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【2009年8月号】(2.1MB)
野鳥観察の森 ネイチャーセンターだより VOL.241 2009(平成 21)年 8 月 10 日 ミヤコグサ(都草) 日本全国に分布し、日当たりのよい道端や草原に生 える。茎が地面を這って伸び、多年草で毎年同じ場所 で見られる。 マメ 科特有の蝶のような形をし た直径1㎝位の黄 色い可愛らしい花を付ける。 春から秋までと花期が長 いが、滝沢森林公園では6、7月に特に多い。 観賞用、家畜飼料、食用(若い芽を油いため) 、野 生の花の法面植栽にも使われる。また、短いライフサ イクル(播種から 2 カ月で開花)であることから、 遺伝の研究にも利用されている。 岩手県滝沢森林公園 ミヤコグサの語源は、京都(都)の豊国神社近く の耳塚付近に多く見られたことにあるといわれてい る。 漢名の薬草名「脈根草(みゃくこんぐさ)」から転 じたとする説も あるが、これは地面を四方に這う茎 から血管を連想したものという。 全国的に広く分布することから、 えぼしぐさ、ひ よこぐさ、こがねぐさ、ばななぐさ、すずめばな、 うまげんげ、たまごはな 、などたくさんの別名や方 言名がある。 野鳥観察の森ネイチャーセンター 休館日 毎週火曜日(休日の場合は翌日)、年末年始 〒020-0173 岩手県岩手郡滝沢村滝沢字砂込 1533-1 TEL・FAX 0 19-688-5522 ホームページ http://www. koiwai. co.jp/shiteikanri/takizawa_fp/na ture_c/ index. html ―1― 観 察 記 録 (2009年7月) 記録は、森林公園の野鳥観察の森で観察されたものです。 野鳥は、鳴き声や上空を飛んでいるのを観察したものも含まれています。 7月の調査日数は 27 日です。 野 № 鳥 種 類 1 アオゲラ 2 アカゲラ 3 イカル 4 ウグイス 5 エナガ 6 オオルリ 7 カッコウ 8 カワセミ 9 カワラヒワ 10 キジバト 11 キセキレイ 12 キビタキ 13 クロツグミ 14 コゲラ 15 ゴジュウカラ 16 サンコウチョウ 17 シジュウカラ 18 シメ 19 スズメ 20 センダイムシクイ 21 トビ 22 ハクセキレイ 23 ハシブトガラス 24 ヒガラ 25 ヒヨドリ 26 メジロ 27 ヤマガラ 哺乳類 1 ノウサギ 2 リス 上 旬 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 観察 日数 1 26 6 1 1 1 1 3 27 22 4 27 7 26 23 1 26 20 27 9 13 13 27 12 27 7 27 ○ ○ ○ ○ ○ 3 27 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 中 旬 下 旬 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 7月の観察 7月に観察された野鳥は、 27 種類でした。 一時期数が減っていた野鳥たちは、巣立ちの季節とともに親子 連れで餌場に来るようになりました。スズメ、カワラヒワ、ヤマ ガラ の幼鳥が親の後を追って翼 を震わせながら大きな口を開け て餌をもらっている姿を観察の窓から見ることができます。 シメも、親よりも大きく見える 幼鳥が 体を左右に振りながら餌 をねだっており、今年もこの森で子育てをしています。 ウグイス、カッコウは月初めで声が聞こえ なくなりましたが、 オオルリが盛んに鳴いており、この森で繁殖しているようです。 キセキレイ、クロツグミ、カワセミの幼鳥が時々水場に来てい ます。キビタキ、ゴジュウカラが森の中いたるところで鳴いてい ます。 ヒヨドリは、森の中で良い餌を見つけたのか、水浴びにたまに 来るだけで、大好きなはずのリンゴにも来ていません。キジバト が近く盛んに鳴いており、最近、ヒマワリの種を丸呑みするよう になりました。 サンコウチョウは、今年声が聞かれなかったのですが、雌が水 辺にきていました。どうやら今年も無事営巣しているようです。 センダイムシクイは、森の梢で鳴いていますが、なかなか姿を見 ることができません。 アオゲラがさっぱり姿を見せません。アカゲラは常時近く に居るのですが、窓に人影が見えるとそそくさと飛び去って しまいます。