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行常の野鳥達2 - NPO法人 ひょうご森の倶楽部
行常の森の生き物観察報告 野鳥編(その2) 2015年 1月16日 NPO法人 ひょうご森の倶楽部 森 逸男 先に、行常の森で観察して写真に撮影した野鳥11種について「野鳥編(その1)」で紹介した が、この報告書ではそれに引き続きさらに11種の野鳥について以下にまとめて報告する。 なお、この報告書で紹介する写真についても、いずれも行常の森とその周辺で、筆者自身が撮影 したものであることを申し添える。 12.エナガ - スズメ目エナガ科 留鳥 学名:Aegithalos caudatus ほぼ日本全国に留鳥として分布し、里山の雑木林や公園など樹木の多い所で普通に姿を見るこ とができる。 体が丸っぽく、尾羽が細長い小型の野鳥である。太い過眼線から左右の肩までと翼の両脇およ び尾羽が黒っぽい。最大の特徴は、日本の野鳥で一番小さな嘴と体の半分ほどはありそうな長い 尾羽である(写真-21)。10羽ほどの群れで、シジュウカラやヤマガラなどとともに雑木林な どを飛び回って行動することが多い。 行常の森でも姿を時々見かける。2012年11月の活動日には、熟した柿の実を群れになっ て食べに来ているのを観察した(写真-22)。 写真-21(2014 年 12 月 18 日) エナガ 13.カワラヒワ - スズメ目アトリ科 写真-22(2012 年 11 月 18 日) 群れで柿の実を食べに来たエナガ 留鳥 学名:Carduelis sinica 大きさも体形もスズメによく似た野鳥である。スズメに比べると全体に褐色の色合いが濃く、 翼と尾羽に黄色い部分があり、飛んでいる姿を下から見ると黄色い扇子を広げているような形に 見える。尾翼の先端はアルファベットの「M」の字の形をしている。エナガと同様に、群れにな って行動することが多い。 行常の森でも時々姿を見ることができる。2013年12月の活動日には、雑木林の高い梢を 群れになって飛び回っている姿を観察した(写真-23)。 14.ツグミ - スズメ目ツグミ科 冬鳥 学名:Turdus naumanni ムクドリほどの大きさの冬鳥である。体の上面は褐色で、腹部は白で多数の黒い斑紋がある。 顔は黒褐色で眉斑と喉から首筋にかけての線が白い(写真-24)。 ロシアなどから秋に冬鳥として日本全国に渡ってくる。比較的開けた草地や田畑、公園の芝生 などで普通に姿を観察できる。2011年の秋から2012年の春にかけてのシーズンは、全国 的にツグミの姿が少なく、天変地異の前触れかと心配する人もいたが、逆に翌シーズンにはどこ へ行っても多数のツグミに出会えた。 チョコチョコと歩いては胸を反らせて周りを見まわす、独特の動きをよく見せる。行常の森で も、冬場にふもとの畑や水田などで姿を見せてくれる。2014年の12月の活動日には、10 羽以上の群れで、ふもとの水田や果樹園などを飛び回っている姿を観察した(写真-25)。 写真-23(2013 年 12 月 15 日) 雑木林のカワラヒワの群れ 写真-24(2014 年 12 月 21 日) ツグミ 写真-25(2014 年 12 月 21 日) ふもとの電線に止まるツグミの群れ 15.シロハラ - スズメ目ツグミ科 冬鳥 学名:Turdus pallidus ツグミと同じくらいの大きさで、やはり冬鳥として日本全国に飛来する野鳥である。頭から背 中、尾羽にかけて褐色で、腹部はくすんだ白色である(写真-26)。この腹部が白っぽい特徴か ら「シロハラ」の名前の由来になった。 雑木林などの林床に降りて歩き回り、嘴を使って地面に落ちている枯れ葉などをひっくり返し、 その下にいる昆虫やミミズなどを捕食する習性がある。