生活も豊かにしたいものです。
発行所 大和郡山市矢田町574番地
大和郡山市立少年自然の家
執筆者 自然教育研究事業調査研究員
井
上
龍 一
発行年月日 平成17年3月31日
- 22 -
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