コゲラは、間近の小枝をくるくる回りながら餌 をさがしており、皆さんの絶好の被写体になっています。 ノウサギの子供が窓辺近くに現れて、人を余り警戒するこ ともなく、せっせと草を食べていました。 リスは、 3 頭が餌場に来ています。昨年は親子で走り回っ ていたのですが、今年は子供の姿がみえません。そういえば、 春先に乳房が膨らんだ雌の姿を見ませんでした。 豆 知識 えかきむし(絵描き虫) 虫の仲間は、分類学とは別に、形や 食べ方の特徴から葉巻虫、葉切虫、枯 葉蛾、根切虫、芯くい虫などの呼び名 を持つものがある。 そのひとつ「絵描き虫」は、葉っぱ に一筆書きのような模様を作る。ちょ うど幼児がサインペンで絵を描いたよ うにみえる。 この絵は、虫の幼虫が葉っぱの表と 裏の皮を残して内部を食害した痕で、 被害から見た分類では、 「潜葉虫」と呼 ばれる。食べた虫は、蛾、甲虫、蝿等 いろいろな仲間が含まれており植物の 種類によって加害する虫の種類もまた 様々である。 ― 2 ― せみが羽化しているよ! スズメの雛が餌をねだっているのはかわいいね!リスが来たよ! 夏の森は小さな命の発見で賑やかです。 夏休み森のクラフト&クイズは 8 月 17 日まで開催中 7 月のフィールドノート 7 月 3 日午後にヒグラシが一斉に鳴きだしました。梅雨空の薄暗さと共にその年に初めて聞くヒグラシの声は 人を思わず立ち止まらせるようで、森を歩いてネイチャーセンターへ立ち寄られた方も「この声を聞くともう今 年も半分終わったなと思うよ」とつぶやいていました。 7 月は後半に入って雨 が多く日差しの少ない日が続きま した。20 日前後から聞こえてきた ニーニーゼミ、ツクツクボウシやエゾゼミの声も雨のため途切れがちで、梅雨 明け宣言のないまま立秋を迎えてしまいました。 また同じく 7 月 3 日、夜の警備のために森林公園を回っていた斉藤所長が、沢沿いで乱舞するゲンジボタル(初 確認)と、そこから少し離れた草むらで小さく光るクロマドボタルの幼虫( 2008 年 9 月 22 日初確認、今回再確 認)をみつけました。所長によると「沢音の中、人知れず舞うゲンジボタルにただただ魅せられた。クロマドボ タル幼虫との出会いは、昨年秋だった。草むらの夜露が 、あたり一面揺れながら光っているのを見てぞくぞくし 、 冷や汗をかきながらはいつくばってみた。イタヤカエデの幹、コウライテンナンショウ、 ツユクサ、チヂミザサ の葉先で連続発光しながら移動する奇妙な尺取虫をみつけた(3 対の脚と 一番後ろの節にある尾脚を使って歩 行)。さらに、観察路沿いの林床にも光る夜露を見通すことができた。幽玄の世界を長時間露光で撮影を試みた がことごとく失敗した。フラッシュをたいたとたんに落ち葉の中に逃げていった。蛍のみなさんに申し訳ないこ とをした。岩手では 9 種類のホタル科の昆虫が確認されているが( 岩手県野生生物目録(2001))、幼虫の生活場 所(陸上・水中)、発光のステージ (幼虫・蛹・成虫 )、成虫の行動(昼行性・夜行性)など様々である。森林公 園での調査は始まったばかりなので、今後どんな 蛍たちに出会えるか楽しみだ。しかし、電灯を点けず、身を潜 めての調査は、狐の子の声がしみ込んだじっとりとした重たい空気の塊に押しつぶされそうだった。蛍の光に目 が慣れるころには、木漏れの月明かりさえまぶしく感じた。 」と語っていまし た。木の葉で空を覆われた夜の森 は、深い海の底のように真っ暗で、蛍たちの求愛の光を効果的に見せてくれます。 私たちになじみが深い蛍は、森の中の沢の上流付近で発生するゲンジボタルと、平地の田んぼなどで発生する ヘイケボタルの2種類ですが、今回見つかったクロマドボタルのように成虫の時はあまり光らないで、幼虫や 蛹 の時だけ光る種類もいるようです。 ゲンジボタルは幼虫時代を 流れのある水中で過ごし 、春に岸辺に上がり蛹となり、蒸し暑い梅雨の季節に近く の草むらに上って 羽化し、雄と雌が出会って卵を沢のそばの苔などに 産みます。幼虫の時の餌となるカワニナが 住めるきれいな水の流れと、草や苔の生えた土手が必要となります。また、光で結婚相手に居場所を知らせるた め、まわりに人工 の光が届かない場所があるということも繁殖するには大事なことのようです。森林公園では、 はげしい雨が降った時も木の葉が雨を受け止め、 幹を伝って地面へと流れ るため、急激に沢が溢れるようなこと は少なく、ゲンジホタルの幼虫のえさとなるカワニナなども生息することが出来るようです。 森林公園の中で湧き出した沢が 2系統あり、北上川へと流れています。