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調査マニュアル 鳥類編
鳥類調査の方法 鳥類調査の方法 1.調査の企画 3.調査対象地に着いたら ① いつ頃調査するか ① 調査票ID、調査年月日、調査開始の時刻、天 候、調査者名を記録します。 鳥類には、夏鳥・冬鳥など渡りの区分があり、種 によって見られる時期が異なるもの、繁殖期と非繁 ② 調査ルートを、静かに、ゆっくりと歩きながら、 殖期で、また成長段階などで、色や鳴き声が変わる 鳥類を探しましょう。上空や目の前を通過する鳥も ものがいます。参考までに、関東地方における繁殖 できるだけ記録するようにしましょう。 期と越冬期の目安は以下の通りです。 ③ 調査ルートから見えづらい場合は、見通しの良 3 4 5 6 7 8 9 10 繁殖期(夏鳥・留鳥) 11 12 1 2 い開けた場所や高い所に 20∼30 分程度立ち止まっ て観察しましょう。 越冬期(冬鳥・留鳥) 環境分類ごとの指標鳥類について、見つけたり見 ④ 鳥類を目撃したり鳴き声を聞いた場合は、確認 分けたりしやすい時期を事前に確認し、その期間中 した種と、その種を確認した状況(さえずり、地鳴 にできるだけ2回以上調査するようにしましょう。 き、目視のうち当てはまるもの)を、調査票に記録 ② 調査を実施する時刻 しましょう。大きな群れを見た場合は、おおよその 数(50 羽くらい、100 羽くらい等)を、 「指標鳥類以 調査は、晴れまたは曇りの日の午前中に行いまし 外の記録」欄に種名と一緒に記録して下さい。 ょう。早朝に行う場合は、足元や周りにくれぐれも また、卵か雛のいる巣の確認、雛への餌運びなど 注意して調査しましょう。 繁殖に係わる行動を確認した場合は、 「繁殖行動等の 暑い炎天下の日中や雨の日、風の強い日は、確認 できる鳥類が限られるので避けた方が良いでしょう。 詳細記録」に具体的に記述して下さい。 もし撮影が可能な場合は、周りの環境、個体の写 ① 調べる鳥類がいそうな環境、調べる季節に応じ 真を撮影します。 ⑤ 繁殖や営巣を確認した場合は、周りの音などに たそれぞれの鳥類の姿、色や形が似ている種との見 敏感になっている時期なので、ゆっくりとその場を 分け方を、事前に確認しましょう。 離れ、鳥から見えづらい場所に隠れて観察します。 ② 調査対象地への行き方、調査対象地にある崖な 繁殖を妨げる恐れがありますので、写真の撮影は避 どの危険箇所を、確認しましょう。 けましょう。 ③ 調査対象地が自宅から近い場合や、日常良く通 ⑥ 確認した場所を、地図に記載します。鳥類の る場所にある場合は、事前に下見を行い、調べる鳥 写真の後に、地図にマークしたポイントも写真で撮 類がいそうな環境を網羅するように調査ルートを 影しておくと、地図の位置と、写真の対応が、後日 設定しましょう。また、調査対象地に、広域を観 察できる見通しの良い開けた場所や高い所が でもわかりやすくなります。 ⑦ 指標鳥類かどうかはっきりしない場合は、も あるかどうかも確認しましょう。 のさし鳥と比較した大きさ、全体の色、くちばしや 2.現地調査に出かける前に 調査ルートは、危険な箇所を避け、比較的移動し 尾・翼の形など全体像を捉える他、目の周り、胸や やすい既存の園路・道路・尾根道等を主なルートと 脚など体の一部に目立つ色彩はないか、特徴的な動 します。水田、畑、果樹園を調査する場合は、農作 きはあるかなど細かい部分までよく観察し、特徴を 物、農作業に影響を与えないよう、あぜなどを歩く 記録しておきましょう。可能な場合は、個体の写真 ようにします。 を撮影しましょう。また、上記と同様に、確認した 場所を地図に記載します。後で、その記録と写真を 元に図鑑と照合します。 1 鳥類調査の方法 ●服装 4.調査の終わりに ① 調査終了の時刻を記録します。 ② 調査地点と隣接する場所について、草刈などの ・市民環境調査員の身分証 手入れや伐採などの改変状況、ごみの有無、人の立 ・軍手 ち入りなどによる影響の有無など、気がついた点 ・草・竹を踏み抜かない底が厚い靴 を記録します。 ・避けた方が良い色 ③ 調査ルートを記録しておき、次回以降の調査も ※蜂が寄ってくる黒、野鳥が警戒する赤・白・黄の 同じルートを歩くようにしましょう。 色は避け、アースカラー系のものを選びましょう。 ・長袖、長ズボン ●持ち物 5.報告 ① 画像データ(デジタルカメラの写真)の有無に ・調査票 ついても、調査票に記入します。 ・調査地点図 ② 調査票は、郵送、FAX、ホームページ、E-mail ・筆記用具(黒。小雨でもにじまない鉛筆など) により環境創造局環境活動事業課野生生物担当へ報 ・画板など(調査票を支える) 告します。 ・双眼鏡(あれば) ③ 当日の調査票IDと、画像データがわかるよう ・カメラ・デジタルカメラなど(あれば) にして、保管します。 ・図鑑(あれば) (・前回までの調査結果のコピー) ●調査実施で気をつけること ・雨具 ・調査を実施する際は必ず身分証を携帯しましょう。 ・飲み物 ・環境調査を円滑に実施するためには、土地所有者 ・虫除け ・タオル、着替え、防寒具など の方や地域の方と良好な関係を築くことが非常に 重要です。 ・地域の方に質問された時は、 「横浜市環境創造局の カメラ・デジタルカメラなど 環境調査である」旨、丁寧に説明しましょう。 図鑑など ・土地所有者の方などから立ち入りを拒否された時 には、その時点で調査を中止し、調査票の「環境 の状況等」の欄に経緯を記述して報告してくださ い。 双眼鏡など 画板など ・調査に関する連絡先は以下の通りです。 環境創造局環境活動事業課野生生物担当 住所:〒231-0017 横浜市中区港町 1-1 電話:045-671-4106 FAX:045-224-6627 E-mail:[email protected] 飲み物 2 筆記用具 鳥類調査の方法 ◆鳥類の調査対象種 各環境分類の調査対象種は、表1に示すとおりです。 表1 調査対象種一覧 環境分類 A.市街地生態系 1.市街地 ○典型種 シジュウカラ スズメ ヒヨドリ ムクドリ C.草地生態系 E.水辺湿地 生態系 6.針葉樹林 7.竹林 8.落葉広葉樹林 9.常緑広葉樹林 10.水辺 ウグイス アオジ アオゲラ アオゲラ イソシギ カケス アカハラ エナガ アオジ カルガモ カワラヒワ ウグイス カケス ウグイス コサギ シメ キジバト シジュウカラ カケス ツバメ ヒヨドリ ツグミ コゲラ モズ メジロ ムクドリ メジロ ヤマガラ メジロ ヤマガラ クロジ クロジ キセキレイ クロツグミ 3.畑・果樹園 キジ ツグミ ツバメ ハシボソガラス ホオジロ ムクドリ 4.水田 カルガモ ツバメ ムクドリ モズ 5.草地・林縁 アオジ シジュウカラ ツグミ ホオジロ ◎保全種 セグロセキレイ セグロセキレイ ツバメ ツバメ ヒバリ セッカ ヒバリ モズ キセキレイ ヒバリ ★目標種 モズ チョウゲンボウ オオヨシキリ サシバ タマシギ チョウゲンボウ オオヨシキリ カワセミ セッカ モズ キジ ハイタカ属 チョウゲンボウ ルリビタキ 種のランク 2.緑の多い住宅地 オナガ コゲラ シジュウカラ スズメ ムクドリ モズ B.耕作地生態系 ハイタカ属 D.樹林地生態系 アカゲラ オオルリ キビタキ ハイタカ属 ハイタカ属 ルリビタキ オオヨシキリ カイツブリ カワセミ セッカ 注)典型種:該当する環境分類に典型的に出現する種。 保全種:該当する環境分類の種の多様性がやや高い場合に出現する種で、当該環境分類で保全すべき種。 目標種:該当する環境分類の種の多様性が高い場合に出現する種で、当該環境分類の目標とすべき種。 ◆環境分類の考え方 本調査では、二つの環境の間に位置する移行帯(エコトーン)の環境分類について、以下のように区分します。 【林縁の考え方】 樹林の外周で草本や低木の上に樹林の枝が伸びているような「林縁」の環境は、 「樹林」では なく、「5.草地・林縁」と区分します。 【水辺の考え方】 「10.水辺」の環境分類には、 「常時冠水はしないものの、抽水植物や湿性植物が生育し、水中・ 水際の環境と連続している環境」を含めます。 【10.水辺】 【5.草地・林縁】 【6.針葉樹林】 【7.竹林】 【8.落葉広葉樹林】 【9.常緑広葉樹林】 浮葉植物 出典: 「市民協働生き物調査の仕組みづくり −横浜市市民協働による陸域生物相・生態系調査検討委員会の報告−」 (横浜市,2007 年3月) の掲載図「図 7-1 Eco-tope 環境分類(案)における移行帯の取り扱いについて」より 図1 環境分類における移行帯の取り扱い 3 鳥類調査の方法 【参考】健全な生態系の評価 横浜市では、図2のような食物連鎖図を使って、緑地の生態系の点数評価を試みています。鳥類は、食物連鎖 の□囲みに位置しています。 調査結果から、表2を参照して各調査地点の得点を計算してみましょう。 計算例「常緑広葉樹林」で、アオジ、ウグイス、アオゲラ、ハイタカ属を確認した場合・・・ (1点×1種)+(1.5 点×2種)+(9点×1種)=13 点 注)詳細は、 「市民協働生き物調査の仕組みづくり −横浜市市民協働による陸域生物相・生態系調査検討委員会の報告−」 (横浜市,2007 年 3月)をご覧下さい。 図2 横浜市が試行している「健全な生態系評価手法(案) 」 表2 健全な生態系評価の調査対象種(鳥類)一覧 腐食連鎖 No. 注1) 3 4 栄養段階 三次消費者 (ハシボソガラス) 注3) 三次消費者 (腐食性大型鳥類) 生食連鎖 調査対象種 注2) 43 ハシボソガラス トビ 点数/種 6 No. 注1) 1 6 10 11 点数/種 調査対象種 注2) 3 ハイタカ属 5 チョウゲンボウ その他トビを除くタカ類 栄養段階 三次消費者(猛禽類) No. 注1) 9 二次消費者 20 モズ (猛禽類以外の肉食性鳥類) 二次消費者 11 カワセミ (肉食性小型鳥類) 12 コゲラ 13 アカゲラ 16 ツバメ 17 キセキレイ 18 セグロセキレイ 21 ルリビタキ 25 ウグイス 26 オオヨシキリ 27 セッカ 28 キビタキ 29 オオルリ 30 エナガ 31 シジュウカラ 32 ヤマガラ 33 メジロ 36 クロジ イワツバメ コシアカツバメ コチドリ ジョウビタキ ハクセキレイ 二次消費者 14 アオゲラ (肉食性中型鳥類) 19 ヒヨドリ 22 クロツグミ 23 アカハラ 24 ツグミ 40 ムクドリ 42 オナガ シロハラ トラツグミ ホトトギス 4 栄養段階 二次消費者 (肉食性大型鳥類) 1.5 12 40 41 一次消費者 (植食性大型鳥類) 一次消費者 (植食性中型鳥類) 一次消費者 (植食性小型鳥類) 1.5 42 点数/種 調査対象種 注2) 2 コサギ 41 カケス 42 オナガ アオサギ カワウ キンクロハジロ ゴイサギ 6 カルガモ 7 キジ その他カモ類 10 キジバト 19 ヒヨドリ アオバト コジュケイ ドバト 15 ヒバリ 32 ヤマガラ 34 ホオジロ 35 アオジ 37 カワラヒワ 38 シメ 39 スズメ ウソ カシラダカ マヒワ その他植食性小型鳥類 1 注1)No.は、図2の食物連鎖の各段階に付した番号に対応している。 注2)種名の前に種No.のついている種は、市民協働生き物調査の指標鳥類 である。 注3)「A市街地生態系 1市街地」の出現は加算しない。 出典)「市民協働生き物調査の仕組みづくり −横浜市市民協働による陸域 生物相・生態系調査検討委員会の報告−」(横浜市,2007年3月) の掲載図「表7-9 健全な生態系指標生物一覧」に加筆。