このことから、冬場に雑木林の周辺で耳 を澄ますと、 「カサッ、カサッ」と落ち葉を返す音が聞こえ、その音を頼りにシロハラを見つける ことができる。 行常の森でも、冬場にふもとの竹林や果樹園などでよく姿を見かける。 16.アオジ - スズメ目ホオジロ科 漂鳥 学名:Emberiza spodocephala スズメよりやや大きい野鳥で、夏場に本州の中部以北で繁殖し、冬場は暖かい関東地方から西 日本方面に移動してくる漂鳥である。頭から背中、尾羽にかけては茶褐色で、下部は黄色っぽく 胸元に褐色の斑点がある(写真-27)。 兵庫県のレッドデータブックでは、A ランクに登録されている絶滅危惧種である。行常の森で も、あまり姿を見かけることは多くないが、2013年1月と2014年12月の活動日に、ふ もとの雑木林やため池周辺で観察した。 写真-26(2015 年 1 月 14 日) シロハラ 17.シジュウカラ - スズメ目シジュウカラ科 写真-27(2013 年 1 月 20 日) アオジ 留鳥 学名:Parus major スズメと同じくらいの大きさの野鳥で、平地から山地の林に棲むが、街中の公園などでも樹木 があれば姿を見せる。頭頂部が黒く頬は白い。背中から尾翼にかけては青灰色で、喉もとから下 腹部にかけてネクタイ状の黒い帯があるのが特徴である。このネクタイを締めたような姿から、 「野鳥の紳士」というニックネームもある。 鳴き声は「ツーピー、ツーピー」という2拍子で、その声を聞くだけでシジュウカラであるこ とが判別できる。他の小型の小鳥のエナガやヤマガラ、メジロなどと数10羽の群れになって、 雑木林などの木から木へ飛びながら移動していく習性もある。 行常の森でも時々姿を見るが、2012年11月の活動日にはふもとの果樹園の柿の実をつい ばみに来ている姿を確認した(写真-28)。 写真-28(2012 年 11 月 18 日) 果樹園の柿の実をついばみに来た2羽のシジュウカラ。エナガも2羽写っている。 18.ヤマガラ - スズメ目シジュウカラ科 留鳥 学名:Parus varius 体長14cmほどで、スズメと同じくらいの小型の野鳥である。頭と喉もとが黒く、額から頬 にかけては白で、肩口と腹部がオレンジ色、背中と翼の上面は青味がかった濃い灰色の、やや派 手な外観をしている(写真-29)。 前述のシジュウカラが「ツーピー、ツーピー」と2拍子で鳴くのに対し、 「ツツピー、ツツピー」 と3拍子で鳴くのが特徴である。また「ジュー、ジュー」と濁った声を出すこともある。 行常の森でも、よく姿を見せてくれるお馴染みの野鳥のひとつである。 19.ウグイス - スズメ目ウグイス科 留鳥 学名:Cettia Diphone スズメと同じくらいの大きさの、ほぼ日本全国に分布する野鳥である。頭から尾にかけて、体 の上面はくすんだ緑褐色で、一般に言う「ウグイス色」の鮮やかさはなく、地味な色合いである。 平地のササやメダケなどが茂った藪のような場所を好んで棲む。 春先に、お馴染みの「ホーホケキョ」のさえずりを始めるため、 「春告げ鳥」の別名がある。春 から夏にかけての繁殖期には、縄張り宣言のため盛んにさえずる。縄張り内に外的などが侵入す ると「ケキョ、ケキョ、ケキョ、 ・・・」と、いわゆる「谷渡り」の鳴き声を出して警戒する。冬 場などには、竹藪などで笹鳴きといわれる「チャッ、チャッ」という声を出す。 大きな声でさえずるのに対し、警戒心が非常に強くなかなか姿を見せてくれない。野鳥編(そ の1)で紹介したメジロが鮮やかな緑色で、春先の鶯の鳴くころに人前にもよく姿を見せるのも、 ウグイスと混同される理由のひとつであろう。 行常の森でもよく声は聞いたが、なかなか姿は確認できなかった。2014年12月の活動日 に、ふもとの休耕田でようやく写真を撮影できた(写真-30)。 