鳥たちの渡りの季節にはこの沢の流れ る音に引き寄せられるように多くの鳥達が立ち寄っていきますし、上流で 夏の終わりにオニヤンマが産卵する様 子も見られます。今回見つけられたゲンジボタルも森の持つ本来の機能が発揮されているところで生きているこ とに気が付きます。これからも毎年、 夜の森の幻想的な虫たちの交信が続いて ほしいですね。 フラ ッシュ撮影を嫌がり 落葉層へ逃げ込む ゲンジボ タル ♂ 草の葉の上や クロマドボタル 幼虫 ― 樹幹を 発光しながら 尺取り歩行 オカ モノアラ ガイ を食べる 飼育個体(ネイチャーセンター内) 3 ― 定 例 森 の 観 察 会か ら 7 月の観察会は 19 日、参加者は 12 名(内小学生 3名)でした。朝方までの雨が上 がり、ラッキーと外に出たのですが、30 分もたたないうちにザーザー降りになってし まいました。案内はセンター の佐藤指導員、テーマは「虫の 眼で見るネイチャーラン ド 」で、雨にも負けず、短い時間でいろいろな虫や植物を観察することができました。 観察できた主な種類 虫 タケニグサ ・ ニホンミツバチ(真っ白い蝋でできた巣を間近に見る) ・カシワマイマイとマイマイガの幼虫(どちらも昨年大発生して、市街地の灯火に集 まり大騒ぎになったが、今年は少ないと予想) ・ハリギリモンキハバチ(ハリギリの葉を葉脈だけを残して食害するので、被害葉は 光が透き通り、レースのようになる) ・コマユバチの仲間(蛾の幼虫の体内に寄生し、成長して毛虫の皮を破って出てきて 小さい繭を作る) ・キマワリ(足が長く、黒くて背中がピカピカに光っている) ・アワフキムシの仲間( 幼虫が泡の仲に隠れている) ・セミ類(エゾゼミ、アブラゼミ、ツクツクボウシ、ヒグラシなどの声が賑やか) ・期待していたオオムラサキは見ることができませんでした。 植物 ・タケニグサ(高さ2mにもなり、茎が中空で竹に似ているので「竹似草」 折ると黄 色い汁が出る 昔虫殺しに使った) ・カシワ(毛虫やコガネムシが付いている) ・コウライテンナンショウ(マムシグサの仲間 この実は秋になると真っ赤になる) ・クマイチゴ( 赤い実が付いていた 食べたら甘酸っぱい) ・キツネノボタン( 光沢のある黄色い花で別名をキンポウゲ( 金鳳華) という緑色の丸い 実に鉤針がついており洋服にくっつく) ・アキタブキ( この辺の山のフキはアキタブキ 肥料をやれば巨大になる) 野鳥 ハリギリモンキハバチ ・ヤマガラ・シジュウカラ・コガラ・ハシブトガラス・ヒヨドリなど お トピック 知 クロツグミの幼鳥 7 月 12 日、バードバスで見慣れない野鳥が 水浴びをしていました。調べてみたら 、クロツ グミの幼鳥でした。 5 月に成鳥の姿が見え、そ の後鳴き声が聞こえなかったのですが、どうや らこの森で子育てをしていたようです。 ら 野鳥の木彫り (バードカービング) 講習会 1 2 3 4 5 6 7 月 12 日 せ 5 日 17 日 5、7、9、 11、 1、3 月の第 2 土曜日 10: 00∼15: 00 場 所 ネ イチャーセンター 研修室 対 象 小 学校4年生以上の方 20 名 参加料 新 しい作品に挑戦の方 1000 円 持参品・服装;工作に適したもの 昼食(近く に食堂 やコンビ ニはあ りませ ん。) 申込み方法 希望日前日までに 電話か FAX で 次に申し込んでください。 野鳥観察 の森ネイチャーセンター 電話・フ ァックス 019− 688−5522 日 編 集 雑 記 ・度重なる竜巻まがいの強風で、樹木の倒伏が多 く、森の中のあちらこちらで根返りや枝折れが 発生し、大木が公道を塞ぐなど危険を伴うこと がありました。 ・ 8 月に入っても梅雨が明ける様子が無く、夏ら しい晴天も長続きせず、夏休みの子ども達がか わいそうです。 ・野外活動ができないためでしょ うか、ネイチャ ーセンタ ーの「森のクラフト」作りに訪れる親 子の姿が例年よりも多くみられます。 コウライテンナンショウ 時 定例森の観察会 (8 月 16 日) (植物の不思議探検隊) 1 2 3 4 5 6 森林公園内を植物を中心に観察します。専門の指導 員が案内します。 初心者の方、子供さんなど、どなたでも自由に参加 できます。 特に申込みの必要はありません。 10 時までに野外活動に適した服装でネイチャーセ ンターに集まってください。 観察用双眼鏡や参考書の貸出しもしております。 参加費は無料です。気軽に参加してください。 ― 4 ―