写真-29(2014 年 12 月 24 日) ヤマガラ 20.ヒヨドリ - スズメ目ヒヨドリ科 写真-30(2014 年 12 月 21 日) ウグイス 留鳥/一部漂鳥 学名:Hypsipetes amaurotis 日本全国に分布する中型の野鳥。昔は山地にいて冬場に街中に降りてくる漂鳥だったそうだが、 現在は一年中市街地でも見かけるようになっている。全身が灰褐色で頬が茶色、胸元から腹にか けて白い斑点が多い(写真-31)。 「ピーヨピーヨ」と甲高い声で鳴くほか、数羽で色々な声で鳴き交わしながら木立の中を飛び 回る姿もよく見かける。 昆虫、果実、花の蜜など何でも食べる雑食性の野鳥である。冬に庭先やベランダなどでメジロ などの小鳥のために用意したミカンなどの餌を横取りすることもある。また、時には果実や野菜 などの農作物を食べることもあり、カラスと並んで嫌われ者の野鳥になってきている。 行常の森でも、ふもとの竹林や果樹園の周辺などで一年中観察することができる。 21.アオサギ コウノトリ目サギ科 留鳥 学名:Ardea cinerea 日本全国で見られる大型の野鳥で、体長は90cmを超える。河川や干潟、湖沼、水田、ため 池など平地の水辺でよく見かける。魚類やカエル、ザリガニなどの水棲生物を捕えて食べる。 体全体が灰色で、頭部から胸元あたりまでは白く、眼の上から首の後ろに黒い帯がありそのま ま数本の冠羽につながっている(写真-32)。 大型の鳥で、色合いがコウノトリに似ていることから、空を飛んでいるアオサギをコウノトリ と間違う人もいる。見分け方は、アオサギは首を「S」の字に折り曲げて飛ぶのに対し、コウノ トリは首をまっすぐ前に伸ばして飛ぶので、区別ができる。 行常の森では、ふもとのため池や水田などで一年中普通に見かける。2013年8月の活動日 には、ふもとのため池の岸辺で大きなカエルを捕えて食べようとしている姿を確認した(写真- 33および写真-34)。 写真-31(2014 年 3 月 16 日) 写真-32(2014 年 6 月 15 日) ヒヨドリ アオサギ 写真-33(2013 年 8 月 18 日) 写真-34(2013 年 8 月 18 日) カエルを捕えたアオサギ 左の写真の一部を拡大 22.カイツブリ - カイツブリ目カイツブリ科 留鳥 学名:Tachybaptus ruficollis 日本全国で普通に見られる留鳥である。頭と背中は黒く、顔から首にかけて赤褐色で、目の周 りと嘴の付け根に白い斑紋がある。冬毛は色が薄くなる。 ため池や流れの緩やかな河川などに棲み、水面に浮いていて頻繁に水に潜って餌の小魚などを 捕えて食べる。観察していると、潜った場所からかなり離れたところで水面に浮かび上がってく ることもある。オスとメスのペアで行動することが多く、水草などを材料にしてため池などの水 面に浮島の巣を作り、夏場に産卵し子育てをする。 行常の森でも、2014年6月の活動日に、ふもとのため池で浮島の巣を作って、巣材を運ん だり巣の上に座ったりする姿を確認した(写真-35)。子育てをしてかわいい雛が姿を見せて くれることを期待したが、その年の8月に兵庫県南部に上陸した台風11号の大雨でため池が増 水して流されたのか、8月の活動日には浮島の巣がなくなっていた。その後、このため池でカイ ツブリの姿を確認することはなかった。 写真-35(2014 年 6 月 15 日) ふもとのため池で浮島の巣に座っているカイツブリ <野鳥編(その2)あとがき> これまで、 「野鳥編(その1)」と合わせて、行常の森とその周辺で観察し写真を撮影すること ができた22種の野鳥について紹介してきた。行常のでは、これら22種以外にも色々な野鳥を 確認している。今後も写真撮影を試みていき、新たに撮影できたものから「野鳥編(その3)」と して記録をまとめていきたい。